醜いフレンズルドウイーク≪完結≫   作:照喜名 是空

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つきよ

「はーいごはんできたよ!

今日は焼きタケノコに、煮干しとタケノコの炊き込みごはん、

タケノコと小エビのアヒージョだよ!」

 

サーバルがキャンプ用テーブルの上に皿と竹に入った米を乗せていく。

 

「ほう、これは楽しみだ。ライスはあまり食べたことがなくてね」

 

竹に施された封を切り、蓋を開ける。

ふわりと暖かい香りが鼻をぬけ、湯気と共に竹の中に入ったライスが顔を出す。

ぎっしりと詰まった米は、柔らかく炊けており、香りが実に良い。

 

「じゃあ、みんなスプーンとフォークで食べてね!

熱いからやけどしそうになった時はお水を飲んでね」

 

かばんがスプーンとフォークを配り、手を合わせる。

 

「それじゃあ、いただきます!」

『いただきます!』

 

うむ、うまい。

竹の香りがほどよく、さらに干し魚がよいアクセントとなっている。

 

「なーにー?なんか美味しそうなかおりだねー」

「あっ、ジャイアントパンダちゃん!みんながごはんつくってくれたの!

いっしょに食べようよ!」

 

レッサーパンダが席を詰めてジャイアントパンダを手招きする。

 

「いーのー?かばんさんー」

 

ジャイアントパンダがかばんに目線を送った。

 

「もちろん!後で分けようと思って一つ余分に作っておいたんだ。

今日、セルリアンを倒してくれたのはジャイアントパンダちゃんだからね」

「はい、どーぞ!たくさんたべてね!

 

「ありがとー、むむ、これはおいしいねー。いつもと違う感じがするー」

「味がついてておいしいね!それに、パンダちゃんいつも夜は寝てるし」

「昼も夜もねるよー。しょうえね?だからねー」

 

あはは……と楽しげな笑い声が食卓にひびいた。

キュルルを見る。彼の顔には自然な微笑みがあった。

 

「キュルル、楽しんでいるかね?」

「あっ、はい。なんだかあったかくて……

おうちで食べるご飯ってこんな感じ、だったのかも……

はっきりとは思い出せないけど、

旅をはじめてから少しづつ思い出が蘇ってきたみたいです」

 

キュルルは竹で作られたコップで水を飲みながら宙を見る。

 

「そうか。暖かい思い出と、楽しい今があること。それが人の生きるよすがだ。

故に、今を大切に生きたまえよ」

 

ヒトには何かしら生きるよすがが必要なのだ。

特に、暗い夜を歩む者には。

キュルルはうなずき、顔を上げるとだいぶ明るくなった顔で微笑んだ。

 

「そう、ですね。後でこの光景を絵に描こうと思います。

みんながいて、あったかくて……」

「絵か……そうだな。

君には美しい今を未来に残す手段がある。それを誇りたまえ」

「はい!」

 

キュルルの顔には、若さ故の輝きがあった。

それが奪われないことを切に願う。

 

 

その後、キュルルはクリアファイルで厳重に密封された絵をレッサーパンダに送った。

もちろん、我々もそれを野ざらしにしないことを念押ししていた。

そして、皆が寝静まった後に、私とかばん、サーバルの三交代で見張りをする。

 

「それじゃあ、また4時間後に。おやすみなさい」

「私は二時間後だね!ふわあー、おやすみルドウイーク」

 

かばんとサーバルは寄り添って眠った。

私は一人、篝火の前に座り、火に薪をくべていく。

竹林はさらさらと夜風になびき、まるでそれ自体が楽器のようだ。

穏やかな風の音と、静かな篝火を見ていると、過去の事が思い出される。

 

「過去、今、そして未来……か」

 

私は過去の過ちに囚われている。

よかれと思って市民に狩りを教えれば、皆血に酔った。

信じていた教会の血の救いは実は悪夢の実験から生まれたものだった。

私は、何一つ救えなかった……

 

「ん……ルドウイークさん、少しトイレに行ってきます」

「キュルルか。解った、あまりキャンプから離れぬようにな」

「……はい」

 

私は篝火から立ち上がり、キュルルの消えていった竹林に近づいていく。

足音からして20mほど先か。

そして、ふと夜空を見上げた先に……

 

「良い夜だな」

「月も近い、明るい夜だ」

 

空に浮かぶ黒いフレンズ。胸の所に明るく輝く模様がある。

 

「君達は……フレンズかね?」

「私はカンザシフウチョウ」

「私はカタカケフウチョウ」

 

そう言うと、フウチョウのフレンズたちはふわりと浮かび上がる。

 

「いつまで過去に囚われているつもりだ?」

「自分が同じ事を繰り返しているから、相手も同じだと思っているのか?」

 

その夜よりも暗い羽を見ていると、不思議と本音が出てしまう。

それは彼女たちが傍観者だからだろう。

 

「違う、私は信じたい、信じたいのだ。だが、どうして信じれば良いというのだ」

 

ふわり、ふわりと私のまわりをフウチョウが飛ぶ。

 

「似たような物なら、何でも同じか?」

「でも心では違うと解っている。さあ答えてみろ。

かばんとお前を騙した者。何が違う?」

 

私が悩んでいる間にフウチョウは先回りして答えた。

 

「言ってることか?」

「いやいや、どちらもきれいな理想を追っている」

 

片方が問い、片方が愉快そうに答える。

 

「動機か?」

「いいや、彼らだって本気で善くなろうとしていた」

 

私は、答えを思いついた。

ここまで短い間だが、かばんを少しでも見てきたのだ。

その中に信じられる根拠があるはずだ。

 

「かばんは……正直だった。いつも私にやっていることを打ち明けてくれた」

「それだけか?まだ隠していることがあるのかも」

 

サーバルの顔が思い浮かぶ。

かばんと笑い合うサーバルの暖かい笑顔が。

 

「かばんには……サーバルが居た。彼女は本当の愛を知っている」

「彼らにだって、愛する家族がいたかもしれないぞ?」

 

ヤーナムの家々が思い浮かぶ。

こことはまるで違う、血にむせかえる路地裏を。

 

「ここは、ここはヤーナムではない。

そして、サンドスターも青ざめた血ではない」

 

フウチョウたちは満足したようにクスクスと笑った。

 

「ならばキュルルはどうだ?彼に愛する者はいるのか?」

「獣の臭いがするぞ。望まれず生まれ、暗澹と生きる者の臭いがするぞ」

 

フウチョウたちはくるくると周り上昇すると、夜空に消えていった。

 

「答えを探し続けろ」

「惑えば、また失うぞ?」

 

そんな言葉を残して。

なんだったのだ。あの異質なフレンズは。

何かの神秘か、それとも催眠術か。いずれにせよ、ぼうっとしてはいかん。

キュルルを探し、キャンプに戻ろう。

 

「わああっ!」

 

キュルルの叫び声がする。竹林を駆け抜け声の元に近寄る。

キュルルは大柄な虎のフレンズに押し倒され、首筋を撫でられていた。

その顔は嗜虐的な笑みにゆがみ、情欲の炎を目に宿している。

そして、手首の手枷……

あれは、かばんの言っていた理性無きフレンズというものか。

 

「その手を離せ、獣よ」

 

私は長銃を構え、静かに殺気をぶつける。

 

「グルルァァ……!ガァウ!」

 

やはり言葉を介さない。獣だ。

獣はキュルルをゆっくり放すと、こちらに飛びかかってくる。

だが、狩人たるもの獣のその動きは飽きるほど見ている。

私は獣の腹に向かって水銀弾を撃ち、獣は膝をついて硬直する。

私はいつものように内藏攻撃をしようとする。

だが、寸前で思いとどまった。

なりそこないのフレンズ。

彼女もまた、なり損ないではあるがフレンズにはちがいない。

 

「去れ。警告するのは一度だけだ」

 

獣は悔しそうにゆっくりと後ずさる。

 

「去れ」

 

私は、さらに殺気を込めて言った。

 

「グルルルル……!」

 

獣はキュルルを一目見た後、竹林の中へと消えていった。

キュルルも、獣を見ていた。

そこに何か分かちがたい因縁が絡まったように、私は感じた。

 

「キュルル、あまり遠くに出てはいけない。行こう」

「あ……はい。ごめんなさい」

 

私は腰を抜かしたキュルルに手を伸ばした。

その目には、月明かりを背にした私の姿が写る。

 

「行こう。これで解っただろう、キャンプから離れてはいけない」

「は、はい……」

 

我々は、何か化かされたような心地でキャンプへと戻った。

そして、私の心配をよそに何事もなく朝が来た。

 

「次はかいじゅうえんだね!みなとからお船でいこうね!」

「さあ、準備ができたよ!みんなバスに乗ろう!」

 

朝日に輝くかばんとサーバルがとてもまぶしかった。

さて、幻だったのはこの朝なのか、あの夜なのか。

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