小鳥たちは大空を目指して   作:鳴海真央

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小鳥たちは夜に啼く・後編

「まさか、二人揃ってオフになるなんてね」

 

 学園長に二人揃ってオフを取って、と言い渡されてしまったのだ。

 

「それで夕凪(ゆうなぎ)はどうするの?」

「……少なくとも、実家には帰らない」

「どうして」

 

 夕凪に聞くと、その表情が鬼のような形相になった。

 

「ああ、ごめん……」

 

 彼女の背後に怒れる軍神のようなモノが見えるイメージが私によぎったのだ。

 その時、アイカツモバイルに着信が。

 

「もしもし? ……うん、お休み貰ったから帰るよ。……えっ、夕凪を連れてきてもいい? ホントに、いいの? うん、分かった。またね」

 

 アイカツモバイルを切って、夕凪に「今度のお休み、私の家に行こうよ」と提案した。

 あとで聞いた話だけど、お休みの前日に夕凪にも着信があったらしい。その相手が母親だったらしくて、即切りしたそうだ。

 夕凪と母親に何があったんだろう……。

 

 -☆-★-☆-

 

 3ヶ月ぶりの我が家。出迎えてくれたのは両親。

 どちらかがいないことが多くて、二人揃っているところは、珍しい方になる。

 

「おかえり、美空(みそら)。隣の子が夕凪ちゃんね」

「そうよ」

「はじめまして、村雨夕凪といいます」

 

 夕凪は私の両親に軽く会釈をしながら言う。

 

「……まずは、ふたりとも上がりなさい。その荷物は重たかったろうに」

 

 よっこらしょっと、と言いながら、お父さんは私と夕凪のキャリーバッグを持ち上げて、リビングに置いていく。

 そして、私たちは靴を脱いで、敷居をまたいだ。

 ダイニングテーブルで紅茶を飲みながら話していたら、夕凪自身の話になり、彼女がタブーとしている家族の話になってしまった。

 不味い、と思って、話題を変えようとしたが、しなくても良かったらしいことはあとで気がついた。

 ――変な話だとは思うけど、夕凪自身がとつとつと話し始めたのだ。

 夕凪の母親が、海外留学で父親と知り合って、恋に落ちて、国際結婚して、その結果として夕凪が生まれた。

 でも、10年ぐらい前に夕凪は突然、父親側の祖国に連れて行かれてしまった。

 母親がそれを知って、夕凪の返還をすぐに父親側の国に要求。

 話し合いの結果、夕凪は日本に戻ってこれて、母親とともに生活している。

 でも、夕凪の母親は、夕凪に対して殻に閉じこもれと取られるような対応を始めたらしく……。

 ちなみに、夕凪の両親は離婚しているそうだ。

 

「帰ってきても地獄だった、かしら」

「でも、私から見れば、の話なんで、本当はどうかはわからないんですけど。……けど、私は日本に戻されてよかったと思います」

 

 夕凪は言いながら、隣りに座っていた私の手を握った。

 

「こうして、四ツ星学園に入学できましたし、美空とも出会えたし……」

 

 私と出会えたことを嬉しそうに語る夕凪。

 

「夕凪ちゃん、今が幸せかい?」

 

 お父さんが尋ねると、夕凪は強く頷いた。

 

「それなら、よし」

「それに、夕凪ちゃんの見た目、可愛いじゃない」

 

 お母さんが夕凪のヘアースタイルを見ながら言う。

 その日はたまたま、ツインテールだったのだ。

 可愛い、と言ってくれた経験が少ないらしく、すごく嬉しそうな顔をしてた。

 ――私もそう思う。

 銀色の流れるようなきれいな髪。曇りのないガラスのように透き通り、宝石のようにきれいなエメラルドグリーンの瞳。

 そして、整えられた鼻筋。健康そうな色合いの唇。……そう言えば、そんな唇に何度も触れたことがあったっけ。

 ああ、もうっ。親の前だから、我慢できてるけど、結構キツイのよ……。これ……!

 

「――ッ!」

(あ、やっべ……。力がこもってた)

 

 握ってきた夕凪の手を握り返したら、無意識に力がこもっていたらしく、アウチ感パない。

 すぐに手を離したけど、それでも夕凪は話して数刻も経たない内にまた手を握ってきた。

 やっぱり、勇気がいることだったんだろうなあ、なんて……。

 

「何かあったら、美空を通してでもいいから、言ってくれてもいいよ」

 

 夕凪がその言葉を聞いて、泣いているのか、彼女が座っている位置に水滴が落ちていた。

 味方が増えたことに喜んで、夕凪自身も泣くとは思っても見なかったんだろうな、って……。

 エメラルドグリーンのきれいな瞳から、ポツポツと降る雨のように、涙が溢れていたのを私は見ていることしかできなかった。

 

 -☆-★-☆-

 

 節約という理由もあって、一緒にお風呂に入る事になった。

 ……やっぱり、顔の見た目がいいから、スタイルも良いのかしらね……。

 これ、あと2年したら、結構おっぱいとか大きくなるんじゃないかしら……。

 夕凪は、その片鱗が見える感じのスタイルだった。

 

「ン? どうしたの、美空?」

 

 夕凪は前に、自分の見た目を好きじゃないって言ってたけど、今はどう思っているのかな。

 

「……言っていい?」

「うん、何を?」

「今はどう思ってる?」

「自分の見た目のこと?」

 

 その問いに頷く私。

 

「今は、好きだよ。……美空が私を見てキスしてくれたりするし」

 

 そこ!?

 

「美空の家に招かれてよかったと思う」

「夕凪……」

 

 夕凪の柔らかい身体が、私の身体に密着する。

 

(……夕凪がどう思ってるのかわからないけど、私はもう色々と限界)

 

 そう思っていた矢先のことだった。

 

「――美空」

 

 夕凪は優しくささやきながら、股間に手を伸ばしてきたではないか……!

 

「ちょ、ちょっと、夕凪!?」

「――知ってるよ。ここ、触られたりしたら、気持ちいいんでしょ……?」

「夕凪、貴様ッ! 誰から聞いたァ、そんなことォ!?」

 

 思わず、そんな口調で夕凪に言う私。

 

「えっ? ……涼風(すずか)様に」

 

 小鳥遊(たかなし)先輩だとォ!?

 ……っていうか、今聞きづてならない言葉を聞いたわよ、私!?

 え、なに、先輩に下の名前で様付け!?

 ってことは、今……私の股間をさわさわしている夕凪は……処女じゃないのか!?

 漫画的に表現するなら、ぐるぐる目になってる。そうなっているほど、今、私は混乱している。

 

「――!?」

 

 ちょっ、乳首まで手が伸びてる!?

 やめろ、本気でやめて……。

 

「ふふ……。美空、可愛いよ」

 

 シャワーの流れる音に私の嬌声が交じる。

 自分でもあんまり触ったことのない場所に、夕凪の華奢な手が伸びる……。

 ヤバい……。気持ちいい……。

 このまま、夕凪にイカされてもいいかな、と思い始めた時、夕凪が私を振り向かせ、キスした。

 

(ああ……、ダメ……。このまま、夕凪と……エッチなこと……したい……)

 

 夕凪のやつ……、何を仕込まれたんだろうなあ……。

 一通り満足したのか、夕凪は快楽の熱に浮かれる私の足に水を浴びせた。

 

「うわっふ!?」

 

 水がかかったことの刺激で、思考がもとに戻る。

 

「――ごめん、ちょっとやりすぎた」

「うん、やりすぎ」

「でも……、気持ちよかったでしょ?」

 

 それには頷く私。

 その後は、普通に身体を洗って、普通に上がった。

 

 -☆-★-☆-

 

 そろそろ寝ようかな、と思って、二人でベッドに潜る。

 本来なら、別々に寝るのが一番いいんだろうけど、私が夕凪と添い寝したかった、というのがある。

 半分期待も含んで……。

 

「小鳥遊先輩に、そういうの仕込まれたの、いつごろ?」

「オフが言い渡されてから、すぐに。涼風様に呼び出されて……」

 

 と、すると、ほんの数日前かぁ……。

 

「つか、なんで、小鳥遊先輩をそういう風に?」

「それは――」

 

 夕凪が事の顛末を話す。要約すると、様付けは自然に飛び出したもので、そのまま定着してしまったらしい。

 涼風様、ねえ……。あ、そう言えば、舞組の幹部もそんな呼び方をしていたわね……。

 

(先輩、って呼ぶより、そっちの方が愛しています、なんていうイメージを呼び起こすのかしら)

 

 小鳥遊先輩にどういうことを教わったのかしら……。

 なんて思っていたら、夕凪がキスしてきた。

 

「夕凪……?」

「ねえ、美空……」

「……したいの?」

「したい。……美空も、そういうこと……期待しているとか……ない?」

 

 図星だった。してました。夕凪とだったら、こういう関係になってもいい、と思ってました。

 

「してた」

「……ふふっ」

 

 にこりと笑う夕凪。……お風呂場で聞いた声だ。

 

「それじゃあ……しよっか……」

 

 布団を剥いで、着ていたものを全て脱ぎ始める夕凪。

 お風呂場で見た綺麗な肢体が、私の視界に飛び込んでくる。

 

「美空のも……脱がせちゃうね」

 

 首を縦に振って答える私。

 その後は、夕凪が小鳥遊先輩に教えられたという技で、どんどん攻められてしまい、抵抗するまでもなく鳴かされてしまいました。

 

 ――翌朝。

 私が目を覚ますと、銀色の髪にエメラルドグリーンの瞳が私を見ていた。

 ……言うまでもなく、村雨夕凪、その人である。

 

「おはよ、美空。……可愛かったよ」

 

 起き抜けにそんなことを言われるから、返事をする前に顔を赤くしてしまった。

 ……服を着て寝た記憶が無いので、素っ裸のはずだ。

 ドキドキしながら起き上がると、布が見えたのであれ、となった。

 

「あの後、服を着せて寝かしたんだよ?」

「そこまでしたの? 覚えてない……」

「そうだと思った。……まあ、私が悪いし、シカタナイネ」

 

 夕凪が言う。

 遂に私は、夕凪とシてしまったんだなあ……なんて思いながら、私は夕凪とともにリビングへ降りていくのであった。

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