この兄弟に祝福あれ   作:大豆万歳

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うさ耳のウィズ可愛い

(; ゚Д゚)←お気に入りの数を見た時の自分の顔


第8話

「明日はダンジョンに行きます」

 

 和真が冬将軍に首を刎ねられ、今日で1週間が経過した。戦闘が許される程度に回復した和真が、ダンジョン行きを提案する。

 爆裂魔法が使えないから嫌だとめぐみんは猛抗議し、アクアはダンジョンに潜るならパーティーに盗賊は必須だと言う。そしてダクネスは冬将軍での件を引きずっているのか、自分もダンジョンに同行すると立候補する。

 

「ダンジョンに潜るのは俺だけだ。ただ、ダンジョンまでの道中に危険なモンスターが出ないとも限らない。その時の護衛は任せた。盗賊スキルもクリスから教わってるから安心してくれ。……本当なら兄さんにはアドバイザーとしてついて来てほしかったけど、仕事優先でお願い」

「わかった」

「その代わりと言ってはなんだけど、何か武器を貸して」

「おう」

 

 俺はダガーなどの軽量武器を取り出し、並べていく。

 

「どれがいい?」

「ん~……これでモンスターを輪切りにしてくる」

 

 武器を手に取りながら選んでいた和真は、ククリナイフを手に取る。

 

「気分はアリス・アバーナシーか?」

「いや、キース・ラムレイかな」

「ハルキハルキ」

「はいハルキです」

「これだけの武器を何処に収納していたんですか?それらしい木箱もないですし、衣服に隠すにしてもこの数は隠し切れないと思うのですが」

「……企業秘密です」

 

 俺はめぐみんの隣で武器をじっと眺めているアクアに視線を送った。

 

「じゃあ、明日に備えてアイテムとか買ってくるから。お仕事、頑張ってね」

「いってらっしゃい」

 

 

 

 

 そして、当日。

 工房で刀の製作に没頭してると、不意に工房内の空気が冷えた。何事かと入り口を見ると、早歩きで工房に入るアクアに続いて、和真達が入ってきた。

 アクアは神棚の前に立つと正座して手を合わせ、何かぶつぶつと呟いている。

 

「天照様、天照様、聞こえますか?水の女神のアクアです。お聞きください。つい先ほど、サトウカズマという引きニートが、アンデッドを呼び寄せるという理由から私をダンジョンに置き去りにいたしました。酷いと思いませんか?思うでしょう?なら……」

「おい和真。何があった」

「実は……」

 

 ~少年説明中~

 

「……成程。言うことを聞かなかったアクアのせいで、アンデッドが大量に寄ってきたと」

「うん。でも、あいつが来たおかげで思いがけないお宝も手に入ったんだよ」

「……それだけに何とも言えないな。とりあえず、飯にするか。何が食いたい?」

「あ、今日の晩御飯は俺が作るから。兄さんは座って待ってて。丁度兄さんの手伝いして料理スキルも取得したからさ」

「わかった」

 

 和真が台所に立ち、めぐみんは手伝うと言って和真の隣に行き、残るは俺とダクネスと、長々と神棚にお祈りしているアクアのみ。

 

「……なあ、ダクネス。お前的に、リッチーとお嬢様のお話はどうだった?」

「……正直に言うと、私は彼女を羨ましく思ったよ。愛する人と共にいるために全てを捨て、幸せな最期を迎えたのだからな」

 

 意味深なことを口にするダクネスの表情は、どこか寂し気だった。

 

 

 

 

 さらに翌日の夕方。

 

「これか、祓っても祓っても悪霊が来るっていう屋敷は」

「うん」

 

 和真曰く、ウィズから何かスキルを教わろうとしたところ、彼女が魔王軍の幹部であることが発覚。アクアが討伐しようとしたが、自分には賞金がかかっていないし、アクアがいれば幹部が2,3人まで減れば魔王城の結界を破れるとウィズが言ったらしい。

 

「まさか、こんな身近に魔王軍の幹部がいたとはな。灯台下暗しとはこのことか」

「うん。それで、ウィズからスキルを教わるために実演してもらったんだけど、アクアが……」

 

 和真の視線が、隣で興奮したように叫ぶアクアに移る。

 予定通り和真はスキルを取得したが、どさくさに紛れてアクアがウィズを浄化しようとしたらしい。和真が途中で止めたところで、不動産業者がウィズの店に悪霊退治の依頼に来た。しかし、消えかかっているウィズにやらせるのは酷なのと、やってしまったと罪悪感に襲われたアクアが代わりに悪霊を退治すると名乗りでて、今に至る。

 そして業者の提示した報酬は、この屋敷の悪評が消えるまで無料で住ませてくれるそうだ。

 

「しかし、本当に除霊ができるのか?聞けば、今この街では祓っても祓ってもすぐにまた霊が来ると言っていたのだが」

 

 大きな荷物を背負ったダクネスが言ってくる。

 本来なら、悪霊が湧いてくる原因を突き止め、そこを叩くのが一番だろう。だが、あくまで依頼されたのは屋敷の除霊。

 

「……大丈夫だと、思う。なんせ、俺達にはアクアがいるからな。任せたぞ、対アンデッドのエキスパート」

「任せなさいな!……見える、見えるわ!この私の霊視によれば、この屋敷には貴族の男が遊び半分に手を出したメイドとの間に出来た子供、その貴族の隠し子が幽閉されていたようね!やがて元々体の弱かった貴族の男は病死し、隠し子の母親のメイドは行方不明に。この屋敷に1人取り残された少女は、やがて若くして父と同じ病に伏して両親の顔も知らずに1人寂しく死んでいったのよ!名前はアンナ=フィランテ=エステロイド。好きな物は……」

 

 屋敷に両手をかざして目を閉じたと思えば、テレビに良く出る自称霊能力者みたいなことを口走り始めたアクアに、俺達は胡散臭い詐欺師でも見る視線で眺めながら、考えた。

 安請け合いしてしまってよかったのか、と。

 そして、夜半過ぎ。

 鎧を脱いで寝間着に着替え、各自で割り振った部屋で寛いでいた。そろそろ寝よう、そう思って瞼を閉じようとしたところに……。

 

「ああああああっ!?わあああああっ!?」

 

 アクアの叫び声が木霊した。

 

「どうしたアクア!何があった!大丈夫か!?」

 

 アクアの部屋に大急ぎで駆け付けた俺と和真の前には、酒瓶を抱えて泣いているアクアの姿が。

 

「……おい、どうしたアクア。お前が酔った勢いで奇声を上げたとか言ったら、酔いが醒めるまでクリエイト・ウォーターで水をぶっかけるぞ」

「ち、違うのよカズマ!この空になった酒瓶は、私が風呂上りに大事に飲もうと取っておいた凄く高いお酒なのよ。それが、私が部屋に帰ってきたら、見ての通り空だったのよおおおお!」

「和真、寝るか」

「そうだね。じゃあ、お休み」

「ちょっと待ちなさいよ、冷血兄弟!これは悪霊の仕業よ!この屋敷に集まってきた野良幽霊か、この屋敷に憑いている貴族の隠し子の地縛霊か!ちょっと私、屋敷の中を探索して目につく霊をしばき回してくるわ!」

 

 怒りに燃えるアクアが、部屋を飛び出して屋敷内を駆け回る。

 

「……なんだ、一体何の騒ぎだ?」

「もう結構遅い時間なんですから、勘弁してください。何事ですか?」

 

 騒ぎを聞きつけたのか、遅れてダクネスとめぐみんがやってきた。

 

「アクアが大事に取っておいた酒がなくなったから、霊をしばき回してくるんだと。酒を飲む程度の悪事しかできない霊のことはアクアに任せて、寝ようぜ。おやすみ」

 

 

 

 

 一体どれほど時間が経ったのだろう、俺は、ふと夜中に目が覚めた。

 屋敷はとっくに静まり返り、深夜はとっくに回っている。映画やゲームなら、今頃幽霊なんかが動き出している頃合いだろう。その証拠に、部屋の隅に見覚えのない西洋人形が座っていた。

 

「早速でたな」

 

 俺が体を起こすと、連動するように人形がふわりと浮遊する。そして、俺と対峙するような形になった瞬間、飛び込んできた。

 

「成仏して、どうぞ」

 

 俺は冷静に聖水の入った瓶を取り出し、中身を人形に浴びせる。

 すると、人形の口から青白い光のようなものが吐き出され、霧散していった。

 

「兄さーん!助けてー!人形が、人形がああああ!」

「はいはい」

 

 ドアの向こうから、和真の絶叫と扉を叩く音が聞こえた。

 俺はドアを開けると、和真が涙目で部屋に飛び込んで俺の背後に隠れた。

 遅れて部屋に侵入してきた人形を全て除霊し、動かなくなった人形を外に放り投げて扉を閉める。

 

「大丈夫か?」

「……一部大丈夫じゃない」

 

 和真のほうを振り向いて声をかけると、今度は足をモジモジさせている。

 

「えっと、この年で言うのは凄く恥ずかしいんだけど……トイレまで連れてって」

「わかったよ。しかし、懐かしいな、和真。ホラー映画見たり怪談聞いた夜に、怖いからトイレに連れていってってお前が言ったの、覚えてるか?」

「ごめん、今それどころじゃない」

 

 昔のことを思い出しながら、俺は和真を近くのトイレに連れていき、用を済ませるまで暫しドアの前で待機する。

 

「……はあ、ありがとう兄さん。おかげでスッキリした」

「そりゃどうも。それで、後はどうする?部屋に戻って寝るか?」

「いや、この状況で寝るほど神経太くないから。アクアは絶賛除霊中で、ダクネスはクルセイダーだから神様に祈るくらいして追い払う程度のことはできるとして……めぐみんを探そう。屋敷を吹き飛ばされたくない」

 

 和真の提案に同意し、俺達はめぐみんの探索を始めた。道中で遭遇した人形には聖水を浴びせ、一番近くにあったアクアの部屋の扉を和真がノックする。

 

「めぐみ~ん。いるか~?いたら返事を゙っ」

 

 和真が最後まで言うより早く、めぐみんが扉を勢い良く押し開けたせいで、和真が額を押さえて蹲る。

 

「すすす、すいません!一人で待っていて心細かったところにカズマの声がしたので、つい!大丈夫ですか?ここが何処で、自分が誰か、分かりますか?」

「ここはアクセルの街。俺はお前のような問題児の世話に日々手を焼いている冒険者、サトウカズマだ」

 

 安堵した表情になったのも束の間、はっとしためぐみんが股に手を当ててモジモジし始めた。

 

「……めぐみんもお手洗いか?」

「…………はい」

 

 か細い声で顔を赤くして言っためぐみんを連れて、俺と和真はトイレに向かった。

 

「カズマー?ハルキー?そこにいますかー?本当に、本当にいますかー?」

「いるよ。いるからさっさと済ませてくれ」

「……あの、流石にちょっと恥ずかしいので、大きめの声で歌でも歌ってくれませんか?」

「あのな、めぐみん。今後のクエスト次第では野外やダンジョンでこんな状況になるかもしれないんだ、今のうちに慣れたほうがいいんじゃないか?」

 

 などと言ったが、一応は本人の要望に応えて、和真とデュエットを披露することにした。

 歌といっても、日本の歌しか知らないので、アカペラで適当に、大声で。

 

「……ふう。2人とも、ありがとうございました。聞いたこともない、変わった歌ですね?前から思っていたのですが、2人は何処の国の出身なんですか?」

「夜中にトイレの前で歌を歌う風習がある、日本っていう素敵な国の出身だよ。ほら、アクアを探して合流しようか」

 

 俺を先頭にし、和真とめぐみんが後ろをぴったりくっつく形でアクア達を探す。

 人形に遭遇しては聖水を浴びせ、遭遇しては聖水を浴びせてを繰り返すこと数分。

 

「『ターンアンデッド』!」

「お、いたいた」

 

 ちょうど除霊をしたところなのか、アクアが魔法を詠唱する声が曲がり角の向こうから聞こえた。

 

「あら、いい所に来たじゃない。ねえカズマ、屋敷内に幽霊が隠れていないか、敵感知で探してくれない?」

「お、おう。……3、いや5匹いるな。俺達の背後から来てる」

「はいは~い。サクッと除霊してくるから、ここで待っててちょうだい」

 

 

 

 

 そして、夜。

 

「つまり、アクアが手を抜いた結果が今回の騒動の発端だと?」

「うん」

 

 台所で野菜と肉を切る和真と鶏ガラから出汁を取っている俺は、隣で半殺しにした(半分潰した)米を棒に巻き付けて焼いているアクアを見る。

 和真曰く、ギルドが調査したところ、街の共同墓地に巨大な神聖属性の結界が張られていたせいで、行き場を失った霊が街中の人が住んでいない空き家に住み着いたらしい。

 そして、その結界を張ったのは定期的に成仏させるために墓場まで行くのが面倒になり、墓場から霊の居場所をなくせば適当に空気に散っていなくなるだろう。という、アクアの手抜きのせいで悪霊騒ぎが起きたらしい。

 

「あれがなかったら臨時報酬で借金返済が1歩進んだのに……まあ、過ぎたことを言ってもしょうがない。次からは手抜きしようなんて考えるなよ?」

「……肝に銘じます、カズマさん」




このすば3期放送しないかなぁ。アニメで喋って動くアイリスが見たい。それもスマホの小さい画面じゃなく、テレビの大画面で

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