この兄弟に祝福あれ   作:大豆万歳

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サンタコスのダクネス、良い……
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第22話

「それじゃあ、俺達は哨戒任務に戻るから」

 

 ぶっころりーはそう言うと、他の3人と一緒に俺達から離れる。そして何かを詠唱すると、忽然と姿を消した。

 

「テレポートを使ったのかな?」

「いや、それはないと思うぞ。テレポートがどれだけ魔力を消費するか知らんけど、そう連発できるようなもんじゃないだろ。まして攻撃魔法も使えばなおさら」

 

 なら何処に行ったのだろう、俺と和真が話し合っていると、めぐみんがこっそり耳打ちしてきた。

 

「あれは、光を屈折させる魔法で姿を見えなくしたんです。ハルキの言う通り、テレポートを連発したら魔力が直ぐに無くなりますからね。……ちなみに、あの魔法は術者の指定した人や物の数メートルに結界を張るタイプの魔法ですので、近づけば見えますよ」

 

 俺と和真を壁代わりにした影響で、相手には見えなかったのだろう。あの辺ですとめぐみんが指さす方を見ると、何かが後ずさる音が聞こえた。

 ここは見えないふりをして、さっさと立ち去ろう。ということで、俺達はめぐみんとゆんゆんを先頭に、里の中に足を踏み入れた。

 まずはゆんゆんのご両親に会い、手紙の内容について聞こう。

 

 

 

 

「初めまして。いつもうちの娘がお世話になっております」

「いえいえこちらこそ。ああ、これつまらないものですが」

 

 里の中央に位置する大きな家。

 族長宅の応接間で、パーティーのリーダーとして、和真がゆんゆんの親父さんにアルカンレティアで買ったお土産を渡していた。親父さんの隣には、ゆんゆんのお母さんが座ってニコニコしていた。

 

「それで、お父さん。あの手紙って」

「ああ。あれはただの近況報告の手紙だよ。手紙を書いてるうちに乗ってしまってな。紅魔族の血が、どうしても普通の手紙を書かせてくれなくて……」

 

 父親の返答を聞き、ゆんゆんがぽかんと口を開ける。

 

「じゃ、じゃあ、『この手紙が届く頃には、きっと私はこの世にいないだろう』っていうのは……」

「紅魔族の時候の挨拶だよ」

「……魔王軍の軍事基地を破壊することもできない状況だって……」

「ああ、あれか。連中は、随分立派な基地を作ってなあ。破壊すべきか、新しい観光名所に加えるべきかで意見が割れているんだ。いやあ、困った困った」

「なあゆんゆん。お前の親父さん、1発ぶん殴っていいか?」

「私にも1発やらせてください」

「ゆんゆん!?」

「まあまあ、2人とも落ち着いてちょうだい。気持ちはわかるけれど、ね?」

 

 愕然とする族長の奥さんが、和真とゆんゆんに落ち着くように言う。

 ゆんゆんも母親に諭されて落ち着いたのか、はぁ、と大きなため息をついた。そして和真も、渋々ながら了承した。

 

「そういえば。ゆんゆん、以前聞いた仲間の『サトウハルキ』という男性は、どっちかな?」

 

 と、族長がゆんゆんに問う。そして仲間の視線が俺に集中ししたので、俺は静かに手を挙げる。

 

「成程、君がか。ところで、君はうちの娘とどういう関係なのかな?」

「どういう関係もなにも、ただの友人で仲間ですよ」

 

 そうか、と族長は頷く。

 

「……それはそれとして、うちの娘をどう思う?」

「どうって、ゆんゆんのような可愛い妹が欲しいなとは思います」

 

 次の瞬間、族長が瞳を紅く輝かせて吠える。

 

「うちの娘に女としての魅力がないと申すか!そこに直れ!成敗してくれる!」

「あなた?」

 

 立ち上がろうとした族長に、奥さんのヘッドロックが炸裂する。恐ろしい速さで繰り出された技に唖然とする俺達に、ニコニコ笑顔を向けながら奥さんは続ける。しかし、腕に込める力は決して緩めずに。

 

「ごめんなさいね。皆さんもご存じの通り、うちの娘は人見知りを拗らせたボッチ気質でしょう?その娘の近況報告の手紙に異性で、しかも年の離れた仲間が出来たって知ってからこんな調子なの。娘が騙されてるんじゃないか、とか。もしかしたら手籠めにされてるんじゃないか、とか」

「お母さん!それよりも早く離してあげて!お父さんの顔、青くなってるんだけど!?」

「……きゅう」

 

 ゆんゆんに言われて親父さんの様子を見ると、白目を剝いて気絶していた。奥さんは親父さんの頭を自分の太股の上に乗せ、優しく頭を撫でながら俺に言う。

 

「ハルキさん。念の為に聞きますけど、うちの娘との関係はあくまで友人で仲間、ということでいいんですね?親としては、娘に女としての魅力を感じないというのは少々複雑な思いなのだけど」

「そうですね……まあ、俺は男兄弟の長男で、従姉妹も全員年上なんです。それで、偶に顔を合わせると姉という強権を振りかざしてあれをやれこれをやれと俺をこき使うか、姉という強権を振りかざして構えと命じてくるかされてきたもので。だからなのか、妹が欲しいなと常々思っていたんです。具体的に言うと、ゆんゆんのような」

 

 俺がそう答えると、ゆんゆんが袖を軽く引いてきた。どうした、とゆんゆんの方に顔を向けると。

 

「えっと……ハルキ、お兄ちゃん?」

 

 恥ずかしそうにもじもじしながら、上目遣いのゆんゆんを見て俺は意識を失った。

 

 

 

 

「はっ!?」

 

 ここは何処!?何があった!?

 

「ここは死後の世界です」

 

 椅子以外何もない空間をキョロキョロ見渡す俺の後ろから、女性の声が響いた。

 

「クリス、お前ここで何やってんの?」

 

 声の主を見て、俺は思わず言ってしまった。

 目の前で笑顔で石像の如く固まっている女性は、間違いなく俺とダクネスの共通の知り合いのクリス……じゃないな、頬に傷跡が無い。

 

「私はクリスではありません。女神エリスです」

「ああ、貴女が!いやこれは失礼しました。外見が知人と瓜二つだったもので、つい」

 

 椅子に座って何度も頭を下げると、いえいえと目の前の女性改め、女神エリスは微笑んだ。

 

「気にしなくていいですよ。それに、今度そのクリスという方にお会いした時にでも、私に似ていたと言ってあげてください。とても喜ぶと思いますよ」

「わかりました……ん?」

 

 今なんて言った。今度会った時にでも?

 

「いや、ここって死後の世界だから今度会うってできないのでは?」

「はい。通常ならそうなんですけれど、そろそろアクア先輩が……」

 

 苦笑いして返答に困ったエリス様を代弁するように、声が響いた。

 

「もしもしエリスー?今ハルキに『リザレクション』をかけたから、さっさと門を開けてー?弟のカズマに特例で認めたんだから、兄のハルキも特例ってことで認めてちょうだーい!」

「……というわけで。ハルキさん、その門を通れば現世に戻れます」

 

 困ったように頬を掻きながら、エリス様は言う。何でも、和真を蘇生させた時は自分の秘密を暴露されたらしい。そして、特例を認めた代償に何らかのペナルティを課せられたそうな。

 

「あー……それでは、お騒がせしました。お仕事頑張ってください」

「それでは」

 

 俺は門を潜り、和真達のいる現世へと帰っていった。

 しかし、驚くほどそっくりだったな。エリス様とクリス。双子だって言われても信じるくらいに。

 

「………………ふう。何とか隠し通せたよ」

 

 

 

 

 場所は移り、復活した兄さんを連れて、俺達はめぐみんの家に来ていた。

 ちなみに、ゆんゆんは例の小説を送ってきた友人あるえとちょっとお話してくると言っていた。

 

「それで、君はうちの娘とどういう関係なんだね?」

 

 目の前の男性ひょいざぶろーさんが、キッと表情を引き締めて問う。付け加えるなら、この質問も3回目だ。そして、俺のフォローをする人は誰もいない。試しに兄さんにフォローを求めてみたが、冷たく突き放された。日頃の仕返しか。他の皆は、アクアの宴会芸に夢中だ。

 

「何度も言いますが、ただの友人で仲間です」

 

 それを聞いたひょいざぶろーさんは、もう我慢ならんとばかりに、アクアが芸を披露している卓袱台の前に移動し──

 

「そぉい!」

「たわば!?」

 

 卓袱台に手をかけようとしたところで奥さんの、ゆいゆいさんのスープレックスが唸り声を挙げた。成程、これが母は強しか。と、俺は遠い眼で現実逃避をした。

 

「失礼、取り乱した。いや、君が白々しくもただの友人だなどと言うものだからね」

 

 事実以外の何でもないのですが。頭に大きなたんこぶができたひょいざぶろーさんが、奥さんの淹れた茶を啜りながら言う。

 

「……ところで。めぐみん、今の我が家の様子は、どうだろうか?」

「それはこめっこに聞いて判断します。こめっこ、ここ最近はちゃんと腹に溜まる物を食べていますか?」

 

 めぐみんの問いに、こめっこは力強く頷いた。それを見て、めぐみんがまあ合格でしょうと言った。

 

「すいません。話が見えてこないのですが」

「ああ。実は、娘から仕送りと共に届いた近況報告の手紙に……あった、これだ」

 

 ひょいざぶろーさんは戸棚から手紙を取り出すと、俺に差し出した。

 内容は要約すると、親子の縁を切られたくなければ売れる魔道具を作って妹に腹一杯飯を食わせろという脅迫状だった。しかも、親子の縁を切ったら妹を連れてアクセルの街に移住し、同じパーティーのバカップル、つまり兄さんとダクネスのとこに養子入りするとも書いてあった。

 

「あの、こういった脅迫状は他にも?」

「いや、それが最初で最後だ。後は普通に身の回りであった出来事が簡単に書いてあったな。機動要塞デストロイヤーや、魔王軍の幹部を討伐したとか。君達のことがたくさん書いてあったよ」

 

 後で詳しい内容を聞いてみるか。今聞いたら、めぐみんが恥ずかしいからと全力で阻止しにくる気がする。

 

「そういえば。君達の借金だが、あとどれ程残っているのかな?私達としても、できる限り娘の仲間の手助けをしたいところだが……」

 

 ひょいざぶろーさんが、少し申し訳なさそうに言ってきた。

 

「ああ、いえ。とっくに借金は完済したんですよ。それに、少しすれば結構な額の大金が入ってくる予定でして。なので、大丈夫です」

 

 それは良かったと、2人は胸を撫でおろした。

 

 

 

 

 夜。

 

「お断りします!」

「右に同じです!」

 

 アクア達は俺達より風呂に先に入り、最後に俺と和真が入ることになった。そして居間に向かっている途中で、めぐみんとダクネスが誰かと言い争っているのが聞こえた。

 何事だと覗いてみると、ひょいざぶろーさんは居間の真ん中で高い鼾をかいて眠り、こめっこは父親の肩を枕にして寝ていた。

 俺達が風呂に行く前にはウトウトしていたこめっこはともかく、バッチリ起きていたひょいざぶろーさんが寝ているのはおかしい。アクアの姿が見えないのは、トイレにでも行っているのだろうか。

 

「そう言われても、今まで1つ屋根の下で暮らしてきて、間違いは起きなかったのでしょう?なら、ちっとも問題なんて無いわ。4人とも結婚できる年で、分別ある大人。仮に何かあったとしても、それはお互いの合意の上という事でしょう?なら、親としても何も言わないわ」

 

 どうやら、部屋割りの件で揉めているらしい。

 特に、と奥さんは続ける。

 

「ダクネスさんは、ハルキさんと男女の関係にあるのでしょう?なら、一緒の部屋で寝るのは当然です。その後2人がナニをしても、私達は知らぬ存ぜぬを貫きますので、ご安心ください」

「それについては全力で同意します。ですが、カズマと同じ部屋になるのは断固反対します!」

「待ってください!私とハルキは仲間であって男女の仲というわけではありません!」

「……成程成程。わかりました。では──」

 

 というか、これだけ大声で騒いでいるのにひょいざぶろーさんが目を覚まさない。和真もおかしいと思ったのか、奥さんに疑いの目を向ける。

 

「『スリープ』」

 

 奥さんが魔法を唱え、めぐみんとダクネスが崩れ落ちるようにその場に倒れた。やっぱり、ひょいざぶろーさんは……。

 と、居間の入り口から様子を窺っていた俺達に奥さんが気づき、満面の笑みで言った。

 

「あらあら、カズマさんにハルキさん。お風呂上がったんですか?丁度良かった。ダクネスさんとめぐみんが寝てしまいましたので、部屋まで運ぶのを手伝って頂けませんか?」

「「かしこまりました」」

 

 俺と和真はその場で跪き、深々と頭を下げた。

 この人に逆らってはいけない。俺と和真は、それを本能で理解した。そして、少し遅れてトイレから来たアクアが、ゆいゆいさんの魔法を受けて崩れ落ちたのは言うまでもない。

 

 

 

 

「『ゆんゆんのような可愛い妹が欲しい』か」

 

 実家のベッドで仰向けになり、天井を眺めながら昼にハルキさんが言ったことを口にする。

 上半身を起こして、自分の体を見てみる。全体にスラリとした体型。あるえ程じゃないけど、大きい胸。顔については、それなりに整っている自信が少しある。

 

「ハルキさんと私の年の差が小さかったら、女として見てもらえたのかな……?」

 

 それは違う。ハルキさんにはダクネスさんがいるんだから、そもそもこの考えが浮かぶことが間違っている。

 絹糸の様な手触りの良い金髪。背は高く、鍛錬によって引き締まっているのに出るところは出ている体。そして、整った顔。特殊な性癖に目を瞑れば、ダクネスさんはかなりの美女だ。同性の私が羨むくらいには。

 そんなダクネスさんとハルキさんは、所謂男女の関係にあると噂されている。実際、プライベートでも2人は一緒に行動していることが多いし、距離感もかなり近い。

 何時の頃からは覚えていない。2人が一緒に行動しているのを見ると、私は凄くモヤモヤした気持ちになっていた。クエストの時はそんな気持ちにならないのに、それ以外の時に2人が一緒にいると、苛立ちのような嫉妬のような感情が沸き上がってくる。

 

「……もう寝よう」

 

 ちょむすけちゃんを数えながら寝て、忘れよう。

 モヤモヤする理由を自覚したら、今のパーティーの人間関係に亀裂が入る気がする。それだけは嫌だ。大事な友人達との関係を、私のせいで壊したくない




初めての恋愛感情に戸惑う少女、大好きです。
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