――選抜オーディション、不合格。
その時、私の全てが終わったように思えた。
昔から、私は歌うことが好きだった。大好きだった。
だから、四ツ星学園に入学して、歌組を選んだ。
歌組S4の
歌をうたうことに人一倍情熱を持つ子。
私と同じように歌うことが好きだから、歌組に来た子……。
皆が切磋琢磨して、奏葉先輩のようなS4になることを目標に頑張っていた。
私はどっちかというと、歌組で歌を極めようというモチベーションはなかった。
そして、選抜オーディションで皆が見せてきた実力に、恐怖を覚えてしまったのだ。
(――すごすぎる)
そのせいか、足がすくんでしまい、アピールチャンスの時に、躓いてしまったのだ。もちろん、結果は……。
-◆-◆-◆-
(歌うことを捨ててしまったら、私に何が残るんだろう……)
その日の夕方、私はお気に入りの、正門前の崖になっているような場所に立っていた。
元々、歌組にいることすらも怪しい実力となるし……、とまで考えている。
ハハハ……。何も残らないわね……。
「――あれぇ?」
後ろから、活発そうな声が聞こえた。
振り向くと、S4の制服を着たショートカットで、何事にも目を光らせるような、綺麗な色の瞳を持っている女の子だ。
「確か、
「……
その人は、舞組のS4、小鳥遊涼風先輩だった。
「どうしたの、そんなところで、黄昏れちゃってさ?」
「あ……。えっと……」
私は小鳥遊先輩に事のいきさつを全て話した。
「ふぅーん……。なるほどねー……。――夕凪ちゃんも、"飲まれちゃった"ってわけかぁ~……」
「――?」
小鳥遊先輩の言葉に首を傾げる私。
「奏葉ちゃんが言うには、こういう女の子が出るのは仕方ないんじゃないかな、って」
となりに立って、同じように空を見ながら言う小鳥遊先輩。
「ほら、歌組の皆って、かなり真剣じゃん、って見えない?」
「そう、ですね……」
「だから、浮ついていると、足元をすくわれる、なんて感じの。――それに、奏葉ちゃんに憧れて、極めたいっていう子が多い。
夕凪ちゃんが不合格になったオーディションで、不合格になった子、そこそこいたらしいよ。
それで、立ち上がるか、夕凪ちゃんみたいに凹んで黄昏に来るか……。なんてね」
そして、鉄の柵に背中を預けて、私の方を向いて続けた。
「夕凪ちゃんは、どうしたいって、思ってる?」
「……少なくとも、歌組で頑張ろうっていう気力は、もう、ないですね……」
歌うことを捨てる。
大好きなことを捨てるのは勇気がいる。
それを簡単に手放すことが出来れば……。
「……翼が折れちゃった、かな? そうだね……っと。――ひとつ、提案があるんだけど、どう?」
「提案?」
小鳥遊先輩は、背後から私の手を握って、引っ張って何処かへ連れて行こうとしている。
「ちょ、ちょっと、先輩……!」
「いいから、ほらほら~♪」
――後で知ったことだけど、これが小鳥遊先輩が使う勧誘の常套手段だったらしい……。