【完結】僕は、ポケモンを燃やした   作:@早蕨@

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【三十二】

 タマムシシティのバトル場は、とても賑やかだ。

 デパートへ行った時に感じるファミリー感のある賑やかさではなく、どちらかと言うとマッチョで熱い感じのする賑やかさがある。

 実際には協会が実施する公式大会を行う、もっと豪華なバトル場もあるのだが、今日来ているのはもっと市民が慣れ親しむ、解放された場所だ。

 僕は小学生の時一度来た以来。

 もうほとんど覚えていなかったが、中に入った瞬間に、こんな雰囲気だったかなあと、朧気な記憶がうっすら蘇った。

「ちょっと受付して来るから、ここで待ってて」

 バトル場前で集まり、里中さんに先導されて中に入った僕と綾子はキョロキョロ当たりを見回していた。

 どういうシステムなんだろう。こんなにたくさんの人が、バトルをする順番を守るとも思えない。

 なんとなく、ボウリング場を思い浮かべた。

 受付を行い、指定された場所でバトルをするのだろうか。

 僕は興味津々だが、ケーシィは少々緊張した面持ちで、腕の中にすっぽり収まって固まっている。タマムシデパートの屋上は大丈夫でも、この暑苦しい感じは苦手なのだろう。

 ますますこいつがバトルをするところなんて想像出来ない。というよりも、危なくてそんなところに出せない。ハラハラして僕がバトルどころではなくなってしまう。

「お待たせ。三階だから、ついてきて」

 番号札を持った里中さんが帰ってきた。言われた通り後につき、階段を上って行く。

「ここって、どういうシステムなんですか?」

「トレーナーカードを提示して、登録するんだ。階と場所によってルールが分かれているから、その日やりたいバトルを選んで受付を行えば、番号札を渡されるから、後は電光掲示番とアナウンスに従って指定の場所に行くだけだよ」

「初心者が、強い人と当たる事もあるんですか?」

「一応、ある程度レベルが合うようにはなってるんだ。トレーナーカードを提示するからバッジの数も分かるし、経歴や実績も書かされるからね。それに、最初は一番レベルの低いところに割り振られても、勝っていく内にレートが上がれば、少しずつレベルの高いところに行けるんだよ」

 ポケモンバトルと言えば超大人気スポーツだ。人も多いし揉め事も多いだろうから、きちんと管理しなきゃならないスタッフも大変だろうなあと思った。

 あまりに知らない事が多すぎて、何を聞いても新鮮で楽しい。綾子はどうかな、と隣を歩く横顔を見れば、いつも通りの無表情だった。だが、辛そうでも、思い悩んでいる様子もない。少しでも気晴らしになってくれれば良いのだが。

 三階につけば、いくつものバトル場を中心に周囲が通路になっており、その壁側には飲食店も多く立ち並ぶ。中には簡易的なポケモンセンターまであるらしい。

「昔は簡易的なポケモンセンターなんてなかったし、飯も酷かったんだよ。今は随分ましになった」

 傷ついたポケモン達が回復し切らないまま、連続で戦わされるなんて事も頻発したらしい。

 気合いや根性で強くなるんだなんて、よく言われたもんだと里中さんは懐かしそうに語った。

 フードコートで軽食を買い、バトルまでの待ち時間を過ごすらしく、里中さんおすすめのゴーリキー握りをご相伴に預かった。

 ゴーリキーをモチーフにした何かかと思えば、ゴーリキーがおにぎりを握っていた。

 力が強すぎて全て潰しかねない気がしたが、随分優しい手つきだった。まったく知らなったがタマムシのB級グルメらしい。僕はタマムシ人としてあまりに何も知らなさすぎる。

「さ、ちょっと腹ごしらえしたら、早速一戦行ってくるよ」

 席につくと、エネルギーチャージとばかりにおにぎりを頬張る里中さんは随分やる気だった。後で感想とか求められたらどうしようなんて考えるくらい、色々説明してくれる。

 フロアの中心部にはバトル場がいくつもあり、アルファベット毎に部屋が別れている。それぞれのドアからトレーナー達は入り、中で対峙するようだった。

 トレーナーが立つボックスの後ろは長いガラス窓がついており、どうやらそこから観覧出来るらしい。

 感想を求められても困るのだが、僕は里中さんのバトルが楽しみだった。

「綾子ちゃんも来てくれて良かったよ。貫太君、ちゃんと説得してくれたんだね」 

「説得をした訳じゃないんですけどね」

 隣に座る綾子は、ただもくもくとお握りを頬張っている。

「ま、今日は楽しんでよ。興味が出てきたら、登録すればいいしさ。初心者同士でバトル出来るスペースもあるから、あんまり気負わずやってみるといいよ」

 無理だろうなあ、と正直思う。ケーシィが誰かと戦って倒すなんて、やっぱり想像出来ない。そもそもテレポートも使えなければ、他の技も使えないんじゃないか? それじゃあ流石にバトルにならないだろう。

 食事を済ませ、バトル談義に耳を傾けていると、度々流れていた番号と場所のアナウンスに、里中さんは反応する。

 よし、と気合十分に立ち上がった姿を見たら、なんだかこちらが緊張してしまった。

「B-1だから、その後ろで見ててよ」

 分かりました、と返答すると、里中さんは慣れた様子でバトル場へ向かっていった。

「行こうか」

「うん。私も楽しみになってきた」

 楽しそうな表情。連れて来てよかった。

 この前少しだけはにかんだ表情を見せてくれてから、時折僕の前で表情を崩す。期待してしまう。

 これはもしかして綾子とのバトル場デートではないか? 一般的には、彼女に良い所を見せようと舞い上がったりするんだろうなあと思う。

「どうしたの貫太。早く一緒に見に行こうよ」

「……そうだね、行こう」

 隣で並んでバトルを見るのも、きっと良いものだ。

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