俺は今、陸上競技場に来ている。
ちょうど一年前潔子さんに初めてあった場所だ。
どうしてここに来ているかと言うと、今日が潔子さんの中学最後の試合だからだ。
潔子さんはあの時部活を休んで以来、毎日練習に行っているようだ。どうしても技術面は向上しないらしいが、そこは吹っ切れたようで少しづつだがミスも減ってきているらしい。
そしてつい先日、潔子さんに「最後の大会だから応援に来てくれる?」と聞かれたので、「行きますっ!場所はどこですか?」と聞き返すと、清香さんはいたずらっぽく笑い「私がかっこよくなれた場所」と言い返した。あの日以来潔子さんはかっこいいというとよく笑うようになった。そしてかっこよくなれた場所と言うとあそこしかない。そう思いいつもの早朝ランニングに財布とスマホを持って出かけた。
会場に着くとハードルの競技はまだ始まっておらず後ろの空いてる場所に腰を下ろす。
数分経ってハードル競技の予選が始まった。この予選で記録上位の八名で決勝を行うようだ。潔子さんは予選最後のグループらしく、昨日からとても緊張していた。
予選がどんどん進んでいく中ついに潔子さんの番が来た。潔子さんは今……笑っている。
どうやら調子は良さそうだ。そして潔子さんの顔は真剣なものに代わりセットする。
そして今スタートの合図が鳴り響く。
――――――潔子said――――――
彼のことを知ったのは小学五年生だった。当初は体力お化けと言う噂でどうせでたらめだろうと思っていた。それはクラスのみんなが思ったことだった。
しかし、その噂が事実だと分からせる出来事が起きた。それは冬に行われる持久走大会。
うちの小学校では一二年生、三四年生、五六年生が一緒に走るという習慣がある。距離は全学年同じで学年、グループ、学校で順位を出してそれぞれの三位以上の生徒に景品を渡すというものだ。
この行事は一、三、五年生は学年順位だけを争い、二、四年生がグループ順位、六年生が学校ナンバーワンを決める戦いと言うのが恒例となっていた。当初の六年生もそう思っていたのだろう。体力お化けと呼ばれていた子も去年はグループ一位を取ったらしいが学校順位を取ることはなかった。よって、ただの噂だと皆が思って、そこまで早くないとみんなが思っていた。
しかし結果は違った。体力お化けと言われた少年は校内記録を塗り替えるほどの速さを出したにもかかわらず、息切れ一つしていなかった。そしてあろうことか先生に許可を取り二週目に入り、そこでも二位との大差をつけゴールしたのだ。
当初余裕を持っていた六年生もこの話を聞いた瞬間信じられないと言いたいかのような顔をして持久走に挑んでいたが、結果は体力お化けの少年の記録には全く届くことなく、学校一位は体力お化けの少年になった。
校長先生に「学校一位、闇影晃」と呼ばれて返事した少年は三年生の列から出てきて賞状を受け取る。最初はみんなが驚いた。その少年はどこにでもいる少年だったからだ。その姿を見て他の教室や私のクラスでも、体力お化けの話で持ちきりだった。曰く体力お化けは早朝に山一つ越えるほど走っている、曰く体力お化けはスポーツ万能である、曰く体力お化けは人間の皮をかぶった本当のお化け、このほかにも本当は小さいオトナや、動物の力を持っているなどのうわさが広まった。
その翌年も彼は再び校内記録を塗り替え学校一位となり女子のファンも増えていった。
しかし、私にはそれでも悔しそうにする顔が何故かうらやましかった。
その後、私は中学に進学し陸上部に入った。その時からだろう、告白されるようになったのは、色々な人に告白された。学校一のイケメンと名高い男子、スポーツ万能な先輩、たまに教師や郊外から来る人もいた。しかし決まって告白はみんな一緒で「一目ぼれしました、付き合ってください。」だ。そして断っていくうちに褒めて落とそうという人も出てきた。しかし、それも皆「可愛いね、」や、「きれい、美人」などだ。いつしか私は近所の人に同じことを言われても嬉しいと思わなくなった。
二年に上がってからも同じことを言われ続け、部活でもうまくいかないことから正直逃げたくなった。
その状態で私は大会を迎えた。結果は四位で三本目に引っかかって失速した。それでも走り続けて四位。そんな時、他の人は一位になった人を見るのに一人だけ私を見ている人がいた。最初は私以外の誰かを見ているのかと周りを見渡してみるが私以外誰もいなかった。私はとりあえず手を振って振り返してみると彼も周りを見渡し手を振り返した。私は面白くて笑ってしまった。そのまま控室に戻って着替え帰る準備を済ませて控室を出て歩いているとスマホを持ってうろうろしている人を見つけた。あの時私に拍手を送ってくれた彼だった。そんな彼に私は勇気を振り絞って声を掛ける。
「どうしたの?」
「じ、実は道に迷ってしまって……」
緊張しているのか声が少し裏返っていた。
「家、どこかわかる?」
彼はスマホのマップを見せ、家のある場所を教えてくれた。少し私を信用しすぎではないだろうか?
そして、マップを見てみると、私の家の近くだった。
「私のうちに近い。…………一緒にいく?」
「いいんですか⁉」
「うん、私も君に聞きたいことあるから、ついてきて」
あの時どうして私を見ていたか気になったので案内するついでに聞いてみることにした。
しばらく歩いていると目的のバス停に着いた。
「あの、俺、金持ってないんですけど」
「うん、私が払ってあげる」
「いや、そこまでしてもらうのは……」
「気にしなくていい、私の質問に答えてくれれば。」
正直脅している感じもあったが気にしないように言い流す。
バスが来るまで何を話したらいいかが分からなくて沈黙が続いた。
しばらくしてバスが来て乗り込んだ。私は空いてる席を見つけその席の奥に座った。しかし、彼はなかなか座らない。なぜ座らないのか見ていると彼は「失礼します」といい、私の隣に座った。
「私二年の清水潔子、君は?」
名前を知らないのに話すのは失礼だと思ってとりあえず名乗ることにした。
「小六の闇影晃です」
「!?小学生だったんだ、大きいから中学生かと思ってた、それに闇影ってもしかして体力お化け?」
普通に大きいから高校生かと思っていたがどうやら小学生だったようだ。
「あ、はい、そう呼ばれてました。今では体力モンスターですけど、にしてもよく知ってましたね」
「多分、同じ小学校」
あれから二年でだいぶ成長していたので最初は分からなかった。
彼は私と同じ小学校と聞くと何故か頭を抱えて落ち込んでいた。
「それで、質問してもいい?」
「いいですよ」
「私が走り終わった後、どうして私のほうを向いて拍手を送ってくれたの?」
とりあえず聞いてみたかったことを聞くことにした。
「そ、その~、清水さんが三本目のハードルで引っかかっても諦めずに走り続けたのが、その、…………」
「……?」
「かっ、かっこよかったからです!」
「っ、あ、ありがと」
「は、はい」
今までたくさん褒められて感覚がマヒしていたので、初めてかっこいいと言われて顔を見ることもできなかった。どころか何か話さないと、間が悪い感じがした。
「そ、そう言えば闇影は誰かの応援に来てたの」
「い、いえ、早朝ランニング中に迷子になってしまって……」
「早朝ってことは、朝とお昼は?」
「食べてません。」
私はそれを聞いてバッグの中にあったウイダーを見つけ彼に渡す。
「いいんですか⁉」
「しっかりご飯食べないと体に悪い、それ飲んで栄養蓄えて」
「はい」
その後は彼がなんで体力モンスタ―と呼ばれるかを聞いて笑っているうちに目的の場所に着いた。
その後は連絡先を聞いてお互い別れた。
それから数か月後に晃が中学に入学してきた。私は晃が入学する前「本当に私と同じ学校に入学するの?」と聞き、晃は「はい!」と答えるのでうちの学校のバレー部がなくなったのを知って入学したかと思ったから、知らなかったときは少し面白かった。一応陸上部に勧誘したが、バレーをすると言ったとき私は少し安堵してしまった。
それから晃は一人で練習することが多くなり、「運動場にもいっていい?」と聞かれたとき、私は失敗してかっこ悪いところを見られたくなったので「きたら、だめ」と言ってしまった。その時の彼は残念そうに帰っていった。
私はもう一度かっこいいといってもらうためにその日から更に練習に打ち込んだ。しかし、それでもハードルに引っかかることが多かった、なかなかうまくならずに部活に行きたくなくなってきた時晃に心配された。
私は自分が思っている気持ちを全部話した後晃に「失望した?かっこいいって言ってくれたのにごめんね」と言ってしまった。おそらくここで「失望した」なんて言われたら私はもう経ちあがることはできないだろう。しかし返ってきたのは予想外の言葉だった。
「失望したって聞きましたよね?」
「うん。」
「そんなわけないじゃないすか。行きたくないって気持ちが強くても潔子さんは毎日練習に行ってるじゃないですか。それに俺知ってるんですよ。潔子さんいつも最後まで残って練習してるって、普通諦めてる人はそんなことしませんって。むしろ誰よりも頑張ってるんだから誰が何と言おうと潔子さんはかっこいいですって。」
私はそれを聞いてうれしくて涙をこぼした。
「あ、あの、なんか悪い子と言っちゃいましたか⁉すみませんっ!!」
「ち、ちがっ…そうじゃなくて、嬉しくて………………、もし、嫌われたらどうしようって、思ってたのに、むしろ褒められるなんて、思わなくて」
「嫌うって、そんなわけないじゃないですか、むしろ俺がかっこいいって言ったせいで無理させてしまったり、近くにいるのに潔子さんがつらい思いしてるって気付かなくてすみません。」
「ううん、晃は気づいてくれたし、晃にかっこいいって言われて頑張ったのは私の勝手、だから気にしなくていいよ」
その時私は中学で陸上をやめる決心がついた。
顧問の先生にもその決心を話すと、「その判断に後悔がないなら最後まで頑張りなさい」と言われ残りの部活を頑張ることにし。
次の日から私は練習を再開すると少しづつだが記録が早くなっていくのが分かった。技術は上達しなかったけれど。
そして大会前、私は晃に「最後の大会だから応援に来てくれる?」と頼んでみた。晃はすぐに「行きますっ!場所はどこですか?」と答えてくれた。場所は去年と同じ場所なので私はあえてこういうことにした。
「私がかっこよくなれた場所」
どうして今こんなことを思いだしてしまったか自分にもわからない。私は会場を見渡す。晃は来ているのかすると晃を見つけた。晃も私のことを見ている。今日で最後になるハードル走。私は晃にもう一度かっこいいと言いって欲しくて走ることにした。
そして今スタートの合図が鳴り響く。
――――――潔子said out――――――
潔子さんは合図と同時に走り出す、一本目二本目は成功、去年は三本目で引っかかって速度を落とした。見ているこっちもドキドキする、潔子さんが三本目を跳ぶ位置に来たスピードを上げ三本目を跳ぶ。結果は
無事とぶことができた。そのご四本目五本目と失敗することなく三位でゴールする。その記録が電光掲示板に表記されすぐに全体順位にと替えられた。
結果
九位と決勝リーグ出場はならなかった。
潔子さんはその結果を見て笑顔でこちらに手を振ってくる。俺も一応手を振り返す。そのまま控室に戻っていく潔子さんを見て俺も席を立ったベンチに座っていると、
「ごめん、待った?」
潔子さんが来た。しかしいつもと違うところがある。それは眼鏡をしているところだ。その眼鏡は大会が終わったら付けるといってた眼鏡である。
「へん、だった?」
「いえいえ、そ、とても似合ってて、かっこいい潔子さんの後に可愛い潔子さんがいたから、その、驚いてしまって」
「あ、ありがと」
そのまま潔子さんは俺のベンチに座った。
「私ね、三位になったとき、やり切った、もう悔いはない、と思ったんだ。でも順位表で総合九位だったときとても悔しかった、なんか変だよね?あんなに、走りたく、なかった、のに」
潔子さんの声が弱弱しくなっていくのが分かる、彼女の目には少しづつ涙があふれてきている。
こんな時俺はどう答えればいいか悩む。簡単に声を掛けるだけじゃダメだからだ。しかし、その答えはすぐに見つかった。思っていることを伝えればいいんだ、と。
「全然変じゃないですよ、悔しかったってことはそれだけ頑張って練習して、試合にかける気持ちがそれだけ大きかったってことです。だから悔しくても、泣いていいんですよ。我慢しないでください。胸なら貸します」
「…………ありがと」
そう言って潔子さんは俺の胸でたくさん泣いた。
あと一二話で原作に入ります。
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