「…すまないね、ベル君。いい大人がみっともないところを見せた」
「いえいえ」
フィンはしばらくして泣き止んだ後、ベルに謝罪する。とはいえまだ目も赤く、鼻をすすってはいるが。これでは話もしづらいだろうと、リヴェリアが話に加わる。
「すまないが、ベル殿。貴殿の所属するファミリアを教えてくれないか?ベートとの手合わせの報酬と、この礼も、ちゃんとしておきたいのでな」
「え、いやそんな…。えっとヘスティアファミリアです」
「なんやて!?自分あのドチビのとこに所属しとんのかい?!」
「え、知り合いなんですか?」
「知っているのか、ロキ?聞いたことのないファミリアだが…」
「あーよう知っとるわ!なんやアイツファミリア作ったんか!今知ったわ!」
「ん?今知った?」
「あ、えっと半月前に結成したファミリアで、団員も僕だけなので…」
「え?!」「なんだって?!」「…なに?」「うっそぉ」「…マジかよおい」
ロキファミリアの面々が驚愕したのは、半月前に結成したファミリア、という点ではない。無名の、誰も団員がいなかったファミリアに、ベルのような実力者が所属している、という点だ。ベル程の実力をもってすれば、どんなファミリアでも選り取りみどりだったろうに、と。
「あ、いやその…見た目のせいで、どこも門前払いだったんです。オラリオ中のファミリアを回ってもダメで、落ち込んでいた時に拾ってくれたんです」
「待った、門前払いだって?それにオラリオ中?」
「…ベル、うちにも来てたの?」
「はい、追い返されちゃいましたけど」
「………」「はあ…」「えー…」「ちっ、使えねえ…」
ロキファミリアでも主力となるメンバーが揃って呆れ返っていた。なんせ見た目だけで判断し、ベルという大粒の原石を逃してしまったのだから。
「…まずは申し訳ない。うちの団員が失礼をした。入団希望者はひとまず通すか、報告するように言っているんだが…。おって沙汰を下す。顔を教えてくれるかな?」
「あっ、いえいえ気にしてませんし、しょうがないと思いますから…」
「いや、うちはそうもいかない。ケジメだからな。大きな組織を運営するのには大事な事なんだ。第一、団長の容姿だってこれだぞ?見た目で判断するなど言語道断だろうに…」
「えっと…すいません、そもそも顔を覚えていないので…」
「そうか…では再発防止に努めなければね。逃がした魚はでかかった、どころか大きな魚が自分から来てくれたのに逃すなんて、もうごめんだよ」
「あはは…えっとありがとうございます?」
誉められてこそばゆい気持ちになるベルに、ロキは提案をする。
「なあ、ベル。うちんとここーへん?あんなドチビよりもずっっといい待遇でむかえんでぇ、装備だって一流のものが揃う。どや?悪い話じゃあ無いやろ?」
「すいません、せっかくですけど…お断りします」
「なんやーそんなにあのドチビがええのんか?」
「はい。…僕を拾ってくれた人ですから」
「ん~…そっかあ、残念やなあ…ちっ、ドチビのやつ、ええ眷族見つけたわあ…」
ベルはやんわりと、けれどしっかりと断る。意思は固いとみて、ロキは本当に残念そうに引きさがる。ベルと一緒のファミリアになれるかも、少しだけ期待したアイズも、理由を聞いて納得した。
(待遇なんかで、変えるような人じゃあ無い…そんな人に、惚れた訳じゃない…)
「…あ、そうだベル。ミノタウロスの魔石…あの時置いてっちゃった魔石、渡さないと…」
「え、拾ってきてくれたんですか?ありがとうございます!」
「う、ううん、お礼を言われるようなことじゃ…それじゃこ…!い、今は持ってないから、また今度、一緒に会おう?そのときに渡すから…」
嘘である。本当は持ってきているが、今ここで渡すより、会う約束を取り付けようとしたのだ。その嘘に気づけるロキは、複雑そうな表情でアイズを見ていた。
「え?いや、そこまでは…」
「だ、大丈夫。しばらくはお休みだし…だから、ね?」
「え、あ、えっとそれじゃあ…はい、お願いします」
「…~っ!///」
アイズはばれないように小さくガッツポーズをする。また会えると思うと、目の前にいるのに今から楽しみだった。そこに、フィンも乗っかることにした。
「ああ、それじゃあついでにヘファイストスファミリアにもいってみるといい。ベートとの手合わせの報酬の下見になるだろう?アイズに案内してもらうといいよ」
「あ、そうですね…いいですか?アイズさん」
「!もちろん…!」
(やった!ありがとうフィン!)
アイズはベルとデートができると、大喜びする。
「なあ、フィン?」「大丈夫だよ、ロキ。ちゃんと考えがある」
「ああ、それじゃあ…昨日の今日、というわけにもいかないだろう?明後日の正午くらいかな?」
「はい、それで構いませんけど…」
「私も大丈夫。大丈夫じゃなくてもいく」
「あはは…じゃあそういうことにしようか。今日はもうお開きにしよう、かなり遅い時間だ」
「せやな。っしゃー、皆お疲れさん、ミアかあさーん、お勘定頼むでー」
「はいよ、毎度あり」
ベルとロキファミリアの面々は解散し、それぞれのホームに向かう。
「それで?フィン、お前なーにたくらんでるんや?」
「なに、簡単なことだよ。ベルとアイズが付き合い始めたとして、ファミリアの違いは必ず問題視される。そうなったとき、有利なのはこっちだよ。うまくやればベルをこっちに引きずり込める」
「…ああ、そういうことか!なんやそれやったら別に…って、それじゃベルにアイズたんとられてまうよ!」
「…いや、もう手遅れだろう?というかフィン、それはベルもアイズを好きにならないと意味がないんじゃ…」
「ああ、それなら大丈夫さ」
「「?」」
「少なくとも、脈はあるみたいだよ?」
(どうしよう…アイズさん、すごく綺麗だったし…うー、二人っきりで冷静でいられるかな…)
フィンのいう通り、少なくともベルはアイズを異性として意識していた。二人っきりで出かける、ということで、浮かれてもいた。とはいえ…
(ベル…ベルとデート……ふふふ、早く行きたいな…)
アイズはそれ以上に浮かれていたが。
一気UAとお気に入りが増えててビックリしました。ありがとうございます!感想、お気に入り登録、本当に嬉しいです!
追加 原作と時系列がずれていますが、この世界ではそうなんだ、と思ってください
臆病な設定なのに半月で5階層は不自然だと思ったので…