この兄弟に祝福あれ   作:大豆万歳

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今年も残すところ後1月程。(できれば)年内に爆裂紅魔を終わらせたい。


第21話

 翌朝。軽めの朝食を済ませ、街道を再び歩く。周りは遮蔽物が無い平原。俺達がいる辺りから、モンスターの強さが上昇する。具体的には、一撃熊にグリフォン、ファイアードレイクと言った、強力なモンスターがうろついている。そして、最も注意すべきモンスターが……。

 

「しかし、オークの雄がいないというのは本当だったのだな。私はてっきり、クリスが冗談で言ったものだと思っていたが。はぁ……いないのかぁ……」

「クリスが冗談でそんなことを言うわけがないだろ」

 

 昨日と変わり、後方を歩くダクネスがとてもがっかりしたようなトーンで話す。

 ファンタジー系の創作物において、女性の天敵として扱われることの多いオークの雄はとっくの昔に絶滅した。生まれたとしても、成人する前にオークの雌達に弄ばれて死ぬ。更に、オークは人型の生物なら殆どの種と交配可能なため、今のオークの雌は各種族の長所を兼ね備えた、オークとは言えないキメラになっている。そのため、オークに見つからない様に細心の注意を払わなければならない。最初で最期の相手がモンスターなんて、絶対に嫌だ。

 

「……兄さん、あれ」

 

 と、和真が何かを見つけたようだ。指さす方向を見ると、ポツンと人影が立っていた。

 

「十中八九オークだな。仮に人だったとしても、こんな危ない所に1人でいるのは不自然だ」

 

 俺達は人影を見なかったことにして、そのまま進み始めた。次の瞬間。

 

「おっと」

 

 一陣の風が吹いた。そして、人影がこっちに向かって走り出した。まさか、匂いでばれたか?

 

「……なあ、これって逃げないといけないパターン?」

「いえ、ここは私とゆんゆんに任せてください」

 

 と、めぐみんとゆんゆんが俺と和真を守るように立ちはだかる。そして、人影は段々近づいていきて……。

 

「我が名はめぐみん!アークウィザードにして、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者!」

「我が名はゆんゆん!アークウィザードにして、やがては紅魔族の長となる者!」

 

 姿がはっきりわかったところで、めぐみんとゆんゆんが紅魔族流の名乗りをあげる。そして、杖とダガーを突きつける。トムとジェリーみたいな止まり方をしたオークは、とても悔しそうにぐぬぬと歯ぎしりする。

 

「貴女、紅魔の里の近くの集落に住んでいるオークですね?私達の仲間に手を出すというのなら、相応の覚悟を持っていただきましょうか!」

 

そう言われると、オークは畜生と地団駄を踏み、回れ右をして立ち去って行った。オークの姿が見えなくなった頃、俺達は急いで平原地帯を抜けた。

 

 

 

 

「そういえばゆんゆん、里にいた頃のめぐみんってどんな感じだったんだ?」

 

 現在、森で小休止していた俺達は、2人が里で暮らしていた頃の話を聞いていた。

 

「それはもう凄かったんですよ。魔法学も、魔力量も常に1番の成績で、里の人達もこぞって天才だって期待していたんです。それが今じゃ、爆裂魔法しか使えないポンコツ魔法使いに……」

「おっと、ポンコツ魔法使い呼ばわりするのはよしてもらおうか。我が知識と力、そして生涯のほぼ全てを捧げている爆裂魔法の悪口は止めてもらおう」

 

 めぐみんの言葉に、ゆんゆんは立ち止まって真っ向から吠える。

 

「威力が高すぎるからダンジョンで使えば崩落を招く!射程は長いけど、近づかれれば自分も味方も巻き込む!よほどの高レベルな魔法使いでも1度使えば2度目は使えない、非効率的な魔力消費量!唯一の長所である威力だって、どう考えてもオーバーキルじゃない!爆裂魔法に生涯を捧げるなんて、一生を棒に振るようなものじゃない!」

 

 何でも、めぐみんは爆裂魔法しか使えないことを里の人達に隠しているらしい。それがバレないように、度々ゆんゆんが釘を刺していたのだが、ゆんゆんも思うところがあったようだ。

 

「……ゆんゆん。貴女は今、言ってはいけないことを言いました。私の名前を馬鹿にするよりも、言ってはいけないことを言いましたね!」

「な、なによ、やる気?勝負なら受けて立つわよ。ここじゃ得意の爆裂魔法なんて使えないでしょう?」

 

 ゆんゆんは、警戒しながら構える。そんなゆんゆんを、めぐみんは一瞥すると……。

 

「カズマ、ハルキ。ゆんゆんの恥ずかしい秘密を教えてあげましょう。我々紅魔族には、生まれた時から体のどこかに刺青が入っているのですよ。個人によって場所は異なるのですが、ゆんゆんの場合は何と……」

「ちょっとめぐみん!何でそれをカズマさんとハルキさんに言うの!」

 

 半泣きのゆんゆんが掴みかかるが、めぐみんはそれをひらりと躱す。

 

「アクア、支援魔法をかけてください!ここで前回のリベンジです!」

「や、やってやろうじゃないの!」

 

 と、その時。

 喧嘩する2人の大声に引き寄せられたのか。

 

「──おい、こっちだ!やっぱりこっちから、人間の声が聞こえてきやがる!」

 

 耳障りな甲高い声が、森の奥から聞こえてきた!

 

「喧嘩は後にして、2人とも伏せて静かにしろ!どうやら敵に聞きつけられたようだぞ!」

 

 俺が屈みながら言うと、2人ともお互いを無言で睨み合いながら渋々伏せる。そして茂みに隠れ、息を潜める。

 

「おかしいな、確かにこの辺りから聞こえたんだが……」

 

 それは1匹の、鎧を着たモンスター。

 額に1本の角が生え、耳は尖り、赤黒い肌をした、細身の鬼。

 その鬼が、キョロキョロと辺りを見回して俺達を探す。

 

「っ!?」

 

 一瞬視線が逸れた隙を突き、手を伸ばして鬼の鎧を掴む。そして茂みに引きずり込み、首をへし折る。鬼の得物である短めの槍を和真に差し出すが、両手を前に出して首を横に振られたので、俺が頂くことにした。

 少しすると、似たような姿の連中が現れた。手に持つ得物はバラバラだが、それぞれが武装した魔物の兵士。数は20を超えるだろう。

と、和真がゆんゆんに目をやり、兵士に親指を向けてGOサインを出す。

 

「『ライト・オブ・セイバー』!」

 

 立ち上がり、叫ぶと同時に手刀を横一文字に振るう。

 すると、手刀の後を追うように光の筋が走り抜け、兵士を真っ二つにした。

 

「かっ、囲め囲」

「『投擲』」

「がっ!?」

 

 仲間の崩れ落ちる姿を見て激昂する鬼目掛けて、先程頂いた槍を投げつける。

 ダクネスがゆんゆんと俺を守るように立ち塞がり、アクアが俺達に支援魔法をかける中。

 

「ゆんゆん、先程はよくも爆裂魔法を貶しましたね!貴女が貶した魔法の破壊力、その目に焼き付けさせてあげます!」

「おいめぐみん!ちょっと待」

「『エクスプロージョン』!」

 

 和真の制止を無視して、めぐみんの爆裂魔法が炸裂する。

 辺りの木々が根こそぎ吹き飛び、射程圏内にいた兵士を消し飛ばす。

 粉塵が晴れた後には、巨大なクレーター以外残されていなかった。

 

「見ましたか!我が究極の爆裂魔法を!どうですかカズマ、今の爆裂魔法は何点ですか?」

「マイナス90点だ!お前馬鹿か!?何この状況で爆裂魔法使ってんだよ!」

 

 魔力を使い果たして地面に転がるめぐみんに、和真が魔力を補充しながら指示を飛ばす。

 

「ダクネスは俺とめぐみんの壁になってくれ!アクアは支援と回復!ゆんゆんと兄さんは敵の殲滅!但し、できるだけ魔力は温存して!」

 

 和真の指示を受け、俺とめぐみんは敵の殲滅にかかる。

 

「死」

「ふっ!」

 

 斧が振り下ろされる前に、ナイフで刺し貫く。そして斧を奪い、木の陰からゆんゆんを狙った兵士の首を刎ねる。

 

「『エナジーイグニッション』!」

 

 ゆんゆんの正面、直線上にいた兵士が丸焼きになる。

 

「ちぃっ!」

 

 俺が1歩後ろに下がると、横から振り下ろされた槌が空を切る。悔しそうに顔を歪めた兵士の頭に、メイスを振り下ろして叩き潰す。

 

「ふんっ!」

 

 兵士の攻撃をゆんゆんは回避し、鎧を掴んで投げ飛ばす。普通ならできないが、アクアの支援魔法のおかげで筋力も増大したようだ。

 

「ぐぬぅ!?」

「ぐえっ!?」

「うげっ!?」

「はぁっ!」

 

 固まっていた仲間達目掛けて投げ飛ばされた兵士を、俺が両手剣で纏めて叩き斬る。

 

「くそっ!」

 

 数も減り、敵わないと判断した兵士は武器を捨てて逃げようとする。

 

「『狙撃』」

「がはっ!?」

 

 それを逃がすわけもなく、狙撃でこめかみを射貫く。

 

「『フリーズガスト』!」

 

 すかさず、ゆんゆんが残りの兵士を氷漬けにする。

 

「めぐみんの様子はどうだ?」

「自力で歩ける程度まで回復したよ」

 

 和真の方を向くと、めぐみんが杖を振ってアピールしてきた。

 これで一安心か、そう思って皆が安堵し、紅魔の里があるという方向を向くと。

 

『……は?』

 

 必死の形相で、こっちに向かってくる先程の倍以上の兵士達。そいつらはその場に武器を投げ捨て、ひたすらに走っていた。どことなく泣いているようにも見える。

 何事かと構えた、その時。

 突如として、何もない空間から黒ずくめの4人組が現れた。

 2人はライダースーツのようなツナギに、指ぬきグローブをはめていた。残る2人は、黒のローブを身に纏っていた。装備の統一感はないが、1つだけ共通点があった。

 それは、彼らが黒い髪に紅い瞳をしていたこと。つまり、めぐみんやゆんゆんと同じ紅魔族だ。

 彼らがいきなり姿を現したのは、魔法で姿を隠していたからなのだろう。魔王軍の兵士達は、彼らから命がけで逃げている最中だったからか。

 その証拠に、魔王軍の兵士達は立ち止まり、俺達と彼らを戸惑ったように交互に見る。そして、俺達の方が与しやすいと踏んだのだろう。だが、立ち止まったのがまずかった。

 

「肉片も残らず消えるがいい、我が心の深淵より生まれる、闇の炎によって!」

「もうダメだ、我慢ができない!この俺の破壊衝動を鎮めるための贄となれぇぇーっ!」

「さあ、永久に眠るがいい……我が氷の腕に抱かれて……!」

「お逝きなさい。あなた達の事は忘れはしないわ。そう、永遠に刻まれるの……。この私の魂の記憶の中に……!」

 

 それはおそらく魔法の詠唱……ではなく、それぞれの決め台詞なのだろう。

 彼らはあっと言う間に魔王軍の兵士達に追いつくと、全員が同じ魔法の詠唱を始めた。

 

「「「「『ライト・オブ・セイバー』ーッ!」」」」

 

 次々と叫ぶと同時に、手刀を振るう。

 そして、辺りには魔王軍の兵士の残骸が散らばっていた。

 闇の炎だとか、氷の腕だとかは一体なんだったのだろうか。

 ……と、集団の1人が、俺達に視線を向けた。

 

「遠く轟く爆発音に、魔王軍遊撃部隊員と共に駆けつけてみれば……。めぐみんとゆんゆんじゃないか。なんでこんなところにいるんだい?」

「靴屋の倅のぶっころりーじゃないですか。お久しぶりです。里のピンチと聞いて、駆けつけてきたのですよ」

 

 うんうんとゆんゆんが頷くと、「里のピンチ?」と首を傾げる。

 おっと、認識の齟齬があるようだな。

 

「ところでめぐみん、ゆんゆん、こちらの人達は君達の冒険仲間かい?」

「はい!」

 

 ゆんゆんは満面の笑みで力強く返答し。めぐみんは少しはにかんだ後、自慢の仲間だと胸を張る。

 それを見て、ぶっころりーがとても真剣な表情になって、マントを翻し。

 

「我が名はぶっころりー!紅魔族随一の靴屋の倅。アークウィザードにして、上級魔法を操る者……!」

 

 突然、紅魔族流の挨拶をするぶっころりー。俺達は既にめぐみんとゆんゆんで慣れているので。

 

「これはどうもご丁寧に。我が名は佐藤和真と申します。アクセルの街で数多のスキルを取得し、魔王の幹部と渡り合った者です」

「我が名は佐藤陽樹と申します。アクセルの街で数多の武具を生み出し、数多のモンスターを屠った者です」

 

 俺と和真が相手に合わせた挨拶をすると、彼らは素晴らしいと賞賛の声をあげる。普通なら微妙な反応をされるものだが、俺達のように返してきたのは初めてで嬉しいらしい。

 

「我が名はアクア!崇められし存在にして、やがて魔王を滅ぼす者!しかしてその正体は水の女神!」

 

 突然、誰かに求められたわけでもないのにそんな自己紹介を始めたアクア。

 早速紅魔族の方々に影響されたらしい。

 

「「「「そうなんだ、凄いですね!」」」」

「ちょっとハルキ!私の素晴らしさを今ここで広めなさい!アクシズ教徒でしょ?」

 

 女神として崇めて欲しかった気持ちがあったのか、思っていた反応と違うと涙目のアクアが俺にフォローを求める。

 アクアから視線を外した紅魔族の人達は、期待の眼差しをダクネスに向けた。

 それを受けたダクネスに対し、恥ずかしいなら無理をしなくてもいいとゆんゆんが止める。

 

「2人とも、良い仲間に巡り合えたようだね。ここからだと里まではまだ距離がある。さあ、案内するよ、外の人。テレポートで送ってあげよう!

 

 ぶっころりーはそう言うと、高らかにテレポートの詠唱を行った。

 いきなりのテレポートに視界が歪み、立ち眩みとともに辺りの景色が一変する。

そこは、のどかな集落。

 ピンチとは程遠い、のほほんとした里の様子に呆然としている俺達に、ぶっころりーが笑顔を見せた。

 

「紅魔の里へようこそ、外の人達。めぐみんとゆんゆんも、よく帰ってきたね!!」




用意したちょっと凄いの、他の作品と被ったりしないか不安だ。出るのはだいぶ先になりますけど
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