小鳥たちは大空を目指して   作:鳴海真央

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別の翼を広げて風に舞う

 ある日の昼飯時。私は、美空とともに、食堂でお昼ごはんを食べていた。

「美空」と、私は口火を切ったが。

 ここ数日、『アイカツ☆アイランド』のランキングを見ている私の行動を知ってるからか、美空は私の唇に人差し指を置いて「それ以上は言わなくていい」という挙動を取った。

 

「……言いたいことはわかるわ」

 

 言いながら人差し指を離した美空。

 

「まだ、何も言ってないのに」

「だからこそよ。

 ――生駒霧絵(いこまきりえ)を勝負して、勝ってみせる。そして、歌組(とりかご)過去(とき)と決別する、かしら」

「はい……。その通りです……」

 

 口から出そうとしたことを逆に言われ、頭を垂れるしかなかった。

 

「けど、生駒霧絵はかなりの実力者らしいわよ。……歌組を失意の内にやめてしまったような夕凪(あなた)に勝てるの?」

「今のままじゃ、勝てないのはわかってる。でも、彼女に勝ってこそ、過去と決別できる……。そう思っているの」

「鳥カゴ……ね」

 

 ボソッと美空は呟いた。

 

「なにか言った……?」

「なにも言ってないよ。……とにかく、レッスンあるのみね。お仕事はセーブするように」

「えっ……。もしかして……」

 

 ガタガタ震えるような反応をしていると、美空が「特訓よ、特訓!」と牛乳を飲み干しながら、力強く言ったのだった。

 ――それから、生駒霧絵を倒すための特訓が始まった。

 早朝ランニング、発声練習、身体の動きの再確認。特にキレが大事だ、なんて言ってた……。

 中には、「これ本当に特訓のアイカツ?」と思うようなこともあった。安全具も何もつけずにジャージ姿で崖を登るとか。

 

 -☆-★-☆-

 

 そして、運命の『アイカツ☆アイランド』前の最終ライブの当日。

 主催者側にお願いして、対決形式なライブを用意してもらった。

 私が乱入するような形なのは、主催者、私、美空、小鳥遊先輩を筆頭としたS4の面々しか知らない。

 霧絵の楽曲は学園汎用曲の「アイカツ☆ステップ!」。私は白銀リリィさんの「Dreaming bird」。

 私がこの曲を選んだ理由は、歌組の過去を『鳥カゴの時』と呼ぶぐらい、という単純な理由。それと歌詞の内容が、強く惹きつけられたのだ。

 

『……いくよ。私の味方……』

「――村雨夕凪……。今こそ、羽ばたく時……!」

 

 アイカツシステムに、学生証を読み込ませ、ドレスカードをトップス、ボトムス、シューズ、アクセサリーの順に読み込ませる。

 今回使うドレスカードは、【SPICE CHORD】のカード。

 舞組に移動してからのメインブランド。歌組の時は、【My Little Heart】のブランドも使っていたけど、引き出しにしまいこんでいる。

 ステージに立つと、生駒霧絵のライブでテンションの上がっていた観客を更に上げてしまったらしい。

 曲の力なのか、それとも……。

 ともかく、私は呪縛の鳥カゴを破壊し、別の翼でこのステージという大空に羽ばたくしかないのだから……!!

 そして、持てる力をすべて出し切り、華麗にステージを舞った、つもりだ。

 

「……ふぅ」

「お疲れ様、夕凪」

 

 ステージから降りた私を出迎えてくれたのは、タオルを手に持っている美空だった。

 

「ありがと……」

「――ねえ、体調に変化はない?」

 

 心配そうな声で私に問いかける美空。

 

「へっ……?」

 

 汗を拭きながら、キョトンとする私。

 

「ステージで踊っていた夕凪のオーラが違ってたし、私が知っている『村雨夕凪』じゃなかった気がしたの……」

 

 美空の知らない私が、ステージに……?

 その時の私は、疑問しかわかなかったのだけれど、あとでリプレイを見ると、上にかかるリボンのような青白いオーラとともに、鎖のようなオーラもまとっていた。

 しかし、その鎖のオーラは所々、外れかかっていて、鎖の様をなしていなかった。

 ――そのライブ結果だけども。アピールポイントは私のほうが上だった。

 

「つまりは……」

「夕凪の勝利、ってことになるんじゃないかしら」

 

 私の勝利……。

 

「勝ったのね……。私が……! 美空ッ……!!」

「――おわふっ!? ど、どうしたの、夕凪!?」

 

 思わずそのまま美空に抱きつく私。

 

「――参ったわね。まさか、アンタに負けるなんてね……」

 

 茶色の長い髪に青色の目をした女の子が近づいてきた。

 

「生駒……霧絵……」

 

 歌組の1年ではトップクラスの実力者の、生駒霧絵だった。

 

「どうして、こんなところに」

「――こんなところに、か……。勝利者を祝福しに来たのよ」

「いいの?」

「ハハハッ。……私にだってそれぐらいの器量はあるわよ。……にしても、歌組ではあんまり目立たなかったアンタがね……」

 

 声に気がついたのか、美空が霧絵の方を見た。

 

「――ホントは悔しいんでしょ」

 

 その言い方がすごく煽ってるように聞こえるけど、大丈夫なの……。

 美空は私に抱きつかれたまま、霧絵を口撃するかのような口ぶりで言った。

 

「まあ、アンタの仰る通りで。実際は悔しいに決まってるじゃない。

 ――今度、対決する時は、アタシが勝つからね。覚えておきなさいよ、村雨夕凪……!」

 

「フンッ! ”私の”夕凪が、そう簡単にアンタなんかに負けるわけ無いでしょ!?」

 

 美空、完全に霧絵を敵だと思ってる……。口調が強い……。

 

「……な、何があったの、美空……」

「いいっ、夕凪ッ!」

 

 引き剥がしてキスでもできそうな距離に顔を近づけて言う。

 

「あんなヤツに負けるなんて、今後は承知しないからねッ!」

「えっ、ちょっ……。は、はい……」

 

 美空の勢いに、私は顔をひきつらせながら、返事をした。

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