ナザリックの鬼(仮)   作:たーなひ

2 / 8
思ってたよりも長くなっちゃいましたが、一先ずキリがいい所までは行けました。


鬼の把握

ーさて。どうしたものか。

 

 

NPCが動いている。それもAIによって設定された動きではなく自らの意思を持って。

それだけではなく、本来、喋っても動かないはずの口が動いているのだ。それはNPCだけではなく、俺達2人も同様だ。

 

モモンガさんの機転によってあの場は切り抜けられたので、これからについて考えなくてはならない。

 

 

今俺達はモモンガさんの私室で話していてた。

 

「いやー、モモンガさんアレは無いですよー」

 

「いや、ホントすいません…血迷ったんです……」

 

なんとこのスケベ骸骨、感触と運営によって止められるのかどうかを確かめるためにアルベドの胸を揉みしだいたのだ。

 

「どうでした?」

 

「柔らかくて……暖かかったです…」

 

…………羨ましい……じゃなくて!

 

「触感もある…ということですかね?」

 

「まあ……おそらくは」

 

…そうなると……

 

「ゲームじゃない……って事か」

 

信じられないが、そう考えるしかない。

ゲームでは感じることの出来なかった感覚を感じることが出来る上に、NPC達も意思を持っているように思えた。

 

「……そんな事あるんですかね?」

 

「…今の俺達じゃ判断つかないんですし、とりあえず直近の事を片付けましょう」

 

「そうですね」

 

先程玉座の間では、アルベドに各階層の守護者を第6階層の闘技場に集まるようにし、セバスにはナザリック周辺の地理を捜索させた。

それで集まった情報によっては何かしらの判断をつける事も出来るだろう。

 

 

「…魔法の試し打ちに行きたいんですけど」

 

モモンガさんがそう切り出した。

確かに、今の俺達が魔法を使えるのかどうかと、その感覚なんかを確かめる事は必要だ。

 

「そうですね。ついでに俺も体の調子を確かめておきたいですし」

 

早速第6階層の闘技場へ向かう。

 

 

 

 

そこには双子の階層守護者のアウラとマーレがいるはずだが……

 

 

「とあ!」と声が聞こえたかと思うと、貴賓席から跳躍して来たのは双子の姉のアウラだ。

見た目は10歳ほどの子供で、無邪気そうなVサインを作っているこの少女は森妖精(エルフ)の近親種である闇妖精(ダークエルフ)だ。

 

 

「いらっしゃいませ、モモンガ様、いちごパンチー様。あたしの守護階層までようこそ!」

 

「……ああ、少しばかり邪魔させてもらおう」

 

 

先程、モモンガさんはNPC達の忠誠心について心配していた。

玉座の間の時のアルベドなんかは忠誠心があるように見えたが他のNPC全員に忠誠心があるのかどうか…と言っていたが、俺は気にしない事にした。

一応仲間達が造った子達だから信頼したいっていうのもあるし、そもそも俺のステータスなら大概の不意打ちでも死ぬ事はない。

正面から戦えばどのNPCが相手だろうと負ける気はしないし、その自負もある。

伊達に自称ナザリック近接最強を名乗ってはいないのだ。

 

 

そんな事を考えている間に弟のマーレも降りて来ていた。

マーレはいわゆる男の娘で、ミニスカートな上におどおどした性格はどうみても女の子にしか見えない。

 

 

モモンガさんがスタッフを使って2人に魔法の練習をしたい旨を伝えると、目を輝かせて藁人形を用意してくれた。

 

その藁人形に向けて〈火球(ファイヤーボール)〉を唱えると、藁人形が燃えて完全に破壊された。

 

どうやら普通に魔法は使えるようだ。威力もユグドラシルの時と変わりないように見えたし問題無いだろう。

因みに、後で「コンソール出ないのにどうやって魔法使ったの?」って聞くと「なんか使えた」と返ってきた。

 

 

伝言(メッセージ)〉はGMコール以外は使える事を確かめられたのでモモンガさんが早速外に向かったセバスに〈伝言〉を送ったが、どうやらナザリックの外には元々あった沼地ではなく草原が広がっているようだ。

 

 

原因不明の事態にモモンガさんも困惑していたが目を輝かせる双子を思い出したようで、スタッフの力を見せつけるために〈|根源の火精霊召喚《サモン・プライマル・ファイヤーエレメンタル》〉を唱えた。

 

すると現れたのは80レベル後半の最上位に近い精霊。

 

 

「おおー……」

 

「うわー……」

 

アウラと2人揃って感嘆の声を漏らした。

 

「いちごさん、どうぞ使って下さい」

 

「え、良いんですか?」

 

「どうせ明日には使えますし大丈夫ですよ」

 

「じゃあ遠慮無く…」

 

「え!?いちごパンチー様が戦われるんですか?」

 

「うん?そうだが…」

 

「は、初めて見ます!」

 

「ほー、そうかそうか!見とけ見とけ〜」

 

 

2人の頭を一撫でした後、アイテムボックスから愛武器“鬼金棒”を取り出した。

 

この鬼金棒は、世界級(ワールド)アイテムという特殊な例を除けばユグドラシル中最強の攻撃力を誇っている。

鬼とつく事から察せるように人食い大鬼や鬼などしか装備出来ないが、その攻撃力は一線を画すものだ。まあ、その代わりに特殊効果とかが無いからさほど人気は無かったが………

 

閑話休題。

 

 

金棒を持って肩に乗せたがどこか違和感がある。

体の違和感では無く、何かを忘れているような…

 

 

あ。

 

 

思い出した。

アイテムボックスから大きい瓢箪を取り出し左手に持つ。

瓢箪には紐がついており、まさに酒が入っているような見た目をしているがその中身はポーションやバフをかける飲み物だ。

 

 

この左手に瓢箪、右手に金棒というスタイルが、カッコ良さと戦いやすさを追求した集大成だ。

 

その左手に武器とか持った方が良くね?って思う人もいるかもしれない。

だが両手に武器を持っているより、片手に金棒、片手に酒を持ちガブガブ飲みながら戦う方がカッコいいだろう?そして何より鬼っぽい。そうゆうわけだ。

用意が完了したので火精霊の正面に立つ。

 

 

さあ、開戦だ!

 

_________________________________

 

決着は一瞬だった。

 

先手は火精霊。炎を使って遠距離攻撃をするが、数ある属性の中でも継続ダメージのある炎に対する耐性を重めに付けたいちごパンチーにダメージは少ない。

 

対するいちごパンチーは、炎を受けながらゆっくりと金棒を下ろして半身になる。

 

その構えから察するに、金棒を頭上を通して上から回して叩きつけるつもりなのだろう。

 

動く様子も無いが、ダメージを受けている様子も無い敵に痺れを切らしたのか、遠距離攻撃は効果が薄いと判断した火精霊は接近戦のために近づく。

 

 

そして火精霊が金棒の間合いに入ったその時。

目にも止まらぬ速さで金棒を叩きつけ…………

 

 

 

 

闘技場が半壊した。

 

 

_________________________________

 

 

「いや、ホントに、ホンッットにスマン!」

 

「い、いえ、気にしないでください」

 

闘技場をぶっ壊してしまった俺は双子に謝っていた。

3メートル近い巨漢が子供に頭を下げている絵面は誰が見てもよろしく無いだろう。

 

スキル“復讐鬼”(攻撃モーション中、ダメージを受けた分だけ攻撃力が上がるというスキル)を使って全力で金棒を振るったら、その結果としてオーバーキルどころか俺の正面だった部分を全壊させてしまったのだ。

 

 

考えて見れば当然のことだ。

ゲームであるユグドラシルでは、攻撃の際のダメージはステータスなどに依存する。それ以上の結果が出る事はない。

つまり、どれだけ剣を素早く振ろうとも、スキルなどを使わなければ斬撃が飛んだりしない。どれだけ力を込めて金棒を叩きつけようと()()()が発生するなんてことはあり得なかった。

しかしここがある程度現実に即しているのならば、威力やスピードによっては衝撃波が発生することは当然だ。

 

 

幸いだったのは他の階層に何も影響が無かった事だ。

あの後すぐモモンガさんが各階層に揺れたりしていないかどうか聞いたのだが、何も無かったそうだ。

自分で言うのもなんだが、あの攻撃で揺れもしないこのダンジョン頭おかしい。

 

 

「ごめん…ごめんなぁ……」

 

「ほ、ほんとに大丈夫ですって…」

 

とはいえ壊してしまったのは事実。とにかく何かしらで謝罪を形にしないとスッキリ出来ない。

 

 

「まあ良いじゃないですか。建物が壊れただけで幸い被害者もいないみたいですし、これぐらいすぐ直りますって」

 

「そうですよ〜…」

 

「えー…そこまで言うんなら…まあ、良いけど」

 

そう言うと、双子はどこかホッとした様子を見せる。

まあ、して欲しくないとまで言うならやらない方が良いに決まっている。でも何かしらでお詫びぐらいはしてやりたいところだ。

 

それにしても、さっきの一撃の前と後で双子との距離が遠くなった気がする。

なんでかなぁ…物をぶっ壊す野蛮な人とか思われたんだろうか。嫌だなぁ…俺結構繊細なんだけどなぁ…

 

 

 

 

「あら、わたしが一番でありんすか?」

 

声の方を見ると、そこにいたのは第1、第2、第3階層守護者である真祖(トゥルーヴァンパイア)のシャルティア・ブラッドフォールン。14歳ほどの少女の見た目だが、造ったのはエロゲ大好きペロロンチーノさんだ。まともな美少女のはずがない。

 

その証拠に来てそうそうモモンガさんに抱きついてたが、それを咎めたアウラとシャルティアが喧嘩を始めてしまった。

 

 

しかし、その2人の言い合いを見て思わず懐かしい気持ちになる。

アウラとマーレを造った“ぶくぶく茶釜”さんとペロロンチーノさんは姉弟で、しょっちゅうあんな風に仲の良い喧嘩をしていた。確かこの2人は仲が悪いという設定もあったはずだ。

昔を思い出すと、どうしてもおセンチになってしまう。

 

 

 

「サワガシイナ」

 

人っぽくない声の方を向くと、そこにいたのは第5階層守護者コキュートス。

2.5メートルはある巨大だが、その体は昆虫が合体したような水色の外骨格に覆われており、まさに異形という感じだ。因みに、見た目に反して武人という設定がある。

 

 

「御方々ノ前デ遊ビスギダ……」

 

「この小娘がわたしに無礼をーー」

 

「事実をーー」

 

「あわわわ……」

 

再びシャルティアとアウラが凄まじい眼光を放ちながら睨み合い、マーレが慌てる。

流石にモモンガさんが止めに入ると2人して「もうしわけありません!」と声を揃えたので、きっと仲は良いのだろう。

 

 

「皆さんお待たせして申し訳ありませんね」

 

アルベドと共に入ってきたこの男は第7階層守護者デミウルゴス。

肌は日に焼けたような色で、漆黒の髪はオールバックに固められている。東洋系の顔立ちで丸メガネをかけている。

ここまでだとただの悪徳弁護士にも思えるが、生えている尻尾は銀色のプレートで包まれており先端にはトゲが6本生えている。

防衛時におけるNPC指揮官という設定だ。

 

 

 

 

一先ずこれで呼んだ守護者は全員揃った。第4、第8階層はちょっと事情があるので来ることが出来ない。

 

 

全員揃った所でアルベドが口を開く。

 

「では皆、至高の御方々に忠誠の儀を」

 

端に立っていたシャルティアが一歩前に出る。

 

「第1、第2、第3階層守護者、シャルティア・ブラッドフォールン。御身の前に」

 

そのままコキュートス、そしてその先へと続いていく。

 

「第5階層守護者、コキュートス。御身ノ前二」

 

「第6階層守護者、アウラ・ベラ・フィオーラ。御身の前に」

 

「お、同じく、第6階層守護者、マーレ・ベロ・フィオーレ。お、御身の前に」

 

「第7階層守護者、デミウルゴス。御身の前に」

 

そして最後にアルベド。

 

「守護者統括、アルベド。御身の前に」

 

皆跪き頭を下げている。アルベドが最後の報告を行う。

 

「第4階層守護者ガルガンチュア及び第8階層守護者ヴィクティムを除き、各階層守護者、御身の前に平伏し奉る。……ご命令を、至高なる御身よ。我らの忠義全てを御身に捧げます」

 

 

壮観の一言に尽きる“忠誠の儀”とやらに思わず唾を飲み込んで喉を鳴らした。

なんかすげぇ…なんか分からないがとにかくすげえ!

 

……これに対してモモンガさんはなんて言うんだろうか?

 

 

「…面を上げよ」

 

おぉ…なんで絶望のオーラを出しているのかは分からないが中々それっぽい。

 

 

「では……まず良く集まってくれた、感謝しよう」

 

「感謝なぞおやめください。我ら、モモンガ様並びに至高の御方々に忠義のみならずこの身を捧げた者たち。至極当然のことでございます」

 

おぉふ。ガチだ。これはガチだ。これガチの忠誠誓ってる系だ。

 

 

「……モモンガ様はお迷いのご様子。当然でございます。モモンガ様からすれば私たちの力など取るに足らないものでしょう。

しかしながらモモンガ様よりご下命いただければ、私たちーー階層守護者各員らいかなる難行といえども全身全霊を以て遂行いたします。造物主たる至高の41人の御方々ーーアインズ・ウール・ゴウンの方々に恥じない働きを誓います」

 

「「「「「誓います!」」」」」

 

 

…………す、すげぇー!!これやべぇー!!やっべめっちゃ感動するんだけど!みんなの残した子供がこんなに立派になって……

 

 

「…素晴らしいぞ。守護者たちよ……っていちごさん!?何泣いてるんですか!??」

 

ギョッとした守護者達の視線が集まる。

 

「バ、バッカ!泣いてねぇよ!ただホロリと来ただけだよ!」

 

それ泣いてるって言うんじゃ……と全員の心に浮かんだ。

とりあえずさっさと目元を拭って続きを促す。別に話の腰を折る気は無かったんだけどなぁ…涙もろくなっちゃったのかなぁ?てか鬼って涙でるんだ……

 

 

「ゴホン……あー、気を取り直して。さて、多少不明瞭な点があるかも知れないが、心して聞いて欲しい。現在ナザリック地下大墳墓は原因不明かつ不測の事態に巻き込まれていると思われる」

 

切り替えて、モモンガさんはことの重大性を周知させる。

 

「この異常事態に何か前兆など心当たりのあるものはいるか?」

 

「……いえ、私たちに思い当たる点は何もございません」

 

ふむ……やっぱり自我を持ったことに自覚は無いのか……修正力?的なやつかな?知らんけど。

 

 

 

「モモンガ様、遅くなり誠に申し訳ありません」

 

遅れたやってきたセバスが守護者達と同じように片膝をつく。

 

「構わん。それより周辺の状況を聞かせてくれ」

 

「はい。周囲1キロはかつてナザリック地下大墳墓があった沼地ではなく草原に変わっており人工建築物は一切なく、人型生物及びモンスターなどは一切確認出来ませんでした」

 

「ふむ……となるとやはり転移……か」

 

まあ、そうなるよな。疑問は尽きないが今はそれで納得するしかない。

 

 

モモンガさんが警備の強化とナザリックの隠蔽について指示し、最後にモモンガさんの印象を聞いてみたところ思いもよらない高評価だった。

曰く美の結晶だの、支配者にふさわしいだの、慈悲深いお方だの、賢明だの、最高だのといった思いつく限りの高評価が挙げられた。

照れ臭さからかさっさとモモンガさんが消えていったので、折角だし俺の評価も聞いてみる事にした。

 

「折角だ、俺の印象についても聞いておこうか。シャルティア」

 

「モモンガ様が美の結晶であるならばいちごパンチー様は力の結晶。ナザリック最強を冠するに相応しいお方です」

 

続いてコキュートス。

 

「圧倒的ナ戦闘力ヲ誇リ、尚且ツ計略二モ優レタ方カト」

 

アウラとマーレ。

 

「力強く猛々しいお方です」「え、えーっと、か、カッコいい方です」

 

デミウルゴス。

 

「ナザリックにおいて最強の戦闘力を誇り、それを持つに相応しい精神力を持ったお方です」

 

セバス。

 

「強大な力を持ちながら、モモンガ様と同じく残っていただけた慈悲深きお方です」

 

アルベド。

 

「まさに最強を名乗るに相応しいお方かと」

 

……………。

 

「わかった……あー、守護者諸君」

 

そういうと、全員が視線を向けてくる。

最後になんか気の利いた一言でも……

 

「期待しているぞ」

 

そう言って指輪の力で闘技場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

やばい。モモンガさんの印象聞いてる時も思ってたけどアイツら俺らのことももの凄い高評価してくれてるんだが。

こんな評価高いとは…俺らのこと『至高』って…神かなんかとでも思ってるのか?

 

というかそもそもみんな俺の事最強最強って言ってるけどそんな事ないんだよなぁ。

確かに自称はしていたが、それはあくまでネタでだ。仲間内で『最強(笑)』と茶化されるぐらいだし、実際たっちさん相手には多分負け越してるし、ウルベルトさんにも殲滅力では負けている。与ダメージ総量ランキングでもあればワンチャン一位に入っているかもしれないが……。

 

 

まあでも、確かに今のナザリックでは最強である自負と自覚はある。

 

 

モモンガさんは『支配者のモモンガ』を演じる事に決めた。

ならば俺は『ナザリック最強のいちごパンチー』を演じる事にしよう。

 

 

俺はナザリック最強の男、いちごパンチーだ!

 

 

 

 

…………………名前変えたい。




はい。
そうそう。鬼のビジュアルは仁王2の猛の鬼をイメージしてるんでよかったら見てみて下さい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。