醜いフレンズルドウイーク≪完結≫   作:照喜名 是空

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ろばのぱんや

「それじゃあ『のうひん』に行くのだ!ゲールマン、バスを出すのだ!」

「それなのだが、顔見せと案内をかねてルドウイークに頼んでも良いかね?」

 

翌朝、サンドイッチと紅茶、コーンスープという実に英国らしい朝食の後だ。

アライさんは立ち上がり宣言した。

私はゲールマン老とアライさんを交互に見る。

どうやら、また何か始まったらしい。

 

「ゲールマン老、納品とは……?」

「昨日焼いたカップをカフェまで届けに行く……つまり、ただのおつかいだよ。

バスは運転してくれる者が居る。いささか奇妙だろうが、直になれる」

 

ここでアライさんが眉を寄せて困ったような顔をした。

 

「ええー!ゲールマンも行くのだ!アライさんは『せっしょん』がしたいのだー!」

「まーまーアライさーん、顔見せは大事だよー」

「うー……たしかにそうだけどー」

 

どうやら私のために案内をしてくれるようだ。

だがそれで彼女たちの迷惑になってはいけない。

 

「ゲールマン老、すまないが私は……」

「ああそうだ、ルドウイーク。君は音楽はできるかね?」

「は?」

 

私は間抜けな声を出していたと思う。

 

 

サバンナの草原をバスが走る。

どこまもで青い空、見渡す限りの黄金色の草原。草いきれの匂い。

美しい……

 

「いやーそれにしてもルドウイークがぎたー?が出来てよかったのだ!」

「よかったねーアライさーん。

ギターはゲールマンも使えなかったから、アルパカはきっと喜ぶよー」

「そうかね、迷惑でなかったら良いのだが……ああそうだ、歌も歌えるんだ」

 

といっても、教会で聖歌を歌ったり請われて作詞をした程度だが。

しかし、それでも私に出来ることがあった。

まこと、何が役に立つかはわからないものだ。

 

「歌ならアライさんも知ってるのだ!

ゲールマンから沢山ぽるか?を習ったのだ!」

「ポルカか……懐かしいな」

「これは知ってるのだ?」

 

アライさんが木の笛を取り出して吹き出す。

 

「ジョン・ライアンのポルカか……ああ知っている。懐かしい曲だ」

 

ゲールマン老が教えたのだろうか?

サバンナの熱い風にのびのびと笛の音が乗っていく。

なんとも穏やかで、暖かい。

 

「アラーイさーん。そろそろロバのパン屋だよー」

「おっ!そうなのだ!ルドウイークあのくるまの近くでバスを止めるのだ!」

 

ロバがパン屋をやっているのか……

まるでおとぎの国だ。

しかし、それ以上に奇妙なのはこれだろう。

 

「ああ、ボス。あの近くで止めてくれ」

「ワカッタヨ」

 

私は運転席のラッキービーストに指示を出す。

これも、オト工房が作っていたようなカラクリの一種らしい。

人の言葉にしか従わないこれが、しかしパークの管理をしている。

奇妙だが、実に都合が良い技術だ。

 

「ロバ!のうひんと買い物に来たのだ!」

 

サバンナが途切れ、木々が増えてくる。

ジャングル地方が近いのだろう。

森が開けた一角に白黒模様の四角い車が止っていた。

周囲には椅子やテーブルが並んでおり、フレンズたちが食事をしている。

 

「はーいいらっしゃいませー!納品ですね!」

「フェネック、えーっとロバにはこれだったのだ?」

「これだよー、パン切り包丁にーおいるさーでぃん?に、お皿が10枚だねー」

 

アライさんはずいぶん重そうな木箱をバスから持ち出していた。

木箱も木を切り倒すところから作ったそうだ。

このジャパリパークではどんなモノも自前でつくるものなのだ。

 

「アライさん、私が持とう」

「えっ、いいのだ?じゃあお任せするのだ!」

 

持ってみるとなかなかに重い。

アライさんでさえ軽々と持っていたのだから、フレンズというのは侮れない。

獣の膂力に人の理性、か……

 

「ここで良いかね?」

「はい!お疲れ様です!えーっとあなたは何のフレンズですか?

ゲールマンに似てるし……ヒト?ですか?」

 

私が車の横に箱を置くと、ロバのフレンズがこちらをのぞき込んでくる。

 

「ああ、ゲールマン老と同じ、人であり狩人だ。

こちらに来て日が浅く、右も左もわからない。よろしく頼む」

「そうですか!最近セルリアンが多いから、助かります!」

 

素直な賞賛と期待の目。

それを重たいと感じてしまうのは自業自得というものだろうか?

 

「ああ、できる限りの事はするよ」

「よろしければ、何か持って行って下さい!

ゲールマンにはお世話になってますから!」

「……そうか。では見させてもらうよ。親切にありがとう」

 

ロバのパン屋は車を改造した色鮮やかな小屋だ。

車体は白黒だが、屋根は明るい色彩だし、商品棚も清潔だ。

しかし見るべきは商品だろう。

 

「ほう、これは……クロワッサンがあるのか。こちらの丸いパンは?」

「ジャパリパンにジャパリまんですね!良かったらお一つどうぞ!」

「ありがとう。このジャパリパンをいただこう。

私の居たところでは高級品だったのだよ」

 

ふわふわで雲を重ねたかのようなクロワッサンは手間暇がかかる高級品だった。

それがこうも無造作に置いてあるとは。

一ついただき、食べてみる。少々甘いが、うまい。

 

「ありがとう、おいしいよ。お代は……」

「いりませんよ!さっきの納品もありますし、

これも元々はボスがこのへんに置いていくのを、

私がこうやって並べてるだけですから!」

 

つまり原価はタダだというが、しかしこの店もなかなかに凝っている。

 

「しかし、店を作るのもたいへんだっただろうに」

「いえいえ、これはそのへんに転がってたのをハカセに直して貰っただけですし。

最近はかばんさんがこうじょう?を直してくれたおかげで品揃えもふえたんですよ!」

「ハカセ?」

 

博士、か……人は三人、ということはフレンズか、それとも他の何かか。

しかしここでもかばんの名前が出るとは……

 

「ハカセはフクロウのフレンズなのだ!

ちょっとけちんぼだけど、とってもかしこいのだ!」

「まーまー、ハカセも一生懸命、いろんな事をやってくれてるしさー。

あっ、ロバー。このゴミももらっていくねー」

「はい!いつもありがとうございます!」

 

フェネックはゴミ袋も回収し、バスの荷台から真新しい布製の袋を取り出して交換する。

あのゴミ袋も作ったのか……

 

「このゴミを何に使うのかね」

「あーこれはねー。ゲールマンたちがこれから紙を作り直すんだよー。

空箱は他にも使い道があるしねー」

「しかし……あまりにも多くないかね?」

「そこは、他のフレンズにも手伝ってもらってねー。おっ、持ってくれるの?ありがとうねー」

「ああ、このくらいはできる」

 

なるほど……ゴミもよく見れば包み紙や空箱ばかりだ。

これならばさほど汚くはない。

 

「さーていよいよお買い物なのだ!

アライさんはー、ジャパリまんにー、ジャパリチップスにー

ジャパリソーダを3つなのだ!」

「私はジャパリまん5ことジャパリソーダ1こかなー」

 

そういえばゲールマンから買い物のメモを貰っていた。

 

「こちらはジャパリパンが10個にジャパリまん10個、ジャパリソーダが5個……

つまり、ええと我々の注文はまとめると……

ジャパリまんが16個、ジャパリソーダが9個、ジャパリチップスが1個だな」

 

いささか多すぎないだろうか?しかし、1週間分と考えればそれほど不自然ではないか。

 

「すごいですねルドウイーク!どうやってそんな一瞬でわかったんですか?」

 

ロバが目を輝かせる。

そうか、私はこういうことでも役に立てるのだな……

 

「ああ、これは訓練のたまものだよ。筆算と言ってね……

よければ、時間のあるときに教えよう」

「ぜひよろしくお願いします!はいどうぞ!」

「……ソーダとチップスが1つづつ多いようだが」

「それはおまけです!また、ひっさん?を教えて下さいね!」

 

その笑顔は暗いところがまるでない。

掛け値なしの賞賛は、とても懐かしく心地よい。

いっそう、慎重につとめを果たさねば。

 

「ああ、ありがたくいただこう」

「また来てくださいねー!」

 

我々は物資を乗せてジャパリカフェへと車を走らせた。

 

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