俺もめぐみちゃんみたいな幼なじみが欲しいものです。
「あの頃は若かった……」
「どしたの、誠司」
学校からの帰り道。誠司が何かを悟ったかのような表情で呟いた。
「今日、さ。クラスの奴らと『どんな娘と結婚したいか』って話になったんだよ」
「やってたねぇ。こっちはこっちで『将来どんな男の子と結婚したいか』って話をしてたし。それがどうかしたの?」
バレンタインデーが近づいてきたからだろうか。クラス内、いや、学校中が恋愛がらみの話題で持ちきりだ。
恋人がいる人、好きな人がいる人はもちろん、恋愛事に縁がなさそうな人が話に参加しているのだから、恋愛が持つ力ってすごいんだなぁ、と感心してしまう。
でも、私が会話に加わろうとすると、皆口を揃えて『めぐみはもう旦那がいるでしょ』と言ってきた。なんでだろ、私には恋人すらできたことないのに。
「『結婚』って単語を聞いた瞬間にさ、ちょっとした若さゆえの過ちを思い出しちまったんだよ」
「ああ! 『ぼく、おおきくなったらかおりさんとけっこんする!』って言ってたよね。確か5歳の時のバレンタインデー!」
「なんで日付まで覚えてる!?」
「だって今でもよくお母さんが話すんだもん。『誠司くんはまだ私と結婚したいって言ってくれているかしら』って」
「マジすか」
私のお母さんは、とっても若いと近所でも有名だ。
知らない人が私とお母さんを見ると、誰もが『仲が良い姉妹ですね』と言うくらいに。
そのため、お母さんを知る人の間では、『かおりさんをおばさんと呼んではいけない』という暗黙のルールが決められている。
たまに『おばさん』と呼んでしまうとションボリしてしまうのだが、それがまた可愛い。私も中学生女子として見習いたいと常々羨んでいる。
「お母さん、今年のチョコも美味しいのを作るんだって気合い入れてたよ。楽しみ?」
「もちろん楽しみに決まってるだろ。かおりさんが作るものは何でも美味いからな。……中学生にもなってお隣の母親に毎年気合入ったチョコを貰ってるなんて恥ずかしくて誰にも言えないけどな」
「そうかなぁ? 別に普通だと思うけど。そんなに気になるなら恋人つくって、その娘に貰えばいいじゃん」
誠司は空手が強くて勉強もできる。クラスの友達も『誠司くんってかっこいいよね~』とよく言っている。
弟のような人が褒められるのは、私も嬉しい。幸せハピネス、だ。
彼なら、恋人はつくろうと思えばすぐにできるのではないだろうか。
「いや、俺別に恋愛とか興味ないし。そういうめぐみはどうなんだよ。恋人つくって誰かにチョコあげたりしないのか?」
「私も特にないかな。今年も誠司にあげるくらいだね」
「要するに、俺もお前もいつも通りってことか。まあ、一応期待しておくよ」
「むぅ、一応とはひどいなー。これでも少しは上達してるんだよ。
「
いつもの通学路。私と誠司は笑い合う。
私の周りには、お母さんが、誠司が、真央ちゃんが、ゆうゆうが、たくさんの友達がいる。
笑顔が溢れている。
この何気ない日常が、私は大好き。
ぴかりが丘は今、サイアークに侵略されつつあるけど、大丈夫。ピンチになったらプリキュアが現れて助けてくれるんだから。
こんな日常がいつまでも続く。この時の私は、そう信じていた。
これは、私がプリキュアとなって戦うことになる数日前のほんの1コマ。
プリキュア内で恋愛禁止らしいけど、同姓ならありなんですかね?