機動戦士ガンダムU.C.0097 YUME IS BORN 作:擬態人形P
「ユメ!ファンネルは躱せるか!?」
「話しかけないで!」
リ・ガズィ・カスタムのコックピットでユメは思わず叫ぶ。
襲い来る6基のファンネルは不規則に加速と減速を繰り返しながらユメの機体に向かって様々な方向からビームを放ってくる。
ユメはビーム・アサルト・ライフルと頭部の60mmバルカン砲で撃ち落とそうとするが、上下左右前後全ての方角から襲い来るファンネルに狙いを定めるのは至難の技だ。躱すだけで精一杯になる。
「エル!ハイ・メガ・キャノンは!?」
『排熱中だから撃てない!………っていうか、この機体、他はサーベルとバルカンしか無いの!?』
「仕方ないだろ!そういう機体なんだよ!絶対に駆け付けようとするなよ!」
「………ッ!変形する!」
囲まれたのを悟ったユメはモビルアーマー形態にリ・ガズィ・カスタムを変形させ全周囲からの射撃を何とか躱す。しかし、ファンネルは後ろから変則的な動きをしながら襲い来る。
「この機体、後ろに武装は………。」
「あるわけ無い!」
「変形して振り向いて華麗に射撃とか………。」
「6基も一気に落とせない!どれかに撃ち抜かれる!」
「どうすればいいんだよ、これ!?」
「私が聞きたい!」
『苦労してるみたいだな、ガキンチョ共。オレも混ぜろ!』
「その声は………!?」
ファンネルの処理に手間取るユメとビーチャは野獣の声を聞く。
見れば、あのゼク・ツヴァイに乗ってヤザンが接近してきてた。
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「正規兵の奴らが艦をドックに移すのが遅すぎたから、もう決着がついて終わってたと思ったが………意外と楽しい状況になってるじゃねぇか。」
ヤザンは興奮してきているのを感じた。久々の戦場。自分が最も自分という存在を感じる事ができる場を、体感する事ができていた。
『待て!ヤザンさん、ニュータイプとかじゃないだろ!?ファンネルは………!?』
「オールドがニュータイプに敵わないって考えを持つな!」
ビーチャの懸念の通り、ファンネルは介入してきたヤザンのゼク・ツヴァイに群がる。
だが、ヤザンは焦らなかった。
「よく覚えておけ。ファンネルが来たら、こうするんだよ!」
ファンネルが囲うタイミングに合わせ、ヤザンはペダルを踏み込む。
すると、重そうな外見に反し、増加ブースターによる爆発的な加速力が掛かり、ゼク・ツヴァイの巨体そのものがミサイルのように動く。
『まさか………!?』
「そのまさかだ!」
ファンネルはゼク・ツヴァイを捉えようとするがその加速力の前にビームは空振りに終わる。
その僅かな隙に背中からビーム・サーベルを2本引き抜き二刀流にして持つと、そのまま母機であるギラ・ドーガ サイコミュ試験タイプへと襲い掛かる。
「この距離ならファンネルは使えまい!」
赤いギラ・ドーガはビーム・サーベルを取り出しヤザン機の攻撃を受け止めるが、その膨大な突進力を完全に相殺する事はできなかった。思わず吹き飛ばされてしまい、後方に控えていたRFヅダに受け止められる。それに伴い、まるで心配するように6基のファンネルがシールド側面に戻っていく。
――――――――――
「い、痛いわね………!何よ、あの青いデブ!!」
『姫、あの敵は更に手練れです!ここは撤退を………!』
「できるわけ………ッ!?」
忠告を無視し、激昂したクイーン・アズナブルは再度ファンネルを6基飛ばそうとするが、今度はそれが一斉に爆発する。
何事かと思って見れば、ゼク・ツヴァイがフロントスカートのミサイル・ポッドを放ったのだ。
「ファンネル6基の起動の隙を………狙われたの………!?」
『こっちの「ガンダム」からさっきまでの戦闘データを送って貰ったが、悪い癖があるみたいだな?』
「クッ………!」
スピーカーで挑発してくる余裕まである介入者の姿を見て、クイーン・アズナブルは唇を噛む。確かにファンネルを6基、一気にシールド側面から起動させると、横に飛ばす瞬間に、どうしても隙が生じる。だが、その僅かな隙を、たった1回の友軍機の映像を見ただけで判断できるその実力は只者じゃなかった。
『姫、挑発に乗らないで下さい。あの機体はエースです。ファンネルを奪われた今、ここは撤退しましょう。』
「ここまでコケにされて………。」
『手に入れる物は手に入れました。それに、落ち着かなければ待っているのは死です。………更に厄介な事に「敵が増えました」。』
フェイトの言葉にクイーンはゼク・ツヴァイやリ・ガズィ・カスタムとは違う方向から、多数のビームが飛んでくるのを見た。
――――――――――
「アレは、AMS-119………ギラ・ドーガ?」
ユメは緑のモノアイ機体がやってくるのを見た。
だが、その攻撃対象は自分達では無く、RFヅダやギラ・ドーガ サイコミュ試験タイプだ。2体の機体が撤退をしようとする中で、護衛で来ていた3体のギラ・ズールがそれを庇うようにビーム・ホークを持ち、ギラ・ドーガに向かって行く。ギラ・ドーガの方もビーム・ソード・アックスを斧形態に切り替え、格闘戦に入る。
「何で、ネオ・ジオン同志で………。」
「ネオ・ジオンも一筋縄じゃいかないって事だ。………どこの組織も我こそは正当なジオンの後継者だって訴えてるんだよ。その為には、邪魔な組織を潰すんだ。」
トーンが低くなるビーチャの言葉を裏付けるように、奥の白いモノアイ機から、スピーカーで図太い男の声が響いてくる。
『ジオンを引き継ぐのは「連邦に恐れをなした姫」でも「我らの戦力に腰抜けになる姫」でもない!この「バザード・ディオンヌ」様だ!その『現実』を貴様らに見せてやる!』
そう言うと共に、一斉にギラ・ドーガが波状攻撃を仕掛ける。
ギラ・ズールも主を守ろうと捨て身で抵抗する。
「………オレ達はまんまと利用されたのかね。ヤザンさん、さっきの正規兵は?」
『置いて来た。下手に来ても役に立たんからな。』
「……………。」
さっきまで戦っていた敵が一方的に別の介入者達に蹂躙される様を見たユメは、押し黙る。自分達が利用されたという事よりも、あの演説を行った男の言葉に沸々と何かが湧き上がるのを感じた。
「ビーチャ………。」
「お、何だ?」
「私、アイツが嫌い。」
「そうか。………でも、今は堪えてでも引く場面だぜ。推進剤もかなり使ったし、態勢を立て直さないと死ぬのはオレ達だ。」
「分かった………。」
ユメはモビルアーマー形態に変形すると、ヤザンやエルと共に、混乱する戦場から離脱する。
その背中にあの男の罵倒の声が掛けられた気がしたが無視した。
主君を守る為に奮闘するギラ・ズール3機が物量の前に全滅するのに、時間は掛からなかった。