Crimson Mixed Blues   作:エセ悪魔

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説ける解ける溶解炉

あれから夜が明け、また朝が来た。

家には自分以外誰もいない。

親はお互い東へ西へと超長期出張に行ってしまった。一応1年位で戻ってこれるらしい。因みに姉だっているが半年前に一人でどっか行った。それも彼氏を連れて・・・・帯十(オビト)さん大丈夫かな・・・

と心配しながら時間を確認するため携帯を開くと、

 

「あ、メール来てる。」

 

メールを起動させて内容を見る。

送信相手は心配していた帯十さんだった。

 

『久しぶりだね琴月くん。

元気にしてるかい?

今日はある報告があってメールを送るね。

六月になったら一度そっちへ帰ります。後、桧森(ひもり)がお土産を買ってくるので期待していて下さい。』

 

どうやら姉の彼氏である帯十さんだったようだ。このメールを見てふと思う。

 

「姉貴・・・またワガママ言ったな・・・」

 

そもそも帰るとしたら普通夏休みだ。なのにいきなり帰ってくる。

姉はいつも優しいが豪快でワガママだ。決めたことを最後まで実行するって言うと聞こえはいいが、悪く言って自分勝手だ。

 

『帯十さん、ウチの姉が本当に申し訳ありません・・・・』

 

「送信っと・・・・」

 

身内による謝罪メールを送信して、いつも通りに歯磨きして、朝ご飯を食って、学校に行く支度をする。

 

「・・・・・・はぁ・・・・・」

 

まだ、昨日の事が一向に頭から離れない。家に帰ってからあの日ノ宮さんの事について一つだけ見当がついた。

 

「多重人格、か・・・・・」

 

正確なことは知らないし調べてはないが、あの性格が180度の反転するような変わり様はそうしか考えられない。それに伸出(ノイズ)と自分の名前を自虐ネタのような名前を名乗り、絶望した目をしてる。

よく小説で聞く何らかのストレスから来る多重人格だと考えてる。

 

「今日・・・・聞いてみるしかないか・・・」

 

手を動かしながらそう決める。

洗い物も終わり、ズボンのベルトを締め、ネクタイを付ける。

 

「よし、出るか。」

 

鞄を担いで靴を履いて外に出て、玄関の鍵をかける。

通学路へと目を向けると、

 

「あっ・・・・・・・・」

 

聞き覚えがあり、そして今日の目的であるあの女子が家の真横にいた。

 

「あっ・・・あの、おはよう。野々上くん。」

 

「う、うん、おはようございます。」

 

「ね、ねぇ、一緒に学校いかない?」

 

「は、はぁ・・・別にいいけど。」

 

何という偶然と幸運。

ここまでついているのはいつぶりだろうか。こうして今日の重要事項である人を隣に歩き出す。

 

「・・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

話のネタを探して今の内に伸出(のいず)について聞き出したいが中々言い方が見当たらない。どうしようか考えていると昨日の急カーブの道まで来た。ここで軽く話題を振って・・・いや、もうストレートに聞くことにしよう。遠回しに言って成功した覚えがない。

 

「・・・・あの、日ノ宮さん。」

 

「うん、何?」

 

「・・・ノイズって名前に聞き覚えないか?」

 

「ッ!!」

 

反応があった。

ここで畳みかけるしかない。

 

「えっと・・・確か音が伸びない、出ないって書いて──────」

 

「ッ!!そんな名前じゃない!!!」

 

「がッ?!?!」

 

右頬に途轍もない衝撃が来る。

それは日ノ宮さんの右フック。

頬を通して痛みが口の右顎に伝わり、そのまま軽く吹き飛ぶ。

 

「・・・・・・・・」

 

その場を静寂が支配した。

自分は殴られたことに呆然となる。

何故殴られたか答えてほしいと願うが聞こえるのは小鳥がチュンチュンと鳴く声だけだった。

 

「・・・・ごめん・・・」

 

日ノ宮さんは気まずそうに目を軽く後ろに向ける。

 

「いや、その・・・こっちもごめん・・・」

 

さっきの日ノ宮さんの怒気の凄まじさに頬の痛みを手で抑えながら急いで謝罪するがまだ続く静寂。

 

「・・・・・どこで知ったの・・・響音のこと。」

 

「・・・・ヒビネ?・・・・」

 

「私の妹。もういないけど。親に殺されたのよ・・・・」

 

「ッ!!・・・でも、そのヒビネさんがなんでノイズって名前に関わる?」

 

「・・・親がヒビネのことをノイズって言ってた。響音は私よりも勉強も出来なかった、結果も私より出なかった。だから伸びない、出ない・・・だからこの家の雑音、ノイズだって・・・・」

 

頭にガツンとインパクトが来た。

自分の予想以上の回答で思わず頭が真っ白になった。

日ノ宮さんは多重人格・・・なはずだ。

だがそのノイズはその妹の仇名。

 

「私が下になったら良かったんだけどね・・・怖かったんだ・・・・常日頃から学校で響音が虐められて・・・お兄ちゃん達がヒビネを連れて監禁して・・・親が叩いてて・・・居場所を消されていくのを目の前で見て・・・もし私が下になってしまうと次は私がヒビネの受けた全部を・・・それにヒビネだって私のことを恨んでる・・・・・」

 

「分かった、だからもうそのことについて話すのは大丈夫だから。」

 

日ノ宮さんの手は震えていた。

顔も青白い。目の前で見た周囲の行動とヒビネの状態が途轍もないトラウマとして、刻み込まれているような様子だ。

 

「あ・・・そのごめん。」

 

「いや、こっちこそごめん。トラウマな事を言わせちゃって。」

 

一端宥めて冷静を取り戻させる。

日ノ宮さんを宥めてる時、昔読んだ小説を思い出した。酷い目にあった死んだ兄弟の人格と記憶を催眠術で入れ替えるってのを読んだことがあるが、それがまさか本当に起こったのか?

しかしヒビネさんの話、ノイズ自らの呪詛のような言葉。似てるどころかほぼ一緒に感じる。

偶然、もはや何かしらの陰謀を感じてしまう。

だが──────

 

「・・・・おかしい・・・」

 

「何?・・・何がおかしいの?」

 

「ッ、いや・・・この話とは違うことだ・・・」

 

おかしい点は三つ。

一つ目は多重人格のような状態にあるって気付いているのは伸出だけ。

「日ノ宮重音であって重音じゃない」これは自分が重音でないと自覚の証明。

二つ目はヒビネが受けた虐め、監禁、虐待・・・・もし自分が昔見た小説のようなトリックだったら疑問が生じる。何故ノイズは『日ノ宮が見た行為の詳しい』ことを知っているんだ?

ヒビネの受けた悪意の数々を聞いてそれに繋がった。もしかしたら違うかもしれないが、多人数がヒビネを連れて監禁・・・これは簡単に密室で強姦を起こせてしまう。そしてノイズの言った一日一回の食事、酷い自虐、これは隠れたところで親にやられた虐待と学校での虐めなのだろう。

そして三つ目は、

 

「そういえば・・・なんで日ノ宮さんはウチのような田舎に来たんだ?」

 

何故そんな家で妹に向けた犯罪の数々を知る人間を家が何故、外に放ったか。いくらその事を知ってるのを隠したって所詮小さな子供だ。

そう簡単に胸に秘める事など難しい。

 

「私の家ね・・・お金持ちなところなんだけどおじいちゃん以外の皆は頭が古典的で・・・酷い考えの人ばかりでね。ヒビネの死んだ理由を知ったおじいちゃんが私をこの学校に転入させてくれたんだ。」

 

すると芋づる式でまた疑問が生じた。

 

「あれ・・・そんな家から日ノ宮のおじいちゃんのおかげで逃げ出せたのならヒビネさんのことで起訴も出来たはずだろ?」

 

「無理だよ・・・ウチの企業は大きすぎる。すぐに物量と金で握り潰されてしまうから・・・おじいちゃんもお金持ちでも殆どの金を会社に渡ってるから・・・・」

 

「あ・・・・・ごめん・・・またいやなこと言わせてしまって本当にごめん。」

 

「いいよ。もう・・・・・・・・・でも────────」

 

こちらへと目を向け、また怒気を孕ました表情で問われるた。

 

「どこでノイズって言葉と名称のことを知ってたの?」

 

「・・・・・・・・それは────」

 

正直に全てを話す。

それが正解かどうかなんて分からない。こんな不思議なことだ信じる確率は五分五分が妥当である。

予測しよう。もしこのことを知った時、日ノ宮さんはどうなる?どんな反応をする?

伝えてしまうのは簡単、だが心の奥底から途轍もない不安を感じてしまう。

 

「・・・放課後に話す・・・」

 

ひとまず考える時間を稼ぐ。

放課後まで後10時間近く。それまでに得策を考えるのみである。

 

「ふざけたことを────」

 

日ノ宮さんの声が荒くなるが、それを抑えるように軽く叫ぶ。

 

「このことを知ってッ!!君が平然でいられる訳が無い。」

 

「ッ・・・・・本当のことなの?嘘なの?」

 

「・・・真実はいずれ話すけど・・・今はその真実の端切れ程度で勘弁してほしい・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

睨む。睨み続ける。

空気は先程よりも赤々しいやうな怒気の空気だが、周りは全て凍てつく絶対零度で静止の世界のようだ。

 

「・・・・分かったわ・・・いずれ、本当のことを話してね。」

 

根負けしたのか許諾をしてくれた。

これには心底ホッとした。

 

「早く学校に行きましょう・・・遅刻するわ。」

 

「あ、あぁ・・・・・」

 

本当に真面目に考え無ければならない・・・・・・・・・

 

 

 

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