迷子の迷子のスパイカー   作:風神タバサ

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決戦前の平日

「おはよう、朝練あるから早く準備して」

 目を覚ますと制服姿の潔子さんがいた。

 俺はすぐに起きあがり、学校に行く支度をして家を出る。

高校に入ってから朝練もあるということで早朝ランニングはしないことにしたが、正直いまだに違和感がある。

 本来、正式な部員ではない俺は朝練に出る必要はないが、まだ道を完全には覚えていないため、潔子さんと登校をし、ついでに朝練にも参加することにした。

 ついてそうそう田中さんにヘッドロックをかまされた。その時言葉にならないような声で叫ばれた。

 菅原さんに話を聞くと日向、影山の早朝練に来なかっただけでなく、潔子さんと一緒に登校してきたのを見てしまい、脳がパンクしてしまったらしい。結果、田中さんから逃げるように澤村さんに言われてしまい、朝練には参加することができなかった。

 昼休みにジュースを買いに自動販売機で行くとそこには菅原さんとレシーブの練習をしている日向がいた。とりあえずジュースを買って戻ろうとしたらそこに影山がいた。

「おい」

「……何か用か?」

「……お前、名前とポジションは?」

「闇影晃、ポジションはWSもMBもSもLiも全部できる。」

「そうか、明日朝五時から練習だ、遅刻すんじゃねえぞ!」

 確かに合わせないとミスが出る可能性が高い。でも、

「悪いが六時から参加させてもらう」

「あぁ?」

「それが早朝練に参加する最低条件だ、いいな?」

「チッ、分かった。遅刻すんじゃねーぞ」

「了解」

 俺だって早朝練に参加したいんだよ。でも潔子さんが「一人で行ったらだめ、絶対迷子になるから」ということで、朝の五時に行くのは無理なのだ。一応潔子さんに先ほどのことを連絡しておくと「分かった、それなら明日からは早く迎えに行く」とだけ返ってきた。

 放課後になり今日も潔子さんを待つことになった。昨日と同じように着替えて教室で待っていると、またもや廊下がざわつき出して視線を向けると潔子さんが立っていた。俺は席を立ち潔子さんのもとに向かう。昨日と同じように注目を集めた。

 体育館に入るとそこには制服姿の二人組がいた。

澤村さんは俺が来たのに気づき制服の二人のところに連れていかれる。

「お前と同じ今年入部する一年だ。仲良くやれよ?」

俺は二人の前に立つ。

「俺は一年二組、闇影晃、よろしく」

「一年四組、月島蛍」

「同じく山口忠、よろしく」

 月島はともかく、山口は友好的だった。

「君、あの闇影晃だよね?」

「あの?」

 自然と聞き返してしまう。

「中学最後の試合、北川第一相手にワンセットとったにもかかわらず怪我してしまって没収試合になった中学の怪我した張本人、もうけがは大丈夫なの~?まだ無理せずに休んでたほうがいいんじゃな~い?」

 こいつ早速煽ってきやがった。そもそも怪我っつっても。

「何ヶ月前の話してんのお前。もしかして特進クラスの四組にいて相当バカなの?」

「はぁ?」

「ブォフッ‼‼」

 途中田中さんが吹いたように聞こえたが無視する。

「大体君、後輩にアニキって呼ばせて試合してたらしいね、何?年上でも気取ってたの?ダサくない?」

「残念、それはうちの後輩共のグループのルールの一つでボスに勝った人はもれなくみんなアニキになるらしい。残念だったね、予想が外れて‼大体「晃」……わかりました」

 ヒートアップしたところで潔子さんに止められる。もう少し言ってやろうとしたが潔子さんのあの目は早く練習しろという目だった。

「澤村」

 次は澤村さんに圧が掛けられる。

「……はっ、お前ら練習再開するぞっ‼」

「「「「「はいっ‼」」」」」

 他の部員も潔子さんの圧を感じたようだ。急いで練習に取り掛かる。

「どうしたの闇影君、もう終わり?逃げ「一年生」……何ですか?」

「練習に参加するなら着替えてきて、参加しないなら練習の邪魔になるから早めに帰って」

「…………」

 圧のある潔子さんの前には月島も何も言えない模様。

「…………ちっ、キャプテン着替えてきます。行くぞ山口」

「あっ、待ってツッキー!」

 舌打ちをしながら月島は出ていった。その舌打ちを一人見逃すはずのない男が一人いた。

「ゴラ、月島ぁぁぁぁ‼潔子さんに向かってなに舌打「田中」……」

 月島を追いかけようとする田中さんだったが、潔子さんに止められ静かになってしまった。

 月島たちは着替えて練習に参加したが田中さんが月島にキレて、昨日よりうるさかったこと以外は特に変わりがなかった。そのまま練習は終了し、月島たちは一年でちゃんと入部していないため帰っていった。

 同じ一年の俺は潔子さんと一緒に帰るため後片付けまでやっている。

「そういや闇影、影山と合わせなくて大丈夫なのか?」

「あ、菅原さん、俺も明日の六時から参加します。」

「おいおい、早朝練は五時からだぞ、なに遅刻宣言すんな」

「田中さん、一応影山には許可取ってるんで大丈夫です」

「へ~、あの影山が遅刻をね~、少し意外だわ」

「そうっすね、影山のことだから、堂々と遅刻宣言してんじゃねぇボケ‼、ぐらい言って従わせると思ってました。闇影はどうやって許可もらったんだ?」

「普通ですよ、早朝練に参加する最低条件として六時参加、って言ったらあっさり認めましたよ」

 片付けながらそんな事を話していると、潔子さんが着替え終えてて体育館に戻ってくる。

「晃、帰るよ」

「あ、はい、わかりました。と言うわけで先上がります。お疲れ様でしたー!」

「おう、お疲れー、また明日なー」

「………………」

 田中さんには何も言われずに体育館を出た。その後体育館から「闇影のヤロォォォォォォ」と聞こえたが無視して帰った。

 次の日、潔子さんが昨日より早く迎えに来てくれて五時五十分には体育館に着くことができた。潔子さんは着替えてくると更衣室に向かい、俺は着替えてきたので直ぐに体育館の扉を開く。そこには菅原さんとレシーブ練習をしている日向と、田中さんにトスを上げている影山がいた。

「おはざまーす」

「おーす」

「うぃーす」

 先輩たちは返事を返してくれる。肝心の一年はと言うと、

「おい、あと一時間もねーんだ!さっさとアップしてこい‼」

影山は相変わらず上から目線

「なぁなぁ、お前が闇影か?俺一年の日向翔陽、よろしく!」

「同じく一年の闇影晃、よろしく」

 それだけ言っておらはアップに入る。俺がアップを終えると潔子さんが来た。田中さんと菅原さんは、驚きの顔をしていた。逆に日向と影山は「誰?」って顔話している。

「き、潔子さん今日は早いっすね、どうしたんっスか?」

「確かに、清水がこの時間に来るなんて珍しくないか?」

「晃に早朝練するって聞いて、いつもより早くに晃を迎えに行っただけ。大丈夫、澤村には言わないから」

 そして練習が再開した。最初は俺が打つつもりだったのに田中さんに「ブロックに跳べ」と言われ、ブロックに跳んで田中さんのスパイクをシャットアウトした。それは、田中さんが決めるまで続いた。最終的に影山と合わせる時間は十数分しかなかったが影山にトスの注文をしたらその通りのトスが来た、一回一回トスの変更を注文するが毎回その注文通りに来たので正直気持ち悪かった。

 そんな生活が金曜日まで続いた。雨の日も日向はレシーブ練習で影山は俺だけにトスを上げ続けた。金曜日だけは刺激的だった。なんせ体育館に入った瞬間日向の嘔吐処理になってしまい練習時間が少なくなった。でも、影山と日向の溝が浅くなって結果オーライだった。

 そして影山の運命の土曜日になる。

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