「こいつが転入生のうちはレイだ。適当に仲良くしろよー」
釘バットを手に持ちレイに向けながら、そう紹介したのはこのクラスの担当教師である八津崎 匡子だった。
「席は空いてるとこにすわってくれ」
レイは指定された席まで歩き、席についた。
「それじゃあHR始めるから静かに聞け」
HRが始まり何事にもなく普通に授業を受け昼休みの時間帯になるとミナトは食堂で食事を済まそうと教室から出た。
「“兄さん”久しぶり。元気だった?」
「……“ハルト”」
名は“うちはハルト”レイ双子の弟である。しかし黒髪黒瞳だが瓜二つという程似ている訳ではない。
「転校生だと聞いて見に来たらその転校生が兄さんだったとはね」
「……ああ、3年ぶりだな」
「うん。久しぶりの再開でゆっくり話したいところけどここじゃあなんだし食堂で話そう」
ハルトの提案に無言で頷き、二人は食堂に向かった。
食堂で昼食をすまし何気ない雑談してる最中、突然レイは試合を申し込まれる。
「そうだ兄さん試合しようよ。この3年間でどれ程の力をつけたのか知りたいしね」
「……放課後でいいか?」
「うん。じゃあ放課後兄さんの教室に迎えに行くから待ってて」
「……ん」
この後、各自の教室に戻り午後の授業を受け、放課後レイとハルトは訓練用のドームで数メートル離れた位置で対面するような形で立っていた。
「……」
「……」
二人の瞳には既に写輪眼が発動していた。お互い微動だに動かないまま数秒間、開始のブザー音が鳴り響く。それと同時に一斉に二人は距離を縮め肉弾戦が行われる。
肉弾戦がしばらく続くのだが客観的にレイは防戦一方。しかし防戦一方だった筈のレイは徐々に攻勢に転じ始め、瞬く間に互角に打ち合っていた。
「火遁・鳳仙火」
背後に飛び、素早く印を結び5つの小さな火球を口から吹き出す。火球を難なく躱すハルト。しかし躱されるのを分かっていたかのように瞬時に右手に入り込み蹴り飛ばした。
「火遁・火龍炎弾」
蹴り飛ばされたハルトに追い打ちをかけるよう凄まじい勢いで火龍がハルトを飲み込もうと襲い掛かる。
「水遁・水龍弾の術!」
蹴り飛ばされたハルトは、空中で術を放つ。放たれた水龍と火龍が衝突、火と水が混合し急激な蒸発によって霧が発生される。
「手裏剣影分身の術!」
霧の中、一枚の手裏剣が大量に生産され無数の手裏剣が前方からレイに迫る。
(おいおい霧で視界が悪いっていうのに無数の手裏剣とか防げる訳がな……くはないか)
腰に差していた刀を抜刀し、飛んでくる手裏剣を写輪眼で見切り次々と弾いていく。
(──っ!?)
突如、四時方向に振り向いたと思えばそこには自身を目がけて剣型の煌式武装を振り上げているハルトがいた。反射的に刀で煌式武装の一撃を受ける。
レイはそのまま刀で煌式武装を押しのけ凄まじい速さの剣撃が見舞う。
霧は晴れており互いの剣技と剣技がぶつか合い火花を散らす。しばしの斬り合いでようやく決着はついた。
武器を弾き飛ばしハルトの首筋に切先を突きつけるレイ、誰が見てもミナトの勝ちだと皆は断言するだろう。
「残念」
そうハルトは小さく一言こぼすと、煙を上げ消える。
「──火遁・豪火滅却!」
声がした方向には、フィールドを覆い尽くす程の超広範囲の炎がレイに迫っていた。何とか回避を試みるが既に遅し、なし術もなく呑み込まれてしまった。
(よし! いくら兄さんが速かろうとこの広範囲の炎じゃあ避けられない! これは勝った)
そうハルトは心の中で確信付いた瞬間──
「……今のはヒヤッとしたぞ。危なかった」
背後に少し焦ったような声が聞こえたと思えば首筋に刀をつけられていた。
「……まだやる?」
「いや、参った」
終了のブザー音が鳴り、ハルトの降参で勝負はついた。
レイ納刀し、二人は写輪眼を解除した。
「あーあ、勝てると思ってたんだけどなー」
「……そう簡単に勝ちは譲るかよ。てかお前、あの豪火滅却、俺を焼き殺す気満々じゃないか」
「ごめんごめん。そう言えば最後のどうやって避けたの?」
「……時空間忍術──飛雷神の術と言えば分かるか?」
術の名を聞くとハルトは軽く驚く。
「まさかあの飛雷神の術を会得してるなんて……ん? その術ってマーキングしたとこしか飛べない筈なんじゃ」
ハルトの背中にそっと指さす。
「……序盤の時に印を施した」
序盤での肉弾戦中、レイがハルトの背中に触れる機会があった。おそらくその時にマーキングをつけたのだろう。
「あの時か。マーキングつけられた時点で僕は負けてたってことだね」
「……いや、そうとも限らない。もし俺が飛雷神を使えることをお前が知っていたら別の結果になっていたかもしれん」
「まあ、“公式序列戦”では勝ってみせるよ」
「……公式序列戦?」
「うん。月1回にあってねそれが今月に行われるのは来週なんだよ」
*
その後、ハルトは借りていた訓練用のドームの返却のため必然的に二人は別れることになり、レイは夜道を歩いていた。
(公式序列戦とか面倒くさいなぁ。出来れば極力目立ちたくはないんだが。どうせ“王竜星武祭”で目立つことになるかもしれないし仕方ない、か)
目立ちたくない彼にとって序列戦、または星武祭など出場する気など更々無かった。
(たく王竜星武祭に出場しろってどんな任務なんだよ)
レイの父であるヤヨイに王竜星武祭で出場するよう命じられ、勿論最初は断ったがどうしてもと押しきられ渋々と承知したのだ。
「──!」
(ん?)
夜道を歩いている中、何やら女性の声が聞こえた。ふと何事かと気になり様子見に行くと、街灯で照らされている美しい二人の少女がいた。
「──せめて……自分を滅ぼすような戦い方はやめろ!」
そう必死に説得してるのは見覚えがある鮮やかな薔薇色の髪をした少女。
(……あの特徴的な薔薇色の髪は…………“ユリス”)
「……望みを叶えたいなら……決闘で……私に、勝って」
そして説得する少女を聞き入れない様子であるのは、雪のように染まった真っ白な髪をした少女だった。
(ユリスが言い寄るあの子……あんな真っ白な髪をした女子は見覚えがない。しかしあの顔立ちは……間違いない、“オーフェリア”だ)
久方に大切な二人の顔を見て、喜ばしさがこみあげてくるがあの疑似体験がフラッシュバックし、思わず苦虫をかみつぶしたような顔をする。
(……落ち着け……今は感傷に浸るところではない。オーフェリアのあの変貌はなんだ? 彼女は“非星脈世代”だった筈、それにあれは毒の瘴気か?)
写輪眼でオーフェリアを映すと、彼女から漏れ出ている瘴気と星脈世代が持つ特殊なオーラである星辰力がハッキリ見えることから分かった。
「──ぅぅぁああーー!!」
ユリスはホルスターから細剣型の煌式武装を取り出し、展開したかと思えばそのままオーフェリアに突っ込み出す。
オーフェリアから底知れぬ星辰力が開放され、大気が鳴動する。指向性を持たされた万応素によって元素が変換され、事象が呼び起こされる。
オーフェリアは毒の瘴気を巨大な手の形とし、突っ込んでくるユリスを払おうとする。
(っまずい!)
あの巨大な手に触れたら危険と感じ、神速の如くユリスに駆けつけ彼女を横抱きにし巨大な手から逃れる。
「ふぇ?」
自分が誰かに横抱きされていることに気づき羞恥心により赤面し、助けてもらった人物に下ろすようとその人物の顔を見てユリスとオーフェリアは驚愕する。
「……っ!?」
「き、貴様!! 何者だ! とにかくおろ、せ?」
何せその人物という者は、彼女らにとって最も愛する彼だったから。
「……久方ぶりだな。ユリスにオーフェリア」
下手な文章ですが読んでいただきありがとうございます。