Cthulhu Myth TRPG After’s 作:茨の男
1.
ーーこれは幾多に散らばる事象の可能性の収束により現れたある一つの世界線における群像劇だ。
語り謳うはとある物書きの悪夢を濃い味付けに、とある軍人の幻想文学を材料に生まれた宇宙的恐怖(コズミックホラー)の神話群が現実に存在し、長きに渡って信仰され、ある時一人の哲学者に存在を否定され、常識に生きる者達に忘れ去られたーーが、未だ “ソレ” が在るおぞましい世界の物語。
ーー南極に突如として君臨した狂気の山脈に潜む太古の創造主に反逆した形無き液状の汚物。
ーー 米国のある寂れた漁村に住む魚に似た顔を持つ、一般には特異的な皮膚病を患っているとされる奇怪な人々。
ーー時の秘密を知り得た者を死ぬまで付け狙い角度のある時間から現れる粘性の邪悪を凝縮した猟犬。
この常識からあまりにも逸脱した狂気の権化がその更なる恐怖への門番、或いは案内人だと誰が知るのだろうか、知りたがるのだろうか。
ーー退化した蝙蝠の翼を背中に生やし、竜の鱗を全身に持ち、髭代わりの触手の蛸の顔をした海の深淵に眠る狂気呼ぶ神官。
ーーある時は黒人神父、ある時は月に吠える者、またある時は数式と千の化身をその身に宿す這い寄る混沌より生まれ出でた悪しき無貌の神。
ーー全ての王にして生みの親、だが眠りより醒めた時全てを夢へと還す誘爆起動装置を握らされた赤ん坊の如き盲目白痴の王。
真理の彼方に待ち受ける神なる者がこの狂気なる異形達だと誰が知るのだろうか、いや知ろうとするのだろうか。
ーー偶然 (chance) は仕方がない。必然 (Fate) は致し方が無い。だがその結末に至った原因が1%でも興味を引き金とするものならば‥‥それは己の責任だ。
真実を世界に公表する為ーー成る程、認知するのは重要だ。だが、
世界を自分達のものにせんと、滅ぼす為ーー成る程、それが人間の理だ。だが、
安全な檻へと隔離する為ーー成る程、それが生物の本能だ。‥‥だが、
全ての真実を知ってしまい、お前は正気のままで元いる場所で生きていけるのか?
命乞いも空しく、憐れ怪物の糧と消える可能性を知らないのか?
脳髄を摘出されて化け物と仲良く宇宙旅行されたいのか?
異形達に賛同させられて常識の空間から乖離する狂人になるつもりか?
そんな意思は、意義は、理由は、負い目は、責任逃れにすらならない。否、許されすらしないのだ。
ーーどうせ狂気の扉は親の与える餌を待つ雛の如く、混沌 (chaos)の様式に沿って最初から開いて此方を邪悪な笑みで手招きしているのだから。
0.
偶々狂疾に因って殊類と成る
災患相ヨって逃るべからず
今日は爪牙誰か敢て敵せんや
当時は声跡共に相高かりき
我は異物と為りて蓬茅の下にあれども
君は已にヨウに乗りて気勢豪なり
此の夕べ渓山明月に対し
長ソウを成さずして但ゴウを成すのみ
李チョウの即興詩歌 中島 敦 著「山月記」より抜粋
2.
十二月某日、もうどのように新しく特徴的な悪の組織が出てこようと経済の不況、少子高齢化、政治の混乱‥‥等、負の側面を挙げ連ねれば切りが無い程の不幸で溢れていると日々様々な情報媒体で伝えられる現代日本。既に終わっていると自嘲し、不幸だと嘆く者も含め個々人の差異は縦横斜めに多少はあれど他国と比べてまずは平穏な島国である。
しかしそんな場所でも濃さは少々違うが他国と同じく不穏な影は変わらずある。
“我々は幾度も世界の闇と拮抗して参りました。” ‥‥などと語り始めるつもりは無いが俗に言う裏社会とは実に恐ろしい。
最弱にして最強の存在 “民衆” による社会的闇。
黄金の富を築く裏の支配者 “貴族" による経済的闇。
国の存亡を託された力を搾取する “為政者” による政治的闇。
規律に従わず暴力と金で世を回す “無頼者” による暴力的闇。
弱者の吊し上げ、殺戮趣味、甘蜜吸い、薬物と違法銃器‥‥無論、比較的現実だが可能性として有り得るだけの逞しい空想に過ぎないかもしれない。
ただ断片的にしか証拠の類が現れないからだが歴史を見ればこれも道理と納得出来るだろう。
何せ、そのように始まりそのように終わることで世界もまた回っていたいうのは過言ではないからだ。
世界史の始まりに等しい暴君然り、
大陸を支配した遊牧民の陵辱王然り、
英国の夜闇で妊婦を狙った殺人鬼然り、
米国の裏社会の首領然り、
ーーしかし、それらよりも根深く、狂気的で、恐ろしいものがこの世界には在る。まあ、非現実さを拭えないが‥‥平行世界の理論やら観測者の存在、等を長々と語るなど自分自身全くもって皆無、しかしそうでもしなければ辻褄すら一致しない事例は少なくないのだがーー
貴方はファンタジーと聞いて何を連想するか? それを銘打った大衆作品か、はたまた占いや呪いなどの迷信、都市伝説か、詳しいならば世界各国の古い神話や伝承か。
‥‥何故このような話をしたのか、これから長くなるが聞いて貰おう。
十二月某日のとても寒い日、人々が平穏に浸る最中遅刻魔な恐怖の大王によって人類は静かに滅亡の危機を迎えようとしていたのだ。
それは世紀末を呼ぶ核戦争の勃発ではなく、
巨大隕石の爆破解体でもなく、
火星やら冥王星やら 宇宙人の侵略でもなく、
サードインパクトが起きた訳でもなく、
時空崩壊という中二病カオスでもなく、有り大抵に言えば魔王が日本から現れようとした所を未然に防いだのだ。
‥‥正確に言葉にすると、ある表向き宗教法人として存在するカルト教団の邪神降臨を阻止した。
ーーたった四人の有志が世界を救ったのだ。
3.某日 (当日)
「おし、木目さん (ク○○ッチ) も救出 (回収) 出来たことだし、後はーーきっと、いや間違いなく潜入 (※物理) した魔理沙の奴と合流して脱出したらひとまず警察に任せるだけだお」
「うぷっ、うう‥‥もう逃げたいです」
「全く、あの時の戸惑いッぷりは何だお? 相手が数人だったから軽症で済んだのは助かったけど拳銃を構えるならもっと早く出して欲しいお。狂信者は大したことなかったけどアレには流石の俺も焦ったお」
「面目ない‥‥返す言葉もありません」
「だから引き返せって言ったのに」
「ふっ、聞いた限りではこの私の華麗にしてスリルに満ちた脱出劇の方が語りがいありますねぇ、まあそこのお子様には無理な話なのは分かりきってましたが。それはそうと新速さん、貴方の背中って凄くツキジ臭いんですね。残り香になりそうで後悔したいのですが」
「怪我人は大人しくしていろお」
宗教法人「星の智恵派」教団本部、その内部二階。そこには似合わない血生臭さが足を進めていた。
可憐な婦警コスプレをした少女と形容するしかない、現在その愛らしい顔を涙と何かの返り血で汚された、これでも成人女性、葉暮久里。
逝け逝けの魚似面に成人としてはかなり屈強な肉体を誇る、現在身体中返り血と己が傷から血液が混ざり合った抽象的グロテスク模様な服に身を包んだ男、新速やる夫。
神は二物を与えた等の賛美から入った方が自然に感じる程後光が差す様を幻視する、現在ほぼ薄着の状態に黒いローブを羽織り、やる夫に背負われているーー実は見た目以上に衰弱している (らしい) 美女、木目 文。
この謎の三人組は只今内部の人間と命を賭けた逃走中 (おにごっこ) の最中で、今は人気がないと確認した上で散歩の速度で移動していた。
事の始まりは昨日の昼前にまで遡る。
ここ東京都では何ら珍しくもない噂、俗に言う都市伝説のある一つが密かに話題沸騰していた。
それは、「獣人間」の噂である。何でも、新宿駅地下鉄の跡地旧初台駅にて死体を喰らう者が隠れ住んでいるーーというサスペンスに欠けるゴシックだ。死者の行進 (バイオハザード) の作り話がよっぽど現実味を帯びた怪談となるだろう。そんな場所に彼らは、
凸凹な警察姉妹は件の場所での遺体確認の為に、
魚面探偵は依頼人の願い出により最悪の場合骨拾いする為に、
悪徳記者な美女は記事を書くのに噂確認の為に、
偶然にも集ったのだ。
彼らはそこで真実を知った。キミタケと名乗る獣人間、それを殲滅しようとした謎の特殊部隊。
(その際に警察姉妹の姉が瀕死に至り、妹は警視庁から新たにお目付役を与えられた。)
そして彼らは救出したキミタケの約束から青山霊園に訪れ、伝説の一騒動を (※主にトリガーハッピー婦警とマスゴミ美女によって) 起こした後、驚愕の真実を叩き付けられたのだ。
それはあまりにも空想地味た妄言と切り捨てるのが相応な話だと思いたくなる程の非常識な世界の現実だった。
何でも彼は元々、生前は人間であり死んだと思っていたらいつの間にか屍肉を喰らって生き永らえる畜生になっていたのだと。それがこの東京の地下に群なして生活しているのだと。
何でもここ東京の地下深くには嘗て人類史が始まる前から存在したという神なるものを降臨する為の施設、の遺跡があるのだと。
何でもこれの存在によって人類は滅亡の危機が迫っているのだと。
正気を削るには十二分過ぎた真実だったと言えよう。
それだけでも満腹だというのに、事態は更に急変する、まるで晴れの日の雨降りに等しい不意打ちだった。
伝説の騒動、某動画サイトにてーーある意味サイバーテロに等しいーー宇宙的恐怖、冒涜的真実の垂れ流しを行い、不特定多数の視聴者を一時的発狂、不定の狂気へ追いやるという、報道者としてあるまじき愚行‥‥結果、何故か垢BANされずに済んだが、因果応報の化身にしてはかなり不相応な「星の智恵派」の信者に彼女、木目 文は誘拐されたのだ。
(その際に彼女は警察の葉暮に電話をして皆に救援するよう呼び掛けることを願い出たが “騒音で声がよく聴き取れなかった” らしく、切られてしまったことを追記しておく。)
その後、彼女の訃‥‥巻き込まれを知った彼らはダイナミックお邪魔しますの準備を整え、まず先行して新速がピンポンダッシュして敵陣に痛烈なジャブ (らしい) を与え、その次に葉暮と記者と偽り、潜入。
(その頃気まぐれな運命 (ダイス) の女神の加護 (補正) を授かった木目は華麗な脱出劇を静かに繰り広げていた。)
客室に通されたが、出された茶菓子から毒を盛られるのが定石と判断して手につけず待機していたら狂信者三人とチェーンソー装備の “麦袋男 (ブギーマン)” に迎撃されて主に新速が返り討ち、その後逃走。途中地下で火災が起こったというのが狂信者達の会話から聞こえた時に偶然にもその地下から脱出した木目と居合わせ、現在に至る。
「もしもし魚面さん? 私、こう見えても怪我人なんです。葉暮ちゃんのお陰で少々ましにはなりましたけどそれでも危ないんです。正確に言うと後一回軽いパンチとか見舞われたらGAMEOVERな状態なんで、もうちょっと優しく、丁寧に扱っては頂けませんか?」
「なら黙って大人しくしているお。というかその原因はアンタが生放送した結果だお、そうじゃないのかお?」
「真実を人々に伝えることが記者の使命、例えマスゴミと罵られようと悔いはありません! (キリッ」
「‥‥もう勝手に死んでくれお」
「あ、あぁ!? 止めて止めて! 降ろさないで、降ろさないで新速さん、このままにされるのは流石にヤバいので本当に!」
「ーーハァ」
そんな感じに談笑していると次の瞬間、
“ーー最っ高にハイって奴だぁぁぁ‼”
〜銃撃音〜
“ぎゃあああああ!?”
“あべしっ” “たわばっ” “ひでぶ !?”
“イエエェア”
“ぶるああああああああああ”
“目がぁ、目があぁ〜‼”
“痛えぇよォ〜痛えよオォ〜‼”
“手加減? 何のことだ?”
“おれのそばに近寄るなあぁぁーー‼”
“死にたくない、死にたくない、死にたくない…”
“何故天才の俺がこんな目にぃ‥‥”
“もうだめだ…おしまいだ…!”
“こ…わい‥‥こわ…い”
“お前は人間などではない! 人間などでは‥‥!”
“く、来るな来るな来るな来るな来るなうわうわうわうわああああああああああああ!?”
〜銃撃音〜
“小便は済ませたか。神様に御祈りは? 部屋の角でガタガタ震えて命乞いをする準備はOK?”
“下からくるぞぉ気を付けろぉ!”
“大丈夫だ、問題ない”
“私が死んでも代わりがいるものーー”
“フゥハハハハーー、サラダバー‼”
“野郎ブッ殺してやる!”
“別に倒してしまっても構わんのだろう?”
“オレ、この戦いが終わったら結婚するんです”
“こいよ殺人婦警、銃なんか捨ててかかってこい!”
ーー中々に個性的な断末魔と意気込み (フラグ) が響いた。
「ーーああ、忘れてました」
「ーーうん、まぁ、もう予想の範囲内なのが怖いお」
…やがて銃撃が止んで数秒後、コツコツと階段を昇る足音が響き、
「おうお前等、生きてるか?」
顔に痛ましい傷痕を残す金髪の容姿だけなら美人ーー現在至福の笑みを浮かべて夕立ちに遭ったかのように赤く全身が濡れた女性、 柚津魔理沙が現れた。
「うわぁ、うわぁ‥‥」
「予想を通り越して、もう笑えますよコレ」
「こいつ警察なんだおね?」
その姿は異様だった。まるであの乱暴者の如く片手にアサルトライフル、89式小銃を軽々と拳銃のように扱い、もう二丁を背負い、腰に計四丁ものサイドアーム、9㍉自動拳銃 (H&KUSP) を携えていたのだ。
そう、今の彼女はあの非公式自衛隊との戦闘の際に獣人間達から横流ししてもらった武装の一部を装備した人間武器庫だったといえる。
「市民、私は実に幸福です」
「まさか…貴方は!」
「安心しろ、峰打ちだ」
「今更銃器を持ちながらその発言は無意味です! 後峰打ちは刀でのみの技です!」
その後、警察に事態を伝え脱出したのだが、
ーー検閲対象 この部分の閲覧は精神衛生上に辺り、不許可とされていますーー
4.数週間後 東京都警視庁
「ーー以上で今後に関しての解説を終わります、お疲れ様でした」
模範的な一部屋と呼ぶには相応なある一室、普段は寡黙そうな地味な制服スーツの女性はそう言い終えると、すぐさま帰り支度の準備と言わんばかりにーー縦に2、横に5は繋げた折りたたみ机の上に広げられた山、というより雪野原の様な書類を手慣れていると語らんばかりに驚く速さで片付け始めたのだった。
「はぁー、やぁっと終わったのぜ‥‥」
「アンタって本当に机仕事が苦手よね」
「ぉ、終わった…終わったお‥‥」
「 」※あまりにもな事に頭をショートさせて真っ白な灰と化している。
「嗚呼、何故私はこのような非生産的な時間を‥‥」
その向かい側、彼女の眼前には何とも奇妙なグループが疲れきった顔で座っていた。
声の聞こえたーー約一名、まるで息絶えたか後の様に成り果てているがーー順に箇条書きで現状、氏名職業を簡潔に描写、紹介すると、
・元々美しい顔立ちだっただろう火傷持ち (フライフェイス)の、それだけでも恐ろしいというのに埋め尽くすかの如く四散した白の上に無造作に置かれた一丁の拳銃がより一層危険を匂わせる金髪の婦警。警察の柚津魔理沙。
・美人、ただその一言のみで十分な二十代後半。優しそうで、強い正義感を放つーー現在、療養中を示す薄空色の患者着をまとった大和撫子な女性。警察の柚津霊夢。因みに魔理沙の姉である。
・人間に魚と猿、その例としてゴリラを足して2で割ったことで完‥‥合体事故して現れたUMAとしか形状し難い、サラリーマンスタイルを隠し切れない逞しい筋肉よって破り出でそうな大柄な男。インスマ‥‥探偵の新速やる夫。
・一見すると十代後半の中学生女子が婦警コスプレをしたと言われてしまえば納得してしまいかねない程に背丈の低い虚弱そうな可愛らしい婦警。葉暮久里。
・凝視すると後光が差しているかのような幻視に苛まれてしまう、かのマリリン モンローの如き絶世のーー現在療養中で利き手ではない腕にギプス、一本の松葉杖を邪魔にならないように向かいの壁に掛け、随時簡易的な点滴を施されている毒吐き美女。新聞記者の木目 文。
彼らはある意味救世主となった勇者達だ。彼らの有志により宗教法人「星の智恵派」を崩壊させ、カルト指定させたのだ。‥‥やり方がかなりアレだが、結果的にそうやって片付いたと言っていい。
彼女はその御一行に再度口を開いた。
「再度確認させてもらいますが、貴方達は今回の騒動に関して一生涯黙秘すると約束出来ますね?」
「問題無いのぜ」
「心得ました」
「了解ですお」
「ゎ、分かりました」
「‥‥検討します」
「ーー再三言わせてもらいますが契約を破った場合は命は既に無いと考えて下さいね、特に木目文さん」
「 (チッ) ‥‥えぇえぇわかりましたもうしわけありませんこんりんざいきけんごとはいたしませんよやくそくしますわたしの “記者の意地” にかけて、ね」
「文、いい加減諦めなさいよ」
一度、彼らは日常へと帰る。しかし再度この舞台に舞い戻る日がそう遠くない未来なのは神のみぞ知る話である。
「こんな奴らがあの “無貌” の化身召喚を防いでみせるなんて‥‥世の中の奇っ怪振りには驚かされるばかりだわ」
‥‥そう言っている彼女、能烈寺警部補もまた遠くない未来が待つのは別の話である。
誰も書かんなぁ、なら言い出しっぺの法則DA! …なノリで始めた小説置き換えです。後付けが多くなるかもしれませんが、可能な限り原作沿いの設定、世界観の擦り合わせに追力して執筆しますが、前作と並行して行う為、前作以上に不定期になる事を御覚悟お願いします。要望があって感想に書くのが億劫な人の為の活動報告も用意してあるので、感想批評をお待ちしております。