夏フェスの組み合わせ結果が、発表された。
夏フェスは、各組の1位とS4が組んで、ステージを披露するということだが、美組は偶々、
その時、S4と組むことになった1年がコメントを発表するのだが、美組だけ様子が違ったのだ。
「――姉の望海だけには負けたくありません」
どういうことなんだ、と会場が騒然。
あわや、キャンセルかと思いきや、そうではないらしく、一安心だとは思われた。
しかし、この雰囲気はただごとではない、と会場にいる皆が共通して思ったことだ。
-☆-★-☆-
「
組み合わせ発表後、夕凪と
美空の表情は、なにか真剣な表情だった。
「なにか、見えたの、美空?」
「見えたの。……羽ばたこうとしている小鳥がね。でも、その前に親鳥が羽ばたかせてくれないから、その翼をばたつかせてる、って感じの」
「ちょっと……、わかりにくいかも」
「かもしれないわね……。けど、この女の子、ただ事じゃないって感じは伝わる」
「そうね……。他の子達とは全然違う発言だもんね」
「――そういう、夕凪も彼女ほどじゃないけど、変わってたわよ」
美空の言葉に首を傾げる夕凪。
「『
「そ、それは……」
「それに涼風様、ってアンタ……」
「いいじゃない、もう。……それで、美空はどうするの?」
「私? ――そうね。その、衣笠海来って子とコンタクトしてみる」
「会うつもりなの?」
「同じ1年だし、会う機会はいくらだって作ろうと思えば作れるでしょ。……ただ、美組だし、いつコンタクトとれるかわからないけど」
「あー……」
同じ美組の友達がいるのであれば、そっちの方が早かったんじゃないかな、なんて思う夕凪。
「このまま、放っておく訳にはいかない、と私の直感が告げてるの。……夕凪、アンタはS4のツテでもなんでもいいから、情報を集めてきてくれる?」
「――バレバレ、か」
「ええ。夕凪の見えるイメージが変わってるから」
どう見えてるの、と聞いた夕凪。
「つがいのウサギが見えるの。片方は灰色。もう片方は青色の」
「青色……。涼風様の瞳の色……」
夕凪の目に映るセカイに一瞬だけ、涼風の顔が写り込んだ。まるでサブリミナル効果の様に。
「――夕凪?」
「ン……? あぁ、ごめん。ともかく、衣笠姉妹の情報を集めてくればいいのね」
「そういうこと。お願いね」
-◇-★-◇-
(絶妙なタイミングだ)
その夜、涼風に呼び出され、S4城に向かい、寮に戻る途中。
誰かの気配を感じ振り向くと、両腕が暗闇から伸びてきたのが見えて硬直する夕凪。
その両腕はネグリジェ姿の衣笠望海のものだった。
「き、衣笠先輩、そんな姿でうろうろしていたんですか……!?」
「ええ、大体。……ほとんど下着の姿を見るのは、同じS4か幹部ぐらいなものだから」
「それで、私を捕まえた理由は、やはり……?」
「――そこまでわかっていて、なんで抵抗しないの?」
「聞きたいことがあるからです」
はっきりと言う夕凪。
「聞きたいこと?」
オウム返しで望海は言う。
望海の部屋に招かれた夕凪は、望海とテーブル越しに対面してすぐに話を切り出した。
それを聞いた望海は、にこやかな表情を浮かべながら、長くなるけどいいのかしら、と言う。
「長くなってもいいので」
「……じゃあ、覚悟しなさい。一応、寮長には連絡を入れておくわ」
すぐさま、寮長に連絡を入れる望海。一言二言で済んでしまい、早速話し始める。
「――さて、私と海来ちゃんの関係性は、どこまで知っているかしら」
「姉妹で、同じ美組にいる、という程度で……」
「そう……。それは誰もが知っている情報ね。……本当は、仲良くしていたい、と思っていることは知らないわよね。
それに、海来ちゃんの本来の性格は、こんな性格じゃないって言うことも」
望海の言葉に首を傾げる夕凪。
「あとは――シスコンだってことも」
「シスコン……!?」
夕凪は、望海のシスコン発言に、びっくりした表情をする。
「そうよ。出かけるのも、ほとんど何をするにしても一緒だったのよ。好きなことをするにしても。
……けど、学園に入ってからはそういうこともなくなってしまったし、寂しいなって思っていた矢先に、海来ちゃんも入学してきてくれて嬉しかったのよ。
でも、いつもあんな調子なの。だから、私もどうしていいかわからなくて」
そう話す望海の顔は、寂しそうな表情をしていた。
兄弟のいない夕凪には、理解することは難しかったが、仲違いをしている、と感じることは出来た。
「……まさか、その埋め合わせを?」
「それこそ、まさか、よ」
濃茶色の長い髪をふわりとさせながら言う。
「私は元々、可愛いものが好きで、可愛い女の子も好き、ってだけ。つい、自分の物にしたくなっちゃう、ってだけ。
……これが同性愛者の考え方だとかナントカ言われたら、否定はしないけど」
「じゃあ、私も狙っていたんですか……?」
その問いかけに肯定する望海。
「狙っていなかったのは、
「そう、でしたか……」
「――話が脱線しちゃったわね……。それでね。海来ちゃんが私に対して、ツンケンな態度だから……」
「うーん……」
「無理して倒れなきゃいいけど……」
「過去にそういうことがあったんですか?」
「あったのよ」
望海は、護身として武術を始めた海来が、練習に熱を入れるあまりに、無理がたたってしばらく動けなかったことを話した。
そこから、望海は自分を越えるためにかなり無茶なレッスンをしているのではないか、と心配していると。
「無理をさせるな、ということですか」
「そうなんだけど、夕凪ちゃんと海来ちゃんは別の組だから、見つけることはほぼ不可能よね。美組の誰かに頼めれば、いいのだけれど……」
(美組のS4だ、って言ったって、妹のこととなると、ただのお姉ちゃん、だったわけね……)
夕凪はそのまま、望海の部屋で就寝することにした。
自分から切り出しておいて、こんな美少女に沈んだ表情をさせたままにしておくのは、と考えたからだ。
その後、目がさめると、すごく近くに望海の顔があって、望海の目に涙が浮いていたのが見えた。
-☆-◆-☆-
「……ってこと」
その日の昼に、夕凪は美空とお昼を食べながら、情報交換をしていた。
「なるほど。……私の方は、美組の子と話ができてね。衣笠海来のことを少し、聞いてきたわ」
「――で、なんて?」
「入学当初から、話しかけづらいっていう雰囲気だったみたい。今でもそれが少しあるみたい」
「話しかけづらい……」
本来の海来はそんな子じゃない、という望海の声音で脳裏によぎる夕凪。
「ストイック、なのかな」
「かもしれないね。……今度は、本人に直撃してみるわ」
「えっ、衣笠海来に!? いきなり過ぎない!?」
「次はもう、その手段しかないかなってさ。……夕凪の方は、結構知っている感じだったわね」
「まあ、その姉である望海先輩に聞いたし……」
「さすが、夕凪。……S4と接触するのに全く抵抗ないでしょ?」
「まっさかぁ。ただ、涼風様に見初められたってだけの話よ。それでいつの間にか、ってなだけ」
長方形の紙パック牛乳をずぞぞぞ、と音を立てながら飲み干す美空。
「そう言えば、美空は昼ごはんの時はいつも牛乳飲んでるよね」
「ああ、これ? 願掛けもあるんだけど、好きなものの一つだから、かな」
果たして、その願掛けに意味はあるのか、と思ってしまう夕凪であった。
今回と次回は、原作となったアイカツスターズ!のあるお話を踏襲しているため、第三者視点で描いております。