半人半鬼の星の呼吸   作:長壁姫

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 累の父親の名前が分からなかったのででっち上げます。
 本当の名前があれば誰か教えてください。


五 元鬼殺隊士

 累の父親、綾木翔は鬼殺隊から預かった子である鈴音と一緒になって雪だるまなるものを作っている我が子の累を見ていた。

 

 累は病弱ではあるのだが、動けないほどではない。

 

 幼少期から調子の良いときは運動をさせていたからだ。

 

 命の恩人から、子供というのは運動のするしないでその後の健康状態が大きく左右されると聞いたため、累には出来るだけ運動をさせていた。もちろん無理のない範囲で。

 

 さんざん自分を脅してきた恩人だが感謝はしている。

 

 おかげでこうして我が子が無邪気に遊ぶ姿を見ることが出来ている。

 

 だが鬼殺隊の人達はいつになったら自分に隊士を育てるつもりがないということを分かってもらえるのだろうか。

 

 累から鈴音へ視線を移しながら考える。

 

 彼女は良い子だ。仮面をかぶるように偽りの感情を見せることもあるのだが、最近はそれもなくなった。

 

 累の面倒をよく見てくれることもある。同年代の友達は累の精神面での健康にも良い。それは良いことなのだが評価に含めてしまうのは自分が累の親だからだろうか。

 

 だが、どうしても彼女を信用する気になれない。

 

 理由は一つ、翔のは鈴音の「隙の糸」が見えないからだ。

 生き物である限り多かれ少なかれ隙の糸があるのだ。柱ですら細く、すぐに切れてしまうものの、翔にはそれぞれの隙の糸を見ることができた。

 

 翔が使う呼吸は糸の呼吸だ。他の呼吸と比べて少し特殊なこの呼吸には型がない。敵と自分を繋ぐ隙の糸が見えるようになるのがこの呼吸の特徴だ。その糸にそって斬れば、相手がどれほど硬くても糸の繋がれた部分を斬ることができた。

 

 はじめの頃はそのことに有頂天になり、呼吸を教えてくれた師のボコボコにされた。

 

 思い出と思考にふけりながら二人の子供達の様子を見た。雪だるまをもっと大きくしたい累と、これ以上は大きく出来ないと言う鈴音が言い争っている。

 この程度のケンカであれば放置しておいても良いだろう。最近累は外に出ることができず、気が滅入っていたようなので、このように言い争う程度のケンカをするのは精神の面で良いことだ。

 

 腱が切れたために刀を振ることが出来なくなった右手をさすりながらなんとなく糸の呼吸を使ってみる。その瞬間翔は硬直した。

 

 使うことで相手のおおまかな健康状態まで分かるというのが糸の呼吸の特徴の一つなのだが、今の累の状態は明らかに今までと違う。

 

 心拍数は早く、体温も高く。だが息は切らしておらず、病気の症状でもない。間違いなく呼吸を使っている状態だ。

 

 次に鈴音を見る。彼女は完全に無意識だが、全集中の呼吸・常中まで出来ている。

 

 累は鈴音が呼吸を使っていることに気付き、それを覚えたのだろうか。

 

 だが二人を見比べてみるとそれも違う気がする。なにより累の息の仕方は鈴音よりも翔のそれと似ている。さあっと背筋が冷えるのが分かった。

 

 鈴音が来るまで累が呼吸を使ったことはなかった。と言うことはおそらく累は鈴音を見て呼吸の存在に気付いたのだろう。そして呼吸の存在を知る目で父親を見、その呼吸を学んだんだろう。

 

 最近累の調子が良いわけだ。

 

 親として、累の調子が良いのは喜ばしいことだ。だが呼吸を使っているとなれば話は変わる。

 

 使うことで身体能力を極限まで上げる呼吸法なのだが、そんなものを使っていて体にガタが来ないわけがない。若い間は平気でも、少し年を取ってから呼吸困難になったり、まだ若くても無理を強いられた筋肉に麻痺が出ることもある。

 

 友人を思い出す。同期でもあった彼は呼吸の副作用により、足腰が弱くなっていた。実年齢よりも十数年ほど老けて見えるのも副作用だ。

 

 呼吸の副作用が目につきにくいのは大抵の呼吸の使い手が副作用の出る前に命を落とすからだろう。

 

 育ての人たちも呼吸を使っているが、副作用の出た人はまず育てにはならない。もしくは育てを辞める。

 

 ふと雪をかき集めている累と鈴音から目をそらして雲一つないそらを見上げる。澄み切った青色の空に、遠くに黒い点がぽつんとある事に気付く。

 

「累、鈴音ちゃん、冷えるから中に入りなさい。もう十分遊んだでしょう」

 

 何ともタイミングの良い。翔としてはこれから来るものに累と鈴音を会わせたくない。

 

 しぶしぶといった様子の累と、かじかんでいるのか手をこすり合わせている鈴音を見送った翔は、自分の左隣に舞い降りた鎹烏と向き合う。面倒になる予感しかしない。

 

「で、いったい何の用だ?育てになるという件なら断るといったはずだ」

 

「累ト、鈴音二ハ最終戦別へイクダケノ技術ガアル。鬼殺隊トシテモ宝ノ持チ腐レハ避ケタイ」

 

 問いに対してとんでもない答えを出してきた烏を殴り飛ばそうと握ったこぶしをどうにか抑え込む。この鳥は伝言を伝えてきただけだ。

 

「鬼殺隊本部に伝えてくれ。俺の眼のうちが黒い間は決して自分の保護のもとにいる子供を死地に向かわせることはしない。守れたかもしれないものを失うのはもうたくさんだ」

 

 その言葉を聞いた烏は、それ以上は何も言うことなく静かに舞い上がった。

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