迷子の迷子のスパイカー   作:風神タバサ

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「おいお前ら、クイック使えるのか!?」

 田中がコートの外から驚きの声を上げる。

「クイック?」

 日向はクイックが何かわかっていない。

「日向、クイックってのは超早い攻撃のこと」

 晃は分かりやすいように、クイックについて教える。

「?全然、俺、ポーンて山なりになるボールしか打ったことないです」

「でも今やったろ~!それにお前、中学の時素人セッターのミスったボール打ったろ?ああゆう……」

「へっ?でもどうやったかは覚えてないです」

「ぬぁぁ」

あまり伝わっていないことに田中は、肩を落とす。

「でも俺、どんなトスでも打ちますよ‼打つからな‼」

「……合わせたこともないのに、速攻なんて無理だろ!」

(今無理って言った!?こいつ無理って単語知ってんのか⁉)

 日向は影山が無理と言ったことに心底驚いていた。

 そして日向は影山を指さして言った。

「なんだお前変!そんな弱気なの気持ち悪い‼変!」

「うんうん。」

 日向の言葉に晃も同意していた。

「うっせーな!」

影山はそのままポジションへ戻っていく。

「王様らしくないんじゃな~い?」

「っ‼今打ち抜いてやるから待ってろ‼」

 影山を再び煽る月島に日向は再び突っかかる。

「まーた、そんなムキになっちゃってさ~、何でもがむしゃらにやればいいってもんじゃないでしょ?人には向き不向きがあるんだからさ。君、明らかにスパイカーに向いてないでしょ」

 田中が殴りかかろうとしに行くが晃がそれを止める。

「確かに、中学んときも、今も、俺、跳んでも跳んでもブロックに止められてばっかだ。バレーボールは、高さが必要。いくら高く跳べても、圧倒的身長差は埋まんねぇ。だけど、あんな風になりたいって思っちゃったんだよ!だから、不利とか不向きとか関係ないんだ。この体で戦って、勝って勝って、もっといっぱいコートに居たい!」

 影山は晃と戦ったときにベンチに下がった時の記憶がよみがえる。日向も影山に負けた時の記憶がよみがえる。その時二人の考えていたことは一致していた。

((まだ、コートに立っていたい!))

「はぁー」

 日向の思いに対して月島は溜息を吐く。

「だからその方法がないんでしょ?精神論じゃないんだって!気持ちで身長差が埋まんの?リベロになるなら話は別だけど」

 そんな時、影山には先ほどの日向のトスを読んだ声がよみがえる。

「スパイカーの前の壁を切り開く、そのためのセッターだ!」

 このとき、スパイカーを主張する影山の言葉に、二、三年は驚いた。

 影山は隣にいた日向を強引に連れて速攻の説明をした。

 それを聞いた晃は単調すぎることに笑った。

「ははは、それでできるのか?」

「とりあえず、やってみる!」

「そもそも影山、さっきまでガチへこみしてたよな?」

「へこんでねぇ」

「よっしゃー、やってやんよ!」

 日向にトスが上がるのは確定しているので、晃はレシーブに専念する。

月島のサーブから再開する。ボールは日向のほうにとんでいくが晃がその横から横取りする。

日向は助走を開始する。影山はトスを上げるが日向は間に合わず、ボールはそのまま通り過ぎていく。

「おい、何してる‼もっと早っ!?……」

「出た王様のトス」

 月島は影山のトスと暴言を吐きかけたことに煽りを入れる。

 その後も何度も挑戦するが、十分にジャンプすることができなかったり、ジャンプするもボールが早く振り切る時には過ぎていたり、何とか手に当たるも前に跳びすぎて網に引っ掛かったりと全くうまく言ってない。

「お前、反応早いんだからもっとこう、バッと来いよ、バッと‼」

「バッなのかグワッなのかどっちだ!?」

「いや、まずどうやったら決まるかだろ……」

「影山」

 コート内で言い合っていると菅原がコートの外から声を掛けてきた。

「そんじゃ、中学の時と同じだよ、……んぁ、えーと」

 菅原は何を言って言いのか言い止まる。

「日向には、反射やスピードも、……ついでにバネもある、慣れれば速い攻撃だって」

「日向のそのすばしっこさって言う武器、お前のトスが殺しちゃってるんじゃないの?」

「!」

「日向には技術も経験もない」

「!菅原さん……」

「中学でお前にぎりぎり合わせてくれた優秀なプレイヤーとは違う」

 菅原の無意識な口撃に日向は落胆する。

「でも素材はぴか一」

「え!そんなぁ、天才とか大げさです、えへ、えへへへへへ」

「いや、そこまで言ってなかったぞ?」

 照れている日向に晃は訂正する。

「お前の腕があったらさ、んなんつうか、もっと日向の持ち味ってうか、才能って言うか、そお言うのもっとこう、ええっと、なんかうまいこと使ってやれんじゃないの‼?」

「……」

「俺、お前と同じセッターだから、去年の試合、お前見てビビったよ。ずば抜けたセンスと、ボールコントロール。そんで何より、敵ブロックの動きを冷静に見極めるめと判断力、俺には全部ないもんな」

 田中がかばおうとするが澤村に止められる。

「技術があって、やる気もありすぎるぐらいあって、何より、周りを見る優れた目を持っているお前に、仲間のことが見えないはずがない!」

 菅原は持っていたボールを影山に投げて返す。

(……なんかうまいことって何だ!?)

 影山はさっきの菅原の言葉を思いだしていた。一度ボールを見てから日向のほうを見た。

「俺は、お前の運動神経がうらやましい!」

「はぁ!」

「だから、宝の持ち腐れのお前が腹立たしい!」

「はぁ⁉」

影山の理不尽の言葉に、日向は驚く。

「それなら、お前の能力、俺が全部使って見せる!お前の一番のスピード、一番のジャンプで跳べ!ボールは俺が持っていく‼」

「持っていくって何?どうゆうこと」

 日向には『持っていく』の意味が分かっていなかった。

 そんな日向を見て晃は小さく「さっき、『俺にボール、持ってこい』って言ってなかったか?」と小さくつぶやいた。

「お前はただ、ブロックのいないとこにマックスの速さと高さで跳ぶ。そんで全力スイングだ!俺のトスは見なくていい、ボールには合わせなくていい!」

「はぁ、ボール見なきゃからぶるじゃん!」

「かもな‼」

「うおいっ!?」

「でも、やってみたい」

「……、分かった」

 影山と日向のやりたいことは決まった。

「まだ何かやるつもりか?王様の自己中トスなんて誰も打てないってば」

「だよね~」

 月島たちは否定的だった。それを聞いていたもう一人の一年である晃は、月島の考えに否定的だった。

(自己中トスでも、影山が合わせれば普通の早いトスになるでしょ)

 外野が見守る中試合は再開する。

 影山は全神経を研ぎ詰める。ブロックの位置、ボールの位置、スパイカーの位置、次にどう動くか、どこに跳ぶか、日向のジャンプの頂点、全てを見る。そしてボールの下に行き、日向の打つ打点に照準を合わせる。日向が腕を振ると当時に影山のトスは日向の打点につき、そこに日向の振った手が当たる。 日向の打ったボールは誰の目にも留まることなく月島たちのコートに打ち付けられる。

月島はその速さに驚きを隠せず、影山はうまくいったことに喜び、日向は

「手に、手に当たった~!?」

手に当たったことに喜んだ。

「大げさだな~」

「おい!今日向、目、瞑ってたぞ……」

「「はぁ⁉」」

「ああ、やっぱり?」

澤村の言葉に月島、影山は驚き、晃は確信した。

「あの、どお言う……」

「ジャンプする瞬間から、スイングする瞬間、日向は目を瞑ってた。つまり影山が、ボールを全く見ていない日向の掌に、ピンポイントでトスを上げたんだ!スイングの瞬間に合わせて、寸分の狂いもなく」

 日向は今だに喜んでいる。それを聞いた影山は日向に向かって叫ぶ。

「おおい、お前ぇ‼目ぇ瞑ってたって何だぁ!」

「お前がボール見るなっていったんだろー!?目開けてると、どうしてもボールに目行くから」

「確かに言ったけどっ」

 この事実に得点を付けていた木下たちも驚愕している。

 その後も日向と影山は速攻をするが、いっさいあわなくなった。そのたびに晃が日向と影山の直線状に行き、カバーする。おかげで日向たちはあまり点差が開いてない。

 山口のサーブは晃がきれいに影山に返す。月島はまた失敗すると思い晃をマークするが、日向の気迫に驚き山口にブロックすることを言う。しかし日向は途中で方向を変えサイドに走る。

 晃も助走に入っていたが日向の道を作るために途中でブレーキした。

そして日向はジャンプし手を振ってスパイクを決める。

影山と日向はお互いに手を見て

「よしっ!」

と喜びながらガッツポーズをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

晃はそれを見て溢れんばかりの闘気むき出そうとしていた。

 




次回は晃が少し暴れます。
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