If it is not "IF"   作:たまごぼうろ

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皆さんどうもこんにちは、たまごぼうろです。
まず感謝を。
たくさんの評価、コメント、しおりなど、とても嬉しいです。ありがとうございます。
なんと、ランキングに乗っていました。
現在、週間短編5位です。
本当にありがとうございます。
これからも細々と続けていくので、短い間になりますがお付き合いください。
では、最新話をどうぞ。


軌跡/奇跡

「そして最後に、今回の最大の功績者である藤丸立香には、この功績が認められ開位(コーズ)の階位が渡された。これがつい先日の話だ。と、まぁ、事後処理や功績云々の話まで踏まえるとこれくらいかな。では、以上で彼の冠位指定の第八節、及び最終節の説明を終了する。では、質疑応答に入ろう。質問者は挙手したまえ」

 

 

数時間に及ぶ説明が終わったころには、始めは半信半疑だった内容全てに信憑性が帯び、誰もがそれを、本当にあった事、だと知覚していた。

カドックやベリルは最初、彼の行動に不合理が見える度に一々嫌味を加え、その都度ペペロンチーノに注意されていた。

だが、それを言う彼にも、また何も言わずに見ている他のメンバー、そして無論私にも、少なからず嘲笑の色はあった。

だが、次第にそれは消えていく。

それは第四節、ロンドンの辺りから目に見えて減っていき、第七節に差し掛かる辺りでは、彼を笑う者など一人もいなくなっていた。

そして今、最後の質疑応答に差し掛かる。

 

 

「じゃあ、僕から。その、彼から結ばれた縁を辿って英霊たちが時間神殿に召喚されたのはまぁ、分からない話ではない。少なくとも納得はできる。だが、敵だった連中まで来ているのは何故だ?」

 

 

もう何十回目かも分からないカドックの質問が飛ぶ。

 

 

「…そうだね。断定はできないが、恐らく、彼自身が、各特異点で力を持っていた者達への強力な触媒となっているのだろう。連鎖召喚、と言うやつだ。例えば、第六節で出てきた獅子王が召喚された事により、他の円卓の騎士たちも集まった。彼に敵対していた者達全てもね」

 

 

「英霊たちも敵対していたとはいえ、元は人理の守護者だ。彼の行動に何か思うところがあったのだろうさ。あの連鎖召喚は、そういった類の奇跡なんだろう」

 

 

「奇跡、奇跡ね。この数時間で、何度その言葉を聞いたことやら。ありがとう、納得は出来た」

 

 

カドックが頭を抱えながら座り込む。

それと代わるように、今度はオフェリアが声を上げる。

 

 

「では、次は私が。記録によれば、マシュ・キリエライトの肉体は魔術王の手によって一度完全に消滅している。だけど、彼女は再び現れた。これに対し私は、彼女が何もない場所から、転移してきたかのような印象を覚えたの。これってつまり、その、私たちみたいな生業が簡単に言っていいことじゃないけど、死者の蘇生、でしょう?これについて説明が欲しい」

 

 

「うん、中々いい所、いや、痛い所を突く。悪いがそれに対しては不明だ。私たち現場で観測をしていた者たちも、彼女が急に現れた、と確認している。また、当の本人に聞いても覚えていないらしい。これもきっと、奇跡、なんだろう」

 

 

「また奇跡、ね。何度起こるのよ。その天命から下された偶然ってやつは。いい加減そろそろあなた達の作り話を疑うレベル。」

 

 

確かに、ダ・ヴィンチは何度も奇跡、という言葉を口にした。

きっとそれは事実であり、彼自身もそうとしか観測出来なかったのだろう。

死者の蘇生。

医神アスクレピオスが挑み、またにより天罰が下された人の禁忌。

魔術世界に存在するどの魔法にも該当しない、真の奇跡。

それを目の当たりにし、何の説明もないというのは、確かに納得できない部分もある。

だが、

 

 

「それは違う。芥ヒナコ。奇跡はそう何度も起きない。起きた奇跡は、たったそれ一回きりだ」

 

 

それは、と言おうとした私の言葉をデイビットが遮った。

 

 

 

「……………どういう事かしら」

 

 

「まずダ・ヴィンチ。お前の言葉選びも悪い。確かに奇跡的な出来事ではあるかもしれないが、それはお前たちの視点だろう」

 

 

「…………………………なるほど、確かにそうだ」

 

 

「なに、何か難しいこと言いそうね。デイビット」

 

 

ここで私は、同じ意見を持つ者として彼の言葉を引き継ぐことにした。

 

 

「いや、デイビットは何も難しいことを言ってはいないよ。というか、先に言われてしまったのが悔しいくらいだ」

 

 

「言いたいのならば、お前に任せるぞ。ヴォ―ダイム。恐らく、この手の話はお前の方が好みだろう」

 

 

デイビットも特に異論はないようなので、このまま続ける。

 

 

「先程の連鎖召喚の際も、ダ・ヴィンチは奇跡と言ったが、それは違う。いや、奇跡的な出来事なのは間違いないが、奇跡では無い」

 

 

「それの何が違うってんだ?確率の話をすりゃあ、どちらも変わらないだろ?」

 

 

確かに、字面通りに受けとるならばその通りだ。

しかし、それは数学的にこの事象を捉えている。

それでは人は測れない。

 

 

「いや、確率の話ならば余計別物だよ。それなら今まで語った奇跡は、確率で言うなら100%だ」

 

 

「は?」

 

 

「だって、彼がそれを引き起こしているんだ。やろうとしてやったわけじゃ無いだろうけど、リターンケアとしては合理的だろう。無論リスクの方が大きかったけどね」

 

 

「……………えっと、つまり?」

 

 

皆がポカンと呆けた顔をしている。

だが、私はこうとしか語れない。

人理修復を成す(やる)と決めて、その大願を果たした(やった)なら、その過程は全て必然だろう。

 

 

「時間神殿は連鎖召喚が起こりえる環境だった。高濃度の魔力に満ちた空間だったようだからな。英霊の召喚に必要なのは、魔力、令呪、そして触媒だ。その点を全て基準以上にクリアしているならば、連鎖召喚が起こる確率は100%と言える。ヴォ―ダイムの説明は些か暴論じみているがな」

 

 

私の説明では全体の理解に不十分と思ったのか、デイビットが付け加える。

 

 

「そういう事だ。他の事例だってそう。第一の獣、ティアマト神を倒す際に冠位の英霊が手を貸していたが、あれも第六特異点で、冠位以前にその者に借りを作っていたからだろう?彼の行動が、その結末を呼んでいるんだ」

 

 

「奇跡とは、凡そ余人の関わらない範囲、いや、関われない範囲で行われる、人知などというもので測れないものの事を指す、と私は考えている。だけど、今までの奇跡の根幹には全て、マスターである彼の判断が存在している」

 

 

奇跡は人では起こせない。

精々呼び込むのが精一杯で、残りは天運に委ねるのが常だ。

奇跡とは、1%の努力と、99%の偶然で引き起こされる。

だが、それが少しでも努力に傾けば、それは奇跡では無くなる。

他の人々、特に間近でそれを観測していた者からすれば変わらないだろうが、それでも、それは本人が勝ち取った未来と言えるだろう。

 

 

「彼の意志が、努力が、想いが、願いが、そんな奇跡を必然にまで落とし込んだんだ。だからあれは奇跡では無い。奇跡的な出来事なんだよ」

 

 

 

「なるほどね。意志の力、ってやつかしら。偶然を必然にまで落とし込む。私みたいに出来ない事から逃げるような人間じゃあ、やろうと思っても出来ないのでしょうね」

 

 

「故にこそ奇跡は一つ。キリエライトが蘇生したことのみだ。あれは紛れも無い奇跡だろう。俺が言いたかったのはそういう事だ。分かったか、芥」

 

 

「えぇ、よく分かったわ。あなた達が存外ロマンチストだってね」

 

 

「当然だろう。魔術師なんて生業してる時点で全員ロマンを胸に秘めてる。何をどれだけ削ぎ落とそうと、星に手を伸ばす(根源に辿り着く)事を止められないのが私たちだよ」

 

 

 

「すまない。話の腰を折った。キリエライトの蘇生の経緯は完全に不明、なんだな?そこに推測を入れる余地が無いほど無欠に、一部の意志も感じられないほど劇的に」

 

 

「そうだ。時間神殿に辿り着いた時点でマシュの寿命は三日と無かった。仮に光帯によってのダメージが無くとも彼女は死んでいた。けど、今の彼女は人間そのものだ。こればっかりは私も分からない」

 

 

「…………………………」

 

 

しかし、その鋭い眼光は途切れることが無い。

彼はその結論に明らかに疑問を覚えていた。

 

 

「不満かい、デイビット。只の奇跡は嫌いかな」

 

 

「いや、いい。続けてくれ」

 

 

だが、彼の中で答えが落ち着いたのか。

存外にあっさりと引き下がってくれた。

不明点は多いもの、功績を加味すれば当然。

大方、そんな結論で思考を止めたのであろう。

所感を述べようにも、そこにある何かを一部も感じていないならば不可能だ、と。

 

 

「なら、次は私がいいかな」

 

 

よって私もそこで思考を止め、気になっていたことを一つ問うことにした。

 

 

「いいけど、変な質問はやめてくれよ?南米のジャガーは何なんだ?とか言われても、意味不明としか答えられないからな。あれに関してはもう答えようがない」

 

 

「分かってるよ。今回は至極全うだ。何せ、今の私たちの恩人かもしれない人についてなんだから」

 

 

私が聞きたいのは、その存在について。

我がカルデアの医療部門トップにして、わが師、マリスビリー・アニムスフィアの知人でもあった男。

そして、この世の魔術すべてを治め、叡智を築き王となり、人を知らずに消えていった、哀れな英雄の二度目の話。

 

 

「ロマニ・アーキマン。いや、英霊ソロモンと言った方がいいか。彼は、その後どうなったんだい?」

 

 




コメント欄にて質問のようなものを見かけたので、回答します。
本作の時間軸ですが、「人理修復直後」です。
そして、僕らユーザーにとっては、1部、1.5部、2部、と続いているような感覚ですが本作は「1.5部に該当する事件はまだ起こっていません」。
なので2部から登場したキャラクター、新所長やコヤンスカヤは「登場しません」。


細かく言うとまだ色々突っ込みどころが、となる方もいると思いますが、深く考えずふわっとお楽しみください。
これはIF。「もしも」もお話ですので。

次回もお楽しみに!


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