5/24標準語に戻しました
「ただいま~」
「おかえり。内職のほうはどうだった?」
「なにもなかった。めぐみんとダクネスはどこに行った?」
「日課の爆裂散歩に行ったぞ。今の和真にめぐみん抱えて帰るのは酷だってよ。アクアは?」
「酒盛りしてたから宴会芸で盛り上げてくるって、ギルドに置いてきた」
「そうか」
「……兄さん」
「どした?」
工房に入ってきた和真が目の色を変え、ベルディアの鎧と大剣をどけて椅子を置き、俺の隣に座った。
「その、手元にある木と金属のパーツで構成されたそれはまさか……」
「そのまさか。コンテンダーだ」
俺は手元のパーツを組み立ててコンテンダーを作り、ガンスピンを披露する。
ごくり、と和真が生唾を飲む。
「弾丸は?」
「現時点で拳銃弾・散弾・ライフル弾がそれぞれ6発ずつある」
「他の銃は何かある?」
「
「
「俺の趣味じゃないから作らん」
「知ってた。けれど兄さん、この剣と魔法のファンタジー世界に銃は不釣り合いじゃない?」
「7以降のFF見ても同じこと言えるかよお前」
「それ言われたら反論できねえわ。まあそれはそれとして……」
和真が満面の笑みを浮かべ、両手を差し出す。
「コンテンダー、俺にも1つ作ってくれない?」
「駄目だ」
「じゃ、じゃあ街でちょっと宣伝を」
「それも駄目だ。5種とも完成して、この世界での銃の価値が判明するまでは秘密だ。勿論、お前も秘密を守ってもらう」
「……もし破ったら?」
「お前の小さい頃の恥ずかしい話を、街中の冒険者達に暴露する」
「お天道様に誓って秘密を守ります。太陽万歳」
和真は椅子から立ち上がり、太陽賛美のポーズをとった。
「そうだ和真。実は真面目な話があるんだ」
「なに?」
俺は銃のパーツをしまい、椅子に座るよう促す。
「俺とダクネスのパーティーなんだがな、クリスの他にあともう1人いたんだよ。上級魔法取得してくるって言って、今は街にいないがな」
「上級魔法ってことは、アークウィザードか。……ところでその人は男?女?」
「女だ。名前はゆんゆん」
「おかし、じゃなかった独創的な名前のアークウィザード……まさか、めぐみんと同じ紅魔族?」
「そうだ。それで、話ってのは彼女が街に戻ってきたときのパーティーメンバーの話だが。お前の意見が聞きたい」
「めぐみんみたいな変わり者じゃなければ大歓迎です」
「安心しろ。あまりの常識人ぶりにひっくり返ること間違いなしだ」
俺の言葉を聞いた和真は静かに、しかし力強いガッツポーズをした。
翌日。
「ごめんくださーい。佐藤陽樹さんはいらっしゃいますかー?」
「はいはーい。いますからちょっと待ってねー」
工房の入り口に立ち、扉を開ける。そこには男1人と女2人が立っていて──。
「あ、貴方は!」
「お前は……誰だっけ?」
「御剣響夜です!以前、貴方の弟に決闘を挑んで敗北した!」
ああ、魔剣の痛い奴か。
「すまん。碌に会話もしてなかったから覚えてなかった。で、用件は?」
「その……以前の件で、魔剣を失った自分がどれほど無力なのかを思い知りました。それで、このままではいけないと思い、武器の製作を依頼しようとしたところ、貴方を紹介されたのですが……」
御剣は仲間をチラチラと見ながら頬を掻いている。この間の件があって依頼しづらいのだろうか?
「仕事の話なら大歓迎だ。詳しいことは中で話そうか」
「い、いいんですか?」
「この間の件なら、和真と直接話をつけてくれ」
「は、はい。失礼します」
御剣は一礼すると、工房内に足を踏み入れる。
「さて、注文は?」
「僕はソードマスターですので、剣をお願いします」
「ひとくちに剣と言ってもいろんな種類がある。どんな剣がいい?」
「僕の防具と不釣り合いかもしれませんが、打刀をお願いします。刃渡りは60㎝程で」
「鍔の形や、装飾なんかでリクエストはあるか?」
「鍔はシンプルな丸型で。装飾の希望は……特にありません」
「素材は?」
「高純度の玉鋼をこちらで用意したので、刀身はそれでお願いします」
「わかった。柄作成のために、手の大きさを測らせてくれ」
「はい。どうぞ」
御剣の注文を一言一句聞き逃さず、羊皮紙に記していく。
「さて、一番重要なことだが、予算は?」
俺が問うと、御剣は金の詰まった袋を差し出す。
「これでお願いします」
「……よし、これで請け負った。製作中に何かトラブルがなければ、1週間程で完成するだろう」
「わかりました。では、1週間後に」
同時刻、ギルド。
俺は、同じテーブルにいた戦士風の男から、品定めでもするような目で見られていた。
男の名前はダスト。兄さん曰く、『名は体を表すの体現者』。借金を返すために借金を元手にギャンブルするろくでなし。
そんな男に絡まれたものだから、一体なにをされるのか警戒している。
「……ハルキの弟であるお前に、俺から1つ依頼がある」
「依頼?」
どんな無理難題をふっかけられるのか、俺は咄嗟に身構える。
「実はな、街の冒険者達の間では、お前の兄貴とクルセイダーの嬢ちゃんがデキてるって噂がある」
「兄さんとダクネスが?そうは見えなかったけど」
「お前は知らないかもしれないが、あの2人は普段から一緒に行動しているのが目撃されている。クエストに行くのも、飯を食うのも、寝るのも一緒なんだぜ」
「じゃあ、俺とアクアはどうなるんだ。飯も寝床も一緒だったぞ」
「それだけじゃねえ。たまにダクネスがハルキに気を遣ってか宿に泊まるんだが、夜中にハルキが部屋に入ってはイチャイチャして、朝には何事もなかったかのように振舞ってるらしいぜ」
「それは流石に深読みしすぎだと思う」
「んなことはわかってる。だからこそ、カズマには噂の真偽を確かめてもらいたいんだ」
噂話の調査。正直面倒くさいが、俺にとっても悪い話じゃない。仮に噂が事実だった場合、
「……まあ、2人の動向を見張るだけの簡単な仕事なら、請けてもいいぞ。肝心の報酬は?」
報酬の話を持ち出すと、ダストは周囲を見渡して小声で話し始めた。
「この街にはな、サキュバス達がこっそり経営している、良い夢を見せてくれる店があるらしい」
その時、俺の下半身に電流走る。
サキュバス。男性の夢に相手好みの姿に化けて現れるという、女性悪魔。日本では空想上の存在だったけれど、ここは剣と魔法のファンタジー世界。魔王にアンデッド、女神がいるのだから、悪魔も実在するのか。
しかし、そんな素晴らしい店がこの街にあったのか。そういうお店があれば、性犯罪の抑止になるだろう。誰もが賢者タイムであれば、穏やかな心でいられる。発散できずにイライラすることもなくなる。この街の治安の良さには、彼女達の存在が大きいのか。
「らしいってのは、その店が街の何処にあるのかまだ把握していなくてな。で、報酬なんだが、その店で俺が奢ってやる」
「ってことは、依頼の期限はその店を見つけるまで?」
「いや、期限は1週間くらいで頼む。明日明後日で見つかったりしないだろうし、そっちの依頼もそのくらいの日数は必要だろ?」
「わかった」