小鳥遊先輩に舞組のスタジオに連れて行かれた私は、歌組との違いを感じ取れた。
「皆、楽しそうでしょ?」
あくまでも、私の感性ではあるが、歌組はどこか殺伐としたところがあったように思う。
小鳥遊先輩があっけにとられてる私を見て、そんなことを言った。
「歌組で飛べなくなったとしても、ここでなら、飛べるようにしていこうよ、ユウちゃん」
「先輩……」
そして、数日後、私は組替えを決意して、舞組に入った。
-◆-◇-◇-
「――!!」
夢の内容にびっくりして起き上がる。
(また……。あの夢、か……)
頭を左手で抱えながら、首を横に振った。
(辛いことがあったりしてそれを乗り越えた後って、決まってこんなクソッタレな夢を見るのね……)
起き上がって、鏡を見る。銀色の髪に青緑色の瞳。
その瞳にうっすらと、雫が流れた後が見てわかる。
ため息をひとつ吐きながら、朝の身支度を始めた。
私の見た目が、日本人離れしているのは、父親の遺伝子のなせる業である。
私は父親も母親も嫌い。よく、親は子供の味方だ、なんて聞いたりするけど、私はそうじゃない、と思っている。
虐待された、というわけではないが、母親の言動や行動に嫌気が差しただけ。
そりゃまあ、私を育てていくために必要なことだったかもしれないけど、受け入れることが出来ない。
それに私は他人と関わっていくことが苦手で、見た目が日本人じゃないことも相まって、どこかでほころびを生み、仲間はずれにされることもあった。
そんな私を拾ってくれた当時の友達たちに、連れて行かれたのが、歌組S4の
その時に私は、歌を聞いたり歌ったりすることが好きだったんだ、というのを思い出した。
それに気がついた私は、公立の学校に通ってほしいという母親の反対を振りきって、友達とともに、四ツ星学園へと入学を決めた。
でも、その友達は別の組へ行ってしまい、結局私は一人で、歌組に行くことに。
その際に喧嘩別れをしてしまい、あてがわれた部屋には一人でいる。
身支度を整えた私は一人、食堂へ向かう。
外を見ながら、朝ごはんを食べていると、数日前に小鳥遊先輩と話していた女の子が目の前に座った。
「村雨夕凪、って、あなた、だよね」
「そう、だけど……。あなたは?」
「ああ、ごめんごめん。私、
肩まで切り揃えられた黒色の髪。濃い茶色の瞳。……日本人って感じだ。羨ましい。
「よろしく……」
朝からあまり人と話したくないな、って感じていたせいで、その後は何も話さず、もそもそと朝ごはんを食べていた。
「ねえ、村雨さん」
「夕凪、でいいよ。能代さん」
「夕凪さん。あなたって、本当は寂しがり屋で、なにか熱くなれるものを探していて、それでいて、熱い性質を持っているんじゃない?」
見透かされた!? なんでそんな直ぐわかるの!?
驚いた顔をしていると、能代さんが「当たってしまったのね」と。
「小さい時から、この手の力があって、結構、ぼんやりとしたイメージで見える時があるの。
夕凪さんの場合は、赤とオレンジ色をしたウサギがイメージされたのね。だから、実際は寂しがり屋で熱い性質を持ってるんじゃないかなって。
……思い当たるフシはない?」
ないわけじゃないけど……。
「うんうん。今回も当たり、ってことね」
「――ごちそうさま」
人の本質をあっさり見抜いてしまうこの娘は怖い、って感じたのか、もうこれ以上話したくない、と思ったのか、私はそそくさとその場を立ち去った。
こんな娘が舞組にいるなんて……。
-◇-◆-◇-
レッスンが終わり、後はご飯を食べて寮に戻るだけ、となった私は、ジャージ姿でランニングを始めた。
「アイカツ……、アイカツ……」
朝言われたことが、少しモヤモヤ、としていた。
『あなたって、本当は寂しがり屋で、なにか熱くなれるものを探していて、それでいて、熱い性質を持っているんじゃない?』
母親には愛されていたかもしれない。でも、自分から拒絶しているのかも。
――けど、父親と離婚を決めて、生活するためにとは言え、仕事ばっかりであまりかまってくれないのは嫌。
ふと、横から誰かが走っている感じがして振り向くと、能代さんが走っていた。
「やっぱりね、いると、思った」
「どうして、ここが分かったの」
「運動靴を履いてね、グラウンドの方に、行く、なんて、……ここ、ぐらいしか、思い浮かばない、から……!」
走りながら喋るから、息が上がりやすくなってると思うんだけど。
歌組には2ヶ月しかいなかったけど、肺活量だけは増えてたみたい。
「能代さん」
「な、に?」
私が走るのをやめて止まると、能代さんもそれに合わせた。
能代さんは、はぁはぁ、と肩で息をしていた。
「ははっ……。夕凪……ちゃんに……、合わせるの、疲れちゃうね」
「体力差があるから、無理に合わせる必要なかったのに」
「そ、……そうだね」
――少し、言い方がきつかったかな。
結局、自分から居場所を破壊しているようなものだよね。……別にそれでもいい。それが因果応報なら。
その後、自分の部屋に戻ると、二段ベッドの上から、聞いたことのある声がする。
――紛れも無く、能代美空、その人だったが。
「能代さんも……ここなの?」
「んや、小鳥遊先輩が『美空っちが一人なら、ユウちゃんと共に生活してみたら~?』なんて言っちゃったから」
「はぁ~~~!?」
何やってくれちゃってんですか、小鳥遊先輩。
「あ、それに、生徒会長で美組S4の
美組S4の衣笠先輩……。同じ組に妹がいるらしいのは、風のうわさで聞いてる。
「……仕方ない」
「仕方ないも何も、夕凪ちゃんに拒否権は行使出来ないよ」
拒否権行使不可能って本気で……。
まるで正反対のような能代さんとの生活が、今日から始まったのであった。