機動戦士ガンダムU.C.0097 YUME IS BORN 作:擬態人形P
「ナトラ!状況はどうなっている!?」
ラー・カイラム級リン・ボウのブリッジに帰還したガルハルトは「ナトラ」と呼ばれた副艦長である、紺色のセミロングの女性に話しかける。
「シャングリラのドックからモビルスーツが潜入。こちらに向かってきています。」
「種別は!?AMS-129………ギラ・ズールか!?」
「それが………「ヅダ」です。」
「は?」
ナトラの言葉にガルハルトは一瞬固まった。
「EMS-10………ヅダです。1機だけで降下してきます。」
「ネオ・ジオンはトチ狂ったか!?とにかく迎撃だ!レミオス達を出せ!」
「格納庫、出撃用意!」
ナトラの指示で、艦内が慌ただしく動き始めた。
――――――――――
「へーい!彼女!乗ってくかい!?」
「………いきなり何ふざけてるの?」
コロニーを巻き込む騒動を前に、走って家に帰って来たユメが見たのはノーマルスーツに身を包んだビーチャとエル。
2人はメタス………いや、黄色から深緑に塗り替えられた「メタス改」を調整していた。
「MSA-005S………メタス改?本当に動くの?」
「お前に刷り込まれた「情報」通りに作ったんだ、動くだろ。あのヅダが気になるんだろ?さっさと街中に行くぞ。」
「行くって………そりゃ、気になるけれど………。」
「はい、アンタのノーマルスーツと推進装置の「ランドムーパー」。部屋で着替えてきな。」
エルに装備一式を渡されたユメは渋い表情でありながらも、言われた通り着替えてくる。
「似合ってるじゃねえか。」
「お世辞を言ってる場合じゃないよね。」
「じゃあ、行くよ。」
エルがコックピットに乗り込み、ビーチャはその後ろで工具箱らしき物のチェックをする。ユメはそれを見ながら聞く。
「中古品のジム・ストライカーは置いてくの?」
「アレじゃあ、宇宙(そら)には出れねぇからな。」
「??」
「詳細は戦況を見ながら話す。」
メタス改は飛び立つと、モビルアーマー形態に変形し、一気に加速する。ユメはビーチャと共に後ろからシートに捕まりながら、ラー・カイラム級から出てきた複数の機体を眺めていた。
「FD-03………グスタフ・カール、RGM-89D………高機動型ジェガン、RGM-89DEW………EWACジェガン?あのプロモーション用のハイエンド機はハリボテ?」
「乗りこなせないんだろ?だから「お前」を連れて行くんだ。」
ユメはいつしか真剣になっているビーチャの表情に気付く。そう言えば、こんな彼の姿はあまり見ないと思った。
――――――――――
「ほう………ガキンチョ達め、あの戦いに介入するつもりか。」
ネオ・ジオンの侵攻を受けて、ジャンク屋連合の人々が我先にとシェルターへと向かう中で、ヤザンは街中へと飛んでいくメタス改を見て、1人笑みを浮かべていた。その向こうではゲモンが手足をばたつかせて焦っている。
「や、ヤザン!早くシェルターに避難しないと!」
「お前は先に向かってろ。………オレも混ざりたくなった。」
「ま、混ざりたいって何に乗って!?」
「決まってるだろ?お前の最高傑作でだよ、なぁ?」
ヤザンはそう言うと、青い巨大なモビルスーツ………ゼク・ツヴァイを見上げた。
――――――――――
「なぁ、キクハ。あれは「カミカゼ」ってヤツなのか?」
『油断すると艦長に怒られるよ?レミオス。』
「疑問だよ。1体で来るとは余程のバカか………。」
レミオスと呼ばれたグスタフ・カールのパイロットが90mmショートマシンガンを構える。
「エースの中のエースだよ!全機、攻撃開始!」
グスタフ・カールが、高軌道型ジェガンが、EWACジェガンがヅダに狙いを定め、それぞれの武器のトリガーを引く。しかし………。
「何!?」
ヅダはあろうことか「ホバリング」をすると、最小限の動きでマシンガンを躱す。そしてすぐさま背部から135mm対艦ライフルを取り出すと、素早く狙撃する。レミオスが気付いた時には、僚機が火を噴き爆発していた。
『レミオス!?ネイルがやられた!?』
「本当にエースかよ!?アロード!アレはどういう仕組みだ!?」
『た、多分「熱核ジェットエンジン」を装備してるんだよ!「グフフライトタイプ」のアレ!』
「そんな一年戦争のカラクリにッ!………って!?」
ヅダ………いやRFヅダの砲撃は止まらなかった。続いて放った対艦ライフルの一撃は、レミオス達の後ろに並ぶプロモーションモビルスーツの1体………赤と白のボディであるガンダム顔の機体に炸裂し、首元から上を吹き飛ばし、なぎ倒す。これにより、逃げ惑う人々の混乱がより激しくなる。
『「フルアーマーガンダムMk-Ⅲ」の首が飛んだ………。』
「とにかく早くアイツを撃ち落とすぞ!」
『レミオス!ジャンク山のほうからアンノウンのモビルアーマーとかが飛んでくる!』
「今度は何だッ!?」
――――――――――
「おうおう………よりによって一番ガンダムらしい機体の顔を綺麗にぶち抜いちゃって。連邦の「ガンダム信仰」を真正面から否定したな。」
「ネオ・ジオンとしての宣戦布告だね………降りれるよ、ユメ、ビーチャ。」
「んじゃ、手筈通り、やりますか!」
エルはメタス改をモビルスーツ形態に変形させ、プロモーション機体の傍に降下する。ビーチャとユメは、近くで「プチモビ」を操り燃えた機体の消火作業に当たっている人達を無視し、お目当ての水色の機体のコックピットの所までランドムーパーで飛ぶ。
「おい!何やってるんだ!?」
黒髪のスポーツヘアの男がプチモビから降り拳銃を構えるが、2人はこれを無視。ビーチャは器用に工具でハッチを開けるとユメを中に入れる。
「どうだ?」
「………イケる。装備も燃料も全部十分。」
「何者なんだよ、聞け!」
『あー、もう!うるさいね!』
しつこい男の声にエルがメタス改からスピーカーで叫ぶ。
『アタシはエル・ビアンノ!こっちはビーチャ・オーレグ!第一次ネオ・ジオン抗争のネェル・アーガマ隊のパイロットと艦長代理だよ!』
「へ?あの………。」
「よし、ユメ動かせ!」
驚く男の目を余所に、ユメはビーチャをシートの後ろに乗せて、モビルスーツのハッチを閉める。水色のZガンダムに酷似したモビルスーツのデュアルアイが光る。どけ、と手で払う仕草をしたので、男を含めた作業員が慌ててその場から離れる。
「RGZ-91B………リ・ガズィ・カスタム、飛べる!」
ユメは、エルのメタス改と一緒にバーニアを吹かすとモビルアーマー形態に変形し、空を自在に占拠しているRFヅダに向かって飛び上がった。
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「どういうことだ………?ネェル・アーガマの………という事はガンダム・チームの………。」
リン・ボウのブリッジで唖然とするガルハルト達の近くで衝撃音が響き渡る。見れば、青い巨大なモビルスーツがブリッジの近くに立ち、一般回線を繋いでいた。
『飛ぶ相手には飛ぶ機体で対抗せねば、話にならないってこった。』
「貴殿は………。」
『元ティターンズのヤザン・ゲーブルだ。いいからさっさとそこらの情けないモビルスーツ達を回収してドックへ移動しろ。敵の本体は宇宙で狙いはこの艦だ。ここに留まってたら、このコロニーを巻き込む大戦になるぞ?』
ガルハルト達が見つめるモニターの中で、ヤザンは野獣の笑みを浮かべていた。