ナザリックの鬼(仮)   作:たーなひ

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初めましての方は初めまして。
見切り発車ですけど頑張ります。


プロローグ

12年前に発売した『ユグドラシル』というDMMO-RPGは、日本のメーカーが満を持して発売したゲームだった。

その特徴として異様に高い自由度が挙げられ、日本でのDMMO-RPGの代名詞と言える程の人気を博した。

 

だがそれも昔の話だ。

人気であったユグドラシルも長い年月によってプレイヤーが離れていき、サービス終了の時を迎えていた。

 

 

 

 

 

 

 

「またどこかでお会いしましょう」

 

そう言って"ヘロヘロ"はログアウトした。

そして残ったのはギルド"アインズ・ウール・ゴウン"のギルド長"モモンガ"のみ。

 

巨大な円卓に並べられた41人分の席はギルドメンバーの席であったが、サービス終了日となってはもう殆どのメンバーは居ない。

 

『今日はサービス終了の日なので最後まで残りませんか?』

そうかつての仲間たちに呼びかけたが来てくれたのはさっきのヘロヘロさんを含めてたったの3人だけだ。

 

理解はしている。

誰にだって生活がありどれだけ思い入れがあったとしても所詮はゲームだ。

どれだけ仲間たちと協力して金を注ぎ込んで時間を使おうとも所詮はゲームだ。

誰しもリアルが大事だから、どこかで引退という形を取ってこのゲームから離れていった。

 

だが、モモンガにはこのユグドラシルが全てだった。

家族もおらず、友人も居ない。唯一の友人と呼べたのはこのアインズ・ウール・ゴウンのメンバーのみ。

そんな彼にとってこのギルドはかけがえのないものであり、唯一仲間たちとの思い出を感じられる所でもあった。

 

 

「ーーふざけるな!」

 

怒号と共に両手をテーブルに叩きつける。

 

「ここは皆で作り上げたナザリック地下大墳墓だろ!なんで皆そんなに簡単に棄てることが出来る!」

 

激しい怒りであるが、頭のどこかでは分かっていた。

現実と空想でとるべきなのは現実、リアルに決まっている。

 

 

激しい寂寥感を感じていたモモンガだった、が誰かがログインした事を告げる通知にホッと一息をついて……

 

「こんにちは。モモンガさん」

 

かかってきた声の方を向く。

 

するとそこにいたのは、赤黒い肌にボロボロに見えるジャケットのような服。モモンガのアバターよりも頭一つ大きく筋肉質なその体だが、何より特徴的なのは額より生える立派な金色の角だろう。

 

 

「こんにちは。いちごパンチーさん」

 

終了まで残りわずかでやってきたギルドメンバー"いちごパンチー"に挨拶を返した。

 

 

_________________________________

 

 

ユグドラシルの特徴である自由度の広さは、もちろんキャラの多様さもかねている。

人間に始まり、エルフやドワーフのような人間種はもちろんのこと、小鬼(ゴブリン)豚鬼(オーク)などの亜人種、果てはモンスターのような能力を持つ異形種まで、プレイヤーが選べる種族は幅広い。

 

 

その異形種の中に"鬼"という種族がある。

亜人種である人喰い大鬼(オーガ)との差別化点は、設定上は不老であること。もちろんその他にも能力値などの差異はあるが、アンデッドの一種である所が大きな差別化点だ。

 

さて、その鬼の種族的特徴だが、至ってシンプル。

それは“殆どのステータスが優れているが魔法が苦手"だ。

 

一応説明しておこう。

まず、こと素の殆どステータスに関してはユグドラシルの中でもトップクラスに高い。一点に特化したような種族には負けるが、アベレージに関して言えばユグドラシルにおいてはトップを争うレベルだ。

それだけ聞けば最強のように思えなくもないが、枕言葉に"殆ど"がつく事と先程挙げた特徴から察せるように魔法の適性が極端に低いのだ。

そもそも、MPが全種族最下位を争うレベルで低い。

最高の100レベルまで上げてもそのMP量は人間の50レベルにも及ばない。

さらに極端に低いMP量に加えて習得出来る魔法も第三位階までと、鬼による魔法習得を断固として許さない意志を感じる。

 

 

発売当初の序盤は、鬼がかなり多かった。

それは高いアベレージを誇るステータスによって序盤の攻略が楽になるからだ。

しかしそれは序盤の話。後半になるにつれて強力な魔法を使える他種族が増えていく。そしてトドメとなったのは"異形種狩り"だ。

高いアベレージを誇ろうとも、魔法による遠距離攻撃をほぼ使えない鬼はまさにカモだった。ある程度の間合いをとりながら魔法を打ち込むだけで鬼は攻撃出来ずに倒されてしまう。

そうして、強力な魔法を使える他種族に勝てない事を思い知った鬼の人口は急激に減少していった。

 

これが、ユグドラシルにおける鬼の話だ。

 

 

次は俺の話をしよう。

リアルでは……まあ普通の平社員だ。特筆すべき事はない。

で、ユグドラシルにおいて選んだ種族は、ここまでの流れから察せるように鬼だ。

 

そのビルド方針は至ってシンプル。パワー耐久特化だ。

前衛として最低限の敏捷性と、搦手に強い出来る限りの状態異常耐性。

それ以外は全て火力と耐久系のスキルとレベル上げに費やした。

 

ステータスが高いという種族的特徴も相まって、ナザリックで火力においてはトップに立っていた。少なくとも数値上は。

数値上は…と注釈がつくのはひとえに魔法かあるせいだ。

威力が段違い過ぎて数値以上の火力が出てしまう。数値で勝ってても火力で負けるって何?って感じ。

 

仲間からは『頭良いのに戦闘スタイルとステータスビルドだけは脳筋な男』なんて呼ばれてた。懐かしいなぁ。

 

 

 

さて、次は俺の所属しているギルド"アインズ・ウール・ゴウン”について説明しよう。

 

このギルドは800弱あるギルドの中で9位につけていた超巨大ギルドで、その参加条件は二つ。社会人であることと、異形種であること。因みにギルド長のモモンガさんは死者の大魔法使い(エルダーリッチ)の中でも最上位の死の支配者(オーバーロード)だ。

さらに、ユグドラシルに200個しかない世界級(ワールド)アイテムを11個所持している。これは全ギルド最高保有数で、2位ご3個しかない事を考えると文字通り桁が違うことが窺える。

ここまで聞けば「凄かったんだなー」で済むが、それだけではない。

このギルドはPK…つまりゲームにおける人殺し(プレイヤーキル)を行う悪のギルドだったのだ。

 

 

そしてここ、ナザリック地下大墳墓は10階層からなる巨大ダンジョンで、アインズ・ウール・ゴウンの本拠地で、1500人に及ぶ大軍を全滅させた悪名高い場所だ。

 

 

 

 

 

そんな栄光あるナザリック地下大墳墓も、今いるプレイヤーは俺とモモンガさんだけとなっていた。

 

「いやー、すいません。残業が長引いてしまって…」

 

「いえいえ、全然!来て下さっただけでも嬉しいですよ!」

 

「それにしても………」

 

そう言って部屋を見回す。

 

「懐かしいなぁ………なーんにも変わってない…」

 

「……………そうですね…」

 

そう言ったモモンガさんの声音には、どこか寂しさが含まれているように感じた。

 

 

「そうだ!折角ですし、玉座の間に行きません?強制ログアウトまでまだ少し時間ありますし」

 

暗くなりかけた雰囲気を出来るだけ明るくなるように提案した。

 

「良いですね!それじゃあ…………あ、折角だしこれも持って行きますか?」

 

そう言って示したのは、ギルメンが文字通り必死になって作り上げたアインズ・ウール・ゴウンの権威の象徴。ギルド武器"スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン”。

 

「お、良いですね!」

 

ギルド長であるモモンガさんが持つと、ドス黒い赤色のオーラが苦悶の表情を象って消えていく。

 

「うお、エフェクト混んでるなー」

 

「ホント、こんなにこだわったの誰でしたっけ?」

 

「えーっと……確かーー」

 

そんな風に話しながらもう二度と歩く事は無いだろうナザリックの廊下を、NPCのメイド達に挨拶しながら歩く。

 

 

 

第10階層へと降りた先は広間になっており、そこにいた執事と6人のメイド達を見て感慨深いものを思い起こす。

 

「あー、こんなの作りましたねー」

 

「名前覚えてます?」

 

「いや、さすがに覚えてないです」

 

コンソールを出して名前を確認する。

執事の白い髪と髭を話した男はセバスというらしい。メイド達は“プレアデス”と呼ばれる戦闘メイドで、先程までの普通のメイド達とは違うようだ。

 

「うわー、なっつ!そういえばこんなんでしたっけ」

 

「折角ですし玉座の間にも連れて行きます?」

 

モモンガさんが提案してきた。

 

「良いですね!ずっと仕事も無かった事ですし」

 

「“付き従え”」

 

コマンドで命令すると、NPC達が付いてきた。

 

そして玉座の間の扉を開けると、ユグドラシルでも一、二を争うであろう作り込みの部屋が目に入る。

 

「「おおぉ………」」

 

あまりの存在感に2人揃って感嘆の声が漏れてしまった。

 

 

そして玉座に向かうと、そこには1人のNPCが配置されていた。

純白のドレスを纏った美女だがその腰からは黒い翼が生えており、こめかみからは山羊のようなツノが突き出ている。

 

「あ、あれは覚えてますよ!確かタブラさんが作ったんですよね。えーっと……確か守護者統括の……ア……アラ?」

 

「アルベドですね」

 

「そう!それです!」

 

アルベドという名を思い出しながら歩いていると、モモンガさんが執事達をそのまま連れて行きそうになっていたので“待機”のコマンドで待機させる。

 

 

そしてモモンガさんが玉座に座った。

 

「おー!悪の帝王っぽい!」

 

「そ、そうですかね?」

 

頭を掻くモモンガさん。骨の体だから顔は分からないがおそらくちょっと照れてるんだろう。

 

 

「あ、折角ですしアルベドの設定でも見ません?」

 

時間を見るとのこり10分を切っていたが特にやることもないので乗っかることにした。

 

「良いですね」

 

 

そう思ってアルベドの設定を見てみたが、どうやら地雷だったらしい。

 

「うわっ!なっっっが!!」

 

「…そういえばタブラさんって確か設定魔だった気がします」

 

「あー…」

 

そうして長ーい設定をスクロールして最後の文章までたどり着いたのだが、そこには『ちなみにビッチである。』と書かれており2人して目が点になってしまった。

 

 

「……え?…何これ?」

 

「………モモンガさん、変えましょう。流石に酷いです」

 

「…そうですね」

 

仲間たちが作ったNPCだから変えることに抵抗はあるが、こんな美女をビッチとして終わらせるのも可哀想だ。

 

 

今まで使った事もなかったギルドマスターの権限を使って、本来はクリエイトコンソールを使わなければならない設定にアクセスする。

コンソールの操作でビッチの文字は即座に消えた。

 

「…なんか入れます?」

 

「そうですね……うーん………」

 

あいたスペースが寂しく感じたのでモモンガさんに聞いてみたら考えてくれるらしい。

 

そうして「あっ」と何かを思い付いたように打ち込んだので、それを見ると『モモンガを愛している。』と書かれてあった。

 

「ちょ、恥ずかしいんで消します!」

 

「良いじゃないですかどうせ最後なんですからー」

 

そう言うと諦めたようだ。

 

 

 

雑談のキリが良くなったので時間を見ると、もう30秒を切るところだった。

 

「……はぁ……もう終わりですか………」

 

「楽しかったですね…」

 

2人で感慨ふける。

 

残り15秒。

 

「それじゃあ…いちごパンチーさん、お元気で!」

 

「……えぇ。モモンガさんも頑張って下さい!」

 

そう言って2人は終了の時を迎える。

 

 

6、5、4、3………

 

 

最後に、モモンガさんの方を見る。

あり得ない話だ。ゲームだから涙なんか出るはずもないのに。

 

モモンガさんが泣いているように思えた。

 

………0

 

 

 

 

 

 

「…………………え?」

 

「………ん?」

 

時間を確認しても、間違いなく12時を過ぎている。

サービスが終了したら強制ログアウトさせられるはずだ。

 

「延期…………ですかね?」

 

「ちょっと待ってください……」

 

そう言ってモモンガさんはコンソールを出そうとした……が出てこない。

 

「…コンソールが……出ません」

 

「マジすか!?」

 

信じられなかったので自分でも試してみた。いつも通りの操作。しばらくやってなかったとはいえ間違えるはずもない。

しかし、コンソールは出ない。

 

 

「……どゆこと?」

 

「…………さぁ?」

 

2人で顔を合わせて沈黙する。

 

何か、何かが起こっている。バグではない。

今の2人のやりとりにも、どこか違和感があった。何かは分からない。だが何かがおかしい。どこか違うという感覚がある。

 

モモンガさんもそれは感じているようで、2人は必死に頭を回転させる。

 

 

 

 

「どうかなさいました?モモンガ様?いちごパンチー様?」

 

突然聞こえて来た()()()()に反射的に返そうとする。

 

「いや、どうもこうもな……………い……………?」

 

ん?女性の声??

 

そう思って声が聞こえて来た方向を見ると、NPCで動く事も喋る事もないはずの守護者統括、アルベドがこちらを首を傾げながら見つめていた。

 

 

「………え?」

 

なんとか俺が絞り出せたのは、一文字だけだった。

 




はい。
まあ分かると思うんですけど鬼のくだりは捏造設定ですね。
ビルド系のゲーム(?)もした事ないんで、用語とか間違って使ってたりするかもしれません。優しく指摘してくれると助かります。

後、話の中でおかしい点なんかも随時指摘して下さると嬉しく思います。
誤字報告もよろです。
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