『……ゑ?』
あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!
シルビアが倒れたと思ったら、奴は何事もなかったように復活した!外見もかなり変わっている。具体的に言うと、スライムとデュラハンの様な……まさか!
「シルビア、お前の外見はベルディアとハンスの……」
「そうよ!川の向こうから手を振ってきたのが見えたわ。でも、私はまだ死にたくない」
アタシは魔王の命令を果たしていないと。シルビアがどれだけ魔王に忠誠を誓っているのか、その目と声が物語っていた。
「さぁ、第3ラウンドといきましょうか!」
かかってきなさい!と大声をあげるシルビアだが、はっきりいって戦いたくない。
レールガンは破損し、もう使えない。
めぐみんも爆裂魔法を撃ったので、2回目は使えない。
他の紅魔族の方々の魔法は言うまでもないだろう。
そもそも、あんな怪獣みたいな大きさになったシルビアに通じる攻撃なんて……怪獣?そうだ!
「めいつかさん!めいつかさん!」
「呼んだかしら?」
森の方に声をかけると、めいつかさんが樹の陰から顔を出した。良かった、まだここにいた!俺は兄さんにも声をかけ、森の中に入る。
「めいつかさん、かつての冒険者仲間の遺品──ルーブジャイロは持ってますか?」
「っ!?」
「ルーブジャイロ!?」
俺の言葉に兄さんが驚愕する。そしてめいつかさんは、ローブの中をゴソゴソして、両側に取っ手の付いた円盤を取り出す。やっぱり、この造形は紛れもなくルーブジャイロだ。
「それを貸してください!今のシルビアを倒すには、それしかないんです!仲間の遺品だから簡単に貸すことができな」
「いいわよ」
「いのは百も承知で、良いんですか!?」
めいつかさんは、驚くほどすんなりとルーブジャイロを2つとも差し出した。
「でも、これは私の魔力を大量に注ぎ込んで石化させてあるの。これを使いたいと言うのなら、まずは石化を解いてみせなさい」
なるほど、すんなりと差し出してきたのは、誰にも使うことはできないという自信があるからか。
この状況でどうしたものかと悩んでいたが、デストロイヤーの結界を破ったアクアならできると判断した俺はルーブジャイロを受け取り、兄さんに片方を渡す。
「「「っ!?」」」
その時、不思議な事が起こった。俺と兄さんがルーブジャイロを手に取った瞬間、ルーブジャイロ全体に罅が入り、破砕音と共に石化が解けた。
「嘘!?クリスタルの入ったケースは、鞄の中にしっかりと入れて……鞄が軽くなってる!?」
続いて、ルーブクリスタルの収められたケースが空間に出現する。何故ルーブクリスタルが収められているのが分かったかって?ひとりでに開いたからだよ!ケースをよくみれば、オーブリングNEOが外側に埋め込まれていた。さてはアクアがねじ込んだな?
「……約束通り、貴方達に貸すわ。但し!ちゃんとアイツを倒して、生きて帰ってきなさい」
1度仲間を失っためいつかさんの言葉には、有無を言わせない重みがあった。
「「はい!」」
俺と兄さんはジャイロを手に、シルビアのいる場所に戻る。そこには、めぐみんを背負ったダクネス、ゆんゆん、アクアが残っていた。シルビアは俺と兄さんの姿を捉えると、嬉しそうに口元を歪める。
「サトウカズマ!貴方なら来ると思っていたわ!」
周りを見れば、他の紅魔族の姿はなかった。皆、魔神の丘に逃げたんだろうか。
「それで?次はどうやってアタシを殺すつもりなのかしら?」
最早俺達に打つ手はないと思っているのか、シルビアは余裕の笑みを浮かべて挑発する。
上等だ。その余裕、今すぐ無くしてやる。
「兄さん!」
「ああ!」
俺と兄さんは原典通り、拳を2度打ち合ってハイタッチし、ジャイロを突き出して叫ぶ!
「「オレ色に染め上げろ!ルーブ!!」」
インナースペース内で、それぞれが使うクリスタルを選択する。
「「セレクト、クリスタル!」」
原典通り、3分戦えるとは限らない。
『ウルトラマンタロウ!』『ウルトラマンギンガ!』
2分か、1分か、もしかしたら50秒かもしれない。
「纏うは火!紅蓮の炎!」「纏うは水!紺碧の海!」
だから、速攻で高火力を叩き込む!
『ウルトラマンロッソ、フレイム!』『ウルトラマンブル、アクア!』
「「先輩の力、お借りします!」」
2人が何かをシルビアに向かって突き出して叫んだと思うと、放たれた眩い光に思わず目を瞑りました。そして、光が晴れたので目を開いてみれば、私達は魔神の丘に立っているではありませんか。
あの光はテレポートによるものではありませんね。魔力の流れをそもそも感じなかったので。というか、先にここに来ていた皆は何に驚いているのでしょう。口をあんぐりと開け、目を私達の後ろに向けて硬直していますね。
私達もつられて、後ろを向いてみると──
『…………!?』
それは、数値にして50mほどの巨体。
銀を基調とした体に黒のラインが走り、片方は鎧と思われる部位が炎のように赤く、片方は海のような青色に染まっています。
赤い方は2本の角が、青い方からは1本の角が生えています。
2人は私達から背を向けると、構えをとり。
「シャッ!」
「ハァッ!」
シルビア目掛けて突撃しました。
シルビアはいきなりの光景に困惑していたようですが、2人を敵と認識したのでしょう。空気を吸い込んで大きく胸を膨らませ、炎を吐き出します。
「『アクアジェットブラスト』!」
立ち止まった青い方が掌から放った水流が炎を貫き、シルビアの顔面に直撃します。
目と鼻に入ったのか、シルビアは両手で顔を暫し覆います。そして、目を開けられるようになり、青い方を睨もうとします。
「なっ!?」
「『ゼットシウム光輪』!」
「くっ!」
シルビアが青い方に気を取られている隙に接近していた赤い方が、手にした赤い光輪を振るいます。シルビアは負けじとデュラハン部分の大剣を振るいます。……しかし。
「嘘!?」
「ハァッ!」
「があっ!?」
大根を輪切りにでもするように、赤い光輪は大剣を両断しました。そして腕を振り上げ、シルビアにダメージを与えました。
シルビアは使えなくなった大剣を捨てると、そのまま尾で薙ぎ払いました。
「『フレイムダーツ』!」
赤い方は光輪を消すと後方に大きく跳躍して回避、手から小型の火炎球を連続で投げつけます。シルビアは最小限の動きで、それらを全て回避してみせます。
「『ストビュームダイナマイト』!」
「ぐふぅ!?」
横合いから、青い方が全身に炎を纏いシルビアにタックルをかまして抱きつきます。
シルビアはそれを引き剥がそうと体を捩り、炎を吐き出しますが、時すでに遅し。
「ああああっ!」
大爆発が起こり、シルビアが吹き飛ばされます。
吹き飛ばされたシルビアは、今のでかなりの痛手を負ったのでしょう。何とか立ち上がり、肩を大きく動かして呼吸し、2人を睨みつけます。ですが、その瞳から闘志の炎は消えていません。
2人は並ぶように立ってシルビアと向き合うと、円を描くように両手を胸の前で構えます。すると、肘から先がそれぞれの鎧に応じた光を纏いました。赤い方が右手を、青い方が左手を挙げると、背後に更に巨大な巨人の幻影が現れました。
『……ッ!?』
私達が固唾を飲んで見守る中、巨人の幻影は2人と同じように両手で円を描きます。
それに合わせて、2人が挙げた手を中心に大きな光の輪が現れました。
シルビアは残り全ての魔力を注ぎ込んだのでしょう、巨大な魔力の塊を胸の前に生成しました。
「「オオオオオ……ッ!『トリプルオリジウム光線』!」」
3人はシルビアに手を向けながら力を溜めると、両腕を直角に構えました。そして巨大な光の輪から、巨大な光線がシルビアに向かって放たれました!
「ハアアアアアッ!」
シルビアは両腕を前に突き出し、魔力の塊を撃ち出します。
ぶつかる力と力。その余波が、私達のいる場所まで空気を震わせて伝わってきます。
「「オオオオオッ!」」
「ハアアアアッ!」
お互いの持つ全てをぶつけるように、気迫の籠った声が響きます。
しかし、2人の力が勝ったのでしょう。シルビアの攻撃が押し返されていきます。……そして。
「ぐあああああああっ!?」
光線が、シルビアの体に突き刺さります。それはシルビアの体を貫かず、吸い込まれていきます。いえ、流し込まれていると言うべきでしょう。光線がシルビアの体に吸い込まれるたびに、体に罅が入っていきます。
「魔王様ああああ!申し訳ありませえええん!」
シルビアは最期に、魔王への謝罪の言葉を叫ぶと爆発四散しました。
そして、巨人の幻影は溶け込むように消滅し、2人の巨人も光となって縮小してしまいました。
「姉ちゃん姉ちゃん!」
「はい、貴女の姉ちゃんです」
周囲が呆然とする中、我が妹こめっこが話しかけてきました。目を合わせるようと屈んでみれば、目を万華鏡のように輝かせているではありませんか。
「さっきのデッカイ人達、名前は何て言うの?」
教えて教えてと、興奮した様子のこめっこが質問してきます。名前ですか。そういえば、あの眩い光の中で、それらしい言葉を聞いた気がします。確か……。
「角2本のほうがウルトラマンロッソ。角1本のほうがウルトラマンブルよ」
私の答えを代弁するように、めいつかさんが答えました。
「知っていたのですか?」
「ええ。あれは、私の嘗ての仲間の遺品が、本来の力を取り戻した姿なのだから」
めいつかさんは、複雑な表情で巨人がいた場所を見つめ続けます。……本来の力ということは、彼女の仲間は本来の力を引き出せなかったということでしょうか。ならば、今の表情に籠っているのは嫉妬と羨望か、2人への賞賛なのか、それとも両方か。バニルなら、1発で見抜いたでしょう。
「……なあ、あの巨人は、カズマとハルキが変身した姿。ということでいいのか?」
「だと、思います」
「んー……私のくもりなきまなこを凝らして見ると、2人とも巨人がいた場所で仰向けに倒れてるわね。間違いなく2人が変身したみたいよ」
アクアの発言を聞き、私達は急いで里に向かいます。今の状態で万が一にも敵襲を受ければ、2人がグロテスクなハンバーグになってしまいます!
「「あー……疲れた」」
お互い変身が解けて第一声がこれである。いや本当に疲れた。どの位疲れたかと言うと、魔力と体力をごっそり失ったんじゃないかってくらい疲れた。今の俺達の様子は、爆裂魔法を使った後のめぐみんと同じような状態だ。つまり、敵襲を受ければ間違いなく死ぬ。頼む、誰か早く来てくれ。
俺の祈りが届いたのか、鎧の金属音と慌ただしく走る足音が入り混じって俺の耳に届いた。
「大丈夫か!?ハルキ!」
「カズマ!しっかりしてください!」
俺の顔をダクネスが、和真の顔をめぐみんが覗き込む。脈を測るように首に指を当てたり、瞳孔を見るように顔をこれでもかと近づけてくる。近い近い!近いから!
「俺達はこの通り大丈夫だ。魔力と体力をごっそり消費したから、こうして喋るしかできないけど」
「というわけでだ、ちょっと肩貸してくれ」
そうして、俺はダクネスの肩を借りて、和真はめぐみんの肩を借りて立ち上がる。
俺と和真は集まった紅魔族の皆さんの中からめいつかさんを見つけ、歩き出す。
「約束通り、お返しします」
「ありがとうございました」
俺と和真はルーブジャイロを差し出し、続いてクリスタルの収められたケースを返却する。
めいつかさんはクリスタルが全てケースに収まっていることを確認すると、鞄にルーブジャイロとルーブクリスタルをしまう。
今の力は何だと紅魔族の皆さんが質問してくるが、俺達は疲れてそれどころではないので、めぐみんの家へ帰還した。
幸い、めぐみんの家は里の郊外に建っていたこともあり、そこまで損傷はしていなかった。
取り敢えず、仮眠をとって体力を回復させたら、里の復興のお手伝いをしよう。さっきの戦闘で、里に多少のダメージを与えてしまっただろうし。
俺は瞼を閉じて一呼吸すると、スッと眠りに落ちていった。
そして、翌朝。
体力がある程度回復した俺と和真が家を出てみると……。
「「……ナニコレ」」
崩れた瓦礫を素材にゴーレムが作り出され、建材を担いで建設現場まで歩いていく。
召喚されたらしい6本腕の悪魔は、大工道具をそれぞれの腕に持って紅魔族の皆さんと話し合いをしていて……。
「なあ、めぐみん」
「なんでしょう」
「里の復興ってどれくらいかかる?」
「そうですね……3日ほどでしょう」
俺と和真は眩暈を覚えた。まさか、あれだけの被害を受けておいて3日で復興する?規格外にもほどがあるだろ、紅魔族。
「ああ、良かった。ここにいたのか」
声のした方を振り向くと、めいつかさんが俺達に向かって歩いて来ている。何か用だろうか?
和真が用件を訊ねると、めいつかさんは四つ折りにされた紙とルーブジャイロ、ループクリスタルの収められたケースを差し出した。
「これを、貴方達兄弟に譲渡するわ」
受け取りなさい、めいつかさんは言った。
「えっと……でもそれは、貴女の仲間の遺品ですよね?俺達に譲っていいんですか?」
「使えない私が後生大事に持ってるよりも、貴方達に渡した方が世のためになりそうだもの」
それに、そう言ってめいつかさんは続ける。
「私も、過去を引きずってないで
過去を乗り越えるために、これを手放すと彼女は言った。
俺と和真は、彼女の言葉に従ってルーブジャイロを受け取る。クリスタルの収められたケースは、俺が持つことにした。まあ、俺の転生特典を考えればそうなるよな。そして、四つ折りの紙には、嘗ての仲間が使っていた頃の様子が挿絵付きで記されていた。後で隅々まで読もう。
「ただ、約束してちょうだい。これを悪用したり、濫用するのは絶対に許さない。もし破ったら……」
めいつかさんの指先に炎が灯る。
「私の魔法が文字通り火を噴いて、貴方達を骨まで焼き尽くすわよ」
「「わかりました」」
ブルアクアがスペリオン光線使ったり、ロッソフレイムがゼットシウム光線使えるなら、ブルアクアがストビュームダイナマイト使えてもいいんじゃないんですかね(適当)。
補足
・ルーブジャイロの前所有者:ランダムでウルトラマンの変身アイテムを得るという転生特典で、ルーブジャイロとクリスタルを引き当てた日本人男性。本人は一人っ子なのでオーブリングが欲しかったが、ランダムだからしょうがないの精神で妥協した