ファイアーエムブレム風花雪月 闇うご滅殺√ ギムレーを添えて 作:モンテベロ侯爵
邪竜ギムレー
ハイ、始まりました。え~今回が、最終回という事で、張り切っていきたいと思います。
前回は、古代のイキリ山賊を、成敗したところでしたね。今回は~、皆様お待ちかねの~シャンバラ攻略。または、不快なヒゲ親父の首を捩じ切る作業ですね~
ヒゲ野郎をぶち殺せば。晴れてエンディング……それじゃあ。サックと殺っちゃいましょう♪
「………………」
秘密都市シャンバラ。そこは重苦しい雰囲気に、包まれていた。
映像に映るは、大虐殺。アガルタの民が、十傑が、そして解放王ネメシスまでもが……
「こんな筈では……」
そう呻くのも、無理はない。もはや当初の計画は破綻し、あの怪物を止める術はもう無い。
誰もが、口を噤む中、首領のタレスが、言葉を漏らす。
「……撃て」
「は?」
タレスの言葉に、部下の一人が、間の抜けた返事を返す。
「撃てと言っているのだ! アグニを! あの獣に!!」
最早そこに、常に物事に泰然と構える。アガルタの首領の姿はなく、目の前の恐怖を払拭したいだけの老人の姿があった。
女神が降臨する前の時代。ソレは大国間の牽制に使われ、そしてソレが一たび使用されれば、街も人も平等に、消し去っていった。故に女神の時代に、ソレは禁忌の遺物として、封印されたはずだった。
シャンバラの魔力炉が稼働する。心臓が血液を循環させる様に、膨大な魔力がシャンバラに充満する。
「……タレス様。準備整いました」
副首領のミュソンがそう告げる。だが苛立ちを抑えきれないタレスは、不快そうに手を払い、先に進めよと指示する。
天の頂に存在する。古の時代に打ち捨てられた“遺物”が息を吹き返す。ソレの真の名は“大陸間弾道ミサイル”かつて、アリルの地を焼いたソレは、ただ一人を滅ぼす為に放たれた。
『魔力の揺らぎ……? 何かが来る……』
ソレらは、まるで流星の様に、夜空を切り裂く、ただソレらと流星の違いは、流星は夜空を輝かせ、役目を終えると天の頂の中に溶けて消える。
だが、ソレらは違う……天の頂に存在する“
『ガァァァ!』
何だこれは……? 熱い……熱い! 身体が……焼け落ちる! 虫けら共! 我に何をした!?
たまらずに竜体を呼び出し、衝撃に備える。
……来た! あの杭か!? 駄目だ…避けきれない!
ギムレーの竜体に、2発目が着弾する。
『グゥゥゥ……!』
実体で受けるより、遥かにマシとはいえ、この忌々しい杭を早く何とかせねば、こちらが持たないと、判断したギムレーは、これを放つ者を探す。
(有り得るとしたら、先ほど感じた。魔力の揺らぎ……)
思案中にも、杭は降り注いでいる。3発目が着弾し、ギムレーは苦悶の表情を浮かべた。
画面に食い入る様に、見つめる者たちがいた。アガルタの民だ。
アグニがギムレーの身体に、突き刺さる度に歓声が起こる。喜ぶのも、むべもない。
アガルタの精兵に魔獣。更には切り札として投入した。解放王ネメシスまでもが、あの怪物に為す術なく、殺された事実を少しでも、和らげたいのだ。
ギムレーに6発目のアグニが突き刺さると、更に歓声が上がる。だが、その喧騒に加わらない者もいる。タレスだ。
(何だ……この違和感は? 我々は確かに奴を追い詰めているはずだ……なのに何故!?)
周囲の喧騒とは裏腹に、タレスの焦燥感は募り続けた。
画面に目を向けると、そこにはアグニの直撃を受け続けている怪物の姿が映る。
(そうだ! 勝っているのは我々だ! 何を恐れて……)
思考が中断され、口を開けた怪物と目が合う。
その瞬間。タレス以下、アガルタの民に強烈な光と爆音が襲う。
ハイ、ギムレー様に有効打を与えて有頂天になってる。アガルタの民共に、調子に乗るなと言わんばかりに、射程を無視した。渾身の邪竜のブレス……
うん、これシャンバラ消滅したんじゃないかな? 明らかにフルパワーのブレスが直撃してますしね。ヨシっ! これでアガルタの糞虫達も無事成仏したことですし、フォドラの未来は明るいですね!
さぁロードが終われば、タレスさんとご対面ですよ! ワクワクしますねぇ~
画面に映るは、アガルタの民の地下都市【シャンバラ】そして、中央に位置するは幹部たちが集う司令部。だがそこはすでに、幾多の瓦礫と倒壊に巻き込まれた。憐れな犠牲者たちの死体で満載であった。
これらの惨劇は、天変地異が引き起こした訳ではなく、また人が引き起こしたものでもない。
異界からフォドラに渡った。異形の怪物。かのモノが放った真の“神の一撃”その災厄をもってして、シャンバラは見るも無残に壊滅した。
その一撃は正に“震天動地”グロンダーズ平原から放たれた光は、遠く【レスター諸侯同盟】ゴネリル領南部を焼き払った。
崩壊の中、幸か不幸か、生き残った者もいた。タレスだ。
「何故だ……何故こんな……正しき民である。我々が……」
いくら自問自答しようと答えは出ない。ただ解る事は、彼らは再び敗北したという事だ。一度目はナバテアの獣共に、そして二度目は、突如として現れた規格外の化物によって。
もはや周囲に有るものは、瓦礫と死体の山、その中には自身の腹心である。ミュソンも含まれていた。
この事実を以てして、タレスの脳裏に一つの言葉が浮かぶ。
「タレス様! 何処です! 何処におられるのですか!」
若い兵が、崩壊した司令部に駆け込んでくる。
「此処だ……足が潰れて、身動きが取れぬ。早く手を貸せ」
「嗚呼……お労しや……さあ急ぎ某に御掴まり下され、タレス様がご無事であれば、いくらでも立て直しが出来ます!」
その若者は、この絶望的な状況下でも、お道化たようにタレスに奮起を促す。
「お主、名は?」
「マニと申します」
(中々に気骨がある……まだ希望はあるという事か……」
「ではマニよ、足の治療を頼む。そして現在の状況を掻い摘んで説明してくれ」
怪我をした足に応急処置を施す途中、マニはタレスに状況を説明する。
「ははっ! 敵の攻撃を受けシャンバラの魔力炉は破損。復旧に力を注ぎましたが、2時間前に完全に停止いたしました。現在は非常用のE-K259通路に、人員と物資を集積しております。タレス様が合流次第、脱出する予定です」
躊躇無く脱出を唱えた。
(意識を失って数時間か……そして魔力炉の停止……もはやシャンバラは完全に終わりか……)
「そうか……組織の再建には、長い時が必要だな」
そう呟き、鋭利な頭脳を回転させる。
(もし我らが、弱体化したことを、
「タレス様?」
「……少々考えておった。暫しの間は王国に潜伏だ。そこなら協力者とアランデルの領地が近い」
たらればを考えても仕方がない。名残惜しいが、今はシャンバラを脱出するのが先決だ。
道すがらの間。タレスは様々な事を思い浮かべた。
繁栄を謳歌する我らに、突如として襲い掛かったナバテアの者共……そして我ら人類は敗北し地上世界を追われた。苦難の時代にしてアガルタの始まり。
地上世界で大手を振って歩くナバテア人……そして卑しくも人の尊厳を捨て、ナバテアの家畜として生きることを選んだ獣共……
地上には悪が繁栄し、最後の善である我らは地下深く……この世界は全てがあべこべ。
だが転機は訪れる。薄汚い盗賊であったネメシスを使い。親玉のソティスの遺骸から造り出した【天帝の剣】そして副産物としての【紋章】
戦力を整えた我らは、ザナドを焼き払うことに成功……正に善が悪に勝利した瞬間だった……
だがっ! あの女! 憎きセイロス! 獣共を唆し、アドラステア帝国を建国すると地上世界の守護者を僭称し、ネメシスを討つと。地上をセイロス教なる邪教で支配した忌々しい毒婦!
そして我らは地下に逆戻り……地上世界には巨大な帝国と愚民を製造する邪教……
我らは地上を解放する為、行動を起こす。まずはファーガスの領主。ルーグを唆し、帝国を分断すると、然るに我らの拠点……シャンバラの安定化の為、レスター地方を王国から独立させた……
そして憎き、あの毒婦の血を受け継ぐフレスベルグを使い。神を屠る炎である【炎帝】を造り出した……これで今度こそ、憎きナバテアを滅ぼし、地上世界を取り戻せる!
なのに何故だ!! 何故、お前は儂の、アガルタの邪魔をする!! ギムレー!!
「着きましたぞ! この先に仲間たちが居ます! さあ行きましょう!」
思考が中断される。そうだ。まだだ我らが生きている限り、【希望】は不滅なのだ。
「……え……?」
そこにあるモノは死体。死体。死体。死体。死体の山。
頭を砕かれたモノや、胴体を真っ二つにされたモノ。更には木端微塵になったのか、手足が周囲に散りばめられていた。
余りの光景とそれに付属する臭気にやられたマニは思わず、顔を背ける。
だがその瞬間
「がっあっ!!」
何者かがマニの首を掴む。
そしてその衝撃で、マニから振り落とされたタレスは【絶望】を見る。
「ギ……ギムレー……」
『マタ、逢ったね。虫ケラ……スグに僕が引き裂いてアゲルよ……』
こんなだったか? こんな凶悪だったか? この男は?
目は血に染まったように紅く染まり……右腕は人の形ではなく、異形と化している。
(あの腕は正に【竜】……)
ギムレーはその異形の腕でマニを締め上げる。
そして奇妙な事が起こった。締め上げられているマニが膨らみ始めたのである。
「ぷぎゅぅぅ……」
屠殺された豚の様な言葉を発し、限界まで膨らんだ風船の如く、マニの身体は弾けた。
「あ……ああ……」
タレスは、マニの血液、臓物を身体に浴びるも、放心状態から抜け出せない。
それもその筈だ。たった今、目の前で【希望】が潰えたのだ。だがそれで終わりではない。
タレスに、逃れられない【破滅】が降りかかる。かつて人類を襲った【破滅】の様に……
『漸くだ……我の中の僕がノゾンダ事を……ガァ嗚呼ああ!!』
ギムレーは理性を無くしたように、雄叫びを上げると、全力でタレスの頭蓋に拳を叩き込んだ。
自らの独善の為、様々な人々の人生を狂わせた者は、壁のシミとなり、その生涯を終えた。
その日、フォドラ大陸の裏で暗躍した。闇の勢力は誰にも知られずに、突如として現れた【邪竜】により呆気なく滅んだ。
『はぁはぁ……カラダが熱い……思考がまとまらない……」
青年は死体の山で佇む。そして思う。自分は何なのかを……
『我はギムレー……』「僕はロビン……」
「親友の■■ムを殺した』『忌々しい最愛の妻である。チ■を殺し、ナ■■の血脈を絶った」
『だが我は滅ぼされた』「愛娘と親友の娘は僕の望みを叶えてくれた」
「だけど僕は」『我は存在する』
『「人々の願いを叶える為に……」』
二つの思考が頭の中で氾濫する。そして青年は絞り出すように呟く。
「ベレス……君に逢いたいよ……』
弧月の節 ガルグ=マク大修道院 近郊
この日、フォドラでは、歴史的大事件が起きた。
【アドラステア帝国、セイロス聖教会に宣戦布告】
この一報に周辺住民は、大混乱。急ぎ避難を開始し、街道は避難民の列が出来ていた。
だがそこに避難民とは逆に、ガルグ=マク大修道院に向かう者がいた。
「おいっ! 兄ちゃん! そっちはガルグ=マクの方だぞ!」
中年の男は親切心から、青年に声をかける。
「帝国軍が攻めて来るんだ。悪いことは言わねぇ。俺達と避難しようや」
しかしその青年は俯き、小声で「逢わなければ」と繰り返すだけだった。
それに業を煮やした男は、青年の腕を掴み、引き留めようとするも。
「うっ!」
男はその姿を確認し、絶句する。
目は血のように紅く、右腕は異形。何より青年の皮膚には鱗の様な物に覆われていた。
青年は男の手を振り払うと、ガルグ=マク大修道院に歩を進めた。
「何なんだよ……アレは……」
考えても答えは出ない。男は頭を振るい避難するために街道に戻った。
ガルグ=マク大修道院に伝令が走る。小さな朗報を届けるために。
「ベレス! 大変だ! ロビンさんが帰ってきた! 生きてたんだよ!」
伝令は喜びに満ちた声色で、ベレスにロビンの生還を伝える。
「ロビンが……? 彼は今どこに?」
「正門の前に居る! 早く会いに行って来な!」
ベレスは神妙な顔で頷き、最愛の人に逢うために駆けだした。
彼女は駆けながら、様々な事を思い浮かべる。
ジェラルドが行方不明の為、実質解散状態の傭兵団の今後
そして自身に起きた異変
だがそれらも些細な事だ。今は兎に角、「彼に逢いたい」今はそれが彼女にとって全てなのだ。
大修道院正門前、そこは異様な光景に包まれていた。
一人の青年を兵士が武器を携え、取り囲んでいたからだ。
だがこれには訳がある。簡単な話“帰ってくる時期が悪い”これに尽きた。
さらに姿を消した経緯も悪い。ジェラルドが拉致され、それに続く形でロビンも行方不明。
これでは怪しさが倍増。この扱いも当然なのだ。
そして遂にこの均衡を破る者が現れた。ベレスである。
「ロビン!」
彼女はロビンの姿を捉えると、一目散に駆け寄り。ロビンの身体を抱きとめる。
「ベレス……」
「ロビン……帰って来てくれて良かった。君がいない間、私は……」
「ごめんよ……ジェラルドさんを助けられなかった……ベレス……ごめんなさい……』
ジェラルドの死。これに衝撃を受けるも
「予感はしていた……でも君が無事でいてくれたから……」
彼女は悲しげに微笑み、抱擁を強める……これ以上自分の大切な人を失わない様に……
「それに私達は、あの日誓ったじゃないか【死がふたりを分かつまで】と……ロビン?」
何の反応も示さないロビンを訝しがり、ベレスは顔を覗き込むと……ロビンは呟く。
ガルグ=マク大修道院は陥落した。
この日から五年半の狂乱の時代を後の歴史家は、こう名付けた【黄昏の時代】と
1185年 レスター諸侯同盟領 デアドラ
「聖戦だ! 戦える者は武器を取れ! 恐れることはない、我らには主の加護がある! 最後の勝利を信じるのだ!」
酒場の外では教会の司教が、がなり声を上げ、兵士を募集している。だがそれに応じようとする者は少ない。皆誰もが疲れているのだ。
そしてそれを酒場で聞く者たちが居る。身分は様々、商人から傭兵などだ。
「はは! 威勢が良いね~教会さんは~」
男は酒瓶を片手に、司教の有難い言葉に不謹慎に耳を傾ける。
「オイ、笑い事じゃないぞ。同盟と教会が組んでなきゃ、ミルディン大橋だって危ない。あそこが落ちたら化物が大挙して同盟領に流れて来るんだぞ!」
それでも酔っぱらった商人は続ける。
「はっ! これが笑わずにいられるか! もうフォドラは終わりなんだよ!」
「おい声がでかいぞ……」
別の傭兵が商人を諫めるが、それでも商人は止まらない。
「王国はタルティーン平原で怪物の大軍と決戦して敗北。国王のディミトリは行方不明」
「挙句、コルネリアとフラルダリウスは大喧嘩。コルネリアが死んで王国は死に体よ!」
「帝国はメリセウス要塞が突破されて、もう二月も帝都アンヴァルとは連絡がつかねぇ」
「いいか? 俺は適当な事を言ってる訳じゃないぞ。もう国として機能しているのは、ここ同盟だけだ!」
一息に話すと商人は、酒を一気に飲み干し、力なく呟く。
「もう終わりなんだよ……」
その言葉に海千山千の商人。歴戦の勇士の傭兵も顔を上げることが出来ない。
暗く沈んだ。雰囲気の中、凛とした声が響く。
「失礼ですが、兵を募集していると聞きましたが、どちらに向かえばよろしいでしょうか?」
傭兵は面を食らいながらも、募集場所を教える。
「……その通りを出ると広場が見える。そこで教会が募集してるよ」
傭兵は何気なしに、自分が応対している相手を観察する。
猫っ毛気味の髪は青く、今のご時世にしては珍しく長く整っている。どこかの良い所のお嬢様なのか?
「あ~悪いことは言わねぇよ。お嬢ちゃん。やめとけやめとけ。もう無駄なんだよ~」
商人がだらしなく少女に忠告するも
「いえっ! これが私の使命ですから!」
少女はそう言うと、踵を返し、緑髪の少女に声をかける。
「マーク、場所が分かりました。早速行きましょう」
「はいっ! ルキナさん!」
そう言いと二人は酒場を後にした。
そして取り残された大人たちは、また静かに飲み直すのだった。少女たちの無事を祈って……
それは狂乱の時代が終わる。一月前の事であった。
ハイ、これにて闇うご滅殺√終了です。お疲れ様ですたー
え~最後は解り辛いですが、光の杭をボコボコ受けたギムレー様がバグっちゃう……まあつまりは銀雪のレア様みたいになったという事です。
まぁプレイ動画の感想としましては、リアルで何回か心折れたので、完走出来たのが嬉しかったです(小並感)
それではまたどこかで会いましょう。
今更ながらの設定
この小説のギムレー様について
覚醒本編において、ロビンがギムレーに覚醒し、クロムを殺害する。その勢いで、チキを殺害。
これでナーガの血脈を断つことに成功する。だがこの世界は絶望の未来に繋がる事は無かった。
何故ならこの世界には、未来から来たルキナとナーガとギムレーの血を継ぐ、最大のイレギュラーである。マークが居たからだ。
ルキナは体勢を立て直すと。マークの力を借り、覚醒の儀を決行。そして最後の決戦によりギムレーを打ち倒すことに成功する。
だがギムレーの血を継ぐマークが行った覚醒の儀ではギムレーを消滅させる事は出来なかった。
そしてフォドラ大陸に、力と記憶を失ったギムレーの“残骸”が漂着する事になった。
この小説のアガルタについて
ナバテア人との生存競争に敗れた“人類”
過酷な地下世界を生きる為、体の大部分を“サイボーグ化”している。