この兄弟に祝福あれ   作:大豆万歳

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明けましておめでとうございます。
原作6巻、六花の王女編始まります。


第27話

「「オレ色に染め上げろ!ルーブ!!」」

『ウルトラマンタロウ!』『ウルトラマンギンガ!』

「纏うは火!紅蓮の炎!」「纏うは水!紺碧の海!」

『ウルトラマンロッソ、フレイム!』『ウルトラマンブル、アクア!』

「「先輩の力、お借りします!」」

 

アクセルの街にある屋敷。その居間で俺と和真は変身して、ある検証を行っていた。

 

「……よし。まず、身長は等身大まで縮めることができるな」

「うん。これで、今後の戦術の幅がグッと広がったね」

 

ブルアクア状態の和真が、サムズアップを向ける。

検証その1:身長はどの程度まで調整できるのか

結果はこの通り、俺と和真の身長程度まで抑えることができた。めいつかさんのメモによれば、前の所有者は今の俺達のように大きさを抑えて戦っていたらしい。しかし、俺達にもそれができる保証はないので一か八か試してみれば、同じようにできた。

 

「次は、この姿をどれくらい維持できるかの確認だね」

「ああ」

 

変身したと同時に、テーブルの上の砂時計を使った計測を開始していた。

そして、砂が3分の2ほど落ちた頃。胸部のカラータイマーが鳴り出した。そして、体感で10秒経つ毎にタイマーの鳴る間隔は短くなっていき……。

変身が解除され、俺と和真は傍に寄せてあった椅子に座りこむ。

検証その2:変身可能な時間はどの位なのか

 

「2分30秒。ってところか」

「多分、そのぐらいだと思う」

 

結果は、2分30秒。俺達が本来の所有者ではないことを考えれば、妥当なところだろう。

 

「ねえ、兄さん」

「どうした?」

「これってさ、変身して直ぐ解除したら魔力と体力もそんなに消費しないで済むんじゃないかな?」

「そうだな……明日、試してみようか。それが終わったら、今度はマナタイト結晶を持った状態でもやってみよう」

「うん」

 

翌日。

 

「駄目だ。変身して直ぐ解除しても魔力と体力をごっそり持っていかれる」

「薄々そんな気はしていたけどな……」

 

変身し、姿が変わっているのを確認したところで解除してみたが、凄まじい疲労感に襲われた。ぶっちゃけ、時間いっぱい変身していた場合と変わらない。

確か、原典では再変身に時間を置く必要があったけど、こういう形での再現は嬉しくなかったな。

更に翌日。

 

「めぐみん。マナタイトの魔力の残量はどうだ?」

「……ちっとも減っていませんね」

「マジか。ウィズの店で大金払って買ったのが無駄になっちまった」

 

マナタイトに魔力の消費を肩代わりさせる実験は失敗した。

結論。時間に関わらず、変身すれば問答無用で魔力と体力を消費する。マナタイトに肩代わりさせるのも駄目。これは、かなり使いどころを見極める必要があるな。和真が頭を抱え、今後の運用方法について思案していた。

 

「とりあえずダクネス、オラに体力を分けてくれ」

「ああ。ほら」

「じゃあ、兄さんの分を分け与えるから」

「頼んだ」

 

和真がドレインタッチでダクネスの体力を吸い取り、その1部を俺に分け与える。立って歩ける程度まで回復したので、もう充分だと空いている手でサムズアップを向ける。

 

「なあ、カズマ」

「なに?」

「その、例の会食の件だが、断らないか?国のトップが相手となれば、お前の期待しているようなものとは違う。堅苦しいものになる!な?皆もこの話は聞かなかったことにしよう!」

 

王女様からの手紙が届いて以来、あの手この手で和真を王女様に会わせないようにダクネスは手を尽くしてきた。

和真は、体を伸ばすとポツリと呟く。

 

「……お前、俺達が王女様に、何か無礼を働くとか思っているだろ」

 

図星だったのか、ダクネスはビクッと身を震わせて明後日の方向を向く。

 

「そ、そんな事はない……ですよ?」

「嘘をつけ。お前、俺達が何かやらかして、ダスティネス家の名に泥を塗るとか、そんな心配しているんだろ」

 

和真のその言葉に、アクアとめぐみん、ゆんゆんが同調してダクネスに抗議する。

 

「ち、違うんだ。私は皆の事を良く知っている。だからこそ、何かやらかすのではないのかと心配しているのだが……」

 

ダクネスが、泣きそうな顔でそんな事を言ってくる。

ダクネスの心配は強ち間違いじゃないな。アクアが宴会芸をやったり、めぐみんが紅魔族流の自己紹介をしたり、和真が普段ダクネスに接するノリで王女様に接したり。うーん、嫌な予感しかしないな。ゆんゆんは緊張のあまり噛みまくって舌がボロボロになる程度か。

 

「おっと、タキシードを買っておかないとな。お前らもドレスとか持ってないだろ?一緒に仕立てて貰おうぜ」

「いいわね!私もたまには羽衣以外を着てウロウロしてみたいわ!でも会食までに仕立てるのが間に合うかしら」

「私は勿論黒のドレスですかね。大人な雰囲気溢れるヤツを仕立てて貰いましょう。ゆんゆん、貴女も同じ様なドレスにしますか?友達とお揃いですよ?」

「と、友達とお揃い……いいわね!」

 

心配している俺達をよそに、和真達はドンドン盛り上がっている。

アクアとめぐみんは辞退する気は微塵も無し。ゆんゆんは悩んでいたが、めぐみんの一声で乗り気になってしまった。

 

「おい和真、相手はこの国の王女様だぞ?下手なことをすれば物理的に首が飛ぶことに」

「いや、やっぱタキシードはありきたりだな。よし、ここは王女様に強烈な印象を与えるためにも、着物や袴でも仕立てて貰って……」

 

駄目だ、聞く耳持ってくれない。

ダクネスもとうとう我慢の限界だったのか、大声で。

 

「頼む、何でもする!私にできることなら何でもする!だから、聞いた事もない奇抜な格好をするのは止めてくれ!」

「「「ん?」」」

 

それを聞いて、和真達が反応する。

そして、和真とめぐみん、アクアの3人は最高にイイ笑顔で振り返り。ゆんゆんは3人の表情にドン引きしていた。

 

「今」

「何でもするって」

「言いましたね?」

 

 

 

 

そして、その日の夜。

 

「じゃあ、兄さんとダクネスは王女様が来るまでの1週間。風呂に入るのも寝るのも一緒な。それと、ダクネスの髪のセットも兄さんが毎朝すること」

 

そういうことで。と和真は言って、脱衣所の扉を閉めて立ち去る。

 

「……すまない。皆を止めようとあんな言葉を口にしてしまい、お前を巻き込んでしまって」

 

着替えを持ったダクネスが、しょんぼりとした様子で頭を下げてくる。

 

「いや、これ位であいつらが大人しくなるなら安いもんだろ。これをネタにあいつらがあることないこと広めたら、俺達がきっぱりと否定して然るべき制裁を下せばいい。じゃあダクネス。俺が先に風呂に入るから、あっち向いててくれ」

「ああ」

 

ダクネスが背中を向けたのを確認した俺は、素早く服を脱いで籠に入れ、風呂場に入る。

 

「……この辺でいいかな。おーい、ダクネスー。こっちに来ていいぞー」

「わかった。今行く」

 

俺は浴槽の端っこ。出入り口から1番遠い辺りに座り、天井をジッと見つめる。

少しして扉の開く音が響き、ダクネスが浴槽に入る音が耳に入る。

 

「(2、3、5、7、11……)」

 

俺は天井を見たまま、素数を数えて平静を保つ。鎮まり給え、鎮まり給え……よし、落ち着いた。でも、甘い香りのようなものがほんのりと漂っていてドキドキするので、このまま天井を見つめておこう。これが所謂フェロモンってやつだろうか。

 

「なあ、ダクネス」

「なんだ?」

「例の王女様との会食の件だけど、護衛に来るのって誰?王城の精鋭の騎士とか?」

「いや、アイリス様には護衛兼教育係の女性が2名付いている。今回の会食でも、彼女達が付いてくるだろう」

「因みに、その護衛の人達の名前と人相は?」

 

もしかしたら、何処かで鍛冶師の仕事で会ったことがあるかもしれない。相手に知っている人間がいれば、俺も少しは緊張が和らぐかもしれない。

 

「そうだな……クレア殿は何処かで会ったかもしれないな。短い金髪の女性で、シンフォニア家の長女だ」

 

もう1人のレインという人は、魔法使いだから交流はほぼないだろうと言われた。

 

「あー……お前の鎧を作って半年くらいした頃に、武器を作って欲しいって来たな」

 

確か、あの時は知り合いの武具を作成した鍛冶師に興味が湧いたから、何か武器を作って欲しいとか言っていたのを覚えている。それで、俺はベルトに仕込むことができる、刀身が凄く薄い剣を作成したんだった。

 

「もしかして、あの時言ってた知り合いってダクネスのことか?」

「そうだろうな。以前王都に行った時、アイリス様に少しお話ししたことがある」

 

街でパーティーを組んでいる仲間のこととか、その仲間の1人が鍛冶師をやっていて鎧を作ってくれたとか話したらしい。という事は、向こうは俺の事をある程度知ってるのか。

 

「兄さーん。嫁と風呂に入っているのに、他の女性の話をするのはどうかと思うよー」

「よーし和真。俺とダクネスが風呂から上がったら覚悟しておけ」

 

 

 

 

風呂上りに和真の尻にタイキックを叩き込み、俺の部屋でダクネスと寝た翌朝。

俺達が屋敷を出て向かった先は、ウィズの店。

 

「あっ、皆さんお待ちしてました!丁度今、カズマさん考案の着火具が搬入されたとこですよ!」

 

どうぞどうぞとウィズは店に俺達を入れ、箱詰めにされた商品──オイルライターを数個取り出す。店内を見渡してみると、バニルの姿が見えなかった。チラシでも配りに行ったのだろうか。

 

「カズマカズマ、早くこの魔道具の力を見せてください!」

「落ち着けよ、めぐみん。これは魔道具じゃなくて、俺の国の便利アイテムでな。ここをこうすると……」

 

ライターを1つ手に取ると、和真がそれに火を点ける。すると、皆が興奮した表情でライターを手に取って感想を述べる。

……いや、アクアは何時の間にかウィズが用意していた茶菓子を食ってまったりしていた。

ダクネスは財布から金を出してライターを購入すると言ったが、皆さんの協力のおかげで開発できたからお金はとりませんと言った。

 

「それよりもハルキさん!ダクネスさん!聞きましたよ!」

 

ウィズが、鼻息荒く俺とダクネスに近づいてきた。

 

「昨夜は一緒にお風呂に入って、同じベッドで寝たそうじゃないですか!しかもハルキさんのお部屋で!」

 

俺はまず最初に、和真に言いふらしたのか訊ねるが本人は首を全力で横に振って否定。めぐみんとゆんゆんにも訊ねるが、こちらも否定。つまり……。

 

「それで、お2人は何処までしたんですか!?もしや、熱い夜を過ごしたんですか!?」

 

アクアに訊ねようとしたら、ウィズに手を掴まれた。

 

「どうなんですかっ!?」

「いや、確かに一緒に風呂入って寝たけど、それ以上のことはああああああ!?」

 

急に体力を大量に吸い取られて膝をつく。同じく吸い取られたであろうダクネスの方は、けろりとしていた。流石は体力お化け。

 

「ああっ!ごめんなさい。興奮しすぎて、ついドレインタッチを……」

 

ウィズが慌てた様子で吸い取った体力を返還してきた。復活した俺は、優雅に茶を飲んでいたアクアに近づき。

 

「アクア」

「ん?私は何もしていないわよ?ただ昨夜のことをちょ~っと情熱的にウィズに報告しただけ止めてええええ!入信書を燃やすのだけは止めてええええ!何でもするから許してえええ!」

 

ライターに火を点けて入信書に近づけようとした途端、アクアが泣き喚きながら縋り付いてくる。よーし、言質は取ったからな。

 

「じゃあ、今すぐ店の外で客引きしてこい。そしたら許してやる」

「任せなさいな!」

 

 

 

 

魔道具店の前では凄まじい人だかりができていた。

ウィズ曰く、この通りにこれだけの人が殺到してくるのは初めてこのことだそうだ。実際、この通りはあまり人が来ない静かな通りだった。そして、客引きを任せた当のアクアはというと……。

 

「さあ、続きましては!取り出したるこの何の変哲もないハンカチから!鳩が飛び出ますよ!ワン、ツー、スリー!」

『おおおおおおっ!?』

 

アクアがハンカチを一振りすると、鳩の大群が飛び出した。

なんということをしてくれたのでしょう。

バニルが配ったチラシを見てやってきた客までも、人の輪に入り込んでいるではありませんか。

 

「な、なんだこの有様は……」

 

チラシを配り終えたのか、いつの間にか帰って来ていたバニルが呆然としていた。

その中心に立つアクアは、ウィズの店から持ち出したと思われる大量のポーションを見せつけると。

 

「さあ次は、私が3つ数えると、このポーション瓶が1本残らず消えます!それでは3つ」

「数えるなこの大たわけが!ここで何をしている!日夜我々の店のドアノブに聖水を振りかけていくだけでは飽き足らず、堂々と真正面から営業妨害を始めたのか!」

 

あいつ、ちょくちょく出歩いていると思ったらそんなことしてたのか。……よし。

 

「邪魔しないでよこのヘンテコ仮面!天下の公道で私が何をしようと」

「おっと。汝の仲間にして数少ない信者である我輩のビジネスパートナーが、アクシズ教の入信書を燃やそうとしているぞ。ここで芸を披露していて良いのかな?」

 

バニルの言葉を聞いたアクアが、俺の方に猛スピードで走ってきて土下座した。

 

「お願いしますそれだけは止めてください。私が悪かったからそれだけは止めてください。この通り反省していますからそれだけは止めてください」

「……取り敢えず、今日は店の裏で大人しくしていようか」

「イエス、サー。了解であります」

 

店の方を和真達に任せて、俺とダクネスはアクアを連れて店の裏に引っ込んでいった。




3が日 家に籠るから 筆進む
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