この兄弟に祝福あれ   作:大豆万歳

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伝説の冒険者ダクネス来ない。今まで無課金で頑張って来たけど、やはり課金するしかないのか?教えてくださいエリス様、アクア様


第32話

「冒険者の皆様はこちらへ集まってください!皆さんへの特別な指示はありません!皆さんは集団による軍事訓練を受けた訳でもないので、騎士団とは別行動を取ってもらいます、自由に戦って頂いて構いません!戦闘に参加する前に冒険者カードをチェック致します。戦闘後に記載されているモンスター討伐数により、特別報酬が出ますので頑張ってください!」

 

王都のギルド職員と思われる人が、拡声器のような魔道具で指示を出す。

俺達も指示された場所に移動し、そこで冒険者カードを提示した。

順に冒険者カードに目を通しては紙に記入していた職員が、和真の冒険者カードを見て申し訳なさそうに眉尻を下げる。

 

「サトウカズマさん、ですか?申し訳ありません、上級職の方でない限り、レベル30以下の方は危険なので参加を認めていないんです。貴方には、街の警備をお願いできれば……」

「構わない。その男は数々の功績を挙げた腕利き冒険者だ」

 

と、その職員の言葉を遮ったのは、いつの間にかやって来たクレアさんだった。

城の前には、騎士団や冒険者達を激励するために貴族達が集まっていた。彼らの和真を見る目は、期待に満ちているように感じた。

義賊は逮捕できなかったが、魔王軍幹部を撃退してきた力に期待しているらしい。

俺は和真の肩を小突き、小声で訊ねる。

 

「ルーブジャイロは使うか?」

「無しでも戦えるようにしたいから使わない。使わなきゃいけない相手が出たら迷わず使うけど」

「わかった。では本音を述べよ」

「少しは戦えることをアピールしてアイリスに褒められたい。あわよくばもう少し王城に滞在したい」

「正直でよろしい」

 

そんなやり取りをしていると、ダクネスに声をかけられた。

 

「なあハルキ。本当にカズマも出陣させて大丈夫なのか?」

 

俺の隣にいたダクネスが、小声で訊ねてくる。

 

「大丈夫だ。こいつがやらかさないように見張っておく」

「すまない。頼んだ」

 

そんなやり取りをしている間に、時間は来た。

居並ぶ騎士団と冒険者達に、クレアさんが高らかに号令を下した。

 

「──魔王軍討伐部隊、出陣せよ!」

 

 

 

 

「いやーっ!カズマさん!カーズーマーさーん!」

「ああもう!」

「ギャウッ!」

 

敵味方入り乱れての戦闘が繰り広げられている戦場で、アクアに齧りついているコボルトを引き剥がして刀で両断する。

そんな中、俺のパーティーメンバーは──

 

「もっとだ!もっと来い!」

 

ダクネスは当たらない剣を振り回して敵陣に突っ込み。

 

「『ライト・オブ・セイバー』!」

 

ゆんゆんは上級魔法を使ってモンスターを蹴散らし、めぐみんが爆裂魔法を使うまでの時間を稼いでいた。

 

「アクア。お前は回復役なんだから、大人しく後方に下がってくれ」

 

そして、俺は兄さんと行動を共にしていた。

回復役のアクアには後方に下がって欲しいが、対アンデッドを考えると前線に立ってもらいたい。実際、敵の死体がアンデッドになって襲い掛かってくることもある。

 

「『ターンアンデッド』!」

 

そう、ちょうど今アクアがアンデッドの群れに魔法を放ったように。

アクアは魔法を放った辺りを指さし、ドヤ顔で訴えてきた。本当に自分を後方に下げても良いのかと。

 

「……俺と兄さんからあまり離れるな」

 

しょうがないわね。と、わざとらしく肩を竦めたのでイラッとしたが、この怒りはモンスターにぶつけよう。

おお、ちょうどいいところにコボルトの小隊があるじゃないか。あれに飛び込むのは危険なので、俺と兄さんは『潜伏』を使用して弓を構える。

 

「「『狙撃』!」」

 

矢を雨あられと放ち、1匹、また1匹とコボルトを仕留める。

 

「兄さん!来るよ!」

「おう!」

 

俺達に気づいたコボルト達が武器を振り回し、突撃してくる。

俺は刀とショートソードで、兄さんは十字槍と刀の二刀流で迎撃する。

 

「下がれ!」

「グエッ!」

 

交戦中に聞こえた兄さんの声に応じて1歩下がると目の前を槍が横切り、コボルトの悲鳴がした。危ない危ない。

 

「お、良いもん見っけ」

「アガッ!?」

 

血と脂だらけになって切れ味が落ちた刀を納刀し、近くのコボルトの死体から手斧を拝借し、突撃してきたコボルトの槍を避け、手斧を思いっきり振り下ろす。

手斧はコボルトの頭を兜ごとたたき割り、絶命させた。

その後もショートソードを使い、敵の死体から拝借した武器もフル活用して着々とコボルトの死体の山を積み上げていると。

 

「撤退か?」

 

生き残っていたコボルトが尻尾を巻いて逃げ出した。

いや、周りで戦っている魔王軍も逃げ出しているようだ。

 

「今回の戦はあくまで前哨戦よ!いずれこの数倍の軍勢を率いて、この王都を灰燼に帰してくれるわ!」

 

敵の指揮官と思われる人影が、そんなことを大声で宣言した。残念だったな指揮官。

 

「『エクスプロージョン』!」

 

混戦状態でなくなり、更に敵の捨て台詞を聞いためぐみんの爆裂魔法が火を噴いた。引き上げる魔王軍のど真ん中に放たれたそれは、撤退していた魔王軍を灰燼に帰した。

……まあ、あまり派手な活躍はしていないけど、ある程度仕留めたし生き残った。後はこれをアイリスに上手いこと報告すれば、1日くらい王城に滞在する期間を得られるかもしれない!

 

 

 

 

そう思っていた時期が俺にもありました。

 

「何か言い訳があるか?」

 

目の前にはガチギレ状態で腕を組んで仁王立ちするダクネスとクレア。隣ではめぐみんが俺と同じように正座させられ、顔を青くしていた。

 

「考えてもみてくれ。体は俺でも中身はアイリスだ。それが目の前で土下座しようとしたら首を横に振れないだろ」

「土下座ぁ!?」

「落ち着いてください、クレア殿。それについては未遂ですから」

 

土下座という単語を聞いたクレアが抜刀する勢いで怒り、それをダクネスが窘めた。

何故こんなにも2人が怒っているのか。

クリスが宿で言った神器の1つである、他者と体を入れ替える神器。それをどういうわけか、アイリスが身に着けていた。そうとは知らなかった俺はそれを発動させてしまい、アイリスと入れ替わった。

俺としては解除されるまで大人しくしていたかったが、アイリスが家臣を連れずに城の外へ出たいと言ったんだ。その時土下座しそうになったのを俺達は全力で止め、めぐみんがついて行くことを条件に外に送り出した。

それからが問題だった。戦勝パーティーの前に身を清めるということで、風呂に入ることになった。更にタイミング悪くダクネスが現れ、なし崩し的に一緒に入ることになった。

肉体がアイリスのものになっているとはいえ、周りを女性に囲まれての入浴は実際にするとなると凄く恥ずかしい。いくらハーレムに憧れを抱いていて、機会があれば複数の美少女若しくは美女と混浴してみたいと常日頃から思っていても。

しかし、ここで躊躇っている暇はない。俺はクレアの提案に乗り、衣服を脱いで入浴した。

その時の俺は、丁度良い温度のお湯だったことで、気が緩んでいたんだろう。背中を流していた相手の事を貴族としての名前(ララティーナ)ではなく、冒険者としての名前(ダクネス)と呼んでしまった。

今思っても遅いけど。お兄様がそう呼んでいたから、つい口にしてしまった。とか、そんなことを言ってごまかせば良かったのに。俺は。ヤバい!つい普段の呼び方で呼んでしまった!と内心焦っていた。

当然ながらダクネスはそんな様子のアイリスに違和感を抱き、どうしましたと訊ねてきた。

そんな時だった。入れ替わりが解除されたのは。

元の肉体に戻った俺は、そのままめぐみんと共に城に戻ってきた。そしてダクネスとクレアに捕まって連行され、今に至る。

事情の説明を終えると、ダクネスが大きなため息を吐き出す。

 

「さて、めぐみん」

「わ、私ですか?言っておきますが、私は怒られるようなことは一切して」

「お前達を探しに行った騎士から聞いたのだが、王都の住人が紅魔族の少女に絡まれたらしいな。確かその紅魔族の少女は左目に眼帯をつけ、とんがり帽子を被っていたそうだが」

 

めぐみんが無言で土下座した。

 

「まったく、お前達は次から次へと問題を起こして……!カズマ、めぐみん。2人への処罰を私が告げる。まずはカズマ」

 

俺は背筋を伸ばし、ダクネスの目を見る。

 

「当然ながら、明日でアクセルの街に帰るぞ。そして今日まで私達に心配をかけた分、王城の方々に迷惑をかけた分。アクセルの街に帰ったら馬車馬の如く働いて清算しろ」

「はい」

「次にめぐみん。健全な精神は健全な肉体に宿ると聞く。アクセルの街に帰ったら、私が直々にお前の肉体(精神)を鍛え直してやる。覚悟しておけ」

「はい」

「では2人とも、クレア殿に一言」

「「大変ご迷惑をおかけしました」」

 

俺とめぐみんは深々と頭を下げ、クレアに誠意を見せる。

クレアも、俺とめぐみんがダクネスに説教されて処罰を宣告されたこともあったからか、一応は納得したようだ。

 

 

 

 

月が顔を出して場所も変わり。俺達が宿泊している宿。

戦勝パーティーに出席してみたものの、パーティーを楽しめる気分ではなかった和真を連れて、俺は一足先に帰ってきた。一応、先に帰ることをダクネス達に伝えるようクレアさんには頼んでおいた。

 

「あーあ、明日で街に帰るのかぁ。アイリスとのゲームの決着、まだ付いてないのに」

 

ベッドで仰向けになり、和真がそんなことを口にする。

そんな時。部屋の窓が外からコツコツと叩かれる。窓の外を見ると、窓枠の縁にクリスが立っていた。

俺が窓を開けると、クリスはするりと部屋に入ってくる。

 

「随分と早いお帰りだね?パーティーじゃなかったの?」

「それどころじゃないんだと」

 

全てを見透かしたように笑うクリスに、和真がごろんと背を向けた。

 

「そうそう。クリスが言っていた例の神器だけど、体を入れ替える方が城にあったぞ。でも体を入れ替えられるのは本当に短い時間だから、それほど危険じゃないはずだ」

「そっか。……ねえ、カズマ。あの神器で入れ替わっている間に、片方が死んだらどうなると思う?」

 

いじけた様子の和真に近づき、クリスが問いかける。

 

「どうなる、って。そりゃあ片方の体が無いんだから戻りようがないだろ」

「……それってつまり、永遠の命を手に入れたことと同義だよね?」

「っ!?」

 

クリスの言いたいことが分かったのか、起き上がった和真はクリスの方をじっと見る。

俺もクリスの言いたいことが分かってきた。……あの神器の危険性が。

 

「あの魔道具はね、最初はどこかの貴族に買われたはずなんだよ。それが今は、王女様の手元にある。一体誰が、どんな目的で王族の下に贈ったんだろうね?」

「「この国の最高権力者と体を入れ替えるため」」

 

和真が顔を青くし、国の偉い人に報告すべきだと言った。

 

「それは止めたほうが良いね。権力者ほど永遠の命を欲しがるもんさ。もし神器の力を知られたら、血で血を洗う争いが起こるよ。そして、この話を2人に教えたのは、2人なら神器を悪用しないって信用しているからなんだよ」

 

つまり、クリスはそれだけ俺と和真を信用しているということか。俺はともかく、和真とはそこまで深い関係じゃない筈なんだが。俺が和真の話をしていたから、その影響なのか?

 

「……俺と兄さんは何をすれば良い?」

 

その言葉を待っていたように、クリスは笑うと王城を指さす。

 

「あたし達3人で、この国を救っちゃおう!」




次回、銀髪盗賊団参上!!!
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