この兄弟に祝福あれ   作:大豆万歳

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伝説の冒険者ダクネス、来なかった(血涙)。まあ、その内どこかのタイミングで出るだろうから、その時を待てしかして以下略。でもこめっこの実装は予想外でしたね。ビックリしました


第33話

夜の闇に包まれた王都の中を、俺達3人は城へと向かう。

 

「ねえ、カズマ。その仮面どこで買ったの?ちょっと格好いいじゃない」

「これは、アクセルの街のとある魔道具店の怪しげな店員から貰ったんだ。売れ筋商品らしい」

 

万が一見つかった時に備え、クリスは口元を黒い布で覆い、和真はバニルの仮面を着用し、俺は黒いフードを目深に被って口元を黒い布で覆っていた。

 

「へー?それ、あたしも1つ欲しいな。その怪しげな店員さんって」

「クリス。それよりも城への侵入方法とその後の動きを教えてくれ」

 

クリスの質問を途中で切り、話題を無理矢理変える。

敬虔なエリス教信者であるクリスは、悪魔などのアンデッドに対して基本的に容赦しない。実際、ダンジョンで下級悪魔やゾンビを視認すると同時に突撃し、1匹残らずダガーで微塵切りにしたことがあった。なので、俺はクリスにウィズの事を紹介していないし、顔合わせもしていない。

店に入ると同時にウィズに飛び掛かり、罵詈雑言の類をぶちまけながらダガーを突き刺そうとするクリスと、泣きながら必死で抵抗するウィズという図が容易に想像できる。バニルに遭遇しようものなら、暴れたクリスのせいで店が滅茶苦茶になる気しかしない。

 

「う、うん。まず、カズマかハルキの狙撃でロープ付きの矢を放って城壁を昇って侵入。その後は城の宝物庫に神器の片割れが無いか探して、無ければそのまま王女様の部屋に行って神器を奪還して城から脱出。もし神器の片割れが宝物庫にあったら、ついでに回収する。移動中は基本的に潜伏と敵感知を使用。万が一奪還が困難な状況になったら、そのまま逃げるよ。何か質問は?」

「宝物庫には結界が張られていて、罠も仕掛けられているらしいぞ」

「大丈夫。結界対策のアイテムも持ってるし、罠はスキルで解除するから。ハルキから何か質問は?」

「呼称はどうする?本名のまま呼ぶわけにもいかないだろ」

「そうだね。……じゃあ、あたしがお頭で、ハルキは助手1号、カズマは助手2号でいいかな?」

「異議あり。暗視スキルを持つ俺のほうが盗賊稼業は向いている。つまり俺がお頭だ」

「あのね。王都で義賊として名を売ってきたのは私の方なんだよ?つまりあたしがお頭になるべきだと思わない?」

 

和真とクリスが無言で睨み合う。

 

「……俺とクリスで言い争ってても埒が明かない。ここは兄さんに決めて貰おう」

「そうだね。というわけでハルキ、あたしとカズマ、どっちが相応しいと思う?」

「盗賊歴の長いクリスだな」

 

俺の回答を聞き、和真が悔しそうに唸り、クリスは小さくガッツポーズ。

 

「っと、到着したね。じゃあ、2人共……」

 

小声で話しながら移動していると、正面に城壁が立ちはだかる。

 

「行動開始」

「『狙撃』」

 

 

 

 

──広い城内を移動していくと、2階へと続く階段に出た。

 

「宝物庫は城の何処にある?」

「階段を上がって直ぐのところだよ」

 

ここ暫く城に籠っていた和真が先導し、俺達は宝物庫にたどり着いた。

しかし、そこには和真の言う通り強力な結界が張られていた。

どうやって結界を解くのかクリスを見ると、懐から何かの魔道具を取り出す。

 

「これは結界殺しって言って、魔族だけが扱っている魔道具なんだ。けど、これをどうやって手に入れたのか知らないけど、紅魔族の人達がこの結界殺しを売りに出したんだ。で、それを手に入れた貴族の屋敷から、ちょっと拝借してきた訳さ」

 

クリスが魔道具を弄ると、硝子が割れるような音と共に結界が解けた。

俺と和真はライターを取り出し、周囲を確認して火を点ける。

内部を照らすと、そこには整然と積まれた財宝の数々が。

 

「お宝を持ち去ろうとすると警報が鳴るタイプの罠が仕掛けてあるね。下手に中の物に触れないほうが良いよ」

「「了解」」

 

と言っても、神器の形を知らないので、できることと言ったら見回りを警戒しつつ宝物庫を見渡すくらい。神器探しは宝感知を持っているクリスに任せた。

……と、和真が何か見つけたのか、袖を引いてきた。

 

「2人共、ここに神器は無いみたいだね。強力な魔道具が多いけど、神器と言うほどでもないよ。……どうしたの?」

「ああ、すまん。懐かしい物があったから、つい」

 

それは、宝物庫に置くには場違いな物。恐らく、俺達より先にこちらに来て、命を落とした日本人の遺品なのだろう。

 

「この漫画、ページの感じからして初版だよね。初版が発売したのっていつだっけ?」

「結構昔だな」

「ああ~、その、それを持っていこうとすると……」

 

俺と和真を見守っていたクリスが言いにくそうに口ごもるが、俺達もそこは分かっている。

 

「分かってるよ。ただ、俺達の国にあった本を見たから懐かしいなと思っただけだよ」

 

何故か、和真の言葉にクリスが申し訳なさそうな表情をした。

 

「そんな顔しなくていいさ。それに、この漫画は兄さんも持ってたヤツだから……」

 

と、俺達は漫画の隣にあった本に目が留まる。

具体的に言うと、年齢制限がかかっている、すんごい漫画があった。

俺と和真は無言で向き合い、そして頷く。

そう、これを持ち出す必要はない。これに頼らずとも、アクセルの街には例の店があるんだ。そこを利用して発散すればいい。

俺と和真は涙を呑んでお宝に背を向け、クリスに指示を仰ぐ。

 

「それじゃあ、本命を頂きに行こうか」

「「イエス、マム」」

 

そして、道中特に大きなトラブルもなく、アイリスの部屋に続く廊下に来た。

 

「じゃあ、部屋にアイリスがいるか聞き耳で確認するぞ」

「頼んだ」

 

和真が床に耳を当て、聞き耳を使う。

 

「……一旦戻ろう。アイリスがお花摘みに行くらしい」

 

俺達は素早く後退して曲がり角に隠れ、潜伏スキルを発動させる。

少し遅れて、寝ぼけ眼を擦ってフラフラと歩くアイリスと、アイリスの手を引いてお手洗いに向かうクレアが通り過ぎて行った。

 

「今の内に部屋から神器を回収するよ。ネックレスを着けたまま寝るなんて危ないことを王女様がするわけないし、周りの人がさせないよ」

「「わかった」」

 

俺達はアイリスの部屋に侵入し、中を物色する。と言っても、和真は化粧台なんかの上に置いてないか探す程度にとどめ、棚の中身はクリスが見ることに。俺は窓を開けて真下のテラスにプールがあることを確認し、探している最中に2人が戻ってきた時の備えとして扉の死角になる場所に隠れる。

 

「……あったよ。これだ!」

「ああ、裏に例の呪文が書いてあるから、間違いない」

 

後はテラスから飛び降りるだけ。そう思って気が緩んでいたんだろう。

 

「お前達!そこで何をしている!?」

 

戻って来ていたクレアさんに気づかなかった。

 

「失礼」

 

俺は扉の死角から飛び出し、謝罪と共にクレアさんの顔に霧吹きでポーションを吹きかける。すると──

 

「ああああああっ!」

 

目から大粒の涙を流し、鼻を押さえて膝をつく。

俺が吹きかけたポーションは、非常に強烈な悪臭を放つポーション。しかも、目に入ると涙が止まらなくなるという代物。小さい子供や腕力に自信がない人向けの防犯グッズとして流通しているので、調べられて足がつくようなことは無い。

何故そんなポーションをクレアさんにだけ吹きかけたのかと言うと。王女様だから危害を加える訳にはいかないのと。

 

「そんな……貴方は、まさか……」

 

この通り、アイリスは和真を見て呆然とし、同じことをさっきからぶつぶつ言っていた。

そんな中、クレアさんが懐から何かの魔道具を取り出して弄ると警報が城中に鳴り響いた。

クリスは警報を聞くや否やテラスへと駆け出し、そのまま飛び降りる。

俺はクリスに続いてテラスに向かったが、和真が来ないので少し待つ。

和真は俺とアイリスを交互に見たと思うと、何かを振り切る様にテラスまで駆けてきた。

行くぞ。と、下を指して俺と和真は同時に飛び降りていった。

こうして密かに迫っていた脅威から、俺達はこの国を救った。

 

 

 

 

次の日の朝。

一夜明けた王都は大騒ぎになっていた。

何せ、噂の義賊3人が城に侵入し、王女の魔道具を盗んでいったのだ。

しかも、腕利き冒険者達が多数泊まり込んでいた日に、である。

アイリスの証言から犯人が銀髪の少年と仮面の男、黒フードの男によるその犯行は噂となり、瞬く間に王都を駆け巡った。

──そして今。

俺達がいるこの部屋も、大変なことになっていた。

 

「どういうことか話してもらおうか」

 

腕を組んで仁王立ちするダクネスに、俺達3人は正座した状態で見下ろされていた。

俺と和真、クリスの3人はダクネスから呼び出しを受け、宿の1室に来たところ、恐ろしい位に真顔なダクネスがいたので正座して今に至る。

組織のトップという事で、クリスが手を挙げると事の経緯を素直に話した。

 

「……というわけなんだよ」

「まったくお前達は……。なぜ私に言わなかったのだ。最初からきちんと話してくれれば、こんな騒ぎにはならなかったのに」

 

クリスの話を聞いたダクネスが、深々と溜息を吐く。

 

「そうは言っても、クリスの正体がバレたら友人であるお前の立場が危うくなるんだぞ?」

「そうそう。偉い人ほどこういうのを欲しがるってクリスも言ってたし」

「……やってしまったものはしょうがない。幸い、お前達の正体はまだ私にしかバレてない。クリスは銀髪が目立ちすぎるから、すぐに王都を出てアクセルの街に帰るといい。カズマとハルキは、私と共に今から王城に向かうぞ」

「えっ!?いや、昨日の今日で厳戒態勢の城に行くのは気が引けると言うか……」

「大丈夫だ。いつも通り、落ち着いて行動すればバレないもんだぞ」

「ハルキの言う通りだ。さあ、行こうか」

「へ~い……」

 

ダクネスに肩を軽く叩かれ、和真が渋々といった様子で立ち上がる。

 

「盗んだ神器は、あたしが絶対に誰にも盗られない場所に運んでおいたから。じゃあ、またアクセルの街で!」

 

クリスはそう言うと手を振り、宿を後にした。

──そして、俺達3人は城に到着した。

 

「カズマ、今のお前の状態は逆に好都合かもしれない。『自分が義賊を捕縛できなかったばかりに……』と、自分の無力さを痛感している雰囲気を出せるか?それなら疑惑の目を逸らすことができるかもしれない」

「いやそれをアドリブでやれとか無理。でもやらないとまずいしな……ちょっと落ち込んでる風にすればいけるか?」

「目尻下げて俯いていればもっと良いかもしれないな」

「では行くぞ」

 

ダクネスが部屋のドアをノックし、中に入る。和真はそれらしい雰囲気を醸し出してみると──

 

「……というわけで、あの神器は非常に危険な品物というわけです。義賊がそれを狙ったのは、王女様を守るためでしょう。引き出しに入っていたという置き手紙の文面から、相手はかなり強い正義感の持ち主のようです」

 

めぐみんの言葉を聞き、クレアさんがホッと息を吐きながら安心したような笑顔を見せる。あれ、これもしかしてもう話が終わってたパターンか?

ダクネスも一芝居打つ必要がなくなったと判断したのか、アイリスの前でホッと息を吐いた。

 

「そうですか。確かに、その危険性を素直に告げば、誰かに悪用されかねません。故に、彼らは危険を冒してまで王城に忍び込んだのでしょうか……」

 

部屋の中央で皆に囲まれていたアイリスが、和真をジッと見ながらそんな事を言った。昨日のあの反応。やっぱり、気づいてたのか?

 

「で、ダスティネス卿とハルキ殿はともかく、なぜここに戻ってきた。まだ帰っていなかったのか?」

 

と、クレアさんからの辛辣な言葉が和真に突き刺さる。和真は唸ると、反論した。

 

「いやいや。この後帰るけど、その前に少し位アイリスと話をしたっていいだろ。これが最後になるかもしれないんだから」

 

そんなことはない。と、アイリスが和真の言葉に反論した。

 

「お兄様が紅魔の里で手に入れたという神器。それがあれば、魔王を倒し、再び私と会えるかもしれません」

「そ、そうか?まあ、レベルを上げて、その機会が来たらできないこともないかもしれないな」

 

和真のいまいち自信のない回答に、馬鹿馬鹿しいとばかりにクレアさんが鼻で笑う。

 

「カズマ。自信があるのか無いのかはっきりしろ」

「はっきりしろって言われてもよ。レベルもそうだし、相手の残存戦力がどんなもんかわからないんだぞ?断言できるわけないだろ」

「それを堂々と言えるお前は凄いよ」

 

和真の言葉を聞き、アイリスが苦笑する。

 

「ていうか、わざわざそんなことしなくても、アイリスが俺に会いたいって手紙をくれれば、何時でも何処からでも王都まで飛んでくるぞ?神器使って文字通りさ」

「本当ですか!?」

 

アイリスが目を輝かせ、和真の手を取ろうとする。

しかし、わざとらしくクレアさんが咳払いをするとアイリスが手を引っ込めた。そして和真も思い出したのか。

 

「あ、でも街に帰ったら今まで心配(迷惑)かけた分働いて返さないといけないか。……ダクネスの許可が下りたら、俺の方から手紙を送るよ」

 

それまでお互い我慢しような。と、手を合わせて謝罪する。

 

「ではお兄様。街へ帰る前に、2つ私と約束してください。魔王を倒し、この世界に平和をもたらすと。そして、ゲームの決着を、いつの日かつけると」

「ああ。お兄ちゃんに任せろ」

 

和真が胸を張って答えると、アイリスは微笑みながら小指を差し出す。理由を何となく察したのか、和真はダクネスとクレアさんに許可を求めた。

 

「……いいのか?」

「アイリス様が望まれるのなら」

「その……」

「どうぞどうぞ」

「……アイリス様が望まれるのならな」

 

ダクネスとレインさんは快諾し、クレアさんは渋々ながら了承した。和真は2人に軽く頭を下げると、自分の小指を差し出し──。

 

「約束、ですからね」

 

指切りした。

 

 

 

 

かび臭い地下室に響く、不快な音。

 

「起きろマクス!仕事だ!仕事の時間だ!」

「ヒュー……、ヒュー……、な、何だいアルダープ?今日も心地良い悪感情を発してるねえアルダープ!」

 

人を馬鹿にしたような言葉に、アルダープは返答代わりに何度も蹴りつける。

 

「ワシの神器がどこかの盗賊に盗まれたらしい。それを取り返し、もう1度王族に贈るのだ」

「ヒュー……、ヒュー……、む、無理だよアルダープ!神器がどこにあるのかわからないんじゃ、取り返しようがないよ!」

 

ごちゃごちゃと言い訳をするマクスウェルを、アルダープは何度も蹴りつける。

 

「そんなこともできないのか役立たずめが!お前は、一体何時になればワシの願いをかなえてくれるのだ!ララティーナだ!いい加減ララティーナを連れてこい!」

 

何度もマクスウェルを蹴りつけながら、アルダープは喚き立てる。

 

「ララティーナ!ララティーナ!お前はワシの物だララティーナ!このワシが、一体どれほど昔から目をつけていたか、分かるかララティーナ!お前の傍にいるべきは、身の程を弁えることを知らぬ、あの冴えない鍛冶師ではない!このワシだ!」

「ヒューヒュー!ヒューヒューッ!君は素晴らしいよアルダープ!欲望に忠実で、残虐な君が好きだよアルダープ!早く君の願いを叶え、報酬が欲しいよアルダープ!さあ、僕に仕事をおくれよアルダープ!願いを言ってよアルダープ!アルダープ!」

 

喚くアルダープに呼応するように、マクスウェルも喚く。仕事と、報酬を大声で要求する。

アルダープは手の中の丸い石。

モンスターをランダムに呼び出し、使役する事ができる神器を手の中で転がし、叫んだ。

 

「ワシの願いはただ1つ!ララティーナを連れて来い!アレは、ワシの物なのだ!誰にも渡さん!」

 

それが自らの首を絞めていることなど知らず、破滅を呼びよせていることも知らず。アルダープは何度目になるか分からない願いを叫んだ。




王都編。これにて終了。
次回、街を巻き込んだ夫婦喧嘩こと億千万の花嫁編。
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