この兄弟に祝福あれ   作:大豆万歳

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アニメ2期、始まります


第11話

 機動要塞デストロイヤー。

 それは、誰かが名付けたふざけた名前とは裏腹に、世界中の人々に恐れられていた、大物賞金首。

 先日、和真を筆頭にした俺達冒険者の活躍により撃退され。

 そして現在、デストロイヤー討伐の賞金が配られるということで来たわけだが──。

 

「あの、すいません。なぜ国家転覆罪の容疑をかけられているのか、理由を教えてください。本人も身に覚えがないようですし」

「ちょっとカズマ!しっかりしなさい!」

 

 俺の隣では、アクアが白目を剝いて気を失っている和真に往復ビンタをしていた。

 2,3回ほど受けて和真が復活すると、女性は口を開いた。

 

「そのようですね。……自分は、王国検察官のセナ。サトウカズマさん、貴方は先日のデストロイヤー討伐の際、コロナタイトをテレポートさせましたね?」

「はい」

「それが、この地を治める領主殿の屋敷に転送され、屋敷を爆破した」

 

 その言葉に、ギルド内が静まり返った。

 

「と、ということは、俺のせいで領主殿はお亡くなりに……」

「いいえ。幸い、領主殿は地下室におられ、使用人は出払っていたので、死傷者は出ていません。ですが先ほども言ったように、貴方にはテロリストか魔王軍の手先ではないかとの嫌疑がかかっています。詳しいことは、署のほうで聞かせていただきます」

 

 セナの言葉に静まり返っていたギルド内がざわめきだした。

 

「すいません。いくら相手が街の領主を務める貴族でも、さすがに国家転覆罪は重すぎではないでしょうか」

 

 俺の言葉に、ギルド内から和真を擁護する声があがる。

 

「ちなみに、国家転覆罪は主犯以外の者にも適用される場合があります。裁判が終わるまでは、言動に注意したほうがいいですよ」

 

 セナが冷たく言い放った言葉に、俺達は口を閉ざす。

 これはマズいな、非常にマズい。デストロイヤー戦での和真の活躍を知っている身としては、ここで和真の擁護をしたい。しかし、それで俺も和真と同じように捕まれば、裁判で和真の弁護をまともにできそうな人間は、俺のパーティーではダクネスのみになってしまう。

 どうしたものかと悩んでいると、和真が1歩出て、両手を差し出す。

 

「兄さん。ダクネス。裁判当日は、俺の弁護お願い。めぐみんとアクアは、裁判当日まで大人しくしてくれ」

「ちょっとカズマ!あんた何言ってんの!」

「そうですよ!大人しくついていくつもりですか!?」

「ここで和真が無駄な抵抗をしても仕方ないだろ」

「……すまない、カズマ」

「もとはと言えば俺の指示で起きたから、気にしなくていいよ」

 

 和真が大人しく同行することに検察官は少々驚いたようだが、そのまま2人の騎士に連れられ、和真はギルドを去っていった。

 

 

 

 

 翌日。

 

「さて、どうやって和真の無罪を勝ち取るかね……」

 

 俺はルナさんから借りた六法(ギルドの備品)と睨めっこをしながら、和真をどう弁護するか頭を抱えていた。

 

「なあハルキ、俺達が言えたことじゃないが、もう少しカズマを擁護する発言をすべきだったんじゃないのか?お前、あいつの兄なんだろ。すいませーん、クリムゾンビア1つ」

 

 六法のページをめくっている俺と対面するように、テイラーが座って酒を注文していた。

 

「そうは言うがな、テイラー。まずは俺のパーティーのメンバーから和真を抜いた4人をイメージしてくれ」

「えっと、お前、ダクネス、めぐみん、アクアの4人だな」

 

 酒が来るのを待つテイラーが、指折り確認する。

 

「その中で、和真の弁護ができそうな人間は何人いる?」

「お前とダクネスしかいねえな」

「そこから俺が万が一抜けたら、どうなる?」

「……ダクネスの奮闘空しく、余計に罪が重くなる未来しか見えねえな」

 

 俺の考えを察したのか、テイラーが俺に同情の眼差しを向けてくる。

 この世界には、俺達のいた世界と違って弁護士という役職が存在しない。そのため、被告人の弁護をするのは被告人の知人や友人だ。

 まず、普段からトラブルを引き起こしているアクアは論外。爆裂魔法関係でやらかしているめぐみんも残念ながら除外。実際、昨夜遅くの爆裂騒ぎで検察官が屋敷に来た。となると、和真の弁護をまともにできるのは俺とダクネスだけになる。まあ、ダクネスの家の権力で刑の執行を遅らせることはできるけれど、本人は権力の濫用を良しとしないし、そもそもダクネスが貴族なのを知っているのは現状俺とクリスだけだ。

 

「まあ、そういうわけで、俺はああするしかなかったんだよ。その分、裁判では出来る限りのことはするさ。……そういえばテイラー、お前が昼から酒を飲むとは珍しいな。どんな風の吹きまわしだ?」

「それが聞いてくれよハルキ!」

 

 テイラーが勢いよく拳をテーブルに叩きつけて立ち上がる。

 

「ダストの野郎、散々ツケで飲み食いして借金してギャンブルしやがって。それで賞金が思ったよりも少なかったからって、無銭飲食で捕まりやがった!飲まなきゃやってられねえよ、畜生!」

 

 ちょうど来た酒を受け取り、テイラーはジョッキを一気に傾けて飲み干す。

 

「クリムゾンビア、おかわり!」

「はーい」

「お前も飲むか?」

「いらん」

 

 その後、俺はテイラーの愚痴をBGMに六法を読み、和真の弁護を考えていった。

 

 

 

 

 そして、裁判当日。

 

「すいません、裁判の前にバケツ持ってきてください!カズマが今にも吐きそうなので!」

 

 めぐみんの言葉を聞き、和真の様子を見た騎士が大急ぎでバケツを持ってきて、裁判所の隅に和真を誘導する。

 

 ~暫くお待ちください~

 

「和真。俺達がついているから、そんなに緊張しなくていいぞ」

「……うん」

 

 戻ってきた和真の背中をさすりながら、なんとか安心させようと言葉をかける。ダクネスとめぐみん、アクアも続いて声をかけるが、和真はアクアの言葉をスルーした。

 

「ではこれより、国家転覆罪に問われている被告人、サトウカズマの裁判を始める!告発人は、アレクセイ・バーネス・アルダープ!」

 

 裁判長の呼びかけに、太った男が立ち上がった。

 縦にも横にも大きく、頭が禿げ上がり、脂で光っている。悪徳貴族を絵にかいたような外見の中年の男は、アクアとめぐみんを値踏みでもするような、舐めまわすような目で見た後、ダクネスを見て驚愕に目を見開く。

 

「ねえねえ、あのおじさん、超こっち見てるんですけど。それでいて凄く邪なものを感じるわ。ちょっとあの人に聖なるチョキをしたいんですけど」

「おいやめろ、これ以上問題を起こして俺を不利にするな。ていうか、さっきからダクネスをずっと見てないか?」

「ええ、見てますね。例えるなら、風呂上りで薄着の私達を見るときのカズマとハルキの目と同じですよ」

「おっと。兄さんはともかく、俺を同列に扱うのはやめてくれ」

「和真、裁判が終わったらサッカーをしようか。お前ボールな」

「なんでもないですごめんなさい。……でも、ダクネスはどうなんだ?あのおっさんの視線、やっぱり気になるか?」

「いや、そうではないが……詳しくは後で話そう」

 

 俺達が話していると、机に木槌が落とされた。

 

「静粛に!裁判中は私語を慎むように。では、検察官は前へ!ここで嘘を吐いてもこの魔道具で直ぐに分かる。それを肝に銘じ、発言するように」

 

 裁判長の発言と同時に再び木槌が振り下ろされ、それと共にセナが立ち上がり起訴状を読み上げた。その間、アクアが何か言いそうだったので、俺とダクネスは必死でアクアを黙らせていた。

 それに続いて裁判長に促され、和真が陳述を行う。多少盛ってはいたが、嘘偽りは言っていないため、嘘を探知する魔道具は沈黙していた。

 

「では、検察官。被告人に国家転覆罪が適用されるべきだとの、証拠の提出を」

 

 裁判長がセナに証拠提出を促すと、セナの合図を受けた騎士が裁判所の待合室に向かう。

 

「では、これより証拠の提出を行い、被告人が、国家転覆を企むテロリスト、若しくは魔王軍の関係者である事を証明してみせます。さあ、証人をここへ!」

 

 セナの合図で、騎士が証人達を連れてきた。その殆どが冒険者、というか……

 

「あははは……。なんか、呼び出されちゃった……」

 

 和真を見て困ったように、頬の傷跡をポリポリと描くクリスを筆頭に、御剣と仲間の女性2人、ダストが呼ばれていた。

 

 

 

 

「ということでクリスさん。貴方は、公衆の面前でスティールで下着を剥がれたと。そういうことで間違いありませんね」

「え、ええ。でもあれは──」

「事実の確認が取れただけで結構です。ありがとうございました」

「ちょっと待」

 

 これは非常にマズい。セナが証人への質問を手早く打ち切っていく。続く御剣も魔剣を奪って売り払われ、取り返そうとした仲間が下着を剥ぎ取られそうになったと、仲間の女性が証言した。そして、ダストはというと……。

 

「ダストさん。貴方は、あそこにいるサトウカズマと仲が良いと聞きました。間違いありませんね?」

「間違いなんてあるわけねーだろ。ダチだよダチ。親友だ。一緒に酒を飲んだりした仲だ」

 

 セナはそれを聞き、和真に向き直ると訊ねた。

 

「サトウカズマさん。貴方は、この素行の悪いチンピラと親友なのですね?」

「いいえ。ただの知り合いです」

 

 和真の発言に、魔道具は反応しなかった。

 知り合い呼ばわりされたダストが泣き叫び、喚くが、騎士に連れられて退廷していった。

 

「最後の1人は証人としては不十分でしたが、今お見せした証人達は、被告人の人間性を証言してくれたかと思います。そして、被告人は被害者に対して恨みを持っていました。これらの事から、被告人は事故を装い、ランダムテレポートではなく通常のテレポートによる転送で被害者宅にコロナタイトを送り付けたのでは、と」

 

 セナの発言を受け、めぐみんが挙手する。

 

「弁護人、どうぞ」

「はい!カズマの性格が曲がっているのは認めましょう。ですが、今の発言には違和感しか感じません!もっとマシな根拠を持ってきてください!」

 

 めぐみんに同調するように、アクアがそうだそうだと言う。

 

「いいでしょう……1つ!冒険者サトウカズマ率いる一行は、魔王軍幹部ベルディア戦において、結果的に討伐は成し遂げたが、街に大量の水を召喚し、洪水による多大な被害を負わせ──」

 

 アクアが耳を塞ぐ。

 

「2つ!共同墓地に巨大な結界を張り、墓場の悪霊の居場所を無くし、この街に悪霊騒ぎを引き起こし──」

 

 アクアが俯いて座り込んだ。

 

「3つ!連日、街の近くで爆裂魔法を放ち、街の近辺の地形や生態系を変え、この数日においおては深夜に街の目の前で爆裂魔法を放ち、住人を夜中に起こし──」

 

 めぐみんが耳を塞いで座り込んだ。

 駄目だこいつら。俺が何とかしないと。

 

「そして4つ!被告人はアンデッドにしか使えないスキル、ドレインタッチを使ったという証言があります!……耳を塞いでも、なかったことにはできませんよ!」

 

 アクアやめぐみんと同じように、和真が耳を塞いだ。

 

「最も大きな根拠として、署内での取り調べの時に、貴方に魔王軍の者との交流はないかと訊ねたところ、貴方は交流などないと言いました。その時、魔道具が嘘を感知したのです。これこそが証拠なのではないでしょうか!?」

 

 魔王軍の者……ウィズのことかぁ。大方、ウィズが魔王軍の幹部だってことをうっかり忘れてしまったんだろう。和真がやりそうなことだ。

 座り込んでいるアクアとめぐみんを放置し、俺が挙手する。

 

「弁護人。どうぞ」

「はい。セナさん。貴女は先ほど、和真は事故を装い、領主殿の屋敷にコロナタイトを転送させたのではないか、と言いましたね?」

「ええ」

「……ところで和真、お前は領主殿の屋敷が何処にあるのか知っていたか?」

「知らない」

 

 和真の答えに、魔道具は反応しなかった。

 

「セナさん。仮に貴女の言った通りであったとすれば、前提として和真は領主殿の屋敷の所在を把握していなければならない。ですが、この通り和真は領主殿の屋敷が何処にあるか知らない。つまり、これは意図して起こしたものではなく、起きてしまった事故なのです」

「で、では、魔王軍の者との交流はどうなるのですか!?」

「いくら兄でも、弟の動向を24時間把握しているわけではありませんので、本人の口から聞きましょう。和真、お前は魔王軍の関係者か?」

 

 俺が言うと、皆の視線が和真に集まる。

 

「……俺は、魔王軍の関係者でも、テロリストでもない!ただ皆と平穏な毎日を送りたいだけの冒険者だ!」

 

 和真の言葉に、魔道具は反応しなかった。検察が魔道具での取り調べの結果を証拠にするのなら、魔道具による反応でこちらも対抗するまでだ。

 裁判長が、ゆっくりと首を振る。

 

「魔道具による嘘の判別は、この様に曖昧なものなのです。これでは、検察の証拠を認める訳にはいきませんね。流石に証拠不十分です。よって。被告人、サトウカズマ。貴方への嫌疑は不十分とみなし──」

「いいや裁判長」

 

 判決が下されようとしたところで、今まで沈黙していた領主が、急に口を開いた。

 

「その男は魔王軍の関係者であり魔王軍の手先だ。ならば、その男は死刑が妥当だ」

 

 領主が立ち上がり、そんなことを言う。

 それに対し、今度はセナが──。

 

「いえ、今回の事例はでは死傷者もなく、流石に死刑を求刑するほどでは……」

 

 そう領主に告げると、領主はセナのほうをジッと見つめた。

 

「…………ええ、そうですね。確かに死刑が妥当だと思われます……あれ?私は一体何を……」

 

 何だこれは、何が起きているんだ?

 言った本人が困惑顔で首を傾げている。

 と、その時、アクアが突然裁判長、領主、セナの3人を指さし。

 

「ちょっと!今何か、邪な力を感じたわ!どうやらこの中に、悪しき力を使って事実を捻じ曲げようとした人がいるわね!」

 

 突拍子もないアクアの発言に、法廷内が静まり返る。アクアの普段の言動を知る人達は、若干胡散臭いものを見るかのようだが。

 魔道具も沈黙していることがわかると、場の空気が一変した。

 仮にも聖職者であるアクアの言葉に信憑性があると判断したのか、裁判長の顔色が変わった。

 

「悪しき力……。神聖な裁判で、何か不正をしている者がいる、と?」

「ええそうよ。この私の目はね、そこの魔道具なんかより精度が高いわよ!何を隠そうこの私は、この世界に1千万の信者を有する水の女神!アクアなのだから!」

 

 ──チリーン

 

 そのアクアの宣言に、季節外れの涼し気な音が響き渡った。

 

「なんでよー!私、嘘なんて言ってないのにー!」

 

 信じてもらえずアクアが泣き喚くが、裁判長は悩まし気に首を傾げ、後ろの傍聴席はざわついている。

 今のアクアの発言に反応した、しかし前の発言では反応しなかった。つまり、アクアが言う通り悪しき力を使った者がいるかもしれないということ。だが、裁判長が魔道具による嘘の判別は曖昧だと言った以上、一連の発言の真偽の判別も曖昧になってしまう。

 

「──裁判長。これを」

 

 その時、これまで沈黙を貫いていたダクネスが、胸元からペンダントを取り出し、裁判長に見せる。

 

「そ、それは……では、貴女は……!」

 

 それを見た裁判長が、驚きに立ち上がり、目を見開く。

 皆の注目を集める中、ダクネスは静かに言った。

 

「この裁判、私に預けてもらえないだろうか。なかったことにしてくれ、と言っているのではない。時間を貰えれば、この男が魔王軍の手の者ではないと、必ず潔白を証明してみせる。そして、貴方の屋敷も弁償させよう」

 

 ダクネスが見せる紋章を凝視したまま、裁判長とセナは固まっている。

 そんな中、領主だけは幾分怯みながらも抗議の声を上げた。

 

「それは……!し、しかし、いくら貴女の頼みでも……!」

「これは私から貴方に借りを作ることになる。だから私にできることなら、何でも言う事を聞こう」

 

 ダクネスがそう告げると、領主はゴクリと唾を飲み込んだ。

 

「……な、何でも……?」

「そうだ、何でもだ」

 

 その言葉に、領主は椅子に腰かけると頷く。

 

「いいでしょう。他ならぬ貴女の頼みだ、その男に猶予を与えましょう」

 

 

 

 

 裁判所から解放された俺達は、屋敷の居間で茶を啜っていた。

 

「ひとまず、和真の処分は保留。となると、俺達が今すべきは証拠集めと、領主の屋敷の弁償代の確保か」

「そうだね。てかダクネス、あのアルダープっておっさんと知り合いだったの?」

「……まあな。私がまだ子供の頃から、私に対して偏執的な執着を見せる男だ。妻を亡くしてからは、何度も婚姻を申し込まれたものだ。私の父が、歳の差を理由に毎回断っているのだが」

 

 あのおっさんこそ真っ先に裁判にかけるべきではないだろうか。俺達はそう考えた。

 

「大丈夫ですか?ダクネス。そんな相手に何でも言うことを聞くと言ってしまって」

「あのおじさん、ダクネスを見る目が危なかったわね。凄いことを要求されちゃうんじゃないかしら」

「……す、凄い、事……」

 

 俺達の心配を返してほしい。




次回、ぼっち娘現る
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