今日は久しぶりに早朝ランニングをすることにした。最近はしていなかったので途中途中道を間違えそうになることはあるけど、前よりも気持ちよく走ることができたような気がする。それにいつもより体が軽い。
今日の俺は絶好調のようだ。
家に帰りつくとすでに潔子さんが家の前で待っていた。
「お疲れ、翠ちゃんと星ちゃんが晃の荷物準備してくれたから早く行こ」
それだけ言って潔子さんは俺の荷物を持ってきてくれた。俺は荷物を受け取ってバッグの中に入っていたタオルを取って汗を拭った。
学校につくと潔子さんとはマネの仕事があるため途中で分かれた。体育館につくと、入り口で日向、影山と月島、山口がにらみ合っていた。
とりあえず、
「お前ら、さっさと中はいれ、体温められなくてミスしても知らねーぞ」
「あぁ?一番最後に来たテメェが何言ってんだ?」
「なになに?早速仲間割れ~?そんなんで今日の試合大丈夫なの?僕、王様のトス楽しみにしてるから~、先になかでアップすることにするよ、行くぞ山口」
「待ってよ、ツッキー!」
そう言い残し月島と山口は体育館の中に入っていった。その後に続くように、俺、影山、日向も体育館に入る。
しばらく体操をしてると潔子さんが入ってきた。
「おはようございます」
「潔子さん今日も美しいッス‼」
「…………」
「ガン無視興奮するッス‼」
もう見慣れた田中さん恒例の無視され興奮する挨拶。それを見て平和だと思っていると、
「よーし、じゃあ始めるぞー!月島たちのほうには俺が入るから」
「えー、キャプテンが!?」
「ははは、たぶん大丈夫だよ。清水が言うには闇影は攻撃力、守備力ともに高いらしいから」
それを聞いて日向が俺を見てくるので、俺は逃げるように潔子さんを見る。潔子さんは小さくピースをしている。今の俺なら潔子さんが何を考えているのかわかる気がする。多分『晃のことある程度教えておいた』だろう。
「あー、んふん、小さいほうと影闇クン、どっち先に、潰しましょうか?」
俺は月島のほうを見る。絶対にさっきの潰すはわざと大きく言ったはずだ。
「ああ、そうそう、王様が負けるところも見たいですねぇ」
今、俺の中にある何かが解放されようとしていた。
「冷静さを欠いてくれるとありがたいなぁ」
本当にいい性格の悪さをしている。だからこそ、
「特に家来に見放されて一人ぼっちになっちゃった王様が見ものですよね?」
こういう奴は、
「日向、影山、一ついいこと教えてやる」
俺は日向と影山のほうに行く。教えてやろう、とても気持ちのいいことを。
「ああいう嫌みったらしいこという奴の度肝を抜いた時の表情ってさぁ、」
「ひぃっ!」
「見てると、とーっても気持ちいんだよ」
何故か日向の顔が恐怖におびえているが大丈夫だろうか。
そんな時、田中さんが口を開く。
「おい月島!流石に言い過「晃、さっきのタオル汗でぬれてたから、これ新しいタオル」「あ、すみません、ありがとうございます」……闇影の野郎はぶっ潰せぇ‼いいなっ!?」
「え、あ、はい」
田中さんの豹変に月島は戸惑いながらも返事をしていた。
そしてようやく三対三の試合が始まる。
――――――三人称――――――
最初はお互いにサーブミスから始まった。次は澤村のサーブから始まり、日向はそのサーブを上げることができた。影山はネットより少し離れたところにトスを上げた。晃は上がるトスを見ながらブロッカーを見る。月島だけだ。そこから助走を開始。ボールの落下地点に着くとそこで足を止め助走の勢いを上に向けてジャンプする。晃はスパイクモーションに入ると同時にブロッカーを見る。そして狙いを定める。
(狙うは月島、山口、澤村さんの三人の三角形の間に落とす)
そして晃は狙い通りフェイントで三人の間に落とす。澤村も山口も反応したがボールを取ることができなかった。誰もが最初はスパイクで来ると思っていたので予想外のフェイントに驚いていた。
「へいへい、闇影、最初は一発思いっきり打って行けよ~!」
田中は晃の最初のフェイントに不満げだったが、
「人それぞれでいいだろ田中!」
「そうだぞ、ばか!」
「頭使えよアホ~!」
「おい、誰だ、悪口行ったの‼?」
「田中、うるさい」
「潔子さんに、怒られた」
清水に怒られ嬉しそうな田中を見て、晃は
(そろそろやばいぞ、この人)
口には出さず心の中で思っていた。
次は晃のサーブの番、晃はエンドラインから八歩、歩いて構える。
右手で高くボールを上げ、タイミングよく跳ぶ、サーブトスが少し低かったため晃はあまり溜めを作らず打つ。そのボールは少し伸びてしまいアウトになってしまう。
月島たちのサーブを晃はレシーブで影山に返して日向は助走を開始する。
「日向っ!」
影山は日向にトスを上げ、日向は高く跳ぶ。そのジャンプの高さを始めてみた縁下たちは一瞬の驚きを現す。日向は腕を振り下ろすが月島にブロックされる。
(ここにも、高い、高い壁)
日向は月島を見上げながら中学時代ブロックに止められた時のことを思いだす。
「この間もびっくりしたけど、君よく跳ぶね。それであとほーんの三十センチ身長があれば、スパースターだったかもね」
日向は悔しそうな顔をするが「もう一本!」と、まだあきらめている様子はなかった。
そのまま試合は進んでいく、晃はスパイクを決めることができるが、日向は連続で月島に止められていた。
「ほらほら、ブロックに罹りっぱなしだよ。王様のトスやればいいじゃん!敵を置き去りにするやつ、ついでに味方も置き去りにしちゃうやつね?」
「うるせぇんだよ」
次の山口のサーブはネットにかかり、影山のサーブのターンになった。
「速い攻撃なんか使わなくても、勝ってやるよ」
(要は、自分一人で点を稼ぐってわけだろ?絶対無理だろ)
晃は影山の言った言葉を否定した。
「いけーっ!殺人サーブ!」
日向は影山を鼓舞するように声を掛ける。日向と同じチームの晃は相手チームの上級生である澤村を見ていた。
影山はサーブトスを上げジャンプサーブを打つ、しかし澤村はそのボールに反応しレシーブを上げた。そのまま攻撃を行う月島と山口、晃は日向のとこに行くようストレートを絞めた。山口の打ったボールは日向のほうにとんでいく。しかし、日向は反応が遅れレシーブを上げることができなかった。
「クソッ!」
「そもそも、影山にサービスエースを決めさせないために澤村さんが入ったんだろ、じゃなきゃ、攻撃力だけなら田中さんの方が上だろうから、田中さんを入れるはずだ」
晃がたどり着いた答えを影山に教える。
「何点か稼げるかと思ったか?」
「っ!」
「突出した才能はなくても二年分、お前らより長く、体に刷り込んできたレシーブだ。
簡単に崩せると思うなよ?」
「か、カッコイ~!」
「ほんと、かっけーっすわ」
日向だけでなく晃にもそのカッコよさがしみわたっていた。
「ほら王様、そろそろ本気出したほうがいいんじゃない?」
「あ?何なんだお前!こないだから突っかかりやがって。王様のトスって何だっ?」
「君、こいつがなんで王様って呼ばれてるか知らないの?」
「こいつが何かすげー上手いから、他の学校のやつがビビッてそう呼んだからじゃないの?」
「ハハ、そう思っている奴も結構いると思うけどね」
「?」
「でも噂じゃ、コート上の王様って異名、北川第一の奴らが付けたらしいじゃん。王様のチームメイトがさ、意味は自己中の独裁者、横暴な王様、噂だけは聞いたことあったけど、あの試合見て納得いったよ。横暴が行き過ぎて、闇影君との試合、開始早々ベンチに下げられてたもんね。」
そのことを知っていた月島、山口、清水、張本人の影山、晃以外のメンバーは晃と影山の二人を交互に見た。
「クイック使わないの?それとも、闇影との試合のせいでビビってるとか?」
「……」
「テメェ、さっきからうるせえんだ「田中」」
外から突っかかろうとした田中だが、それを澤村は止める。
「折角トス上げても誰も跳んでないんじゃ「ああ、そうだ」」
「トスを上げた先に誰もいないっつうのは、心底怖―よ」
とても暗い雰囲気だ。そんな中、その雰囲気を壊すものが二人いた。
「でも、それ中学の話でしょ?」
「だよなあ」
日向と晃だ。
「俺にはちゃんとトスが上がるから、別に関係ない」
「俺は、トスさえ上げてくれれば打ち抜くつもりだから、影山に損はさせないし」
「それより、どうやってお前を打ち抜くかだけが問題だ!」
日向の陽気さにみんな小さく笑う。
「月島に勝って、部活入って、お前は正々堂々セッターやる!そんで俺にトス上げる!それ以外になんかあんのか?」
影山は正論を叩きつけられて何も言えない。
「そう言う、いかにも純粋でまっすぐな感じ、イラッとする」
さっきまで煽っていた月島が感情を出したことに澤村と晃は珍しいものを見る目で月島を見る。
月島のサーブを晃が上げる。
(どっちに上げる日向はまだ真っ向勝負で月島に勝てないっ、)
(まだ迷ってるな影山、なら)
「日向、跳んで影山を呼んでやれ」
「っ!おう」
晃は日向にアドバイスをやる。この先、ともにやっていく二人の距離を縮めるチャンスだった。念のために晃も助走に入る。
「闇か「影山!」っ」
「いるぞっ‼」
影山は日向にトスを上げる。そのトスは何とか手に当たるもアウトだった。
「あっぶね~、からぶるとこだった。アウトだけど」
「お前何をいきなり「でもちゃんとボール来た!」っ」
「中学のことなんかしらねぇ、俺にとってはどんなトスだってありがたーいトスなんだ!俺はどこにだって跳ぶ、どんなボールだって打つ。だから、俺にトス、持ってこい‼」
今回、日向と影山の回みたいになってしまいました。
次はあの速攻が出るかもしれません。
次も頑張りますのでよろしくお願いします。