デジモンマイソロジー~Myth reboot into the future~ 作:テイリュウ
コロナが少しでも早く収束し、大きなイベント会場でデジモン好きの人達と皆で一緒に盛り上がりたいですね。
今回のストーリーは会話メインですが少しシリアスな雰囲気です。
遺跡での一件から少し時間は経ち、太一達は森から一番近い場所に造られている村へやってきていた。
「治療を受けさせてくれてありがとうございます村長さん。おかげで助かりました」
「いやいや何をおっしゃいますじゃ。何があったかは存じませぬが、あなたにあの森の調査を依頼したのはこの村に住むわしらじゃ。なればこれくらいするのは当然のことじゃよ」
そこは太一が森に訪れるきっかけになった森の調査依頼を彼に頼んできた村でもあり、村と呼ばれてはいても技術の進んだこの世界では大型施設の他に対デジモン用装備や非常時のための設備も備えたその場所は自分たちの価値観からすれば小さな町程度の生活水準を備えていたので、太一は少しでも早く医者に少女の容態を診てもらうためにアグモンを再びグレイモンへと進化させて村へ自身と少女を運んでもらい、そのまま村で運営している病院に駆け込んで治療を受けさせてもらっていたのだ。
「それにしてもあなたがグレイモンに乗って村にやって来たときは驚きましたぞ」
「すみません、急を要する状況だったんで」
「分かっておりますとも。しかしいったいあの森で何があったのですじゃ?」
「そのことなんですが...」
村の住人達も最初は成熟期デジモンのグレイモンが村に向かって来たのを警戒したが、その頭の上に森の調査依頼を申し込んだ太一がボロボロの状態で乗っているのを確認すると直ぐに村へと入れてそのまま病院まで通してくれた(と言うよりも大急ぎで運び込まれた)。
そして
「というわけで、あの森には凶暴なデジモンが何体かいましたがこちらが何もしなければ危険はないと思います。だけど出来ればあの森には近づかないように気を付けてください」
「分かりましたですじゃ。村の者たちにはわしからくれぐれも伝えておきますゆえ、心配なさらんでくだされ」
治療が終わった太一は自身の見舞いに来てくれた村長に依頼である森の調査結果の(危険な状況だっただけに、万が一の場合がないよういろいろ誤魔化して)報告をしていた。
「この度の件については村の者を代表して礼を言わせて下され。本当に感謝申し上げますじゃ」
「いやこちらこそ、村にいきなり押し掛けた俺たちを快く治療してくれて本当に感謝してます」
「ホッホッホッそう言ってもらえると気持ちが楽になりますじゃ」
「それでその話とは別に一つお願いがあるんですけど」
「?」
感謝の意を伝える村長に謙遜する太一だが、そこでふいにあることをお願いする。
太一が村長への報告を終えて
「タイチ何してるの?」
「通信、仲間に連絡しようと思ってな。それにしても光子郎のやつ怒ってるだろうな~」
「コウシロウって?」
「俺とは昔から付き合いがあるやつでさ、頭がすごく良くて頼りになるんだ」
「へぇ~」
アグモンと話す太一は、身体のあちこちに包帯が巻かれた状態のまま村長に頼み貸してもらった通信装置を操作し光子郎に連絡を取ろうとしていたが、本当なら遺跡から出てすぐに彼は光子郎と今回の事件について相談するための通信を入れるつもりだった。
しかし太一の使っていた通信機は遺跡での戦闘時に壊れてしまっていたため、光子郎と連絡が取れずに困っていた太一は村に設備されている通信装置を借りることを思い付き、村長に頼んで特別に現在いる病院に備え付けてあった通信装置を使わせてもらっていた。
「えっと、光子郎の端末につなげるには.....」
「タイチ~まだ終わらないの?ボク眠たくなってきちゃった」
「しょうがないだろこういったこと苦手なんだから。たぶん話にも時間がかかるから、暇ならアグモンはそっちのソファーで休んでて良いぞ」
「う~ん、じゃあそうする~。おわったら呼んでねタイチ~」
「ああ、分かったよアグモン」
慣れない装置の操作を頑張る太一だがなかなか通信が繋げられず、そうしてるうちに彼の横で付き添っていたアグモンも暇を持て余しだして、とうとう待ちくたびれてソファの上でぐっすりと寝てしまう。
「.....よし、やっと繋げられた」
アグモンが寝た後も一人で頑張っていた太一だが、ようやく光子郎が専用で使っている通信装置へ通信を繋げられると、画面に段々と映像が映り始め
「あ、光子ろ...」
「太ぁぁアアア一ぃぃぃイイさァァアアァんッ!!!!?」
通信が繋がったとたん、画面の向こうから光子郎がものすごい大声で太一に怒鳴りかかってくる。
「なにすんだよ光子郎、そんな大声なんか上げて。言っとくけど此処は病院なんだぜ?」
あまりの大声にキーンとなる耳を抑えながら怒り心頭といった様子の光子郎に太一はいつものように話すが
「大声も出しますよ!!いったい今まで連絡も寄越さないで何してたんですか!?こっちから連絡をしようとしても繋がらないし!それに病院って...、あぁッ!?しかもまたそんな大怪我をして!」
「まーまー、そこは俺が悪かったから、いったん落ち着けよ光子郎。何があったかちゃんと説明するから」
此処が病院だと教えても全く収まる様子のない光子郎に、太一は落ち着くよう促すが
「いえ、その前に今回の太一さんの問題についてしっかり言わせてもらいます!!」
「...マジかよ」
そう言い放つご立腹な光子郎の顔を見て、付き合いの長さから今回は
それから小一時間ほど光子郎に説教を言われ続け太一がもう勘弁してくれという状態なってようやく光子郎も渋々説教を止めて、そうして二人は今回の事件について話をしだす。
「...ってことがあったんだよ」
「なるほど、それは確かにいろいろ気になりますね」
太一から事件の詳しい内容を教えられ、光子郎は興味深いといった様子で思考をし始める。
「だろ?それでさ、頼みなんだけど...」
「分かってます。太一さんを襲った奴らや紋章のことについて、こちらでいろいろと調べておけば良いんですね」
「流石は光子郎、話が分かるぜ」
だてに付き合いが長い訳ではないということか、太一の頼もうとしたことを詳しく言わずとも即座に理解してみせた光子郎は、ただと一言続け
「そうなると調べることが多いので、少し時間をもらいたいですね」
「分かった。何日くらいかかりそうだ?」
「だいたい...、一週間くらいは欲しいですね」
「一週間って、ちょっと長くないか?」
「こっちだっていろいろ忙しいんです。太一さんは暫くその村で安静にして過ごしていて下さい」
光子郎が提案した期間に、なるべく早く情報が欲しい太一は自分がそっちまで戻って手を貸そうかとも言ったのだが、調べるのが終るまでは村で療養しているようにと強く釘を指す光子郎に押しきられ、暫くこの村で療養することにした。
話しも終わって太一が通信を切ろうとするが
「それで、良いんですか?」
その前に光子郎が彼に声をかける。
「何が?」
「アグモンの事ですよ」
光子郎が言ったその一言によって太一の顔は曇り、自分の後ろでずっとソファに寝そべって鼻ちょうちんを作っていたアグモンに目を向けた。
しかし、その目はアグモンではなくどこか遠くのものを視ているように見える。
「やっぱりまだ割り切れないですか」
「.....」
「仕方がないですよね、あんなことがあったら........」
その様子に光子郎は気まずそうな顔をし、太一は普段の彼には似合わない弱々しい声で
「ああ、アイツはどう思っているか解らないけど。俺なんかが、アイツのパートナーで良いのかなって.......」
そう弱弱しく言葉をこぼす太一の目には、深い悲しみの色が宿っていた。
そんな様子の太一へ
「太一さんがどう思っていたとしても、僕は太一さんならアグモンと良いパートナーになれると、そう思っていますよ」
「......ありがとな」
光子郎が送った励ましの言葉に、太一は一言だけ礼を言うとそこで通信を切った。
暫くそこで苦しげな顔で立っていた太一だが、両手で頬を何度か強めに叩くと気持ちを切り替えたのか何時もの彼の顔に戻り、そこにちょうどアグモンが起きてくる。
「タイチ~話し終わった~?」
半分寝惚けた状態のアグモンに太一は何時もの調子で
「ああ、待たせて悪かったなアグモン」
「いいよ~べつに。それでこれからどうするの?」
「暫くはこの村に滞在するよ。いろいろ用意しようと思ってるし、それに.....」
「それに?」
「あの子の事も心配だからな」
太一の頭には遺跡で出会った少女の事が浮び、そうして話ていると二人に突然、病院の看護婦が駆け寄ってくる。
「居た居た!ちょっと君良いかな!?」
慌てた様子で太一に話しかけてきた看護婦に彼はどうしたのかと尋ねると
「実はあなたが連れてきた女の子、ちょっと困ったことになってて」
「!!?」
「取り合えずちょっとアノ子の所まで一緒にきてくれないかしら?って、ちょっと君!?」
看護婦が話を言い終わる前にすでに太一は走り出していた。
看護婦から話を聞いた太一は直ぐに少女のいる病室へ向かうと、病室の前に太一の治療をしてくれた女医と看護婦が二人で困ったような顔をして立っているのが見えた。
「どうしたんですか!?」
「ああ、貴方ね!ごめんなさい急に呼んだりして」
急いで病室の前まで来た太一は自分の治療を担当してくれた女医に何かあったのかと尋ねると
「実は、あの子が目を覚ましたんだけど.....」
「本当ですか!」
太一は思わず大声を出して話しを遮って女医に詰め寄るが、女医はそれを落ち着くように促してから話を続け。
「でも私達が近づこうとすると怖がって、全然話が出来ないのよ」
ほとほと困ったという顔で話している女医は、それでねと太一へ要件を話す。
「貴方あの子と顔見知りなんでしょ?だから貴方から話を聞いて、できれば説得してくれないかしら?いろいろ検査もしなきゃいけないから」
女医の頼みに太一は少し考えてから頷くと、試しに病室の扉を数回ノックしてみるが、返事はない。
少し迷ったが構わず中に入り中を見回すと、部屋の隅で毛布にくるまってうずくまっている少女の姿があった。
「...っ!?」
少女は部屋に人が入って来て怯えるように警戒したが、顔を見てそれが太一だと分かるとゆっくりと顔を出してくれた。
その様子を見て太一はゆっくり少女に近付き、しゃがんで視線を少女に合わせて
「あ...えっと.....、太一...さん?」
「うん」
おずおずと口を開いた少女に太一は頷いて優しい声で話しかけた。
「目が覚めたんだな。良かった」
「えっと.....その...はい...」
「そんなに畏まらなくてもいいって。普通に話してくれれば」
「あ...う、うん」
しっかりと自分の言葉に返してきてくれる少女に太一は内心でホッとする。
「それにしてもいきなり倒れたからビックリしたぜ」
「ごめんなさい.....、迷惑をかけたでしょ?」
「気にすることないって、それより体は大丈夫か?どこか痛む所はないか?」
太一が少女に体に異常はないか尋ねると
「ううん、大丈夫」
はっきりそう言った少女の顔色を見て太一は取りあえず一安心するが、少女は太一の姿をよく見ると辛そうな顔になり。
「ごめんなさい........」
「え?」
「私を庇って、太一さん、そんな大怪我を」
急に謝られて何かと思う太一だが次の少女の言葉で、あ~と自分の中でなんのことか納得した。
彼女は自分がいたせいで太一が怪我をおってしまったと自分を責めているのだと
「これは別に君のせいじゃないよ。もうかなり平気だし」
「でも.....!」
「あれは、俺の不注意が招いたことだ。だから君が気にする必要なんてないよ」
それが解って太一は少女に優しく諭すように話し、それにと続け
「俺が勝手に君を守りたかったからやったことなんだ。もしあの時、俺が無事で代わりに君が無事じゃなかったら、俺は自分で自分を赦せなかった。だから、君が気にする必要なんて無いんだ」
確かにあの時、少女を庇わなければ太一はこれ程の怪我をせずに済んだかもしれなかったが、だからといって少女を見捨てるなんてことは太一には出来ない。
いや、そんなことは認められない。
そんな太一の言葉を聞いていた少女の顔は少しづつ明るくなるが
「それに、君がいなかったらあの状況を切り抜けられなかった。ありがとな」
その言葉で、少女が顔を曇らせたのに太一は気付かなかった。
「そういえば、あのとき結局聞けなかったけど、君の名前は?」
太一が少女の名前を尋ねると、少女は暫く黙っていたが
「...わからないの.....」
「え?」
「わからないの。自分が誰なのかも、なんであんな所に居たのかも......」
「え?でも、あのとき....」
「あのとき...、太一さんを助けたいって思ったら急に、どうしたら良いのか頭に浮かんできて......。でも本当に私、自分が誰かもなにもわからないの」
不安そうな顔で少女が話してくれた彼女の予想外の現状に、太一なにを言えば良いのか分からなくなってしまう。
少女は、自分自身のことについての記憶すら全く無い、いわゆる記憶喪失と呼ばれる状態だった。
メインヒロインにありきたりな設定したなとは言わないで下さい。(願)
また少しだけ登場できた光子朗ですが、次回からまた暫く登場予定は有りません。
次回は少女と太一との関わりがメインとなります。