――鳥カゴに閉じ込められていた鳥。それは私。今、飛び立ちたいと思う。
傷つき折れた翼を捨て、別の翼を広げて飛ぶために――。
自分で自分を縛っていたのかもしれない、と思うことが出来るようになったのは、能代さん……、美空との生活のおかげかもしれない。
美空は、私が閉じ込められていた鳥カゴを壊してくれた、女の子かもしれない。
私は美空と友達以上の存在になりたい――。
そう、思うのは、私の我侭なのだろうか。
-◇-◇-◆-
――季節は流れて、夏の季節が訪れようとしていた。
どうやら、今年も夏のイベント『アイカツ☆アイランド』が行われようとしていた。
1年全員が参加して、上位4人がオープニングイベントのライブに出るそうだ。
ランキング1位には、歌組の
(歌組……か)
美空と生活するようになって、歌組という『鳥カゴ』は忘れようとしていたのだけれど……。
アイカツモバイルを見ながら、色んな感情が渦巻こうとしていた、が……。
「
掲示板前でアイカツモバイル片手に持っていた私に、声をかけてきたのは美空だった。
「そうね」
「だと、思った」
「でも、今は……大丈夫」
乗り越える壁なんだ、
「フフッ……。そうよね、夕凪」
「私には、美空がいる。だから、怖くない」
美空に笑いながら、私は言う。
「もし、ランキングで対決することになっても?」
「そ、……それは、わからないけど……、でもっ」
「そうね。……『それでも』と言い続けていきましょ、夕凪」
美空は私のモバイルごと両手を握った。
「美空……」
「さあ、行きましょ。レッスンやお仕事に!」
-◇-◇-◇-
ある日の夜の帳が下りた頃。月がこんなにも綺麗で。
ルームメイトである美空は、まだ帰ってきていない。
そう言えば、彼女は仕事で帰ってくるのが遅くなるって言ってたっけ……。
美空がルームメイトになって、こんな寂しい夜になるのは久しぶりなんじゃないかな……。
(美空に触れたい……)
寝間着に着替えて、ベッドの中で悶々と美空のことを考えていた。
私にはない黒髪に濃い茶色の瞳。美空は私の見た目が羨ましい、と言っていた。
それは、共同生活を始めてから、しばらく経ったお昼時。
「夕凪のその見た目、羨ましいよ」
「どうして? ……私は、こんな見た目、好きじゃないのに」
「日本人離れしているから?」
それに頷くと、美空は私の右頬に右手で触れた。
「――キレイ」
「キレイ……? 私が?」
「そうよ。宝石みたいな瞳……吸い込まれちゃいそう……」
身体をテーブルに乗り上げて、私の唇に触れる美空。
「!? ちょっと、美空!?」
「あ……。ごめん」
それが、美空とのファーストキスだった。
そのキスをキッカケに、私たちは、どちらかの感情が高ぶると、抱擁したり、唇を重ねたりすることが起きた。
二人一緒に受けたあるオーディションのあとは、今でも覚えている。
就寝時間を過ぎているから眠ろうとした。
しかし、興奮冷めやらぬまま、という感じで、眠ることが出来なかった。
その時、美空が添い寝しようと提案して、抱き合ったまま、目を閉じたら、目覚ましが二人の耳に鳴り響くまでぐっすりだった。
(もう、これ……、友達だとかルームメイトだからとか、っていうのを超えちゃってる気がするなあ……)
あとはもう……、えっちなこと……ぐらいしか、二人でやったことはないんだけど……。
そもそも、どうするんだろう……。
もしかして、私は……。美空に対して恋心を抱いているのかな……。
そんなことを考えながら、眠りについて、朝起きた時には涙を流していたらしく、枕が少し濡れていた。
◇
「珍しいね、美空がアタシたちのところに現れるなんて」
私、能代美空は、夕凪とのつきあい方に対して進歩したい、と思っていた。
しかし、どうしていいかわからなくなってしまい、小鳥遊先輩たちの元へと向かったのであった。
「――涼風ちゃんが、真面目なトーンで話す、ということは、穏やかじゃない、ってことかしら」
「ちょうどいいところに来てくれて嬉しいよ、
美組S4、
そして、私は、S4の両名に村雨夕凪のことを全て話した。
「……なるほどね。それなら、私たちが解決できるかもね、涼風」
「そうだね、望海。……やり方だけ、教えてあげようか。流石にさ」
「ええ。――馬に蹴られて地獄に落ちたくないし」
どうやら、衣笠先輩は、話した内容から察したらしい。
「それにしても、いろいろと疑問があるんだけど、この際だし、聞いてもいいかしら、涼風」
「涼風に答えられる内容だったら、何でも」
「ひとつ、歌組で失意の内にいた夕凪ちゃんを引っ張ったこと。
ふたつ、それに関連して。美空ちゃんと同じ部屋にしたこと。それを私に聞いてきたこと。
答えられる範囲でいいわ。質問の全てに答えてちょうだい」
近くの椅子に腰掛けるように言われ、私が腰掛けたと同時に、小鳥遊先輩は話し始めた。
「ユウちゃんを引っ張ったのは、奏葉ちゃんが話した不穏な雰囲気から引っ張りだしてあげたかった。
アタシは可愛い子が落ち込んでいる姿を見るのは余り好きじゃないから。
美空と同じ部屋にしたのは、部屋に帰っても一人、というのは、寂しいだろうから、という理由。
その節は、望海に迷惑をかけた。ごめん」
「別にいいわよ。そのことは。
――そうね。不穏な雰囲気、というのは、私の目から見ても異様な光景、っていうのはわかる。
生駒霧絵……。あれが特別すぎる存在だから……、かしら」
「多分」
「そうよね。……歌組でトップクラスの実力者で、奏葉ちゃんに最も近い存在。
でも、彼女のせいで、偶にいさかいが起きてしまう……、だったかしら」
そんなことが……!?
「まあ、でも、それは奏葉ちゃんがあくまで、彼女の目で見ただけのことだから、ホントにそうかはわからないわよ。
――そこだけは、勘違いしないようにね、美空ちゃん」
衣笠先輩は、紅茶を飲みながら言う。
生駒霧絵……。
もし、彼女と夕凪が対決するようなことがあったら、絶対に勝てるようにさせなきゃ……。