この兄弟に祝福あれ   作:大豆万歳

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少々駆け足ですが、デストロイヤー戦です


第10話

 屋敷に走って戻ると、そこには荷車に荷物を積めるだけ積んだアクアと、荷造りを終えて達観したように茶を飲むめぐみんがいた。

 

「逃げるのよ!できるだけ遠くまで逃げるのよ!」

「もうジタバタしても仕方ありません。住まいも全て失うなら、このまま魔王城までカチコミでも行きましょう」

「……な、なあ。お前ら、どうしたんだその状態は?緊急の呼び出しを受けたんだ、装備を整えてとっととギルドに行こうぜ」

 

 和真の言葉に、ようやくアクアとめぐみんが気づいたのか、こちらを向いた。

 

「カズマったら、何を言ってるの?ひょっとして、機動要塞デストロイヤーと戦う気?」

 

 脇に大事そうに枕を抱えたアクアが言う。

 

「カズマ、ハルキ、今この街には、それが通った後にはアクシズ教徒以外、草も残らないとまで言われる、最悪の大物賞金首、機動要塞デストロイヤーが迫って来ています。これと戦うとか、無謀も良いところですよ?」

「ねえ、私の可愛い信者達がどうしてそんな風に言われているの?こないだウィズにも言われたけど、どうしてウチの子達って、そんなに怯えられているのかしら。皆普通のいい子達ばかりなのよ!?」

 

 アクアが喚く横で、めぐみんが説明を続ける。

 

「大物賞金首って言うけど、めぐみんの爆裂魔法で一撃で仕留められないのか?」

「無理です。強力な魔力結界が張られているので、爆裂魔法の1発や2発、防いでしまいます」

「……マジで?」

 

 和真の問いに、めぐみんが首肯する。大きな声で言えないが、俺はそんなにヤバい敵とは知らなかった。ヤバいヤバいとは言われていたが、具体的にどうヤバいのか聞いたことがなかったから。

 

「ダクネスは?まさか、お前らと同じく荷造りしているとか?」

「……遅くなってすまない!カズマとハルキも戻ってきたのか。お前達兄弟のことだ、ギルドに行くんだろう?早く支度をして来い」

 

 和真の質問に答えるように、重武装に身を包んだダクネスが屋敷から出てきた。まあ、聖騎士である以前に、こいつに逃げるという選択肢はないからな。

 

「じゃあ、俺もちょっと部屋で支度してくる。和真はアクアとめぐみんの説得をしておいてくれ」

「わかった」

 

 

 

 

「おっ!来たかカズマ!お前なら来るって信じてたぜ!」

 

 全員が完全武装になってギルドに到着すると、そこにはダストを始めとした、見知った顔の冒険者達が集まっていた。男性冒険者の割合が多いのは、つまりはそういうことなんだろう。

 そして、ある程度冒険者が集まったところで、ギルドの職員が酒場のテーブルを寄せ集めて、即席の会議室を作り出す。

 

「それではお集まりの皆さん、只今より緊急の作戦会議を行います。どうか、各自席に着いてください!」

 

 俺達は職員の指示に従い、他の冒険者達に倣って席に着いた。

 隣を見ると、御剣と目が合った。御剣は俺に無言で一礼し、俺と和真を挟んで隣に座るアクアにも一礼した。

 

「さて、それでは、現状説明からさせて頂きます!……えっと、その前に、機動要塞デストロイヤーについての説明が必要な方はいらっしゃいますか?」

 

 その言葉に、俺と和真を含む数名の冒険者が手を挙げる。

 

「機動要塞デストロイヤーは、元々は対魔王軍用の兵器として、魔道技術大国ノイズで造られた、超大型のゴーレムです。国家予算から巨額を投じて造られたこの巨大なゴーレムは、外観は蜘蛛のような形をしております。小さな城ぐらいの大きさを誇り、魔法金属がふんだんに使われ、外見に似合わない軽めの重量で、8本の巨大な脚で、馬をも超える速度が出せます。特筆するのは、その巨体と進攻速度です。凄まじい速度で動く、8本の脚で踏まれれば、大型のモンスターとて挽肉にされます。そしてその体には、ノイズの国の魔道技術の粋により、常時強力な魔力結界が張られています。これにより、魔法攻撃は意味を成しません。魔法が効かないため、物理攻撃しかないわけですが、接近すば轢かれ、潰されます。なので弓や投石などの遠距離攻撃になりますが、元が魔法金属製のゴーレムのため、弓は弾かれ、投石器も機動要塞の速度からして運用が困難です。更に、このゴーレムは上空からの攻撃を想定して、胴体部分に自立型の中型ゴーレムが、飛来する物体を備え付けのバリスタで撃ち落とし、尚且つ戦闘用のゴーレムも胴体部分に配備されています」

 

 職員が説明していくにつれて、冒険者達の顔が暗くなっていく。

 

「そして、その機動要塞デストロイヤーがなぜ暴れているのか、ですが。研究開発を担った責任者が、この機動要塞を乗っ取ったと言われています。そして、現在も機動要塞の中枢部にはこの研究者がおり、ゴーレムに指示を出しているとか……。速度が速度ですので、この大陸において既に荒らされていない土地はほとんど無く、その蜘蛛のような脚であらゆる悪路を走破してしまいます。現在のところ、人類、モンスター合わせ、平等に蹂躙する機動要塞、それがデストロイヤーです。これが接近してきた場合は、街を捨て、通り過ぎるのを待ち、そして再び街を建て直すしか方法が無いとされています。故に、天災として扱われております」

 

 あれだけざわついていたギルド内部が、一転して静まり返っていた。

 

「現在、機動要塞デストロイヤーは、この街の北西方向からこちらに接近中です。……では、ご意見をどうぞ!」

 

 そして、冒険者が手を挙げては、職員がそれに返答していった。内容としては──

 

 魔道技術大国ノイズはどうなった?→真っ先に滅んだ

 街の周りに巨大な落とし穴を掘るのは?→落としたまでは良いが、上から岩で蓋をする間もなくジャンプした

 魔王軍はどう対処している?→今のところ、魔王城に直接の被害は出ておらず、向こうがデストロイヤーを破壊しようとはしていない

 機動要塞にロープで乗り込むのは?→速過ぎて無理

 デストロイヤーを超える大きなバリケードは築けないのか?→迂回して踏みつぶしていった前例がある

 

 ──といった、ところだ。

 魔法は効かない、接近すれば挽肉、対空もばっちり。チート持ちの日本人集めても厳しそうな相手だ。

 

「なあカズマ。機転の利くお前から、何か案はないのか?」

「んな無茶な……」

 

 無理だと手を振っていた和真は、何かを思い出したようにアクアへ振り返る。

 

「……なあ、アクア。ウィズの話じゃ、お前がいれば魔王軍の幹部2,3人で維持している程度の結界なら破れるとか言ってなかったか?なら、デストロイヤーの結界も……って、なんじゃこりゃあ!」

 

 和真の声につられてテーブルを見ると、そこには美しい天使が花を手に戯れる姿が描かれていた。まさか、手元のコップの水で描いたのか?

 

「ああ、そんな事言ってたわね。でも、やってみないと分からないわよ?結界を破れる確約はできないわ」

「そうか……って!何で消してんだよ!勿体ない」

「な、何よ急に。描き終わったから消して、また新しいのを……」

 

 そんな2人のやり取りが聞こえたのか、職員が大声をあげた。

 

「破れるんですか!?デストロイヤーの結界を!?」

 

 その言葉に、和真とアクアに冒険者達の視線が集中する。

 

「い、いや、もしかしたらって事で。確約はできないそうです」

 

 慌てて言う和真の言葉にギルド内がざわめく。

 

「一応、やれるだけやっては貰えませんか?それができれば魔法による攻撃が……!あ、いやでも。機動要塞相手には、下手な魔法では効果が無い。駆け出しばかりのこの街の魔法使いでは、火力が……」

「いや、火力なら誰にも負けないのがうちのパーティーにいるじゃないか。なあ、めぐみん」

 

 俺の言葉に全員がはっとしたように、めぐみんに全員が期待の眼差しを向ける。向けられた本人は、顔を赤らめてモジモジして……

 

「わ、我が爆裂魔法でも、流石に一撃では仕留めきれない……と、思われ……」

 

 そうぼそぼそと告げて、帽子を深く被って顔を隠した。

 なら、あと1人。あと1人強力な魔法使いがいれば……

 ギルド内の空気が、そんな雰囲気になった中、突然入り口のドアが開けられた。

 

「すいません、遅くなりました!ウィズ魔道具店の店主です。一応冒険者の資格を持っているので、私もお手伝いに参りました!」

 

 ギルドに入ってきたのは、何かの作業中に慌てて飛び出してきたのか、黒のローブの上にエプロンをつけたウィズだった。

 

「店主さんだ!」

「貧乏店主さんが来た!」

「これで勝てる!勝てるぞ!」

 

 そのウィズを見た冒険者達は、熱烈な歓声を上げた。

 そういえば、前に本人が言ってたな。昔はアークウィザードとして、立ちはだかるモンスターを片っ端から蹴散らしていた、って。

 

「ど、どうも、店主です、ウィズ魔道具店をよろしくお願いします……。店主です、よろしくお願いします……。店をよろしくお願いします、また赤字になりそうなんです……」

 

 そう言って、ウィズは歓声を上げる冒険者達に頭を下げて店の宣伝をする。

 ……今度、店の商品を買ってこよう。

 

「ウィズ魔道具店の店主さん、これはどうもお久しぶりです!ギルド職員一同、歓迎致します!さ、こちらにどうぞ!」

 

 職員に促されるまま、ウィズは頭を下げながら、中央のテーブルの席に座った。

 ウィズが席に着くと、冒険者達は期待を込めた目で、進行役の職員を見る。

 職員はそれに応えるように。

 

「では、店主さんにお越し頂いた所で、改めて作戦をお伝えします!……まず、アークプリーストのアクアさんが、デストロイヤーの結界を解除。そして、めぐみんさんが結界の消えたデストロイヤーに爆裂魔法を撃ち込む、というお話になっておりました」

 

 それを聞いたウィズが、口に手を当てて考え込む。

 

「……爆裂魔法で、脚を破壊した方が良さそうですね。デストロイヤーの脚は本体の左右に4本ずつ。これを、めぐみんさんと私で、左右に爆裂魔法を撃ち込むのは如何でしょう。機動要塞の脚さえ何とかしてしまえば、後はなんとでもなると思いますが……」

 

 ウィズの提案に、職員も頷く。更に、万が一に備えて街の前に罠を設置する、バリケードを造るなど、色々な案が出され。

 

「では、結界解除後、爆裂魔法により脚を攻撃。万が一脚を破壊できなかった事を考え、前衛職の冒険者各員は打撃武器を装備し、デストロイヤー通過予定地点を囲むように待機。魔法で破壊し損なった脚を攻撃し、破壊。要塞内部にはデストロイヤーを開発した研究者がいると思われますが、この研究者が何かをするとも限りません。万が一を考え、本体内に突入もできるようにロープ付きの矢を配備し、アーチャーの方はこれを装備。身軽な装備の人達は、要塞への突入準備を整えておいてください!」

 

 

 

 

 デストロイヤーを迎撃する予定の場所である、街の正門前に広がる平原。

 街の前には、冒険者だけでなく、街の住人達も集まって、突貫作業で即席のバリケードが組み上げられていた。

 バリケードの前には、《クリエーター》という職業の冒険者が集まり、議論を交わしながら地面に魔法陣を描いていた。

 

「おいダクネス、悪いことは言わないから、下がれよ。お前の硬さは知っているけど、今回は相手が悪い。ここは趣味よりも、生き延びることを優先して、後ろのほうに下がっておけって」

 

 俺は、街の正門のバリケード、その更に前に仁王立ちするダクネスの説得を続けていた。

 ダクネスは大楯を背中に背負い、遥か遠く、まだ姿も見えないデストロイヤーの方を見ながら動かない。

 

「……ハルキ。私の普段の行いのせいでそう思うのも仕方が無い。……が、この非常時に、この私が欲望にそこまで忠実な女だとでも思うか?」

「普段の行いを見ていればそう思うな」

 

 一瞬静かになったダクネスが、ちょっと頬を赤らめてそのまま続けた。

 

「……この私は聖騎士だ。そして、それ以外にも、私にはこの街を守る理由がある。その理由は、お前も知っているだろう?」

「……貴族の務め、か」

「そうだ。私には、この街の住人を守る義務がある。だから、無茶と言われようと、ここからは何が起きても1歩も引くわけにはいかない」

 

 ダクネスの石頭ぶりにやれやれと俺は肩を竦め、丈夫な縄を取り出して渡す。

 

「ハルキ、この状況で緊縛プレイはどうかと思うぞ」

「違うわ!本当に危なくなったらそれを引っ張って逃げるから渡しただけだ!」

「冗談だ。腰に巻き付ければいいか?」

「そうしてくれ」

 

 俺は大楯を持ち、ダクネスが縄を腰に巻き付けるのを待つ。

 

「……よし、これで大丈夫だろう」

「おう。じゃあ、あとは任せたぞ……ララティーナ」

「その名で呼ぶな!」

 

 俺は、ダクネスのもとから移動し、バリケードの方に移動する。バリケードの上には足場が3つあり、向かって右には和真とめぐみん、真ん中にはガイナ立ちしているアクア、そして左にはウィズがいた。俺は和真とめぐみんのほうに移動し、地上から大声で話しかける。

 

「すまん!ダクネスの説得は失敗した!」

「わかった!兄さんはロープ付きの矢を持って待機してて!」

「おう!」

 

 俺は職員からロープ付きの矢を受け取り、キース達アーチャー職に混ざって準備する。

 そして暫く待つと──

 

『冒険者の皆さん、そろそろ機動要塞デストロイヤーが見えてきます!街の住人の皆さんは、直ちに街の外に遠く離れてください!それでは、冒険者の各員は、戦闘準備をお願いします!』

 

 ──機動要塞デストロイヤー。

 それは、何処かのチート持ちの日本人(せんぱい)が、冬将軍のように適当につけた名前らしい。

 そんな適当につけられた名前ではあるが、その姿を見れば誰もが納得するだろう。

 遠く離れた丘の向こうから、最初にその頭が見えた。今はまだ軽いものだが、震動を感じる。

 

「「『クリエイト・アースゴーレム』!」」

 

 クリエイターの皆さんの作り出したゴーレムが、ダクネスに付き従うように背後に整列した。

 

「でけえ!それに速え!そんでもって怖え!」

 

 近づいてくる巨大な姿を前に、冒険者達がパニックを起こしかけていた。

 そして、その巨大な機動要塞がすぐそこまで接近し、迎撃地点に入ると。

 

『アクア!今だ、やれ!』

「『セイクリッド・ブレイクスペル』!」

 

 現場指揮を任されていた和真の合図で、魔法を放つ。

 アクアの放った魔法がデストロイヤーに衝突すると、薄い膜のようが張られて抵抗されるが、それが硝子のように粉々に砕け散る。

 おそらく、あの弾けた膜が魔力結界なのだろう。

 

『ウィズ!そっちの脚を頼む!』

 

 そして、ウィズとめぐみんが同時に放った爆裂魔法が、デストロイヤーに向けて、全く同じタイミングで放たれる。

 

「「『エクスプロージョン』ッッ!!」」

 

 デストロイヤーの脚は粉々に粉砕され、その巨体が地面に底部をぶつけ、慣性の法則に従って街に向かって地を滑る。

 その巨体は街の前のバリケードに到達することなく、仁王立ちするダクネスの目と鼻の先で動きを止めた。

 デストロイヤーの脚だったものの破片が降りやむと、冒険者達から感嘆の声が上がりだす。

 だが、こういった時ほど警戒を怠るなと、俺はゲームや映画で学んだ。そう、こういう時に……

 

「やったわ!何よ、機動要塞デストロイヤーなんて、大げさな名前の割には大したことないじゃない!さあ、帰ってお酒でも飲みましょう!なんたって、1国を亡ぼす原因になった賞金首よ、報酬は一体お幾ら万エリスかしらね!!」

「「馬鹿かお前はー!」」

 

 アクアのような発言をしてはいけない!

 そして、それに応えるように、地面が揺れ始めた。おそらく、震源は目の前で沈黙しているデストロイヤーだろう。

 

『この機体は、機動を停止致しました。この機体は、機動を停止致しました。排熱、及び機動エネルギーの消費ができなくなっています。搭乗員は、速やかにこの機体から離れ、避難してください。繰り返します……』

 

 機体内部からのその音声は、機械的に何度も繰り返された。

 

 

 

 

 デストロイヤーの中から響く避難命令に、冒険者達は討伐を諦め、住人の避難を優先しようと下がり始める。

 

「おいダクネス!逃げるぞ!このままだと皆死ぬ!」

「それはできない!皆が安全な場所に逃げるまで、私は逃げない!それに……」

「それに?」

 

 ダクネスの息遣いが段々荒くなり、頬も紅潮しだした。

 

「街を吹き飛ばすほどの爆弾に、身を晒していると思うと……もう辛抱たまらん!」

 

 あぁ、駄目だ。良くないスイッチが入ってしまった。

 

「ハルキ!私は突撃する!援護してくれ!」

「え!?ちょ、待てよダクネス!」

 

 両手剣を振り回して突撃するダクネスの後に続き、俺もデストロイヤーに向かう。

 フック付きの矢を放つと、ダクネスがローブを掴んで凄まじいスピードで甲板に乗り込んでいく。

 

「ヒャッハー!」

 

 甲板に配備されているゴーレムにダクネスが奇声を上げて突撃し、ゴーレムも侵入者(ダクネス)の迎撃を行う。

 

「いいぞ!もっとだ、もっと来い!」

「ふん!おらぁ!」

 

 ゴーレムが殴る蹴るなどの攻撃を行うが、硬いだけが取り柄のダクネスはそれを受けても平然としている。俺はダクネスに狙いが定まっている隙に、ゴーレムの膝をハンマーで破壊し、倒れた所で頭部をハンマーで叩き潰している。

 

「「「乗り込めー!」」」

 

 3体ほどゴーレムを倒したところで回りを見渡してみれば、何時の間にか乗り込んでいた街の冒険者達がゴーレムを破壊していた。……冒険者がウィズとアクアを除いて男性しかいないのは、つまりそういうことなんだろう。少しは俺の工房の心配もしてくれないものか。

 そして、ゴーレムをあらかた殲滅したところで、狙いをデストロイヤーの研究者に切り替え、砦のような建物に突入し、扉を破壊して内部を突き進んでいく。

 

「……なんだ、こりゃあ」

 

 そして、建物の奥。部屋の中央の椅子には、デストロイヤーを乗っ取った研究者と思われる白骨死体が発見された。そして和真とアクアが部屋に入り、アクアが研究者の骨に触れると、言った。

 

「既に成仏しているわ。アンデッド化どころか、未練の欠片もないぐらいにそれはもうスッキリと」

「「「……は?」」」

「いやいや、未練の1つぐらいあるだろ。これ、どう考えても1人寂しく死んでった、みたいだぞ」

 

 俺達が首を傾げ、和真が言うと、アクアは何かを見つけたようだ。

 それは、机の上に乱雑に積まれていた書類に埋もれた、1冊の手記。

アクアはそれを手に取るとページを捲り、読み上げた。そして、それを要約すると──

 

 ・国の偉い人が低予算で機動兵器を作れと言った。無茶だと抗議しても聞く耳もたず、辞職願いも受理されない

 ・設計図の期限が迫ってきたけど、まだ白紙。悩んでいると嫌いな蜘蛛がでたので、手近にあった物で叩き潰した。やけくそになって、このまま提出

 ・まさかの採用。そして自分抜きで計画が進んでいく。

 ・動力源を何とかしろと言われたが、知ったことか。伝説のコロナタイトでも持ってこいと言ってやった

 ・本当に持ってきちゃった。どうしよう、これで動かなかったら物理的に首が飛ぶ。動いてくださいお願いします

 ・明日が機動実験とか言ってたが、知ったことじゃない。最後の晩餐になるかもしれないから、思いっ切り飲んでやる

 ・目が覚めたら、凄い揺れを感じた。何で揺れてるのかわからないけど、昨日酔った状態でコロナタイトに向かって説教して、根性焼きするとか言って煙草に火をつけた気がする

 ・現状把握。現在、機動要塞が暴走中。指名手配されているだろうけど、寝て起きてからどうするか考えよう

 ・国 が 滅 ん だ。国の偉い人とか国民も避難しただろうけど、結果的に国が滅んだ。なんかスカッとしたから、ここで余生を暮らそう。幸い、食料と水もある。だって止められないし、降りられない。これ作った奴、絶対馬鹿だろ。まあ、俺のことなんですけど!

 

 そしてそこまでアクアが読み上げ、手記を閉じると、アクアが言った。

 

「……お、終わり」

「「「なめんな!!」」」

 

 アクアとウィズ以外が、見事にハモった。

 そして、和真とアクア、ウィズの3人が機動要塞の中枢に向かった。その頃、俺達は研究者の骨を地上まで運び、木箱に収めていた。

 

「和真!どうだった?」

「コロナタイトはランダムテレポートで飛ばした。俺の幸運があれば、無人の場所に送られただろ」

 

 和真の言葉に冒険者達が戦勝ムードになる中、ダクネスだけが険しい表情をしていた。

 

「どうしたダクネス。和真もああ言ったんだ。そろそろ屋敷に帰って、ちょっと豪華な飯にでもしようぜ」

「いや、まだ終わっていない。私の、強敵を求める嗅覚が、まだ危険の香りを感じ取っている」

 

 ダクネスの言葉に反応するかのように、デストロイヤー本体が振動音と共に震えだした。

 

「おいカズマ!何がどうなってんだ!?」

「わからねえよ!デストロイヤーはコアを抜いたはずなのに、これ以上何をしろってんだ!?」

 

 俺達だけでなく、冒険者達も慌ててデストロイヤーから距離を取る。

 

「ど、どうしましょう!これまで内部に溜まっていた熱が、外に漏れだそうとしているんです!流石にあの大きさをテレポートさせるのはできません!デストロイヤーの前面部に、大きな亀裂が見えるでしょう?あそこから熱が漏れ出しています!このままでは、あそこから街目がけて……」

「カズマさーん!カズマさーん!早く何とかしてえー!?」

 

 ウィズの言葉を遮り、アクアが和真に無茶な要求をふっかけた。

 

「ま、魔力を!誰か魔力を──むぐっ!?」

「落ち着けウィズ!ここでウィズがドレインタッチを使うのはマズい!俺がアクアから魔力を吸って受け渡す。それで爆裂魔法で吹き飛ばしてくれ。手間はかかるけど、それしかない」

 

 ウィズが唐突に言いそうになったところで和真が口を塞ぎ、小声で囁く。

 そして和真が事情を説明してアクアの手首を掴もうとすると、アクアが猛反対した。自分の神聖な魔力を大量注入したら、ウィズが成仏してしまうそうだ。

 

「じゃ、じゃあ、兄さんの魔力をウィズに分け……」

「いや、あそこで自分にやらせろとめぐみんがアピールしている。めぐみんにアクアの魔力を受け渡してやれ」

 

 俺が指さす先では、木陰で休みながら、杖をカンカン鳴らして自己主張しているめぐみんがいた。

 

「凄いです、これは凄いですよ!アクアの魔力は凄く凄いです!これは、過去最大級の爆裂魔法が放てそうです!」

「ねえめぐみん、まだかしら!もう、結構な量を吸われていると思うんですけど!」

 

 アクアとめぐみんの首根っこを和真が掴み、ドレインタッチで魔力の吸収と受け渡しを行っていた。

 

「……大丈夫です!いけます!」

 

 めぐみんが左目の眼帯を毟り取り、杖先をデストロイヤーに向けて唱える。

 既に聞き慣れた爆裂魔法の詠唱が、冒険者達が遠巻きに見守る中に響き渡った。

 

「他はともかく、こと爆裂魔法に関しては!私は、誰にも負けたくないのです!行きます!我が究極の破壊魔法!──『エクスプロージョン』!」

 

 

 

 

 機動要塞デストロイヤー迎撃戦から、数日が経過。

 そして今日、ギルド内は異様な熱気に包まれていた。

 その理由は言わずとも、熱気から伝わるというもの。

そして、ギルドの隅のテーブルで俺と和真は算盤を弾き、貰える報酬の予想と、借金がどれだけ減るかの計算をしていた。

 

「俺の予想では、借金が全部なくなる。そして、暫く食う分には困らない程度の金が残ると思う」

「俺も概ね同じかな。ただ、それに加えて、あの屋敷を正式に購入するだけの金が残ると思う……まあ、貯めた金で家を買って兄さんと暮らす、という目標が達成できたらなーという願望でちょっと報酬を盛りました」

 

 良い弟を持ったな、と近くにいたダクネスは言う。もっと多く貰えるはずだとアクアとめぐみんは言い、計算のし直しを要求してきた。

 そして、少しするとギルド内のざわめきが止まり、少し暗い表情のギルド職員の隣に、騎士を2人従えた、黒髪の女性が立っていた。

 今回倒した賞金首は、魔王軍の幹部どころじゃない、各地の街や国々を脅かした大物だ。なので、ギルド職員ではなく、国の騎士から直々に報酬を貰えるのだろう。

 そんな期待に目を輝かせている和真と、その女性の目が合った。

 和真を見つめるその眼差しは、決して軽いものではない、とても情熱的なものだった。喩えるなら、そう──親の敵を見るような、厳しい眼差し。

 

「貴方が、冒険者、サトウカズマですね?貴方には現在、国家転覆罪の容疑がかけられています!自分と共に来てもらおうか!」




次回からアニメ2期分です
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