迷子の迷子のスパイカー   作:風神タバサ

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大会2

今日俺たちは北一と戦うため再び試合会場を訪れた。

昨日、試合に勝ったことでテンションマックスだったボスたちだが、今日は昨日以上に落ち着いている。それもそうだろう。昨日の仙国とは違い今日の空いての北一は選手層が厚く、優勝候補としても有名だ。逆に俺達は選手層が薄く、一人でもかければそこで終了。

俺達は第一試合のためすぐにアップに入る。

「アニキ、作戦って本当にあれで良かったんですか?」

「そうっすよアニキ、これがアニキの最後の大会で、負けたらそこで終わりだってのに」

「おれっちたちで攻めろって!?」

「それに俺中心で攻める意味が分かりませんよ、アニキ‼」

「……………………」

 俺は会場に着いてすぐにボスたちに作戦を知らせた。今回の作戦は、チビを中心的に攻めさせ、俺はレシーブ、トスを中心にして試合をするというものだ。本来、昨日の試合で俺がスパイクを打ちワンマンチームだと北一の偵察に教えようとしたが、ボスがサーブで点を取ってしまったため相手チームに俺達の情報は多くない。それでも昨日の試合で俺とボスの情報は少なからず取れただろう。主にボスのを。

しかし、ここがとても重要だった。実を言うと今日の試合ボスを中心に攻めるというものだった。が、昨日のサーブでボスも警戒されてしまった。じゃあ、ボスの代わりに相手の度肝を抜くのに誰が一番、適任か?

それはこの中でも一番小さく運動神経がよいチビだった。よってチビを中心に攻める作戦に切り替えたのだ。

正直言ってこれは賭けだ。例え、チビへの作戦がうまくいっても影山がこの試合で交代してしまったら、俺の作戦のいくつかは潰れ、残りは体力勝負になる。そうなってしまったらチビの体力はおろか、他のみんなの体力が持つかわからない。原作では影山は決勝戦で交代したが、俺の作戦が嵌れば影山が交代する可能性はいくらでもある。そうなればフルセットまでやる可能性が高く、チビはもちろん俺とボス以外の体力が持つかわからないのだ。

そんなことをグダグダ考えている間に試合開始の時間が刻々と迫ってきた。

「とりあえずチビを中心に攻めるのは決定、あとは基本的に俺とボスでレシーブ、ブロックは俺が指示を出す。サーブは予定通り六番を揺さぶれ。わかったな?それじゃあ、行くぞ‼‼」

「おっす‼‼」

 コートに一列に並ぶ、相手が十四人いるのに対し俺たちは六人。もちろん相手には、影山だけではなく金田一に国見もいる。

 そして今対北川第一との試合が始まる。

 

 

 

――――――三人称―――――

 サーブは北川第一からだ。サーバーの金田一はもちろん、他の選手も昨日の試合のことは耳にしていた。晃が一本目に強烈なスパイクを打ち、その後はボスがサーブだけで試合を終わらせたということを。これだけじゃ情報が少なすぎると北川第一の監督も思ったが、何もしないよりかは、圧倒的にわかりきっている晃とボスを抑えるほうがいいということに決まった。

(狙うのは一番か二番、一番は前衛にいるからここは狙いやすい二番)

 金田一は予定通り晃のほうにサーブを打った。

 晃は無口の位置を確認し、そこにレシーブを上げる。それを見たボスとチビはともに助走距離を確保、二人同時に走り出す。北川第一のブロッカーはボスに目線を移す。目線を戻す無口がアタックモーションに入っていた。北川第一のブロッカー三人が無口のスパイクを止めるために跳ぶ。しかし無口はスパイクフォームからセットフォームに切り替えもう一人の前衛のチビにトスを上げる。北川第一はがら空きになったボスにトスが上がると考え体の向きをボスの方向に向けていた。トスがチビに上がったことにより体をチビのほうに向けなおし、スパイクが来るのを待っていた。しかし、スパイクは来ることはなかった。

チビは自分に上がったトスを軽く手に当てて相手コートにボールを落としたのだ。それも、誰もいなかったアタックラインの前に。

当然北川第一のレシーバーは反応するも届くことはなくボールはコートに落ちて転がる。

それを見たチビは一言、

「狙いどーり、ごちそー様でした。」

 飛び込んできたレシーバーと騙されたブロッカーに対してチームのもとに戻っていった。

 次のサーブはチビで前衛は無口、ボス、晃の三人だ。晃は元からこうなるようにポジションを組んでいた。セッターの無口とチーム最身長の晃、ボスがブロッカーでそろえるためには一人がミドルブロッカーになる必要があった。本来悠仁がミドルブロッカーだったが、敢えて晃がミドルブロッカーとして大会に挑んだ。それも作戦の一つである影山をつぶすために。

(チビがあそこでフェイントをするのは予想外だったが、第一段階は成功、それじゃあ)

「試合前にいった通りに行くぞ!」

「うっす、」

「…………」

 晃の言葉にボスと無口がそれぞれ返事をする。チビのサーブはリベロのところに行き影山にAパスで返した。しかし影山はネット際でプレッシャーを放ってくる無口、ボス、晃に焦っていた。

(すげープレッシャーだ。普通のスパイクじゃ確実に止められる!なら速さで)

 影山は普通のトスじゃ止められることを悟り、早さ重視のトスを上げることにする。

 しかし、ここまでが晃の罠だった。晃が試合前に無口とボスに出した指示は「絶対に止めるという意志を持って影山を睨みつけるかのように見ろ!」だった。これが晃の作戦の一つ、影山にプレッシャーを与えミスを誘って潰す、というものだった。影山が早いトスを上げようとしたとき、それと同時にスパイカーの位置を見る明らかに助走が完了していない。

「stay」

晃は、すぐに二人に指示を出す。結果ブロッカーの三人はその場から動くことなく、北川第一は影山とのコンビミスで失点した。

これが晃が考えた、あまり体力を奪われない得点方法だった。

再びチビのサーブ今度も影山にAパスが上がり、無口、ボス、晃の三人は影山を睨みつける。

影山はこの三人のプレシャーを浴びながら先ほどのプレーを思いだす。

(こいつらはこの六人しかいない、だからさっきクイックが合わないと思ってブロックしに行かなかった!なら)

 今度は普通のトスを上げる影山。しかしそれを見逃すような晃たちではない。即座にスパイカーの正面に三枚ブロックを揃えスパイカーの打ったボールをシャットアウトする。三度晃たちの得点になる。

 チビのサーブが続く、今度は国見を揺さぶるように目の前に落ちるようにボールを打った。

 国見は前のめり気味にボールを取り上手く影山にはボールが帰らなかった。またもや、プレッシャーが影山を襲う。

(普通にトスを上げて求められる!だったら速さで打ち抜く‼)

 影山は再びクイックを使おうとボールに指を掛ける。

「stay」

 影山の耳にはその声が聞こえた。そして、影山が上げたトスにスパイカーは合わせることができず、またもや晃たちの得点になった。

 そして、影山の悔しさが頂点に達する。

「もっと早く動け、もっと高く跳べ‼俺のトスに合わせろっ‼‼勝ちたいならっ‼‼‼‼」

 影山は自分が何を言ったかに気づく、しかしもう遅かった。影山のチームメイトはもうあきらめたかのようなまなざしを彼に向ける。

 チビのサーブはきれいに影山のもとへ返された、今度は晃たちがプレッシャーをかけることはなかった。なぜなら、影山がトスを上げた先には誰も跳んでいなかったのだ。そして、北川第一の選手交代、交代するのは影山だった。北川第一の監督はベンチを立って一言影山に「お前もう、ベンチさがれ」そして影山はベンチに下がって新たなセッターが入ったことにより北川第一の士気は高まった。

 晃はすぐさま新たな作戦を伝える。それは国見を狙ってミスを誘うというものだった。

(セッターにプレッシャーをかけるというのも一度考えたが、あれは影山だったからこそ通じた作戦で相手が影山出ないと意味がない)

そして晃の新たな作戦通り国見を揺さぶるようにサーブを打ったしかし国見は先ほどと違い前に出てレシーブを返す。そのままレフトからの速攻を使われ身長の低い無口の上を通される。ここで初めて北川第一が点数を取った。ここで、北川第一の応援団が沸く。正直このままでは北川第一押せ押せムードになると思ってしまった晃はあることを実行することにした。

「基本レシーブは俺がする。逹たちは自分の周りを中心に守ってくれ。ボスはストレートを通さないようにブロックを、これで行くぞ!」

「「「「おっす‼」」」」

 そこからの試合展開はとったり取られたりだった。士気の上がった北川第一のスパイクを晃がレシーブしては、チビのジャンプ力に慣れてきた北川第一はブロックでシャットアウトする。晃のスパイクサーブはへたくそながらも上に上げ一本で切ったり、無口がフローターサーブで相手のレシーブを崩してボスがシャットアウトする。

 このような展開が続き一セット目は25-20で晃たちがとった。

 しかし、それでも北川第一の士気が下がることなく、むしろ上がってきているところだった。結果ボスたちの士気が上がらないわけがない。北川第一につられボスたちも調子を上げてきていた。

 そして第二セット目が始まる。第一セット目と変わらずお互いが点を取ったり取れれたりだ。

 そして18-21で逹のサーブになる。逹はジャンプサーブを打ったがリベロに拾われ、セッターに上がっていく。センターから金田一が飛び出しそれに前衛のチビ、無口、悠仁が反応するトスはセンターに上がり金田一はここぞとばかりにフェイントをする。チビの後ろだったので、手を伸ばすが触ることはできず、ボールは落ちていく。それに晃は反応しボールを上げる、着地してすぐに無口はボスにバックトスを上げ、ボスはそれを打ち切って、点数をもぎ取った。そんなボスたちにアクシデントが起こるフェイントを拾った晃が腕を抑えて倒れていた。晃がボールを取った時そのまま倒れ、そこにブロックにとんでいたチビが踏んでしまったのだ。普通ならありえないが、チビの身長は148センチ、それでありながら、自分の身長の倍とんでいたのだ。そして落ちてくるのは他の選手よりも遅く、そこに晃の腕があり自分の体重の倍の重さで踏んでしまった。晃は一度ベンチの外に運ばれる。踏まれた場所は青くはれ上がっており、審判は、

「試合をやめて、すぐに病院に行ったほうがいい」

と申告したが、晃は一言、

「お断りします」

と立ちあがり言い放った。

「危険だと思ったらすぐに辞めさせるからね」

 そう言って審判は戻っていった。

 戻ってきた晃を心配そうに見るボスたち。

「気にすんな、ここから反撃行くぞ。」

 笑顔で戻ってきた晃の言葉を聞きボスたちは一度顔を見合わせ一つ頷いて、

「「「「おっす‼‼‼‼」」」」

 と、今まで以上の声で返事した。無口も手を上げて答える。

 それでも、晃が抜けた穴はでかく、点数を決められ、最後は晃のところにサーブが飛んでいき、そのサーブを正面で取ろうとする晃だが、右腕が上がらずボールを上げることはできなかった。

 二セット目を20-25で北川第一がとったところで主審とラインズマンたちが集まり、そのまま試合終了の合図が出される。最後のレシーブを見た主審がこれ以上は危険と判断し、没収試合となった。

 

 

 

――――――終了――――――

 挨拶を終えた俺たちは一度医療室に行き、応急処置をしてもらい、最後のミーティングをしていた。そんな中、チビはボロボロと泣いており、ボスたちも拳を握り締めてうつむいていた。

「おいおい泣くな、上を向け!」

 そう言ってボスたちの顔を俺に集中させた。

「アクシデントなんてどんな競技をしていてもついてくるもんだ。それだっていうのに、お前ら暗すぎるだろ」

「アニキ……」

「最後くらい俺を元気よく送り出してくれ」

 そして俺はバッグを持って帰ることにした。

 そんな時、

「アニキッ‼‼」

 後ろから声が聞こえ振り向いてみるとボスたちが頭を下げていた。

「こんな荒くれ者たちの俺たちにバレーボールを教えてくれてありがとうございました‼」

「「「したっ‼‼」」」

「アニキに教えてもらったこのバレーで来年こそは俺たちが全国に行って見せます。本当にお世話になりました‼‼」

「「「お世話になりました」」」

 最後の最後まで騒がしい。入部する前もだいぶ騒がしかった。だから俺はこの言葉を贈る。

「全国に行ってお前たちの名が轟くの楽しみに待ってる、頑張れよ‼‼」

そう言って俺はその場を後にした。

 

しばらく歩いていると、見たことのある人影があった。

 最後にあったのは卒業式、その日から俺もあの人も忙しくて電話で話せる機会しかなかった。

「久しぶり、元気にしてた?」

「潔子さん!」

 烏野高校排球部のジャージを着ていた潔子さんがいた。実に会うのは一年半ぶりだった。

「試合、見てたよ、腕大丈夫?」

「ああ、少し痛いぐらいで大丈夫ですよ」

「……そっか、とりあえずそこに座ろっか」

 潔子さんに促されて俺はベンチに座る。

「晃は泣かないの?」

「座って第一声目がそれってどうなんですか?」

「?それで泣かないの?」

「泣くわけないじゃないですか。俺は正直やれることはやり切った感じなんで」

「でも、ここに来ているときの晃はとても悔しそうだった」

「悔しいですよ、悔しくないわけないじゃないですか。これまでたくさん練習して、最後の、大会で、俺が怪我して、終わりって、……すっごく、ハァッ、悔しいですよ」

「やっぱり、泣てるじゃん」

「それは、潔子さんが、誘導して」

「悔しかったから泣かないって言うのは少し違う。悔しい時こそ泣いていいんだよ。晃だって言ってたじゃん。悔しいくても泣いていいって、我慢しないでって、あの時は晃が胸を貸してくれたけど、今度は私が胸を貸してあげる」

「いいん、ですか?」

「うん、好きなだけ泣いていいよ」

 やっぱりかなわない。

 

俺はその日潔子さんの胸で疲れるまで泣いた。

その時の潔子さんが頭を撫でてくれた感覚は忘れられなかった

 




次回から高校編です。
楽しみに待っていたください。
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