半人半鬼の星の呼吸   作:長壁姫

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三 二人の柱

 鈴音が村へ文箱を売るため下山したすぐ後のこと。

 

◇◇◇――――◇◇◇

 

「さて、お二方、ここへは一体どういった用件で?」

 

 鈴音の養父、平坂和人が家の中へ招くようにてを差し出しながら言ったのは、鈴音からは死角になる位置に立っていた二人にだ。

 

 和人に従って中に入った彼らは早速情報を集めるために質問する。

 

「鬼について聞かせてもらおう」

 

 単刀直入にはしょりすぎた質問をしてくるのは水柱、富岡義勇だ。

 

「富岡さん、ちゃんと言わないとダメですよ。その説明で分かる人はいません。私達が知りたいのは最近この近くに表れている鬼について何ですが、知りませんか?」

 

 やんわりと言葉を補うのは氷柱、照道日向だ。

 

 二人の顔を交互に見た和人が思ったのは、

(これは相当なことだな)

 これにつきる。

 

 柱が二人も来ているのだ。近くの村にいるという鬼が十二鬼月か、それ相当の力を持つ鬼だと予測しているのだろう。

 

 ただ――

 

「そんな話、鈴音はしていなかったけどね」

 

 数歩離れた場所で立っていた平坂南の言ったとおり、村で噂があれば九割方拾って帰る鈴音の話にそのような内容はなかった。

 

 鈴音が聞き漏らした一割の中に鬼についての情報がなかったとは言えないのだが、基本的の日の下に出られない鈴音は鬼についての情報にはかなり敏感だ。聞き漏らすわけがない。

 

 鬼殺隊への情報提供者として協力している平坂夫妻が鬼の話ははないというのだからないということなのだろう。

 だが、そうなると困惑するのは柱二人だ。彼らは柱だ。がせやデマに踊らされることもある一般隊士ではない。

 

「とりあえず鈴音さんを探しましょうか。彼女が今日情報を拾わないとも限らないので」

 

 照道が言うと、富岡も黙って出口を向いた。その際、顔をしかめていた和人のことには二人とも気付かないふりをした。養子とは言え愛娘を鬼から出来るだけ遠い場所に置いておきたい彼らは、照道と富岡には出来るだけ鈴音と接して欲しくないのだろう。

 

 外に出た照道が空を見上げると、太陽はすでに空高く上がっていた。

 

◇◇◇――――◇◇◇

 

「何処に行ってるんでしょうね?鈴音さんは」

 

 すでに日は暮れ、辺りは暗くなり始めている。

 

 照道と富岡の二人は村中をすでに探し回ったのだ。いや、すでに三周はしている。だが、村の人達には神出鬼没な鈴音は探すだけ無駄だと口を揃えて言われた。鈴音に会いたいのなら彼女が出てくるのを待つしかないのだと。

 

 流石に村中探せば見つかるだろうと高をくくっていた柱二人だが、皆の行ったとおり鈴音は全く見つからない。(鈴音は鬼に出くわさないよう気配を消していた)

 

 光は多少残っているものの、日はもう暮れている。

 

「鈴音さんはもう帰っているでしょうね。平坂さんの所へ帰りましょう」

「分かった」

 

 柱二人は引き返すことにした。

 

 ただ疑問が一つ。

 

「あの二人は鬼殺隊士を育てているのか?」

 

 山の麓の、平坂一家の家へ続く道も様なものを見上げながら富岡が訊いた。

 照道には答えられない。

 

 目の前に広がっているのはアスレチック顔負けの険しい道だ。いや、道と呼んで良いのかも分からない。

 晴れた、何もない日なら一般隊士でも楽々と上れるだろうが、今のように雪の降っている日や、雨の降っている日であれば甲以上の隊士を連れてこなくてはまともに進むことも出来ないだろう。しかも日によっては獣と出くわすこともあるらしい。

 

 当りを見てみても人間には使えない獣道を除けば、この道以外に平坂家へ続く道はなかった。

 この道を毎日通らせるだけで立派な鬼殺隊士を育てることが出来るだろう。

 娘が鬼と遭っても反撃できるようにするための訓練なのだろうか。あの娘、鈴音は確かアルビノで、日の下に出られないと聞く。

 

 とにかく、今ある情報源へ向かおうと柱二人は雪に残されている足跡をたどって登り始めた。

 

 

 雪の上の血の跡に気付いたのはどちらだったのだろうか。二人は同時にその場に色濃く残る鬼の気配にも気付いた。

 

「富岡さんは鬼を追ってください。私はこの血の主の様子を見に行きます」

 

 照道が言い終えたときには富岡はもう消えていた。

 

 点々と残る血をたどった先には、赤く染まった白色の何かがうつ伏せで倒れていた。

 

 慌てて確認すると、息はある。傷も多く負っているものの、右手首の傷を除けばあまり深くないものばかりだ。その手首の傷も深いものの命に関わる物ではない。

 

 一先ず右手首の傷を止血する。見えないところに傷がない事を確認すると、思いの外小柄な体を横抱きに抱えた。

 

 小柄であるとはいえ、人一人を抱えて雪の積もった山道を登るのは大変だった。平坦な道だったことが幸いだった。出なければ人を抱えて道を上ることは出来なかった。

 

 だが、ようやく道を登り切った先の光景に照道は目を疑った。

 

 一面血だらけだった。南の姿は見えないが、和人だったと思われるものはあった。だが、それはわずかに原形をとどめているだけだった。

 

 鬼に襲われたと言うことに間違いないだろう。鈴音が目を覚ます前にこの場を離れようとした照道だったが、その想いはすぐ意味をなくした。

 

「ん……」

 

 かすかなうめき声を上げたのは照道の手のなかにいた鈴音だ。そのまま、彼女はゆっくりと目を覚ました。

 

 地面に降りた鈴音は、顔を上げて硬直した。目の前にあったのは家族の遺体だ。悲鳴を上げていないだけ良いだろう。

 

 だが、あまり反応を示さない鈴音をいぶかしんだ照道はそっとその顔をのぞき込んだ。すると、ふらっとよろめいた鈴音はそのまま照道に支えられて意識をなくした。

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