魔法少女リリカルなのはStS 夢のつづき(FFⅩ) 作:八神煌斗
「あれがこの世界の魔法、ですか」
遠ざかる軍用ヘリを見上げつつ、シーモアは誰に言うでもなく呟いた。
今現在、シーモアは戦闘が行われた場所から少し離れた雑木林の中に居た。このままヘリに攻撃を仕掛ける事は特にわけないのだが、再びあの魔法使い達を相手にするのは少し骨が折れると諦める。
最初こそ自分が圧倒できていたが、ティーダの介入後は向こうの混乱も無くなり、厄介な相手となっていた。実際シーモアも最後のスターライトブレイカーには危険性を感じて一端撤退をしたのである。
未だにこの世界の事を全く知らない状態でやぶをつつくほどシーモアもバカではなかった。
「しかし……あの魔力の塊。あれは一体……」
そう。知らない土地での戦闘が危険だと分かっていても手を出した理由。
名前こそ知らないが、その原因がレリックだった。
気がつけばこの世界にいたシーモアが一番に驚いたのは魔力の波動であった。スピラと違い、魔力を体から発しているのもが多かった。最初はあちこちで戦闘でも行っているのかと思ったが、それも違った。
スピラの人間達と違い、この世界の魔力ある人間はその体から常に魔力を纏わせている状態となっているのだ。
これのお陰でシーモアはミッドチルダとスピラが別の世界だとすぐに気づくことが出来たのだ。
そしてそんな中で特別に高い魔力を感じたのがあのレリックだった。
なにか特別なものを感じだモノだった為に何か掴めると思って行動に出たのだ。結果だけ見れば戦闘に敗北し撤退した形になっているが、なにも得られなかった訳ではない。むしろ現状では十分な情報を手に入れられたと思ってさえいる。
まず一つ目にティーダの存在。
自分がここにいるのだ。また別の者がこちらに来ている可能性も頭には入れていたが、まさかある意味自分に近しい者が来ているとは思わなかった。
彼には向こうでの十分な借りがある。自身の計画が彼を中心に潰され、挙句の果てにはシンの体内で完全に倒されたのだ。倒されたのにここにいる理由はまた考えるとして、借りを返す機会がめぐって来たのだ。嬉しくないわけがない。
そして二つ目。
この世界の魔法形態を見ることが出来たこと。魔力の形態が違う時点で予想はついていたが、やはり目の当たりにするのとでは違った。
大きな点は魔法を行使する際に足元に魔法陣が出ることだろう。スピラでは召喚獣を呼ぶときにしか大きく目立つ魔法陣は無かった。アレでは敵に今から攻撃を仕掛ける、と言っているようなものだ。そのお陰でシーモアは戦闘に特に困らなかった。むしろ相手の常識の外から戦えるためやりやすかったといえる。
「しかし、これはもう使えないでしょうね」
そう。向こうにティーダはいるのだ。まだ反応できてなかったのを見るとまだ知らなかったようだが、次に会う頃にはもうこの情報は知られているだろう。このアドバンテージは無いと考える。
そして最後にあの機械の塊。
アルベド族の作っていたマシーンとはまた違う形をしていた。
「彼らとも敵対していたようですし、あの機械は一体……」
『あれはガジェットだよ』
背後から声がした。
シーモアは気配を感じなかった相手に警戒を怠らず、無言で振り向く。
そこに居たのは半透明になった一人のくたびれた男性だった。
おそらくスフィアの様なものを使っているのだろう。スピラにも似たような技術があった為に余計な混乱はしないですんだ。
「ガジェット。はっきりと名を述べるという事は、アレはアナタが作ったと考えて良いのでしょうか?」
『あぁ、それでいいよ。僕の名前はジェイル・スカリエッティというんだが、君は?』
「……シーモア・グアド。それが私の名です」
あまり情報を与えたくなかったが、名前なら良いだろう。そう考え名乗ることにした。
「それで、スカリエッティ殿は私に何の用で?」
『君の力に興味がわいた、ではダメかな?』
やはり、とシーモアは思う。
ティーダではなく、自分に。そしてガジェットの製作者と言う事は先ほど戦闘した者達とは敵対しているということで間違いないだろう。
そしてこのタイミングでの接触。
興味、というのは間違いないだろうがそれは自分の使う魔法のことへの興味だろう。
自分自身この世界の魔法に興味がわいていたのだ。同じ思考の者が居てもおかしくないだろう。
『君とあの少年が行使していた魔法形態、僕の見たことの無いものだ。興味がわかない訳無いだろう』
シーモアはあえて何も答えない。
今言っている事も間違いではないのだろう。だが、それが本心では無いと言う事は分かりきっている。
スカリエッティの目的は自分を戦力に入れることだろう。入れられなかったとしても、敵対しているグループにティーダがいる以上、情報だけでも手に入れようとしているのだろう。
だからこそ、コチラからは言わない。
協力する事はシーモアからしても悪い話ではない。しかし、それは自分が優位に立たなければ意味が無い。
『どうだろう、私に協力していただけないだろうか』
来た、と思った。
「協力して私に何かメリットはありますか?」
優位にたつ以前の問題だった。
シーモアもこの世界の事には興味があり、その情報を手に入れるにはこの世界の人間、しかもそれなりに力を持っていることが望ましい。
しかしそれはどこかを襲ったり戦う意味は無いのだ。今回こそ、戦闘になったが、別段それを望んだ訳ではなく、結果としてそうなっただけの話。
なのは達が居なければ、普通にリニアに乗り込み魔力源を探していただろう。
先の様子を見るかぎり、スカリエッティという男はガジェットを使い、戦闘を行っていた。
シーモアはスピラにいた時こそ、スピラを滅ぼそうとしていたが、この世界には何の恨みも無い。シーモアの滅びの対象はあくまで母を殺したスピラなのだ。
『どのようなメリットでも用意しようじゃないか』
「なに?」
そう言ってスカリエッティが取り出したのは翡翠によく似たひし形の石だった。
『ジュエルシードと言って願いを叶える石さ。これを君にあげようじゃないか』
「信じられるとでも?」
『信じてもらうしかない。僕もコレはもう手元に少ない。試しに使えるほど、もう残っていないのでね』
そういって気味の悪い笑みを浮かべるスカリエッティ。
ここでシーモアは手をアゴに沿え思考をめぐらせる。
スカリエッティが言っているのは拡大して言っているかも知れないが、全てがウソでは無いだろう。出なければそれは交渉の道具として役目を果たさない。
それにもしジュエルシードが全くの偽者だった場合、自分の反撃を完全に防げるとも思っていないだろう。あのガジェット以外にも仲間はいるだろうが、いざとなれば、異体となれることも、確認済みだ。あの姿になればそうそう負けることは無いだろう。
そもそもスカリエッティも自分が全ての力を出しているとは思っていないだろう。ここで刺激するようなものを交渉の道具には持ちだしては来ないだろう。
それにジュエルシードがどの程度の物であれ、シーモアはあの魔力の塊、レリックにも興味があった。
この世界に来た理由にシンが関わっている事は間違いない。
この世界に幻光虫が居ないことは確認済みだが、まったくゼロでは無いことも先ほど確認できた。
ティーダがシーモアの前に姿を現したときだ。体から幻光虫をだしていた。つまりティーダも向こうの世界で自分を倒したとき後に死んだのだろう、と考える。
その条件で考えると自分の中にも幻光虫がいることになる。
あの魔力を使ってどうにかなるとは思えないが、この世界の技術を使えばゼロでは無いだろう。可能性を捨てるには情報が少なすぎる。
シンも元は召喚獣。幻光虫を使えば何とかなるかも知れない。
「いいでしょう、その石と引き換えに、アナタに協力しましょう」
こうしてシーモアはスカリエッティと手を組むことにした。
「では、すぐに案内の者をそちらによこすよ、少し待っていてくれたまえ」
そうしてスカリエッティは通信を切った。
「予想通り、向こうは全く情報を出しませんでしたね」
スカリエッティの背後に控えていた女性が声をかける。その声には隠し切れない、不穏が乗せられている。
「そうだろう。でなければ面白くない」
しかしスカリエッティはそんな事気にも留めていない。
スカリエッティ自身もシーモアがすぐに情報を出すとは思っていなかった。そもそも彼と友好的にしたいとも思っていない。
欲しいものは彼との信頼ではなく、その新しい魔力形態の情報。今後の事に対しても、新しい研究材料としてもスカリエッティの探究心をくすぐるものだった。
笑いがこらえ切れないスカリエッティを見てため息をつく女性、ウーノはそれを横目にシーモアの元へとガジェットを飛ばすのであった。
「おうおう、また何か企んでやがんな?」
そしてソレを身ながら腕を組んで二人を見つめる一つの影があった。
遅くなって申し訳ありませんでした。
ちょっとリアルの方が立て込んでて更新が遅れてしまいました。
ストック自体はあったのですが、投稿の時間すら惜しんでやっておりました。
今回の話ですが、スカリエッティとシーモアが接触しました。
この二人の会話ってとても難しい。もう腹の探り合いをさせまくろうと思ったのですが、そのお陰でセリフひとつにも悩む始末。あと、個人的にこの二人の口調の違いが途中でこんがらがったり。
多分ですけれでも今回の話はこじつけというか、個人解釈がふんだんに盛り込まれていますので違和感が多いと思います。ご容赦ください。
ここから少しでも本来の作品に近づけていけるように努力させてもらいます。
次回からはまたティーダたちに視点が戻ります。
それではっ!