この兄弟に祝福あれ   作:大豆万歳

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爆裂紅魔、これにて完結。


第26話

 紅魔の里で過ごす、最後の夜。

 

「ハルキ。昨夜遅く、お前とカズマがウルトラマンなる巨人に変身したというのはどういうことだ」

 

 俺の隣で寝転がっているダクネスが、真剣な表情で訊ねてくる。

 言っておくが、ゆいゆいさんは何もしていない。どうせスリープで眠らされるくらいならと、ダクネスが自分から言い出した。こいつ、ちょっとやけっぱちになってる気がするのだが。同じ様な事を言っためぐみんに至っては、和真の袖を引っ張って部屋に連行していた。

 

「どうもこうも。めいつかさんの仲間の遺品をお借りして変身した。それだけだ」

「……わかった。では、次の質問だ。お前は、ニホンという国から来た異世界人ではないのか?例の魔道具。いや、ルーブジャイロとルーブクリスタルなる神器についてめいつかさんに訊ねたが、嘗て彼女の仲間が女神から直々に授かったらしいな。彼女の仲間についても、ある程度聞いてある」

 

 ダクネスは更に続ける。俺と和真の異世界(こちら)基準で変わった名前に、髪と目の色。これらは、歴史に名を残すような人間の特徴らしい。そして、そいつらは自分の故郷はニホンだと言っていた。大貴族であるダスティネス家の令嬢なだけあって、国の歴史には詳しいんだな。

 これは……素直に白状した方がいいな。下手な事を言って追及されると面倒くさい。

 

「……そうだ」

「そうか……では、お前は女神からどのような力を授かった?」

「物を収納したり取り出したりする程度の能力を授かった」

「収納して取り出す……確かに、お前は何処に持っていたのかわからない武器を構えていたり、偶に矢筒も無いのに弓矢を使うことがあったが。そういう能力だったのか」

 

 ダクネスは納得したように頷く。おい、腕枕の状態でされると凄く痛いから止めてくれ。

 

「それが、何か問題でもあるのか?」

「いや。その能力を持っていながら、なぜ初心者の街に留まり続けているのかと思ってな」

「仕方ないだろ。授かったのは能力だけで武器がなかったんだから」

「そうかもしれないが、レベルも上がって装備も充実した今なら他の街に拠点を移すものだろう?」

「鍛冶師と二足の草鞋だから中々動けないんだよ。工房の移転って金かかる上に面倒臭い」

「そうだった。お前はそういう人間だった」

 

 はぁ、と。ダクネスがため息をつく。

 

「このことは、お前の親父さんとか貴族の偉い人達に言うのか?」

「いいや。お前と、カズマの両方から了承を得てから話すさ」

 

 頑なに断り続ける和真の姿が目に浮かぶ。本質が怠惰なあいつのことだ。異世界人であることが発覚して、御剣達を引き合いに出して働かされるとか考えるだろう。

 

「わかった。それじゃあ、お休み」

「ああ。お休み」

 

 

 

 

「女神から力を授かった異世界人……か」

「Zzz……」

 

 布団で仰向けになり、寝息をたてているハルキの顔を見る。

 

「それなら、誰も私とハルキの関係に口出しできないだろう。だから、心置きなく……」

 

 いや、それは駄目だ。そもそも、私とハルキは仲間であり、友人だ。それ以上でも、それ以下でもなく。仮に私とハルキが男女の関係になれば、今私が抱えている問題に巻き込んでしまうことになる。

 ハルキ達が私の抱える問題を知れば、問題解決のために難易度の高いクエストを請けると言い出すだろう。大切な仲間のために、持っている力を全て使うだろう。

 

「あれは私の家の問題だ。大事な仲間達を、巻き込むことはできない」

 

 皆の助力は要らない、私自身の手で解決させる。仮にも大貴族の令嬢であるのなら、自分の手で解決できて当然だ。私は自分にそう言い聞かせ、明日に備えて目を閉じた。

 

 

 

 

 そして、紅魔の里から帰還して。アクセルの街にある屋敷で。

 

「あーあ。せっかくウルトラマンに変身できるんだから、あんた達が変身して空を飛べばタダで帰ってこられたのにな~」

「仕方ねえだろ。まだ使いこなせていないし、あれで帰ってきたら間違いなく大騒ぎになる」

 

 ソファーに身を投げ出すように座るアクアが、グチグチと文句を言う。

 テレポート屋を使うと和真が言った時、アクアは俺と和真が変身して、手に自分たちを乗せて飛べばタダだから嫌だとごねた。

 当然、俺達は反対した。濫用したら骨まで焼かれるし、何より使いこなせていない。それに、姿を見られたら大騒ぎになり、最悪の場合モンスターと間違われるかもしれない。めぐみんとダクネスも同意し、多数決でテレポート屋を使って帰ってきた。

 

「まあいいわ。今の私にはコレがあるもの」

 

 自慢げに、アクアが鞄から取り出したのは──。

 

「おいアクア!お前、それ何処から……」

「ああ、兄さんは知らなかったのか。例の兵器が保管されていた施設にあったんだよ」

 

 つまり、あの施設は先に来た日本人が関わっていたということか。詳しい事情は後で聞くとして、まずは。

 

「ごめんください。何方かいらっしゃいますか?」

 

 アクアが持ってきたソフトについて聞こうとしたタイミングで、誰かが玄関の扉をノックした。

 和真とアクアは、凄まじい速度で玄関の扉に近づき。

 

「おお、貴方がこの屋敷の……な、何をするか!止め……っ」

「ナイスよカズマ!ドレインタッチでギリギリまで生命力を吸い取って、意識を刈り取りなさい!そして、ここには誰も来なかったように見せかけるのよ!」

「疫病神死すべし慈悲はない。疫病神死すべし慈悲はない。疫病神……」

 

 来客にいきなり襲い掛かった和真とアクアを引き剥がし、取り押さえる。和真とアクアをめぐみんとゆんゆんに任せ、俺とダクネスが代わりに応対をすることになった。

 

「どうした、ハーゲン。この屋敷には、緊急の用事以外では顔を出さない様言ってあるだろう?ここに来れば、今のようにロクでもない目に遭うのではと心配して言ったのだが……」

 

 訪ねてきた男性は、ダクネスの実家の執事だった。お見合いの時に、会ったことがある。

 

「ええ。しかしお嬢様、私がここに参りましたのは、その緊急の用事でございます」

 

 後ろがバタバタと騒がしくなったので見てみれば、取り押さえられているカズマとアクアが耳を塞ごうと藻掻いていた。当然ながらめぐみんとゆんゆんはそれを許さず、手首をがっしりと掴んで話を聞かせようとする。

 

「どういうことだ。実家に何があった?」

 

 そのダクネスの問いに、執事は答えた。

 

「申し上げますお嬢様!このままでは、当家が貴族の地位を剥奪されてしまいます!」

 

 執事の言葉に、ダクネスは眉をひそめる。

 

「ふむ。確かにそれは緊急の用事だな」

「はい。ですがこうお考えください、お嬢様。当家が貴族の地位を失えば身分の違いという柵がなくなり、お嬢様はハルキ殿と堂々と婚約できお止めくださいお嬢様!この老体にそれはお止めください!」

 

 耳まで真っ赤にして執事の襟首を掴み、拳を振り上げるダクネスの足元に、1通の手紙が落ちた。

 

「……これは?」

「今朝、王家から送られてきた手紙でございます。それを見れば、当家の一大事という理由がご理解頂けるかと。そして事は、そちらの皆様方にも関係が……」

 

 言って、執事が俺達を順に見る。

 手紙を広げたダクネスが、みるみるうちに顔を青くさせ、膝から崩れ落ちる。

 手紙に書かれていた内容は、よほどの厄介事なのだろう。

 

「どれどれ……?」

「あっ!」

 

 呆然としているダクネスの手から手紙を取り上げ、音読する。

 

「『数多の魔王軍幹部を倒し、この国に多大なる貢献を行った偉大なる冒険者、サトウカズマ殿。貴殿の華々しい活躍を耳にし、是非お話を伺いたく。つきましては、お食事などをご一緒出来ればと思います』だとさ」

「差し出し人は?」

 

 掌を返したように、和真が続きを読んでくれと言う。ダクネスが大声でかき消そうとするが、アクアに口を塞がれてくぐもった声しか出せなかった。

 

「この国の第1王女。アイリス様だよ」

 

 それを聞くと、和真は目を輝かせて歓喜の雄叫びをあげる。

 

「ついに俺達の時代がキター!」

 

 そんなものは来ていないとでも言うように、ダクネスが全力でアクアの手を引き剥がそうと暴れまわった。




現在のダスティネス邸の勢力図
身分違いの恋愛大好き派(代表:イグニス)vs身分の違いがあるなら取っ払えばいい派(代表:ハーゲン)
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