救世日記~世界を救うだけの簡単なお仕事です~   作:カペリン

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さて、ついに自走砲の改造です


ソ連の思惑と自走砲

 

 

 

MLRSと 戦車(T-80UM-1)の改修設計を終えた俺だが、まず始めの取っ掛かりとして車両に搭載される専用の座席の製造から始めなければならなかった。だが問題となるのは資材の確保である。設計は先日終了したが、何をするにも手元に原料がなければどうしようもない。これについて材料の調達を申し出たところ、ハルトウィック氏から最優先事項として手配すると返答があった。

 

この先に必要となるであろう資材も含めて明日にはユーコン基地の俺のための作業スペースと宛がわれた格納庫(ハンガー)へと搬入される予定だそうだ。想像以上の速度である。既に手回しの良いことにアメリカとソ連からMLRSと自走砲(2S19)、そして戦車(T-80UM-1)がこちらへと搬入されている。とりあえず資材がなければ実際に改装作業へと移ることはできないため、それらの車両をいじるのは後回しにした。

 

今日はアルゴス試験小隊でクラレンス少尉が魔法改修型の戦術機で魔法を発動させることになっている。今までにもシュミレーターでそのための訓練は行っているらしいが、実際に発動させるのはこれが初めてとなる。テストパイロットとして選抜される腕の持ち主だけあって彼女は優秀な腕の持ち主であることは分かっていたが、魔法の発動に失敗して実験失敗ということはまずないだろう。横浜で行った起動試験の結果からも基礎級魔法ならば安全であるということは分かってはいるが、万が一ということもある。気を引き締めていかねばなるまい。

 

ユーコン基地で初となる魔法の起動試験は先ほど無事に終了し、現在はアルゴス試験小隊のメンバーと防御魔法のみを用いた模擬戦を行っている。現状としてはクラレンス少尉が機体に完全に慣れ切っていないためどうしても先任の小隊メンバーに比べるといまひとつ動きにぎこちない感じが見て取れる。

 

だがそれでも防御魔法が存在するというアドバンテージは大きく、通常であれば「積み」であると判定されてしまうような状況でも、魔法を発動させて相手からの銃撃や近接攻撃を防ぎ何とか対等に持ち込んでいる。

 

先ほどマナンダル少尉の誘いに乗って近接戦闘を行い、彼女が愛機であるF15-ACTIVE(アクティブ)の機動力を生かした変則起動による一撃を【シールド】を使って辛くも凌いだ。だが魔法には拘束度による使用回数制限が存在する。そのためそれを使い切ってしまえば通常の戦術機となんら変わらない。

 

いやむしろ素体が吹雪(TYPE97)高等練習機であるため戦術機単体としての能力は彼女が乗るF15-ACTIVE(アクティブ)不知火弐型(TYPE97セカンド)に軍配が上がるのは明らかである。ハックやカットといった攻撃魔法はその性質上相手を確実に破壊してしまうため模擬戦では使用できない。そのためシュミレーターを使った訓練時や対戦でしかその真価を発揮することが出来ない。

 

模擬戦の経過は先ほどクラレンス少尉が5回目のシールドを発動させマナンダル少尉の攻撃を防ぎ其処にできた隙を見逃さず性格にコックピットへと模擬弾を叩き込んで撃破判定をもぎ取った。ほぼ完封で負けてしまった初日から比べると大きな進歩である。

 

この後パイロットたちは攻撃魔法有りでのシュミレーターを用いたグループ戦を行うことになっているが、俺を含めた整備兵達は期待の整備が待っている。今回は特に激しい機動を行っていたようであるのでリコリス伍長と共に機体を整備する。

 

彼女は非常に優秀で現在では封呪詛筒(カートリッジ)を除いたほぼ機体全ての整備を任せることが出来るまでになっている。封呪素筒(カートリッジ)周りはデーターがある程度蓄積されて、俺の想定する取り扱いで問題ないということが確定すればマニュアルを渡して彼女にも整備を手伝ってもらう予定である。既に機体に張り巡らされた魔力の伝達用の配管とコックピットブロックの整備は彼女に任せても問題ない程度には熟達している。

 

俺はグロリアに機体状況を調査させながら封呪素筒(カートリッジ)の交換と整備に取り掛かる。今回で15回目となる封呪素筒(カートリッジ)の交換であるが、呪素の発生量が異常に増えるというようなことはなく、安定した成績を残している。

 

これならば整備マニュアルに封呪素筒(カートリッジ)の交換方法と、交換した封呪素筒の保管方法を付け加えれば、この世界の人類が独力で運用することも出来るだろう。現在のところ封呪素筒(カートリッジ)はグロリアに頼んで異相空間で保管しているが来月にはこの基地に保管設備が出来る予定である。

 

「リコリス伍長、こちらの整備は完了したが。そちらの状況を教えて欲しい」

 

「は、はい。こっちももうそろそろ終わるっす。魔法機関に問題がないか確認して欲しいっす」

 

もちろんリコリス伍長には整備マニュアルを渡してあるのでそのとおりに整備すれば問題なく魔法機関は作動するが、現在はダブルチェックをするという意味で俺が最終確認をしているが、もう封呪素筒(カートリッジ)の交換作業もこの世界の人類に任せられるだろう。そろそろ彼らでそういった行程をおこなうようになっても良い頃合だ。

 

「了解した。終わったところからチェックを行う」

 

そういってグロリアから現在の機体の整備状況データーを引っ張り出す。それが設計理論値と適合しているかどうかを照合していく。数瞬で整備済みの部分は全て問題無しという結果が出たことで俺はそれらの部分に対してOKサインを出す。

 

彼女による整備はもう暫く時間がかかりそうだったので、改訂版の整備マニュアルを作成してゆく。具体的に今までに作成した部分を直す作業はほとんどなく、封呪素筒(カートリッジ)の交換と保管方法についてという項目を増やして、使用済みの封呪素筒(カートリッジ)の厳重な管理を行うように注意喚起を促す内容となっている。

 

この魔法体系を扱う上で重要となるのが使用済みの封呪素筒(カートリッジ)の保管管理である。ここが杜撰だとどんなに戦術機側で呪素を封じ込める対策をとっても、管理方法が原因でとんでもないこと(魔族災害)が起こる可能性があるためだ。そうこうしている内にこの期待の整備が終了した。最後の残っていた部分も俺がチェックをかけ問題ないことを確認し、機体整備を終了した。

 

「リコリス伍長。これまでの機体整備データから封呪素筒(カートリッジ)も含めた全てにおいて君が行っても大丈夫だと判断したので次回から君に全整備を担当して欲しい。あとアルゴス試験小隊の整備兵にも整備マニュアルを配布して魔法機関の整備方法を彼らに広めたいのだが、彼らの都合はつくだろうか」

 

「全整備の担当は了解したっす。でも他の整備兵の予定については私でははく、ドーゥル中尉から伝達して正式な命令にしたほうがいいっす」

 

「なるほどな。ではその案件についてはドーゥル中尉に掛け合ってみることにしよう。その場合君も教官役で出張ってもらうことになるだろう。よろしく頼む」

 

「任されたっす」

 

そういって俺は彼女と別れイブラヒム・ドーゥル中尉にこの件を掛け合うべくシュミレーター室へと向かった。

 

シュミレーター室で目的の人物を見つけ、この世界の人類でも封呪素筒(カートリッジ)を含めた全工程の整備を行っても問題ないと考えられることを告げ、出来るだけ早いうちに魔法機関の整備方法をアルゴス試験小隊内で共有したい旨を伝えると、翌日すぐにでもそれを行うとの返答が得られた。ハルトウィック大佐から魔法関係の事柄については出来る限り迅速に行動するようにという通達が出ているのであろうか。

 

なにはともあれ翌日に魔法機関の整備方法の公衆を開くことが決定した。折角シュミレーター室に来たのだからと、クラレンス少尉も参加している模擬戦の様子を査察してゆく。

やはり攻撃魔法が使えるのが大きいのか、防御魔法のみしか使えなかった実機での戦闘と違い【ハック】や【ディスポーズ】を使って敵機を倒していた。だが今までの戦術機運用のクセなのだろうか、ビルの影に隠れている敵が十分に魔法の効範囲内であるにもかかわらず、【カット】でビルごと叩ききるといった使い方が見られない。他にも未だに【ディフレイド】を発動させながら飛行して魔法の効果時間を有効に活用出来ていないようにも見受けられる。

 

ただし魔法に触れてからまだ1週間程度ということを考えれば、これからその効果的な運用方法を少しづつ確立していく段階だと考えるのが妥当だろうか。最終的に模擬戦はブリッジス少尉と上手く連携して敵役であるマナンダル少尉とジアコーサ少尉のコンビを撃破することに成功していた。

ブリッジス少尉も吹雪で戦っていたがどこかぎこちない印象を受けた。彼の出身は確かアメリカだったはずなので、アメリカ製の戦術機から日本製の戦術機である吹雪に乗り換えたために操作系統が余りしっくり着ていないのだろうか。確か彼は不知火(TYPE94)の改良型である不知火弐型(TYPE94セカンド)のテストパイロットだったはずである。

 

まずは操作方法の違いを理解するために吹雪(TYPE97)で訓練していると考えるのが妥当だろう。クラレンス・ブリッジスペアが勝利した先ほどの市街地での対戦術機戦闘から数分の休憩を挟み、今度は人類共通の敵であるBETAとの戦闘へと移行する。ここには先ほど参戦していなかったブルーメル少尉も加わっている。

 

「敵BETAは師団級、総数約10000。こちらの戦力は基地防衛戦力である戦術機一個連隊(108機)と戦車108両、自走砲・MLRS200両である。これに加えて基地内から砲兵の支援砲撃が加わるものとする。以上、状況開始」

 

ドーゥル中尉からの指示を受け、シミュレーションが開始される。まずはセオリー通り自走砲からAL(対レーザー)弾が打ちこまれ、それを\光線《レーザー》属種が迎撃する。AL(対レーザー)弾の役割は撃墜されることだ。それにより重金属雲が発生し、一時的にレーザーを無効化することができる。これが現状の人類が持ちうる唯一の対レーザー兵器である。そして十分に重金属雲が発生したところで、BETA群の先鋒である突撃級に面制圧を加え、それを殲滅してゆく。十分な砲撃により敵第一波はほぼ壊滅、戦術機部隊が受け持つのはそれを生き残った数十程度の集団である。戦車砲では突撃級の前面装甲を貫通できないためこれ掃討は戦術機部隊が行うことになる。

 

「BETA第一波は殲滅、続いて第二波へ備えましょう」

 

ブルーメル少尉が現状を小隊内に報告し、BETA先鋒の殲滅を告げる。

 

「了解っと。レーダーが確かなら第二波とは後十分程度で交戦可能域に入るな」

 

「そうだな、それまでに自走砲とMLRSがどれだけ敵中衛の数を減らしてくれるかが問題だがな」

 

敵の中衛は要撃(グラップラー)級と戦車(タンク)級そして光線(レーザー)級で構成されていることが一般的だ。そこに第一波へと砲弾の雨を降らせた自走砲・MLRS部隊が再び砲撃を開始し面制圧を開始する。加えて戦車も要撃級を狙って砲撃を開始する。

 

しかしやはりBETAの中で最も数の多い戦車(タンク)級はそれなりの数生き残ってしまう。本来であれば航空戦力を持って生き残ったBETA、特に戦車(タンク)級を掃討するのが好ましいのであるが、光線(レーザー)属種が殲滅されるまではその戦力投入ができないのだ。そうなった場合、それを掃討する役割は戦術機部隊となる。

 

なぜならば戦車は戦車(タンク)級に集られたが最後、文字通り喰われるのだ。それならば三次元機動が可能な戦術機部隊にその役割を担わせるしかない。それに加えて面制圧を生き残った光線級の撃破も戦術機部隊の役割である。

 

二つの役割を振られているが、最も優先されるのは光線(レーザー)級への対応だ。この時点で光線級が相当数残っていると面制圧が効果的に働かず結果的に軍の損害が大きくなってしまう。そのため味方の戦車が戦車級にとりつかれていたとしても、近くに光線級が近くにいた場合、彼らを見捨ててでも光線級を倒しに行かなければならないのだ。

 

「クソッ、戦車が五両喰われた」

 

ジアコーサ少尉が吐き捨てる。

 

「駄目だ、まだ光線(レーザー)級が残っていやがる」

 

シミュレータ内部の状況を外に取り付けられたモニターで観察する。確かに近くに光線級が存在している。その近くにいたクラレンス少尉は射線の通った光線級を一撃で撃破する。付近一帯の光線級が殲滅されたとの報に、戦術機部隊が戦車部隊への支援に入る。それと同時にさらに面制圧を実施しBETAの第二派を殲滅する。

 

「まだよ、まだ来るわ!」

 

そしてBETAの第三波である重光線級と要塞級が最後にその姿を現す。

この頃になると重金属運の濃度が薄まり、データリンクも回復している。そして重金属雲濃度の低下は重光線級からのレーザー照射を受ける可能性が高いということを意味している。だが今度ばかりは重光線級が狙った相手が悪かった。それが狙ったのは魔法使用改修型戦術機であった為だ。初期照射を受けそれを駆る彼女はセオリー通りに行動しようとしたが、それに俺が待ったをかけた。

 

「クラレンス少尉。ディフレイドを発動せよ」

 

俺の声に気がついたのか、彼女はディフレイドを無音詠唱しその効果を発動させる。放たれた太い光線(重レーザー級からの攻撃)は彼女の機体の前で見えない壁に遮られたようにその威力を遮断される。そして通常であれば間に合わないはずの最大威力照射中の重光線(重レーザー)級に向かってブリッジス少尉が120mm滑腔砲でそれを撃破する。クラレンス少尉は重光線級からの最大出力照射を受けてまだ撃破判定が出ていないことに驚いているようであったが、BETAの攻撃を防ぐために防御術式の呪文書式板(スペルタグ)を組み込んであるのだ。効果的に使いこなさなければ無意味である。

 

程なくして、光線(レーザー)属種の殲滅が確認され、残ったBETAを殲滅するために航空戦力がBETAを纏めて葬り去りミッションは終了となった。

 

 

 

「かー、それにしてもシミュレーションとは言え、重光線(重レーザー)級のレーザー照射を受けきるたぁ、魔法ってのはほんと非常識だな」

 

「ああ、近くに友軍がいなかったとしてもレーザー照射を受けている以上その戦術機は光線(レーザー)属種との間に射線が通っていることを意味している。つまりレーザーを受けきってからBETAに反撃を行うこともできるだろうな。これが普及すれば人類の対BETA戦術が大きく変わるだろうな」

 

「ユウヤもそう思ったのかー。あたしもそうなんだけどね」

 

「すまないがいまテストを行っているのはあくまでも実験機だからな。あれがそのまま量産ラインに乗るわけじゃないさ。現在だと魔法の発動は五回までと制限が付いているが、あれを何とかして最低でも十回までに増やしてから量産するという形にしたいと考えている」

 

「確かに十回まで発動が許容されるのならばかなり戦い方も変わると考えます」

 

「というわけでだ、クラレンス少尉。次回からはシミュレーター上だけであるが十回まで魔法の発動ができるように条件を変更するからそのつもりで。戦術機での魔法発動に関してのデータはそれなりに蓄積されたから、それをもとに近いうちに吹雪(TYPE97)の魔法使用改修型は十回までの発動ができるような改造を施す予定がある。数日は乗るべき機体が存在しないということになるが、その点は了解してくれ」

 

「は、確かに了解しました」

 

「では俺はハンガーで吹雪(TYPE97)の魔法機関の再設計作業に入るが、何か用事があったら呼んでくれ」

 

そう言い残し、俺はシュミレーター室を後にした。

 

 

 

 

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 後日、ハンガーで俺は現在の吹雪(TYPE97)の魔法改修型に使われているコックピットブロックの再設計を行っていた。これまでに得られたデータをもとに、その拘束度数(デュラビット)を5から10へと引き上げるためのものである。幸いにして俺にはグロリアという優秀な助手が居るので、彼女の助力を得ながらコックピットブロックの呪素改修機構を最適化させてゆく。演習時のデータでは呪素の回収に問題がある点は見受けられなかったが、いきなり拘束度数を倍にするのだからと、呪素回収用の配管の数をそれまでの1.2倍に増強した。その設計が終了したところで先日頼んでおいた素材へと手を伸ばす。

 

「やはり手配が速いな。それだけ火力の増強が必要だと感じているということか」

 

俺は早速MLRSと自走砲(2S19)へ組み込むためのシートの作成へと取り掛かった。もちろんこちらも先ほどのデータをフィードバックさせてより効率的に呪素の回収が出来るように設計は変更済みである。途中でアルゴス試験小隊の整備兵が手伝いを申し出てくれたので遠慮なく彼らに作業を割り振る。こうすれば彼らも呪素の回収機構がどのように組み込まれて作用するのかが分かりやすいだろう。先日、魔法改修型戦術機の整備方法を彼らにレクチャーしたとはいえまだまだ彼らにとっては未知のものであるのだ。こうして製作に携わることでその技術がより身につくことだろう。

 

彼らの自主的な協力もあって、数日がかりを予想していたシートの改装はわずか1日で終了した。あとはこれをMLRSと自走砲や戦車に組み込み、内装を改造しなければならないがいくらなんでも2日連続でアルゴス試験小隊の整備兵に手伝ってもらっては彼らの業務に支障が出るだろう。

最初は自走砲の改造からと考えていたのでソ連側で手が空いた人物が居ないか打診すると都合よく手が空いている整備兵が大勢居るとのことであったので、翌日格納庫(ハンガー)に来て貰おうとしたが、できればソ連側の格納庫(ハンガー)で作業して欲しいという要請があった。

 

俺としては場所はどこでも問題がないのでそれを了承する。格納庫(ハンガー)を後にしてリコリス伍長とクラレンス少尉を探すと、丁度PXで食事の最中のようであった。周りには同じアルゴス試験小隊のメンバーも集まって一緒に食事を取っている。

そういえば今日はまだ昼食を取っていないことに気がつき、俺もPXで本日の日替わり定食を注文すると、出来上がったそれを受け取り彼らの輪に加わることにした。

 

「何の話をしているんだ、ジアコーサ少尉」

 

「前々から思っていたが、ジアコーサ少尉って呼び方は堅苦しくていけないね。VGでいいぜ。で、こっちの小さいのはタリサさ。俺も太郎って呼ぶからそれでいいだろ」

 

「あ、ああ。問題ない。それでVG、何の話をしていたんだ」

 

「今日の模擬戦のことよ。あ、私のことはステラって呼んで頂戴。シュミレーター上では魔法の使用回数が10回になったでしょう。あれで一気に吹雪(TYPE97)の戦闘能力が向上したのよ。今までとは比べ物にならないぐらいにね」

 

「そうだな。チョビの反転機動にあわせて【シールド】を張られて魔法で機体を切り飛ばされたりとかな。それに加えてBETA戦では突撃級を正面から真っ二つにしたりとかな。あれが普及すれば今までの対BETA戦闘のセオリーが書き換えられるだろうな。あと俺はユウヤでいい」

 

「なるほどな、ユウヤはそう感じたのか。だが俺から言わせればまだ魔法を信頼していないと思う。たとえば【ディフレイド】があるのだから、わざと空を飛んで光線(レーザー)属種のターゲットを集めてレーザー照射を防ぐ。データリンクで共有される戦域マップのデータから照射している光線属種が分かるのだから、それを撃破するという戦術も取れるはずだ。光線(レーザー)属種はレーザー照射中はもっとも無防備なのだからそれを生かさない手はないだろう」

 

「わざと光線(レーザー)属種の的になるなんて考えたこともなかったが、確かにそれなら光線(レーザー)属種を効果的に撃破できるな」

 

「魔法を使った戦闘はこれまでの常識を覆したものになるとは思っていましたが、自分の機体の性能を把握しきれて居なかったと思うと悔しいですね」

 

「クラレンス少尉はまだ魔法に触れてから一月程度なのだから仕方がない部分はあるだろう。そう気を落とさずにその可能性を探ってもらえればいい」

 

「私もクラレンスではなく、セシリアと呼んでください」

 

「じゃ私もマリアでいいっす」

 

「ああ、分かった。そうだ、ひとつ言っておかなければならないことがあってな、明日から数日間、ソ連側の格納庫(ハンガー)で作業をすることになったから、その間に何か用件があったら俺を呼び出してもらえないか」

 

俺がソ連側で作業をすることを告げると、セシリアとマリアがかなり慌てた様子で俺に詰め寄ってきた。

 

「あ、あちらで作業を行うのですか。私に何か至らない点がありましたか!? 確かにこれまでのシシミュレーターでの訓練では多々直すべき部分があったとは思いますが、ソ連側でもテストパイロットを募ってデータを集められるのでしょうか」

 

「え? 今度改装するのはソ連のものだからテスト人員はソ連の人から選抜することになると思うが、何か問題があるのか」

 

「私の操縦技術に不満を抱かれたわけでは無いのですね」

 

「ああ、君は不慣れな機体で実によくやってくれていると思っている。それに今回改造するのは自走砲だから、戦術機パイロットが必要なわけではないんだ。何か誤解を与えてしまったようで済まないな」

 

どうやらセシリアは自分の操縦技術が不満で他のテストパイロット候補を探しにいかれると考えてしまったようだ。今まで触れたことのない機体でなおかつ魔法という新概念の兵装を扱うのだからその慣熟には時間がかかって当然だと思うのだが、彼女はそうは考えていなかったようだ。その結果誤解を与えてしまったようで心苦しい。

 

ただソ連の人々にも技術提供をするのだからその運用方法や整備方法を伝達する必要があるから、これからも度々こうして抜けることがあるかもしれない。そのことも後で言い含めておかなければならないかもしれない。

 

「いえ、そういうことだったのですね。了解いたしました。それでも太郎殿が帰ってくるまでに更に吹雪魔法改修型の操作に慣れて、太郎殿がこの機体を寄り洗練されたものへと改造できるようデータの収集に励みます」

 

「気合を入れて任務に励んでくれるのは有難いが、事故は起こさないように気をつけて欲しい」

 

俺が居ない間に魔法機関が破損して魔素が逆流、魔族災害が発生するという事態は避けたいのだ。

 

「はい。安全に十分配慮して任務に望みます」

 

「そうしてくれ」

 

「なあ太郎。ソ連側で作業するなら気をつけていたほうがいいぜ」

 

「気をつけたほうが言いというのは一体?」

 

「やつらは魔法技術のことをあらゆる手段で集めようとするだろうしな。あおれに紅の姉妹(スカーレットツイン)っていういけ好かないやつらも居るんだよ」

 

「なるほど、あらゆる手段ね。有難い忠告として受け止めておく」

 

なるほど、同じユーコン基地で開発をしているといってもここも一枚岩というわけではないのか。BETAという人類そのものに対する脅威を前に一つになれないとは。

 

とそこへ何度か見たことはあるが、紹介されたことのない女性が俺たちの居る方向へと近づいてきた。

 

「ユウヤ・ブリッジス少尉。貴様はまだ吹雪に挙動を制御し切れていないのか。乗りなれない機体である以上ある程度はやむをえない。だが、機体特性を理解していると本当にいえるのか」

 

「お言葉ですがね中尉、俺から言わせればこいつ(TYPE97)は出来損ないです。ピーキーな機体特性だけでなく主機出力は不足している。何よりも運動性能を追求した結果バランスを欠いた機体になっている、これを出来損ないと言わずして何というんですかね」

 

「あー、済まないがあなたの名前を教えていただけると有難いのだが。何せここに到着してから顔を合わせても自己紹介はまだだったはずですがね」

 

そういって件の女性に自己紹介を求める。

 

「これは失礼した。私は日本帝国斯衛軍中尉、篁唯依だ。貴様のことは帝国より伝え聞いている」

 

「おや、俺ってそんなに有名人になっていたんですね。では改めましてご挨拶を。俺は戦術機の魔法改修型の可能性を探るために横浜からこちらに派遣されてきた田中太郎だ。今後ともよろしく頼む、篁中尉」

 

「こんなところで申し訳ないが、帝国に巣食っていた佐渡島ハイヴ(甲21号)を破壊してくれたことを、全国民に代わり心から感謝する」

 

「いやあれは……」

 

デモンストレーション代わりに破壊したと言おうとしたところ、他の衛士達から彼女が口にした言葉に声が上がった。

 

「待ってくれ、さっきハイヴを破壊したと聞こえたんだが、やっぱりあんたがやったのか。噂では単身で破壊したらしいが、それもこの間見せてもらった魔法の力ということなのか」

 

「そのとおりだVG。まずハイヴ上部構造を超重力魔法(奈落)で圧壊させてハイヴの中に居たBETAを全て殲滅して一番下にあった反応炉を破壊させてもらった」

 

「あの噂は本当だったのか……」

 

「ああ、だが他のハイヴでこの戦術をとっても同じ効果が得られるとは限らないからな。あれはハイヴが佐渡島というごく限られた場所をその戦域としていたからだ。他のハイヴでは戦域が広すぎて(素の)俺の魔力では全て殲滅することは出来ないだろう」

 

まあユダの痛みから魔力を引き出せれば広範囲に封鎖結界を張れるのでその限りではないのだが……。

 

「いいか、ぜーったいあいつらに隙を見せるんじゃないぞ」

 

「あ、ああ」

 

タリサの剣幕に一体過去に何があったのかと聞きたかったがやめておいた。

 

「そういえばユウヤが本来テストをする機体は吹雪(TYPE97)ではなく不知火弐型(TYPE94セカンド)だと聞いたが、ベースとなった不知火(TYPE94)でも今搭乗している吹雪(TYPE97)よりもピーキーな運動性能のはずだ。今のうちに日本式のやり方に慣れておかないと後々大変だぞ。アメリカにはアメリカの、日本には日本のやり方がある」

 

「分かっている」

 

「いーや、その分だと分かってないな。この機体は日本で使われることを想定して製作される機体だ。俺みたいに魔法を使用できる戦術機の開発、つまりこれからのグローバルスタンダードな機体を作るんじゃない、今まで使われてきた日本で使われるのにアメリカ式の制御方法で機体を動かすような開発をしたらどうなる。簡単な話だ、本来運用すべき日本の衛士にとっては極めて使いづらい機体になってしまう。そこのところを考えたことあるか?」

 

それきりユウヤは黙りこくってしまう。

 

「篁中尉もこの計画を成功させようと気張っているのは分かる。努力したから評価しろとは言わない、だがそれで同じグループの仲間を追い詰めすぎてはいけない。それは君もわかっているはずだろう」

 

さてと、では明日からのソ連行きに備えて今日は上がるとしましょうか。

 

 

 

 

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翌日、約束どおりにソ連側が使用している区画へと赴くと、そこには見たことのない男性と、それを警護するための人員だろうか、数名の警備兵が待ち受けていた。

 

「ようこそソ連へ。我々は君と君がもたらす技術(魔法技術)をを歓迎する。私はヴァジリー・アターエフ。階級は大佐だ。」

 

「おはようございます。もう知っておいででしょうが、俺の名前は田中太郎。立場は民間協力者ということになっています。それにしても俺一人のためにこれだけの歓迎をしてくださるとは有難いことですね。車両の改造と機動テストで数日ほどの滞在になると思いますがよろしくお願いします」

 

そういって右手を差し出し握手を交わす。

 

「なに、数日といわずいくらでも滞在してくれて構わんよ。その前にこの数日間君と我々の窓口となる人間を紹介しよう」

 

アターエフ大佐が、隣に立っていた男性を俺に向けて紹介してくれた。すらりとした長身の男性で、目的のためには手段を厭わない、そんな印象を受ける人物だった。

 

「私はイェージー・サンダーク。階級は中尉。我が国のために魔法技術を供与していただけると聞き及んでおります。BETAに対抗するために我々に力をお貸し願いたい」

 

「こちらこそよろしくお願いします、サンダーク中尉」

 

「では早速作業を行っていただく現場へとご案内しましょう。では大佐これで失礼いたします」

 

そう言う彼の後に俺は付いていくと、既に自走砲とそれに据え付ける為の座席がハンガーに運び込まれており、その周りには整備兵らしき数多くの人がそれを取り巻いていた。

 

「ではこれから作業に掛かります。周りにいる整備兵らしき方は俺の手伝いをしてくれるということでしょうか」

 

「ええ、その通りです。彼らにも魔法という新しい技術をご教授願いたい」

 

「確かに俺がいなくなったからメンテナンスできないでは困りますからね。今回は改造だけのつもりできましたが、一応メンテナンスマニュアルも既に作ってありますから、実際に改造しながらメンテナンス方法を教えていきます。ただそうすると工期が予定していた数日では足りません。もう暫くの日数が必要になりますが、そちらのご予定に差し支えありませんかね」

 

「問題ありませんな。魔法技術の吸収は大佐より最優先にせよと指示を受けております。後で私から大佐へそのことに関して報告を上げておきますのでご心配なさらず」

 

ふむ、魔法技術がほしいのはやはりどの国も同じなのか。

 

「ああ、忘れていました。あなたの補佐役として我が試験小隊からビャーチェノワ少尉をつけます。少尉、入ってきなさい」

 

その言葉でハンガーへと入ってきたのは白髪の女性だった。ネームプレートの上のバッジから衛士であることが見て取れた。

 

「クリスカ・ビャーチェノワ入ります」

 

「彼女はクリスカ・ビャーチェノワ階級は少尉です。今回の案件について太郎殿のサポートに彼女が入ります。何かありましたら彼女へ言っていただければ対処します」

 

「そうですか、ありがとうございます。ビャーチェノワ少尉、これから暫くの間だがよろしくお願いする」

 

「では私はこれで失礼する。では太郎殿自走砲の改造をよろしく頼みます」

 

そういってサンダーク中尉は格納庫(ハンガー)を後にした。

 

「では整備兵の皆さんこれから車体の改造に入りますので手伝いをお願いします。所々で整備のための解説を交えていきますので時間が掛かるとは思いますが、よろしく頼みます」

 

そういって整備兵に補助をしてもらいながら作業を続ける。8時間ほどかけで内装を引っぺがして改造をする準備が整った。今日の作業はここまでとして解散とするが、その前に彼らにこの車両の整備マニュアルを渡して、翌日から部品加工と据え付けの作業に入ることを告げる。

 

翌日は昨日の続きで水銀を封入するためのステンレス製の配管を作成してゆく。この配管の準部は実験車両ということもありほとんどが手作業である。そのため配管の準備が整うまでに3日ほどかかってしまった。だが以前に吹雪(TYPE97)を改造した時とは違い自主的に(・・・・)数多くの整備兵が作業の手伝いを申し出てくれており、そのときに比べればかなりの短時間で済んだといえる。

配管の加工作業が終了したのでいったん作業を止め、解説を始める。

 

「はい、ではここまでで重要な項目を説明します。魔力の伝達で重要なのはこのステンレス製の管の中に封入される水銀です。もし万が一この管の中の水銀が流れ出てしまって管の中に水銀が無い状態で魔法を使ってしまうと、呪素と呼ばれる人体に極めて有害なものが回収できず、また魔力の伝達に支障が出て魔法の発動に大きな影響があるのでこの配管の状態と水銀の量は必ずチェックしてください」

 

「田中殿、もしその状態で無理に魔法を使った場合どうなるのですか?」

 

「そうですね、最悪の場合、極めて深刻な事態(魔族災害)の発生が予測されます。ですので戦闘中に配管が破損した場合、魔法を使わずに交戦するか、撤退するかしてください。ほかに質問が無ければ作業を再開します」

 

特に質問は出ず、その後1日がかりで配管を車内へと組みつけてゆく。ここも人海戦術のおかげか以前と比べてかなりの速度で作業が進んでゆく。魔法士(ソーサリスト)を兼ねた車長が乗る座席以外を組み付け終わったところで日が暮れてきたため今日の作業を終了とした。なぜならば次の作業は魔力伝達とさらに重要な呪素回収の要である専用の座席の据え付けであるためだ。そのため解説の時間も十分に取れる翌日の作業へとまわした。

 

5日目に入り座席の据え付け作業を行う。この作業は車内に這わせた配管と専用座席の下に張り巡らせた緻密な配管とを液体金属である水銀が漏れないように結合させる必要がある。そのため非常に精密な作業が求められる。水銀が漏れるとすればこの結合部分からの可能性が高いだろう。

 

どうやら俺の手伝いとして派遣された整備兵たちはかなりの腕利きらしく、非常にシビアなその作業もかなりの速度でこなしていってくれる。作業が完了し念のためグロリアに水銀が漏れる可能性がある部分が無いかスキャンさせたが、問題なしとの返答が帰ってきたため配管へと水銀を封入する。

 

その後は封呪素筒を車内に取り付ける。これは車内からあと何回魔法が発動可能かをわかりやすくするために封呪素筒(カートリッジ)と連動して拘束度数(デュラビット)のように目視で確認しやすいギミックを設けた。一回魔法を発動すると使用前の封呪素筒(カートリッジ)が専用容器へと格納される仕組みである。今回は試験的にこのようなシステムにしたが、よりよい方法が見つかればそちらへと変更する予定である。そして魔法を使用する際に必要となる呪文書式板(スペルタグ)とそれを活性化するための装置を組み込んだ。残る作業は内装を張り替えるだけである。

 

「では今日の要点を説明します。水銀が漏れる可能性が最も高いのは本日据え付けた座席の配管と車体内部の配管との接合部です。ここは必ずチェックしてください。また座席内部にも配管が張り巡らせてあるため重整備時にはここのチェックと整備を怠らないようにしてください。そして本日最後に取り付けた部品が封呪素筒(カートリッジ)と呼ばれるものです。これに呪素というものを封印する仕組みになっています。これは魔法を一回発動すると1個づつ消費されます。今回の場合10回までが魔法の発動限度となっています。それ以上に発動した場合呪素は封印されずに魔法を発動した術者本人の肉体へと蓄積されますが、これは絶対に避けてください」

 

「もしも発動限度を超えて魔法を使ってしまった場合はどうなるのですか?」

 

「そうですね、最悪の場合術者の肉体が変容し俗に『魔族(メレヴェレント)』と呼ばれるものに成り果てます。極めて危険性が高いので拘束度数(デュラビット)で保護された安全範囲内で魔法を使用するようにしてください」

 

下級魔族ならともかく、中級以上の魔族を物理攻撃で滅ぼすのはかなりのリスクを伴うことになる。下級のそれならば魔族が反応できる速度以上の物理攻撃―――例えば超高初速の対物狙撃ライフル―――等で魔族が魔法を発動させるための機関である脳を5割以上殲滅することが必要になるのだが、中級以上の魔族は謡うもの(シンガー)と呼ばれる機関を備えており恒常魔力圏(コンスタント・ドメイン)を持っている。そのため不意打ちだろうがなんだろうが基本的に物理攻撃は通用しない。

 

ここまで進化した魔族に対して有効な物理攻撃はほとんど無いが、その数少ない方法が相手の恒常魔力圏の処理容量を上回る広域破壊兵器つまり核などの集中運用である。その代償はきわめて大きいがこうでもしなければ物理攻撃で魔族を倒すことはできないのだ。

 

「それでは明日起動試験を行いますので整備兵の方は解散してください。あとビャーチェノワ少尉、明日の起動試験で魔法を発動する魔法士(ソーサリスト)役を務めてもらいたいのだが、問題ありませんか」

 

「問題ない」

 

魔法を発動するためには二次拘束術式図版(セカンダリ・レストリクト・パターン)が書き込まれた強化装備の着用が必要であるが、現状でそういったものを着慣れているのは戦術機のパイロットしかいない。そのため彼女にテスト人員を努めてもらう必要があったのだ。

 

「ありがとうございます。では明日専用の強化装備が届くように手配しますので、それを着用して試験に臨んでください」

 

彼女にそう言って今日の業務の終了を伝えようとしたところ、見慣れない少女がビャーチェノワ少尉の下に駆け寄ってきた。

 

「イーニャ、どうしてこんなところに来たの」

 

「クリスカ、私寂しかった。それにもう太郎は今日の用事は終わったから帰ってきて」

 

かなり仲がよさそうに思えるが、彼女は一体どのような人物なのだろう。それより待て、俺は彼女に名を名乗った覚えは無いがなぜ俺の名を知っているのか。いや名前だけならばビャーチェノワ少尉から聞いていたと説明が付くが、俺がもう今日の業務終了だと告げようとしたことを知っているのか……まさか、横浜基地で出会ったウサ耳少女こと社霞のように頭の中を読んだのか。そう判断して呪圏(コンスタント・ドメイン)……ではなく、読心能力(サイコメトリー)を防ぐ思考防壁を構築すると、件の少女の表情が一瞬にして驚きに包まれる。なるほど、やはり読心能力者で当たりか。

 

「どうして、どうしてあなたの心が突然見えなくなったの」

 

「なるほど、読心能力者(サイコメトラー)まで居るとは。ソ連はなかなかに興味深いところだな」

 

俺の言葉にビャーチェノワ少尉はわずかに驚きをその顔に表した。

 

「なぜ分ったって顔をしてるな。この世界に来てから同じ能力を持った子に会ったことがあるからな。だからこの子もそうだろうとあたりをつけただけさ。まあその様子だと正解だったようだが 」

 

「何が目的だ」

 

「最初に言ったじゃないか。魔法を使う自走砲(2S19)を開発するためだって。それ以外に目的は無いから安心してくれ。それに先ほど読心を防いだ思考防壁は解除したから、彼女に聞けば俺の言っていることが間違っていないと分るはずだ」

 

「イーニャ、本当なの」

 

「う、うんクリスカ。太郎は嘘をついていないよ」

 

「分った」

 

「納得してくれた用で何よりだ。まあ思考を読まれて気分のいい人間はあんまり居ないから気をつけたほうがいい」

 

「でも、他の人が考えていることが分らないととても怖いの」

 

なるほど、生まれたときから他人の思考を読めるが故の恐怖か。

 

「そうだな、生まれたときからずっと他の人の考えていることが分ったんだ。突然それ無しで他人と関わり合うのは怖いだろう」

 

「うん」

 

「だから今すぐにその能力を使わないようにするんじゃなくて、ほんの少しでもいい、少しづつそれを使うのを減らしていくんだ。例えば君はビャーチェノワ少尉のことを信頼しているだろう」

 

「うん、クリスカはとっても優しいから」

 

ふむ、ビャーチェノワ少尉はこの子には優しいのか。

 

「だからビャーチェノワ少尉と接するときにはその能力を使うのを減らすということから始めたらいいんじゃないかな」

 

「クリスカだけなら、あんまり怖くないかも」

 

「そうだ、まずは怖くないところからやってみればいい」

 

「うん」

 

そう言うと彼女はビャーチェノワ少尉の後ろに隠れた。

 

「まああの子のいったとおり今日はこれで解散だ。明日、魔法を使うための強化装備を用意するからテスターとして参加するように。

 

「了解した」

 

こうしてソ連側での3日目の日程は終了した。

 

 




祝!柴犬アニメ化!
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