始まり
試合に負けた次の日、病院に行って診察を受けると全治二か月の骨折で右手を使用することと、運動全般禁止された。
食事の時も右手で食べられないので左手を使って食事を行っている。その生活が一ヶ月過ぎたころ、右手の使用を許可されたが、一ヶ月間左手だけの生活だったので右手が使えても、左手で生活するのに慣れてしまった。潔子さんにこのことを話したら、「そのまま左利きになったら?」と言われ、少し前世のアニメを思いだす。某バスケットボールのアニメキャラで、ジャンプが得意なキャラが、右手でダンクするために左足でとんでいたが、右足でとんだほうが高く跳べると知り、左利きを得意にしようと左手を使って生活するシーンがあった。
なので、俺も左利きになったらいいんじゃね?と最初は思ったが、バレーは両足を使って跳ぶスポーツ。だから、足も同時に使わないといけないので、運動全般禁止の俺は跳ぶ練習をすることができなかった。
二か月たちようやく練習できると思ったが、「受験勉強を優先しろ」と母親に言われたので、基本勉強しないでいいのは六歳になった双子の翠と星、の二人と遊ぶ時だけだ。一応早朝のランニングは許してもらっているが、勉強中心の生活を送ることになった。
そこから数ヶ月、同じような生活を送りようやく烏野高校に入学することができた。
今日から部活に参加する俺だが潔子さんに「着替えて教室で待ってて」と言われた。流石に入学式に遅刻寸前で登校してきたのは驚いたらしく、校内で道に迷ったら時間がもったいないとのことで、持ってきていた練習着に着替えて教室で待つことにした。ちなみに俺は、二組なので影山とも日向とも違うクラスだ。
とりあえず潔子さんが来るまで携帯を触っとくことにした。すると廊下のほうからざわつきが聞こえ始める。次第に、そのざわつきが大きくなってきたので携帯から廊下側に視線を移すと、ジャージ姿の潔子さんが扉の前で立っていた。
「いた。晃、部活行くよ」
「わかりました。」
俺は席を立って潔子さんの後についていく。体育館に向かって行く途中によく視線を感じたが次第にそれは少なくなり体育館の近づいてくる。
その時体育館から声が聞こえた。
「ちょっとくらい嫌なことだって、俺は我慢できる!おまえがどんだけ嫌な奴でも、極力視界に入れないように頑張るっ!」
「こっちのセリフだバカ野郎っ‼」
そんな声がする方向に潔子さんは歩いていく。
「あの、そこ通してくれる?」
ここで潔子さんは軽く首をひねって尋ねる。
二人は何も言わずに道を開けるその間を堂々と歩いていく潔子さんに続いて俺も通る、影山をチラ見しながら。
「っ、お前はっ!?」
どうやら影山も気づいたようだ。
潔子さんはそのまま扉を開いて体育館の中へ入っていく。俺も続いて入ろうとしたとき、
「潔子さん、お疲れ様です。お持ちします」
「いい、自分で持っていくから」
「潔子さん今日も美しいっス‼」
「………………」
「ガン無視興奮するっス‼」
俺は一度立ち止まってしまった。アニメや漫画で見たらそれなりに面白く感じたが、直で見ると少し引いてしまった。
気を改めて入ろうとすると菅原さんに体育館の扉を閉められてしまった。
「………………」
後ろからの視線がいたい。一人は不思議そうに、もう一人は敵を取るかのように見てくる?
再び扉が開く。
「……やっぱり一人、増えてね?」
「増えてるな」
「増えてますね」
菅原さん、澤村さん、田中さんの三人が立っていた。
「オウオウオウオウ、お前、バレー部に何か用でもあるのかぁ?」
田中さんにガンを飛ばされる。正直あんまり怖くない。
「田中、その顔やめろ、それで、君は入部希望者なのか?まだ入部届が出てないけど」
「ああそれなら―――――」
「澤村」
荷物を置いた潔子さんが一つの紙を持ってこっちまで来た。
「これ、晃の入部届」
「……確かに、名前は闇影晃、間違い……うん?」
「き、潔子さん、今この一年のことな、な、なななな」
「落ちつけ田中、それで清水、この一年と仲良いのか?」
「晃とは小学、中学一緒だから」
「でも潔子さんと関わるようになったのって、潔子さんが中学生で俺が小六の時でしたよね」
「でも私は小学生の時から知ってた。」
「俺も驚きましたよ、まさか二個上の潔子さんが俺の名前を知っていたなんて」
「二人ともそこらへんでやめてくれ」
「おい、田中っ‼大丈夫か、返事をしろっ‼!」
「そういや、中学じゃ、潔子さんに手繋がれたときはとても驚きましたよ」
「ブハァッ‼」
「おい田中、ゆっくりでいい、息をしろ!?」
放心状態の田中さんと、息をするように呼びかける菅原さん。見ていて少し面白かった。
その時、潔子さんに頭を小突かれた。
「先輩の言うことはしっかり聞く」
そう言って、潔子さんはマネージャーの仕事をしに戻っていった。
「そう言うわけなんで先輩方、よろしくお願いします」
そして、俺はバレー部の練習に混ざった。最初は潔子さんの手伝いとボール拾いをすることになった。潔子さんの手伝いをしているとき、田中さんは明らかに俺を睨んでいた。結局澤村さんに怒られて見られることはなくなったが、スパイク練習の時は、明らかに俺に向かって打ち込んできた。それを俺がきれいにレシーブすると、明らかに不機嫌になってきたので、
「さすが田中先輩!こんなに強いスパイク打てるなんて、すごいですよ、田中先輩!」
「ハッ、このくらい当然だぜ、なんたって俺は、田中先輩、だからな‼!ガッハハハ」
どうやら機嫌を直すことができたようだ。その後は何事もなく練習は進んでいき、時間になると練習を終了した。
俺はあえて今聞くことにした。
「外の二人って何かしたんですか?」
しゃべりやすそうな田中さんに、
「ん?ああ、実はな」
「おい田中!」
「やっぱ秘密だ」
「もしかして体育館で因縁の再開をしたあの二人が、喧嘩をしていたところに教頭が来て、目を付けたくないから澤村さんが止めようとしたのを無視してそのまま勝負を始めて、影山の打ったサーブをちっさいほうがレシーブできずに教頭の顔面に当たって桂が飛んでしまい、その後澤村さんが再び注意するけど、また喧嘩してしまったってところですか?」
「…………もしかして、見てた?」
「なんとなく連想しました。その様子じゃあたりですね」
嘘です。本当は知ってました。あのシーンは本当に笑ったから、鮮明に覚えてた。
「勝負で勝ったら入れてくださいっ!って言ってきそうじゃないすか?あいつら」
「あり得る、頭冷やしてちょこっと反省の色見せればいいだけなんだけどな」
日向と影山なら絶対にそうする。そろそろ
「「キャプテン!?」」
外から声が聞こえた。俺もそっちに行こうとしたが、潔子さんに「ちゃんとストレッチしなさい」と言われ、行くことができなかった。潔子さんの目を盗んで行こうとしても、肩を掴まれ「ストレッチ」と言われ、行くことができなかった。
しばらくストレッチしていると、澤村さんから呼ばれ、日向、影山のところに行く。
「土曜の午前に三対三のゲームをするんだけど、この二人のチームでいいか?」
「……すみません、話が読めません」
「一年生で三対三の試合するから、この二人のチームに入ってくれ。何でも影山はお前に因縁があるらしいから、仲良くな?」
「は、はぁ」
つまり土曜の三対三の試合で俺は影山、日向とチームを組んで行う。……えぇ、なんか、面倒だな、この単細胞二人と俺一人って。
「おっほん、あー、あー、明日は朝練は七時からでしたよね?」
田中さんの言葉に一応耳を傾けておく。しかし、
「晃、帰るよ」
「……わかりました」
そうして、俺と潔子さんは一年半ぶりに一緒に下校した。
途中体育館のほうから叫び声が聞こえたが気にせずに帰ることにした。
翌日朝六時に起きて潔子さんに連れられ学校に行ったのを田中さんに見られてヘッドロックをかけられたのは、また別の話。
体育館の叫び声の原因。
――――――三人称―――――
田中は明日の時間を言いながら帰っていった日向と影山を見た後もう一人の一年に時間を報告しようとした。
「おーい、闇影~、…………縁下、闇影どこに行った?」
「闇影ならさっき清水と帰ってたぞ?」
唐突に話に入ってきた菅原の言葉を聞いて田中は一瞬フリーズするも次の瞬間。
「闇影ゴラァァァァァァぁ‼?」
「田中、うるさぁぁいっ‼?」
この声はその時学校中に響いたのだった。