機動戦士ガンダムU.C.0097 YUME IS BORN 作:擬態人形P
暗礁宙域に1体の水色の機体………グスタフ・カールが浮かんでいた。その右手にはビーム・ライフルが持たれており、臨戦態勢だという事が分かる。
「………どこだ。」
気配を消した「敵」の正体を探るが、ミノフスキー濃度が濃く、レーダーが有効に機能しない。
「アロードのEWACジェガンが居てくれればこうはならないんだけれど………。」
こういう時、下手に動くのは危ういと彼………「レミオス・フルハーソン」の直感が告げていた。
増してや敵はエース級。下手に隙を見せたら狙い撃ちにされる。一見すれば棒立ちに見えるこの状況も神経をすり減らされるが、耐える時だった。
「………来いよ。」
その瞬間、1つのデブリ裏で熱量を感知する。
レミオスはすかさずグスタフ・カールの左腕部のグレネード・ランチャーでデブリを破壊する。
「当たりだ!」
中から出てきた青い巨体のモノアイ………ゼク・ツヴァイは6本のアームからクラブを一斉に放つ。
レミオスは横への回避行動を取らず、敢えて前へ向かってバーニアを踏み込んだ。
「接近戦なら………!」
量が多いとはいえ、クラブは直線的な機動なのだ。恐怖心を克服し、落ち着いて対処すれば躱せる。
彼はビーム・ライフルを捨て、ビーム・サーベルを抜き放つとゼク・ツヴァイに横から薙ぎ払う。
「うおおおおおおおおお!!………お?」
だが、ゼク・ツヴァイはビーム・サーベル1本で受け止めると、角度を変えた。衝撃を「受け流された」レミオスは、勢い余ってそのままきりもみ回転をしながら明後日の方向へ飛んで行った。
「うわああああああああああ!?」
思わず悲鳴を上げるレミオス。その背中を綺麗にビーム・スマートガンで撃ち抜かれた。
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『シャングリラ内ドック リン・ボウ内部』
「終了。お疲れ様、レミオス。」
「………一番情けない終わり方をした。」
1対1のシミュレーションを終えたレミオスは、ヘルメットを外し緑の刈り上げの髪を出すとうなだれる。長身のその身体も情けなさそうに項垂れている。反対側から彼を「鍛えていた」ヤザンが出てくる。
「敵を見失っても落ち着いて我慢したのと、あの牽制の中を突っ込んで来たのは褒めてやる。だが、接近戦の時にペダルを踏み込み過ぎるとこうなるんだ。」
「実戦で、これで死んだら成仏できない………。」
「とはいえ、一番見込みがある。伊達に部隊長は務めてないな。」
「それ、「正規兵」での話だろ?」
レミオスは嘆息する。
ここ数日で新規に入って来た4人の実力は思い知らされた。特に最初、鍛え直してやると言ったヤザンに関しては何様のつもりだとも感じたが、こうして何度も戦ってみると歴戦の勇士である事を認めざるを得ない。
対戦成績もヤザンに善戦した順番で、1位ユメ、2位エル、3位ビーチャなのだ。この3人でもあのゼク・ツヴァイを1度も撃破してはいない。それだけヤザンは手強いのだ。
「ユメちゃんが言ってましたね。ヤザンさんはモビルスーツがあれば強いんだって。」
レミオスを慰めた小柄な女性が答える。彼女は「キクハ・サクラミチ」。赤髪のロングの髪が綺麗だった。本当は、ヤザンは大尉の階級を与えられたから呼称に気を配らないといけなかったが、ヤザン自身が別に変な所で気を使わなくていいと命令したのでそれに従っている。
「キクハ、お前はセンスがある。だが、こちらに委縮しすぎだ。………そんなに元ティターンズが怖いか?」
「怖いわけでは………いえ、怖いです。嫌悪感を覚えます。ヤザンさんに嫌悪感を覚えているわけじゃないけれど………私も、ティターンズだったから。」
その小柄な肩を銀髪の男が抱く。彼は「マック・ライアン」。レミオスと同じくグスタフ・カールを与えられているパイロットだ。
「ま、オレ達の当面の目標はレミオスを抜く事だ。部隊長の座を奪ってやるくらいの気概を見せないといけないし………な。」
「マックは機体に過信しすぎだ。グスタフ・カールはそんな高性能機じゃない。」
「……………。」
カッコつける癖があるのか、決めポーズを取ったマックにヤザンの指導が入る。結局その場にいる3人が肩を落とす事になる。
それを見て、ヤザンはその3人を見守る2人の男の内、黒髪の地味そうな青年を呼ぶ。彼は「アロード・ヴェスタチオ」。EWACジェガンで解析を行い、後方支援を主に行うパイロットだった。
(あの3人の事情はどうなっている?)
(レミオスは部隊を纏める立場なので、その責任感に深く悩んでいます。キクハはそんなレミオスに好意を持っているけれど元ティターンズ故に負い目を感じています。マックはキクハが好きなのでレミオスにライバル意識を持っています。)
(………面倒な奴らだな。)
そんなヤザンは部屋に入ってくる栗色のウェーブの女性の姿を見た。彼女は如何にも眠そうな顔でアロードを呼ぶ。
「アロード………哨戒任務交代。」
「あ、ありがとうエフィ。ヤザンさん、失礼します。」
アロードが去って行くのを見てヤザンはエフィと呼ばれた女性を見る。彼女は「エフィテマ・テフカ」。射撃能力が高い後方支援型のパイロットだ。只………。
「エフィテマ、シャングリラの外で異常は無かったか?」
「別に………。」
「そっけないな。元ティターンズなのはキクハもだろ?」
「キクハはいい………。ティターンズ嫌いだから。」
大のティターンズ嫌いであり、ネオ・ジオン嫌いである。
何でも父がエゥーゴの軍人でティターンズとの戦いで戦死したらしく、母がネオ・ジオンのダブリンへのコロニー落としで命を落とした事に起因しているらしい。
アロード曰く、大切な存在を失った際に、感情を失ってしまったのではないか?との事だ。
「まあいい。俺もティターンズに居たのは失敗だと思ってるが………精々、反面教師として学べ。次、シーサー!」
「へ!?いや、オレは流石に………。」
茶髪の細身の青年があたふたとする。彼は「シーサー・オルトロス」。まだ二十歳になっていない男で見習い兵だ。他の面々と違ってヤザンの放つ、野獣のオーラに完全に委縮してしまっている。
「シーサー、ヤザンさんに鍛えて貰わないと戦場で死ぬぞ?」
「だだだだって、動きがオレ達と全然………。」
「私が………やる………。」
「いいぞ、エフィテマ。かかってこい。」
ヘルメットを被って戦う意志を見せるエフィテマを見てヤザンは先にシミュレーターに入る。
(今までで一番問題児の集う部隊だな………。)
そう感じたヤザンは珍しくため息をつく。
シミュレーターは約1分で決着がついた。