魔法少女リリカルなのはStS 夢のつづき(FFⅩ) 作:八神煌斗
「そこの貴様、そんなところで何をやっている」
ティーダの目の前に現れたのは、紫炎色の外装を纏った女性だった。
その手には鞘には納まっているが、形状からして剣ので間違いない。
スピラはティーダ自身の常識を裏切るものばかりだった為に、多少の事ではもう驚かなくなっている。
それでも目の前の人間が宙を浮いていると言う事に驚きを隠せなかった。
「何をやっている、と聞いている」
いつまでたっても答えないティーダにしびれを切らしたのか、シグナムが問いかける。
「あ、えっと……」
答えようとするが、言葉が出てこない。
なにせティーダも今の状況が理解できていないのだから。
シンを倒し、祈り子が眠りについたことで、自分も消える筈だった。なのに今ではしっかりと存在し、その上スピラでもない、おそらくザナルカンドでもない場所にいる。
むしろコッチが説明して欲しいくらいだった。
「お、泳いでるッス!」
凍った。ティーダの一言でシグナムだけでなく、その場の空気までも凍った。
でも分かってほしい。
ザナルカンドで試合中にスピラへ飛ばされ、シンを倒し、消滅する自分を受け入れたと思ったらまた知らない場所に飛ばされたのだ。
「バカにしているのかっ!」
「ちょ、その剣仕舞えって!!?」
シグナムはレヴァンティンを鞘から取り出し、ティーダは慌てシグナムをなだめる。
だがその剣先は収められることは無く、ティーダに向けられたまま。
「ならば答えろ!何処から来た、何者だ!」
「あ、それなら答えられる」
と、そこまで言って、ティーダは悩む。
どちらを言えば良いのかと。
ザナルカンドから来たザナルカンドエイブスのティーダ。
スピラから来たユウナのガードのティーダ。
どちらも嘘では無いが、二つは全く違うものだ。
長く居たほうと言えばザナルカンドになるが、成長できたのはスピラ。
「俺はティーダ。多分、スピラから来た。一応ユウナのガード」
なやんだ結果、スピラの方を選んだ。それはティーダの仲間、リュックからの一言を思い出したからだ。
ザナルカンドから来たと言わないほうが良い。シンの毒気にやられたと思われるから。
見る限り機械文明を否定している様子は無いが、ザナルカンドを嫌っている可能性も捨てられなかったから。
「スピラ?いや、それは良い。どうやってここに来た?」
「どうやってって……」
「シグナム。どりあえずそこまでにしよか」
ティーダがどう説明しようと悩んでいると、一人の女性が岸まで歩いてきた。
はやてだ。
「とりあえずそこの君もこっち来てくれるか?いつまでも海に入ってるわけいかんやろ?」
海から出たティーダが連れられたのは六課内ととある一室。
六課部隊長室、つまりはやての業務用の部屋である。
はやては椅子に座り、机を挟んでティーダが立つ。
シグナムは扉の前に背を預け腕を組んでティーダのこと監視している。
ティーダ自身見られていることは分かっていて、居心地がとても悪い。
そして暫く時空管理局についての説明をはやてから受けたティーダ。
あまり理解できなかったが、世界を守っている所、という事で納得することにした。
「じゃあ、こっちの説明はここまでにして、君の事とどうやってここに来たか説明してもらえるかな?」
仕事となればはやては関西弁を封印し、標準語となる。
その事に気づいているのか気づいていないのか、ティーダは気にした様子もなく、自分がどうやってここまで来たか説明をする。
ユウナのガードとなり、シンと討伐したこと。
討伐した後、シンが謎の煙、雲海の様なものを出して消滅したこと。
その時に意識が薄れていき、気づけばココに居たと。
ザナルカンドからスピラに飛んだこと。
シンの正体が自分の父親だったこと。
自分が夢の存在だったこと。
自分が消える筈だったこと。
その辺りは説明していない。
無かったことにはしたくないものだが、それでも思い出したくないことでもあり、認めたくないものもある。
そもそも信じてくれないだろう。
もともと楽天的な性格だったが、仲間の影響で言って良い事や悪いことの区別はつくようになっている。
「とりあえずスピラの事は他の子に調べてもらおうか」
そう言ってはやては端末を開き、隊員にスピラの事を頼む。
とはやてが何かを思いついたように顔を上げる。
「そういえば、さっきの話にでてきたガードって?」
「ガードはガードっすよ。召喚士を守る人のことッスよ」
「守る?というか召喚士?」
とそういえば召喚士の説明をしてなかったことに気づく。
召喚士とは召喚士を使役し、シンの討伐を目指す人間の事。
ティーダは偶然か必然か新米召喚士のユウナのガードとなり、仲間と共にスピラを旅して回った。
道中のモンスターから他のユウナのガードと共にモンスターから守ってきた。
「つまりガードとは、主を守る騎士のようなものか」
「騎士ってのは分からないけど、守るってのはあってるな」
声をかけたのはシグナムだった。
その言葉に返事を返しつつ、ティーダは長く使ってきた愛剣、フラタニティを取り出す。
透き通る様な青い刀身。ティーダが片手で持ってる程の軽さ。
しかし、数々の戦いを経験してきたにも関わらず、傷一つ付いていないところを見るとその頑丈なのが分かる。
その刀身の美しさにはやて、そしてシグナムも一瞬息を呑んだ。
「ほう、そうとうな業物のようだな」
「あぁ。俺の相棒だ」
数少ない、スピラで得た数少ない、目に見えるもの。
ティーダはこの剣を最後まで使い続けた。
「うん、わかった。ありがとう」
その時、再びはやての前にモニターが開かれた。
何度か言葉のやり取りをした後モニターが閉じられ、はやては再びティーダを見る。
「さっき聞かされたスピラですけど、管理局が確認している世界にはありませんでした」
「それってどういう……」
「つまり、君を元の世界に返してあげることは出来ないってことですね」
「あ、そうッスか……」
「思ったよりショック受けてないみたいですね?」
「いや、ショックは受けてるよ。でも覚悟はしてたから」
本来今自分が存在しているということ自体が奇跡の様なもの。それだけでもありがたいことなのに、その上スピラにまで戻れるとは考えていなかった。
まったく期待していなかったというと嘘にはなるが。
「まぁ混乱されないというのはコチラとしては助かります」
はやてとしては自分の世界が見つからないと聞いてティーダが暴れるまでは行かないまでも、取り乱すくらいはすると思っていた。
それはシグナムも同じで、ティーダの落ち着きように多少なりもと驚かされていた。
「とりあえず君には六課に居ていただいて、状況が落ち着きしだい本局の方に移動してもらいます」
「それで大丈夫ッスよ。ベッドと屋根さえあれば問題なし!」
拳を作り、力強く答える。
旅をしていた頃は野宿も少なくなかった。そのおかげでティーダは屋根さえあばいいと、持ち前の前向きな考えになっていた。
「ずいぶん前向きなんやな……」
ティーダの言動に唖然とし、関西弁が出てしまうはやて。
しかしシグナムは別の考えだった。
ティーダの考え方は旅人としての当然の心構え。しかしそれが当たり前だと、あの嘘の無い笑顔で答えるところを見ると、そうとうな旅をしてきたのではないか、と。
「じゃぁとりあえず部屋はこっちで準備するから、シグナム」
「はい。直ぐに手配させていただきます」
そうしてシグナムは部隊長室を出て行った。
「さて、じゃぁティーダ君、もう少しおはなししてようか」
こんな感じに落ち着きました。
続きの話は状況を見てかなぁ。それでは!