剣姫の一目惚れ   作:井上 蒼

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モンスターフィリア 事件前

「神様?どうかしたんですか?」

「…ん、いや…何でもないさ」

(なんか誰かに…気のせいかなぁ?)

 

ベルとヘスティアは手を繋いで祭りを満喫していた。ヘスティアの様子がおかしくなったので、ベルが尋ねるも本人も気のせいだとおもったようだった。しかし、気のせいなどではなく…

 

 

「…………………」

 

「あ、アイズ~…」

「ちょ~っと…いや大分恐い顔になってるよ~…」

「…あの人ですか…アイズさんがいながら…!」

「おおっとこっちも…」

「タイミング悪いなぁウサギ君…」

 

ロキファミリアの一行がベル達を尾行していたのだ。アイズがベルをたまたま見かけて声をかけようとしたのだが、近くにいる…というか手を繋いでいるヘスティアを見て表情が抜け落ち、不機嫌になってしまったのだ。

それを見た姉妹がとりあえず追いかけてみよう、と誘ったのである。その時は面白半分だったが、今になってとてつもなく後悔していた。なんせベルとヘスティアは距離が近い。傍目からはいちゃついていると見られても仕方がないほどなのだ(実際ヘスティアはベルにいちゃついている)。それを見てアイズはますます不機嫌になり妙な迫力まで出すようになってしまったのだ。

 

「ねえどうする?なんかアイズ変なモンスターとか呼び出しちゃいそうな雰囲気になってるよ?」

「…アイズってここまで嫉妬深かったのね……レフィーヤもなんか変に怒っちゃってるし…」

「別にアイズとウサギ君、付き合ってる訳じゃないのにねぇ…」

 

途方に暮れてしまう姉妹。色恋沙汰に関しては疎いティオナと突っ込む以外知らないティオネではどうしようもないのだ。さらに悪いことは続く。

 

「あれ?ベル様、奇遇ですね」

「あ、リリ。来てたんだ」

「ええ、暇になりましたから」

「う…ご、ごめんね?」

「だからいいですって」

「…ベル君?」

「あ、神様こちらはリリルカ。サポーターなんですよ」

「あ、初めまして。リリはリリルカ・アーデと言います。」

「ふーん…どこの子なんだい?」

「あ、えっと……ソーマファミリア、です…」

「!」

「ふぅん、ソーマのとこの子か…」

 

(ソーマファミリア…!なるほどだから僕の装備を…)

 

当然ベルはソーマファミリアのことを知っていた。正しく認識していた。ソーマ…神酒のためならなんでもするファミリアだと。しかしその事を表には出さず、心の内に止める。

 

「あ、そうだ。なんならリリも一緒に行こうか?」

「?!ベル君?!」

「神様」

「!…そう、だね!いいじゃないか、一緒に行こうぜ!」

「え?あ、えっと……はい、それじゃあお言葉に甘えさせていただきます」

 

(ベル君…この子、何かあるんだね?でも利益も有るから利用してる…。正しいんだろうし応援もしたいけど…)

 

ヘスティアはベルがリリルカのことを警戒していることを察する。そしてベルがリリルカを利用するつもりだということも。主神として、ベルを応援したい気持ちは当然あるが、他人を利用するやり方を好ましく思えないヘスティア。

しかし、この認識は正しくは無かった。ベルはリリルカの情報が欲しいだけであり、リリルカの生死に関わるようなことはするつもりがない。ベルにとってダンジョンの情報は価千金、装備以上に生存率を上げる物なのだ。何を差し置いても欲しいからこそリリルカを利用せんとしたのだ、そこに悪意は無い。むしろリリルカの方が悪意を持って接しているのだが。

 

 

 

 

「………………♪」

 

 

「ヤバイよこれ…アイズなんか怒り通り越しちゃってる感じだよこれ…」

「アイズさん?そのーちょっと…いえかなり殺気が駄々もれというか…あっすいませんこっちむかないで…」

「レフィーヤが完全に怯えてる……」

 

アイズは新たな女の登場にもはや殺意すら抱いていた。見た目はむしろ上機嫌に見えるくらいだが殺気が駄々もれであり、気の弱いものであれば失神してしまうだろう、というほどだった。ベルが気づいていないのは自分に向いた殺気ではないからであり、リリルカとヘスティアは距離的に気づくのが難しかったのだ。

 

「アイズ…落ち付かないとウサギ君にバレちゃうよ?」

「…………むぅ」

 

ティオナに窘められようやく殺気を納めるアイズ。女児のように頬を膨らませ、涙目になっている様は愛らしいものであったが、直前との落差から反応できたものはいなかった。

 

「うう…ベルの周りに女の子が…」

「あー…いやほら、サポーターと主神さんでしょ?恋人みたいな関係じゃないって」

「…でもあの人恋人繋ぎしてた」

「アイズ恋人繋ぎ知ってるんだ…いやまあちょっと距離が近いとは思うけどさ、大丈夫だよアイズ可愛いんだから。それに二人っきりでデート、したんでしょ?」

「……ん、楽しかった…」

 

ベルとのデートを思い返し頬を緩ませるアイズ。機嫌がなおってきたと見たティオナは畳み掛けるように話しかける。

 

「あの人たちは三人一緒に行ってるんだからデートじゃないって、だから一番リードしてるのはアイズだよ」

「…私が、一番…フフ…」

「そうだよ、ね?だからさ、もうそろそろお祭り戻ろう…「あー!こら、サポーター君!ベル君とあまり引っ付くんじゃない!ボクのだぞ!」「いやあの神様…」「…ちょっとつまずいただけなんですが…」…」

「…続行」

「はい…」

 

 

 

 

タイミングが悪い。今回起こる事件は全てそれが原因だった。タイミングが少しでもずれていればこんなことにはならなかった。アイズがここを離れていれば、リリルカとモンスターフィリアで出会うのがもう少し後だったら、アイズがベルを見つけるのが少しでも遅ければ、シルが財布を落とすことが無ければ、ベルがリリルカと出会うのが少しでも遅ければ、ベルとアイズのデートが少しでも遅ければ、ベルとベートの試合が少しでも前後していれば………こんなことには、ならなかっただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、次回事件発生。こっからはオリジナル展開…!気合い入れます。一週間いないには出します。
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