機動戦士ガンダムU.C.0097 YUME IS BORN 作:擬態人形P
「………どうやら、思い切りのいい「民間人」がいるらしい。」
ユメ達の騒動を見たRFヅダのパイロットであるフェイトは独り言を呟く。
多数の護衛が迎撃する中でプロモーション用のガンダムの顔を吹き飛ばす事はできた。後はこのカメラの捉えた映像を流して回れば、ネオ・ジオンとして地球連邦の足元をすくってやった証を全世界に広める事ができる。
「欲を言えば、もう1体くらい「ガンダム」は落としておきたいが………。」
向かい来る2体のモビルアーマーを相手に、120mmザクマシンガンで牽制をしながら、RFヅダは限界速度で急上昇し、ドックへと飛翔する。一年戦争時代の熱核ジェットエンジンで、ハイエンド機を含む飛行タイプのモビルアーマーとやり合うのは分が悪すぎた。距離のある内に引くべきである。
「果たしてこの「失敗作」の身で熟年の英雄達と渡り合えるか………?」
そのまま無重力区画へと脱出すると、外付けの熱核ジェットエンジンを捨てヅダ特有の機動力を発揮し、一気に加速した。
――――――――――
「コロニーの外へ逃げていく………。私達、誘われているんだ。」
「母艦と援軍が外にいるだろうからな。………気を付けろよ、コイツも「ガンダム」だ。」
「言われなくても分かってるよ。」
ビーチャとユメは細心の注意を払いながらRFヅダを追っていく。ご丁寧に、ドッグのハッチの一部分にモビルスーツ1機分だけの穴が開いていた。そこをリ・ガズィ・カスタムとメタス改は抜けた。
「ここが………宇宙。」
「どうだ、凄いだろ?」
「別に………。」
黒く塗りつぶされた空と白い星の空間を見たが、ユメは初めての感じがしなかった。
「私の頭の中にはもう、「存在する情報」だから。」
『そんなデータまで刷り込まれてるんだね………。』
「ま、そのお陰で宇宙空間での戦闘はオレ達よりも長けているわけだ。………とはいえ、油断するなよ?」
「しないよ。ビーチャとエルこそ、軽口は謹んでよ。」
エルとの通信も交え、3人はRFヅダ等の気配を探る。周りにはデブリも浮かんでおり、隠れるには十分だった。
静寂が流れる。1、2、3………。
「来る!」
ユメから見て下方のデブリから白兵戦用ピックを装備したシールドを突き出し、RFヅダが猛加速してくる。その突撃は回避するが、続いてデブリ越しにビームが複数飛んでくる。
「ランゲ・ブルーノ砲・改か!エル、後方で待機してろ。その機体は接近戦向けじゃねえからな!」
『仕方ないね!ユメ、深追いはするんじゃないよ!』
「分かってる。」
下がっていくメタス改に対し、リ・ガズィ・カスタムは回避行動を取りながら、背部のバック・ウェポン・システムの機首部に搭載されているメガ・ビーム・キャノンを手始めに1つのデブリに向かって放つ。その光はデブリ裏の敵機を捉え、爆発させる。
これに激昂したのか、他のデブリから緑色の機体が3機、ビーム・マシンガンやシュツルム・ファウストを構えて飛び出し、一斉にユメを狙ってくる。
「AMS-129………ギラ・ズールが3機。単純だよ。」
「仲間がやられて黙ってられない。それが命のやり取りってやつだ。」
ユメはリ・ガズィ・カスタムをモビルスーツに変形させ、携行式のビーム・アサルト・ライフルで応戦する。
ビーチャが自分達より上と語る通り、ユメの操縦技術は並ではなかった。彼女はギラ・ズールの砲撃を躱しながら、逆に1体のコックピットを貫き爆散させる。だが、そこに………。
ピピピピピ………!
「アラートだとッ!?」
「後ろだ!」
一瞬驚いたビーチャに対し、ユメは冷静に背部のバックパックからハイパー・ビーム・サーベルを抜き放ち、振り向きざまに背後を取っていたRFヅダの攻撃を受け止める。
ヅダならばヒート・ホークではあるが、改造機だけにその刀身はビーム・ホークであった。そのままビームの鍔迫り合いになって弾け、お互いに間合いを取る。これにより、ユメはギラ・ズール2機とRFヅダ1機に挟まれる形になった。
「少しマズい………。ここはヅダの方を強行突破するのが………。」
「そういう時は味方を頼るんだよ。エル、撃て!」
バシュゥウウウウウウゥゥゥゥンッ!!
ビーチャの言葉と共に、極太のオレンジのビームがギラ・ズール達を薙ぎ払っていく。後方で機を狙っていたエルのメタス改が、新規に取り付けられたハイ・メガ・キャノンを撃ったのだ。
ユメに刷り込まれていた情報から作ったとはいえ、実戦投入できるまでに改造したビーチャと、それを正確に扱うエルに、彼女は驚かされる。
「……………。」
「お、どうだ?オレ達を惚れ直したか?」
「べ、別に………まだ敵はいるし。」
少しだけ見直したユメであったが………。
「ッ!?」
「どうした?」
「1機、私と「似た何か」が向かってくる………!?」
「何!?」
ユメの指した場所を見て、ビーチャは目を見開く。
そこには、3体のギラ・ズールに護衛をされながら、赤で塗装されたモノアイの機体が迫ってきていたからだ。
――――――――――
「姫、カメラの映像は送りました。私の危機に自ら駆け付けなくても………。」
『折角コケにしていたのに、第一次ネオ・ジオン抗争の英雄達にこんな簡単にいいように全滅させられたら見栄えが悪すぎるでしょ。』
「返す言葉もございません。」
RFヅダのコックピットの中でフェイトは謝罪する。
モニター越しの姫………クイーン・アズナブルはそれを見て嘆息し………しかし、笑みを浮かべる。
『それに………あの子は「素質」があるみたいだし、試したいわ。』
「分かりました。但し、ご戯れはほどほどに。」
――――――――――
赤いモノアイ機が前に出る代わりに、RFヅダと護衛のギラ・ズールが下がる。
敵陣の奇妙な動きにユメは首を傾げるが、ビーチャは危機感を覚えた。
「ヤバいぞ、多分、アレは………。」
「アレ?」
「「ファンネル」だ!」
ビーチャの警告に呼応するかのように、モノアイ機の両肩のシールドから6基のビットが飛び出した。
「AMS-120………ギラ・ドーガ サイコミュ試験タイプ!?」
「来るぞ!?」
6基のファンネルがビームを放ちながら、生き物のように動き始めた。
――――――――――
ユメ達がシャングリラのコロニーの外で戦っている区域から少し離れた場所で、グレーのドームのような物を背負った機体がデブリの裏に紛れていた。その機体のマニュピレーターが動き、近くにいた他の機体に指示を出す。その中の1機が言葉を発す。
『よし、行くぞ………奴らに「現実」を見せてやろうではないか。』
その言葉に、一斉に「モノアイ」のモビルスーツ達が動き出した。