魔法少女リリカルなのはStS 夢のつづき(FFⅩ) 作:八神煌斗
待ってくれていた人、お久しぶりです。
新しい人、初めまして。
定期更新できそうなので、今後はこんなに間をあけないように頑張ります。
ではどうぞ。
「戦闘? どこで!?」
「ちょっと、ティーダ!!」
アグスタの外で戦闘が開始した。
そう通信を聞いたティーダを、フェイトが腕を掴んで止める。
「なんで止めるんだよ、フェイト!」
「外にはシグナム達もいる!それに、万が一外が陽動だった場合、本命はこっちなんだ」
そう。フェイトの言うことは間違っていない。
一か所で戦闘が始まったからといって、他の場所で戦闘が行われないという保証はない。
ましてや、現在アグスタでは管理局が危険無し、と認可したとはいえロストロギアが集中している。
どこが狙われるかなど、簡単な問題だった。
それにティーダも今では機動六課の一員として数えられている。
勝手な行動は許されない。
「でも……っ」
「今は、ティアナ達を信じよう」
それでも手を振りほどこうとしたティーダだが、フェイトの目を見て動きが止まってしまう。
自分も飛び出したいという感情を殺し、それ以上に仲間を信じている目をしていたからだ。
「それに、この前戦ったシーモアがここに現れないとも限らない。ガジェットが来たってことはレリック、それか似たものが近くにあるってことなんだ。なら、余計にここを離れるわけにはいかない」
「それは……そうだけど」
と、ここまで話してティーダがもう飛び出さないと思ったフェイトは掴んでいた腕を話す。
「危険になったら救援依頼が来るはずだから、ティーダはそれに備えておいて。私たちもまだティーダの世界の魔法を全部理解した訳じゃないから」
「……分かったッス」
しぶしぶ、窓の外に目をやりながら頷くティーダ。
仲間たちの安否を思い、矛盾していると思いながらも、救難依頼を来ることを願う。
「うらぁぁぁぁぁぁあっ!!!」
「ヘヘッ。あめぇよ嬢ちゃん!!」
ヴィータの攻撃を悠々とかわすジェクト。
先ほど戦闘が始まったばかりであったが、すでにヴィータとジェクトの差は明らかだった。
素人が見れば、優勢なのは攻撃を絶え間なく繰り出しているヴィータに見えただろう。
実際、なのはの実技を受ける前のフォワード達もそう思っていただろう。
でも今は違う。
ジェクトはヴィータの全ての攻撃をかわしているのだ。
かわすことは攻撃を受け止めるよりも難しい。相手の攻撃のタイミング、武器の長さ、軌道。それらすべてを把握し、なおかつ体を動かし、次の攻撃に備えなければならないからだ。
何度ティアナ達が加勢しようと思ったかわからない。
それでも、加勢すれば自分たちは邪魔者でも何でもない。むしろヴィータは自分たちを守るために、別に思考を割かなければならない。
そんなジレンマがティアナの思考を黒く塗りつぶしていく。
「なんで、この数か月の訓練は、いったい何だったのよ……っ!」
「ティア……」
クロスミラージュを握る力が強くなる。
そんなティアナを見て、辛そうな顔を浮かべるスバル。
右手を見れば母の形見のリボルバーナックルがある。
先ほどのクロスシフトAを失敗したのは自分のせいだ。
自分がティアナの攻撃に合わせられなかったから、だから敵なんかに助けてもらう羽目になった。
それは、スバルにとっても屈辱以外の何物でもなく、また、現状加勢もできない自分を戒めたくなる事だった。
二人は六課にきて、初めて自分の無力を感じていた。
「ティアナさん! スバルさん!」
目の前が暗くなっている二人に、エリオが声をかける。
はっとして、反射的にエリオを見る二人。そのエリオの瞳はまだ、曇ってはいなかった。
「ヴィータ副隊長がひきつけてくれている今、僕たちに出来ることはなんですか!?」
「私たちには考えてもわからないんです。指示を!」
エリオに続いてキャロも声をあげる。
「…………っ!」
そうだ。
自分たちが落ち込んでいる間も、この二人はできることを考えていた。
そして、それでも分からなくて、頼っているのではないか。
考えろ。落ち込むのは後でもできるじゃないか。
後悔は後でいい。
「スバル!エリオ!キャロ!少しで良い。考えさせて!」
「ティア……おう!」
その場にしゃがみ込むティアナ。
続いてティアナを囲むように三人が動き、構えをとる。
情けない。
ちびっ子二人に背中を押されて、ようやく我を取り戻すなんて。
未だに胸には黒い何かがつっかえているが、そんなものは後回しだと。
今は自分を信じて守ってくれている三人に答えなければならない。
必死に頭を回転させ、思考するティアナ。
今の自分達にできることを考えろ。
自分達は全力でなくても、たった一撃だけだとしても、かのエース・オブ・エースに一撃を与えたのだ。
少ない自信を引っ張り上げ、己を保つティアナ。
「なんか元気取り戻してるじゃねぇか、あの嬢ちゃん」
「あぁ!よそ見してる暇があるのかよ!!」
「うぉっ!? 確かに余裕はないかも……なぁ!!」
戦闘中、ジェクトの隙を見逃さず、攻撃に出るも、簡単に防がれてしまった。
今のは確実に隙だった。それでも、ジェクトはいとも簡単に防いでしまった。
たしかにかわすといった行動に出なかったが、隙をついても防ぐという選択肢一つで、ダメージを与えることができない。
ヴィータはいったん距離を取り、体制を立て直す。
「いってぇなぁ。譲ちゃんのそのちっこい体のどこにそんな力があるってんだ……」
手に持っていた大剣を地面に突き刺し、手をブラブラと振るジェクト。
そんな様子にヴィータは歯をかみしめる。
この口調と行動のせいで、なぜか最初からジェクトを完全な敵とみることができなかった。
今もそうだ。
ジェクトがその気になれば、自分を振り切り、フォワードを人質に取ることも、もっと言えばそのままアグスタへ乗り込むことができるだろう。
「てめぇ、さっきから何考えてやがる」
「あん?」
「だから、ここに何しに来たって言ってんだ!!」
「何って、そりゃぁ……」
ヴィータの怒声にも、どこ吹く風で耳掃除をするジェクト。
そんな様子にヴィータも怒りのボルテージが上がっていく。
「時間稼ぎってやつだ」
「なに!?……っ!!」
「ヴィータ副隊長!」
ジェクトの言葉に一瞬思考が途切れるも、後ろからの殺気に気づき、その場を飛びのく。
そのまま地面を滑空する形でフォワード陣の前まで移動する。
「おいおい。こっちがちゃんと引き付けておいてやったのによ、何やってんだよ」
「好き勝手していたやつが、その口で言う」
「間違いねぇな!」
乱入してきた男と軽口をたたき、ケラケラと笑うジェクト。
対照的に、ヴィータ達は顔をさらに表情に余裕がなくなる。
「(ティアナ)」
ヴィータがティアナに念話を繋ぐ。
「(すぐに隊長陣に救援依頼を飛ばせ。あとここからは自分たちのことは自分で守れ。アタシも、あの二人と闘いながらお前たちを守ってる余裕はねぇぞ)」
その念話に、ティアナは改めて自分たちの置かれている状況を再確認した。
あのヴィータが、もう余裕はないといっているのだ。
それほどまでに、乱入してきた男の実力も高いと。
ティアナはスバルたちに救援依頼を出すように指示をだし、改めて乱入してきた男を見る。
赤いコートをベルトで止め、左腕をベルトに置くようにコートの中にしまっている。
口元まで隠れるインナーを着ていて、表情を読み取れないが、白髪の混じった髪を見る限り、見た目以上に年を取っていそうだった。
だが、それら以上に目を引くのが、右手でもっている大きな太刀だった。
みるからに重量がありそうなソレを、片手で悠々を振りかざしていた。
先ほど、年を取っていそうだと予想したが、そんなこと、関係なさそうであった。
「それより、アイツの姿が見えないが……本当にここにいるのか?」
「さぁな。俺ァいるって言われたから来ただけだからよ」
「まぁ、居るなら直ぐにでもここに来るだろう。アイツはそういう男だ」
アイツ。というのは何となく予想がついた。
ティーダ。
先ほどヴィータとの戦闘でジェクトは一度も魔法を使わなかった。
元々魔法を使わない戦士なのかもしれないが、今の状況を見るに、魔法を一切使わないのは不自然であった。
それに、目の前の二人が持っているのはどうみてもデバイスではなく、ただの剣だろう。
「んじゃま、あの泣き虫がくるまでもう少し遊ぶとするか、アーロン」
そう言って、再びかまえを取るジェクト。
その言葉に続くように、アーロンと呼ばれた男も何も言わずに構えをとる。
「来るぞ!!」
ヴィータが叫ぶ。
まだ、戦闘は終わらない。
ティアナだけじゃなくて、スバルも闇落ちしそう。
どうしてこうなった。