「良し、行こうかリリ」
「はい、ベル様」
ベルとリリルカはダンジョンの六階層の入り口に来ていた。
「…それにしても驚きました、ベル様はまだ
「うん、ここにきてからまだ半年なんだ」
ベルはリリルカに嘘をついていた。元々Lv2になったことは公表していないので、部外者のリリルカに話すわけにはいかなかったこと、自らの手札…力を隠すためである。
「あ、ゴブリン2体とコボルト3体です。援護は?」
「いや、あのくらいなら…シッ、ハッ!」
近づいてきたゴブリン2体の首を速やかにはね、残るコボルト3体に向き直るベル。あらかじめ拾っておいた小石を一番前のコボルトの顔を狙って投げ、怯んだところにナイフを突き立てる。倒れたコボルトの脛椎にさらにナイフで追撃。
近くにいたコボルトをナイフをそのままにして殴り、首に腕をまわして思い切り体重をかけて捻る。首の骨を折られ絶命したコボルトの先で、何が起こっているのかわかっていない様子の最後の一体をすでに灰となって消えたコボルトの死体のあった場所にあるナイフを拾い、勢いそのままに喉元をかっ切り、危なげなく戦闘は終了した。
「…すごい手際ですね」
「?そうかな?そうだと嬉しいな。でもリリもすごいよ、もう魔石拾い終わってる」
「あはは…まあ拾うだけですから」
(なんて動き…オラリオに来てまだ半年の動きじゃない…なにか秘密がある?それを話していないのは…まだ警戒されているのか…思ったよりも手強い…)
リリルカは本心から感心していたし、ベルも同様である。ベルはリリルカのサポーターとしての腕に感心していたし、ベルの手際にリリルカは心底驚き、感心していた。
しかし、ベルからしてみれば大分手加減した…はっきり言えば大雑把な立ち回りだった。リリルカに自分の実力を誤認させるためである。これならば裏切られても対処可能なレベルのものになるだろう、と考えたのだ。
しかし、リリルカはベルの実力をこの時点で警戒してしまっていた。普段誰かのモンスターとの戦いを見ていない…さらには見せていない弊害がここにきて出ていた。
「この調子なら十階層くらいなら余裕…いえ、中層まで行けるかもしれません、装備も潤沢なようですし」
「そう?それなら明日は中層まで行ってみようか、リリもいるし。今日はとりあえず目標だった十階層までにしよう」
「はい、それがいいとおもいます」
とりあえずベルはリリルカのサポーターとしての腕は信用することにした。しかし人柄については欠片も信用していなかった。
(やっぱり目的は装備か…まあ明らかに高級品だし、僕みたいな見た目なら騙しやすそうだしね…)
なぜなら装備のことを言及したとき、明らかに目の色が変わったのだ。元々臆病なベルに警戒するなと言う方が無理である。
「さあ、先を急ぎましょう。今日中に帰らなきゃなんですから」
「うん、わかった。それじゃあ少し急ごうか」
~冒険者ギルド前~
あの後二人は危なげもなく、順調に十階層まで行き、予定通りそこである程度狩ってから引き返していた。今は換金のため、ギルドに訪れている。
「ではベル様。換金してきます」
「え?でも…」
「いえ、これもサポーターの仕事ですから」
「そうなの?それじゃ、はい」
ベルはあっさりとリリルカに換金を任せた。当然リリルカはちょろまかすつもりだったし、その事にベルも気づいていたが騙されやすいやつだ、と思わせ油断させるためだ。
しばらくするとリリルカが戻ってきた。
「すごいですよベル様!なんと10万ヴァリスです!」
「ええ?!スゴい!サポーター一人でこんなに変わるんだ!」
(半分くらいか…割りと大胆だなぁリリ…)
ベルは今までの経験(といっても半年程度だが)から大雑把な金額を予想していたのだが、明らかに半分ほどの金額を伝えられ内心苦笑するが、外にはおくびにも出さない。
「それでその…報酬の件ですが…」
「あ、うん、半分でいいよね?はい、5万ヴァリス」
「え?」
「じゃ、また明日もお願いね、リリ」
「えっあッはい…」
(半分?所詮サポーターの私に?やはりただのお人好し…考えすぎだったかな…)
(とか考えてるころかな~)
当然これもベルの布石だ。侮ってもらった方が都合がよく、ただのお人好しと思わせておくための策である。
「…ウサギは臆病なんだよ?そう簡単には警戒を解かないよ、リリ」
臆病なウサギと卑怯な小人の腹の探りあいは、まだ始まったばかり。その結末は神ですら読めない。
難産…!しかもアイズさんが出てない…!お待たせしました!すいません!次回はもう少し早く…!