エルフ「ウチの夫が黒騎士で最強な件について」   作:紅乃 晴@小説アカ

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魔法とかの世界観の設定やけど、ややこしいので話の中でも解説します。ぐだぐだになるやだああぁぁん!!


トワシュトラ地区編
※閑話 魔法の成り立ち


 

 

食料補給や休息を兼ねてドラフ族の集落を経由し、さらに南へ。

 

ラーニエ地区の境目とされる〝最近できた〟渓谷の谷間に街道がある。この渓谷こそこの世界に転移した頃に黒騎士である衛士が作り出したものだった。いつ通ってもその真新しい大地に刻まれた傷跡が生々しい。

 

最初の頃はラーニエ地区の種族全員が怖がって近寄らなかったが、渓谷の谷間を通るとトワシュトラ地区とラーニエ地区を安全に行き来できると言うことが知れてからは、商売魂がたくましい商業人や、貿易商が行き来するようになり、ならばと街道として舗装し、今では宿泊施設なども作られるほどになっている。

 

ドラフ族の集落からトワシュトラ地区までは歩いて二日ほど。

今日は街道奥でキャンプとなった。

 

姫として扱われていた私が初めてキャンプを経験したのは衛士のいる世界にいた頃で、黒乃宮家や四天王を担当する一族との親睦会的なイベントだった。

 

といっても、向こうでは〝マナ〟も無いので魔法とかも使わずに、皆んなが普通にバーベキューをしたり、花火をしたりと楽しんでいたくらいだが、私にとっては何もかもが新鮮だった。テントを張る作業ですらワクワクする。

 

男用と女用のテントを二つを撮影し、ドラフ族の集落で補給した食材を使ってシチューを作る。

 

落ち着いた頃には、頭の上で星空が爛々と煌めいていた。

 

 

「この世界の神様っていうのは大概にロクデナシさ」

 

「神様がろくでなし…ですか?」

 

 

エルフに化けている衛士の言葉に、シチューを頬張っていたリーリエが首をかしげる。

 

ちなみにこの話はマジ。

 

衛士たちの世界の成り立ちや、魔法の本質を聞けば、この世界の神様というのはかなり酷い。

 

 

「女には目がない、自尊心強い、自己中心的で、これと決めたら譲らない、折れない、話聞かない。そして散財癖と飽き癖と…そんなもん数えたらキリがない。そんな神を愛するのが女神だぞ?そいつらがまともだと思うか?」

 

 

神話だとかの書物を読み解けばそれなりに美談っぽく書いてるのが胡散臭いという。

 

結局、根っこのところを突けばロクなことをしていないのが神だ。女癖が悪い上に、気に入ったら近親相関も厭わないとか…倫理的に言えば最悪だ。

 

そもそも、この世界における魔法の源『マナ』というものは原点は四大女神からもたらされた水、火、風、雷のエネルギーによる恩恵と言い伝えられている。

 

それに、誰もが魔法を使えるわけじゃ無い。

 

魔法を使える者とそうでない者は生まれついて決められている。

 

魔族でも人族でもそれは同じで使役できる者を古くから「スレイヴ」と呼ぶ風習があった。

 

だが、衛士は現代社会でも、異世界でも言う。

 

人族や魔族が誇りや血統と誇る「スレイヴ」の資質が〝呪い〟であるということを。

 

 

「女神の加護だとか恩恵だとか言って、魔法を行使できる「スレイヴ」が特権階級として扱われているが、ヒステリックにつき病的な執着心、猟奇的な独占欲を持つ女神の加護が何の対価もなく素質を与えると思うか?」

 

 

伝わる神話や伝承でも、神様は偉大と書かれているが、解釈次第では手当たり次第に麗しい女性に手を出す拙僧なしという捉え方もできるし、そんな神様にご執心な女神様もまた、自分たちの価値観からしたら斜め上をいくと言ってもいい。

 

 

「それを反子にしたら末代まで祟る呪いのオンパレードな呪いが魔法を扱う対価なんだよ」

 

 

そう言って衛士はシチューの皿を空にしていた。

 

特に魔王出現の際に現れる勇者は、その四大女神の祝福を受け、並のスレイヴでは成し得ない魔法を使うことができると伝えられているが…。

 

 

「つまり…勇者って不幸気質?」

 

「そんな女神さまの加護を受けてる段階で、な?」

 

「がっはっは!世界を救うという大役を押し付けられるのも頷けるな、そりゃあ」

 

 

衛士の言葉に、リーリエが顔を青くし、隣にいるザックスが豪快に笑って言った。それにだと衛士は続きを話した。二人揃って魔法素質のない「アロウン」なので他人事だが、周りにはスレイヴがたくさんいるのでリーリエが気を重くするのも仕方がなかった。

 

 

「それに魔法の四大術式も、それを行使する魔族も人間も、女神の力を間借りしてるようなもんだぞ?」

 

「間借り…ですか?」

 

「魔法使いがスレイブって呼ばれる言葉。それ自体が魔法を扱う特権制度になってるが、語源は「奴隷」「従属」って意味だ。神からエンチャントされた体質が魔法なんてもんじゃなくて、女神からして「アンタたちは私の奴隷よ」っていう烙印に近い」

 

 

その言葉に、ダークエルフの族長であるオルフェリアが「炎と風を司るスレイヴ」という事実を思い出し、リーリエの顔が強張った。

 

スレイヴという資質、その特異な能力から「貴族」という権利を与えられ、資質を持たない「アロウン」と呼ばれる者たちは、その力に憧れる。

 

だが、魔族の中には逆の価値観を持つ種族もいる。

 

魔族にとってのスレイヴは、確かに選ばれた資質でもあるが、同時に忌子や不吉の前触れとして毛嫌いされる事もある。

 

年長の魔族が、スレイヴという資質に隠された真実を知っているからだ。

 

 

「四大元素の魔法系って世界のマナを取り込んで魔法にするというより…」

 

「魔族や人間が女神より劣ってるっていう証みたいなもんだな。それ以下でもそれ以上でもないだろうに」

 

 

肩をすくめる衛士の言葉を聞いて、私は内心で息をつく。

 

私自身、土と風を司るスレイヴであったが今は女神の加護を絶っても魔法を行使できるようになっている。

 

女神から間借りするという恩恵で、マナを「火」や「土」の性質に変える手段を省略してもらっているが、扱い方の観点を変えれば自ら術式を組み立てることで女神からの間借りという真似をせずとも魔法を行使することは可能だ。

 

ただ、それがめちゃくちゃ複雑なため習得に時間が掛かってしまった。四天王のおじさまやおばさまの指導がなければ実現しなかっただろう。

 

真実を知る前なら、心のどこかで「スレイヴ」に誇りを持っていたこともある。

 

火を起こすために薪や着火をする必要もないし、湯を沸かす手間も、土塊から壁を作ると言った便利さもある。

 

だが、衛士から話を聞いて、今は自分がその宿業から断ち切られたことを心から安堵する。

 

 

「ちなみに言うと、魔族でも人間でもない「ディヴァーズ」たちは、その成れの果てだ。間借りしてた代金を支払った残りカスだな」

 

 

衛士の言葉にそう付け加えたのはザックスだった。

 

「ディヴァーズ」。

 

この渓谷に入る前にラーニエ地区へ向かおうとしていたエルフの行商人を襲っていた怪物。衛士がこの話をするきっかけにもなった相手であり、それは実態を持たないゴーストのような存在で、高密度のマナで形作られたモンスターだ。

 

魔族でも人族でもない。

 

決定的に違う点は、意思や感情を持たないと言われているからだ。

 

そんなモンスターにされてしまうなんて…。リーリエの息を飲む様子を見て、衛士は真剣な声色で続きを話してくれた。

 

 

「スレイヴが呪いだと言った理由がそれだ。魔法を使える者は、死後にその生で生み出されたマナ・ストレージを奪われるんだ」

 

スレイヴの証でもある「マナ・ストレージ」は、魔力を扱うための重要な器官であると同時に、濾過装置とも言う意味もあった。

 

その人が生涯をかけてマナを吸収し、研鑽し、そして極めてゆく。人間性も精神も記憶も命もつぎ込んだマナ・ストレージほど、女神に対する献上品となるということ。

 

要はスレイヴの人生の全てが女神への献上品となるための道中に過ぎない上に、芳醇なマナ・ストレージと認められない場合は、ゴミのように捨てられるのだ。

 

 

「どちらにしろ魂は形を保てず、しかし滅ぶこともできず、彷徨い続け、いつしか自然界のマナを取り込み「ディヴァーズ」となる」

 

 

フェルデニア大陸を彷徨うディヴァーズは、女神に認められた魂の大部分を奪われたスレイヴの成れの果て。

 

そんな力を人間たちは特権階級と称して崇めていると考えると、その生き方がひどく滑稽で、哀れに見えて仕方がなかった。

 

 

「スレイヴなんていうのは、そういった死後の甘味のために作られたものさ。能無しと呼ばれるほうが幸せだろうさ」

 

 

さて話はここまでだ。

 

そう言って衛士は立ち上がる。

まずはこの渓谷を抜けることが先だ。見張りはザックスと衛士が交代で行うため、私とリーリエは疲れを癒すために早々にテントへと入る。

 

行く先はここからずっと南へ真っ直ぐ。

 

この世界が生まれてからずっと水源を絶やさなかった湖、「バルジ湖」が遠くに広がっている。

 

 

 

 

 

 

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