醜いフレンズルドウイーク≪完結≫   作:照喜名 是空

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ミドリちゃん

「よーしこうちゃのこんぽうも終わったのだ!」

「おさとうもいつもの量もらっていくよー」

「はいよー!どうぞどうぞー。もっていってにぇ!」

 

木箱に紅茶の良い香りが満ちる。

時刻は夕暮れ、日が落ちる前には帰りたいものだ。

コンサートは終わり、フレンズ達はそれぞれの巣に戻っていった。

 

「しかしアルパカ、あの木は一体なにかね?」

 

私は窓から山頂に生える不思議な木を見ていた。

葉がガラスのように透き通り、蛍のような淡い緑に輝く。

明らかに尋常なものではない。

 

「あーそれにぇー。なんか落ちてきたんだよにぇー」

「落ちてきた?」

「あーあれ見えるかにぇー?うすーく大きいのが浮いてるんだけど……

鳥のフレンズは近寄ったら触れるって言ってたし、

たぶん本当にあるとおもうんだけどにぇ」

 

アルパカの指さした先。

そういえば薄く何かが見える。啓蒙を凝らして見ると、その大きさに驚いた。

どれほどあるだろうか……空を覆いつくさんばかりだ。

10ヤード以上はある。あれは一体なんだ。

 

「あれは、一体何だ」

「さー?わからないけどぅ、ゆーっくり落ちてきてるよう。

たぶん進む先から言ってここには落ちないみたいだけどにぇ」

「あれはどこに落ちるのだね」

「さー?たぶんさばんなじゃないかにぇー?

それであれからあの木の枝が落ちてきてー。

しばらくしたらああなったんだよにぇー」

 

どうやらなにやらとてつもない事が起きているらしい。

あの怪しい木は、どうやら調べる必要があるようだ。

 

「でもあれ便利なんだよぅ!

あの木の葉っぱを貼り付けるとなーんでも直るんだよにぇー」

「薬効があるのかね?どうやってそれを」

「いんやー自分の身体じゃ試してないけどー。落ち葉が屋根に落ちてきてー。

そしたら葉っぱがぴかーって光って屋根が直ったんだよう。

すごいよにぇー」

 

私は絶句してしまった。

これは間違いなく神秘だ。ジャパリパークにふさわしく優しげで害のないものに見えるが。

しかし、神秘は神秘であるだけでヒトを狂わせるのだ。

そもそも、あんな巨大な円盤から落ちてきたものを信じられるものか。

上位者からの奇跡を役に立つからといって信じたなれの果てが私だ。

 

「……そうか。いずれにせよ得体の知れないものだ。

迂闊に触れない方がいいだろう」

「そーなんだよにぇー私も心配でにぇー。

だから、出来ればでいいんだけどぉ、

かばんさんにアレの枝持って行って、

調べてくれないか頼んでくれないかにぇー」

「……解った。できるだけのことはしてみる。

だが、見ての通りアレはわけのわからないものだ。

あまり期待はしないでくれたまえ」

 

私は聖剣を取り出し、店の外に行って木をよく観察してみる。

木はぼんやりと発光していた。その中をさらに脳の瞳で観察してみる。

月光の輝きとは違う。あれよりは禍々しくも神聖さも感じない。

ただそこにある。そういう感じだ。

そしてこれは確かに生きている。

私は枝を一本、聖剣で切り落として手にもつ。

 

「これは……」

 

枝が淡く光る。まるで使えと言わんばかりに。

ぶるり、と枝が震えた気がした。

だが私はそれに耳を傾けない。目を貸さない。

神秘はもううんざりだ。

 

「アライさん、もう一つ木箱はあるかね」

「あるのだ!……でもそれすごいのだ!ぴかぴか光ってきれいなのだ!」

「これは、故は解らないが危ないものだ。だから別の箱に入れて持ち帰ろう。

一度ゲールマンにも見せる必要がある」

「むー……わかったのだ!

こういうよく分からないものはヒトのフレンズに見せた方が早いのだ!」

 

アライさんの普段の短慮さを考えれば予想外の理解の早さだ。

この子も何かあったのだろうか?

 

「ああ、解ってくれてありがたいよ」

「まーねー。セントラルに行くときいろいろあったのさー」

「アライさんはがくしゅうしたのだ!

分からないものにいきなりさわってはいけないと!

でも、たまには勇気をもってさわるのもまた大事なのだ!」

 

なるほど、賢明な態度だ。かばんとの旅はこの子の視野を開いたのだ。

脳の瞳、か……本当はこういう意味だったのかも知れない。

私はそっと枝を箱にしまう。

 

「さて、色々ありがとう。私たちはそろそろ出立するよ。

急いでかばんさんにも、ゲールマンにも見せねばならないからね」

「やー悪いにぇー。じゃーゲールマンさんにも、かばんさんにもよろしくにぇ!」

「ああ、任された」

 

帰りのサイクリングもまた、けっこうな汗をかくことになった。

夜の闇に光る木はなんとも優しげで、それが私には恐ろしかった。

神秘とは最初から恐ろしげなものではないのだから。

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